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2019.05.29

【イベントレポ】クーガー石井氏が語るゲーム×AI×ブロックチェーンの可能性―未来のキーワードは「マシンインターネット」と「ミラーワールド」

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クーガー株式会社CEO 石井敦氏

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年4月26日に開催された「GDM勉強会~ゲーム×AI×ブロックチェーンの可能性と世界最新動向~」では、クーガー株式会社CEOの石井敦氏を招いて、ブロックチェーンとゲームのシナジーやAIとの関係性、最先端技術の世界最新動向が紹介されました。

今回登壇した石井氏は、IBMを経て、楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発を手がけ、日米韓を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括なども担当した経歴を持っています。

またゲーム分野では、スマートフォン向けゲームアプリ開発やGDCへの登壇、PlayStation Networkのコア部分の設計などに参画、2017年に開始したブロックチェーン技術コミュニティ「Blockchain EXE」の代表も務めています。

本記事では、発表された内容の一部を抜粋してレポートします。

ブロックチェーンについて

ブロックチェーンとは「価値のインターネット」と呼ばれ、価値を乗せて移転することのできるインターネットのことです。

時系列で発生したことを、ダイジェストにしてブロック化する基本原理を持ち、そのブロックが鎖のように連結していくため「ブロックチェーン」と呼ばれます。

前ブロックのアウトプットが次ブロックのインプットとなり、一つのブロックを書き換えようとすると、それ以降のブロックすべてを書き換えなくてはならないため、改ざんが非常に困難な仕組みとなっています。

ブロックチェーンの主な構成要素は「P2Pネットワーク」「コンセンサスアルゴリズム」「電子署名」「ハッシュ関数」「スマートコントラクト」で、代表的なブロックチェーンコミュニティは以下の3つとなります。

Bitcoin Core:通貨を受け渡すためのブロックチェーン
Ethereum(読み:イーサリアム):特定の目的を持たないブロックチェーン
Hyperledger fabric:IBMが主導する企業型のブロックチェーン

また、なぜBitcoinが最初のキラーアプリになり得たのか、石井氏は大きな理由を3点挙げました。

1つは通貨は誰もが重視するわかりやすい価値であること、2つ目はデータ形式が数値のみで技術的に扱いやすいこと、3つ目は通貨(お金)は人から人に移転され、移動のニーズが高く、頻繁に移動されるから、と解説しました。

ブロックチェーンの大きな特徴は「透明性」「公明性」「トレーサビリティ」であり、これらは限られたデータであるからこそ、公開しても成立するので、対象のデータが個人情報や企業の機密情報などになると公開されるリスクが大きくなります。

ブロックチェーンでデータを扱う方向性に関して「On Chain(ブロックチェーンの内部にデータを記録)」「Off Chain(ブロックチェーン自体にデータは記録せず紐付けキーのみ記録)」の2つに分けられ、それぞれのメリット・デメリットを含めて、どちらの手法に対応するか、この選択の考え方・決定方法はゲーム開発とも密接に関わります。

既存技術とブロックチェーンの進化

ブロックチェーンネットワークの種類の中でも、利用率が高いパブリック型(パーミッションレス型)と呼ばれるブロックチェーンを、既存の技術と比べた際の特徴として、以下の3つが挙げられます。

管理者がいない(非中央集権型)
→命令や司令がなく、処理に立候補した管理者に報酬を与えるなど、普遍的なインセンティブコントロールが可能に。

起きた事実の取り消しができない
→そもそもリセットができないため、信頼関係が生まれる

改ざんが極めて難しい
→これまで共有が難しいとされていた、複雑な関係性におけるデータ共有が実現可能

また、現時点の技術適用先の相性について、スピードよりデータの信頼性・公明性が重視されるものが向いており、リアルタイム性の高い更新頻度の高いものには向いていないと言われています。

現在、ブロックチェーンは、トランザクションの処理スピードを上げるだけでなく、データ規模やスピードを両立したスケールの拡大、データの保存や機密性を高めることが世界的ニーズとして求められています。

次世代ブロックチェーン

石井氏は、先述したブロックチェーン以外にも、最近では以下の種類も注目を集めていると紹介しました。

『IOTA』(読み:アイオータ)

「IOTA」は、リアルタイム性の高いIoT対応に特化したブロックチェーンです。M2Mマイクロペイメントでブロックもチェーンを持たない構造になっています。

「IOTA」が描く未来の姿は、ドローンが自動で飛びながらステーションで充電し、支払いもしてくれるような、一切の行動に人間を介さない世界です。セキュリティに関しては、糸のもつれのような仕組みを使った「Tangle」と呼ばれる手法で、改ざんをほぼ不可能にしています。

『BigchainDB』(読み:ビッグチェーンデービー)

「BigchainDB」は、処理速度を最大限に高めたブロックチェーンです。分散型DBとブロックチェーンそれぞれのメリットを融合しており、汎用的なデータでかつ、大規模データの保存を可能にしています。

ブロックチェーンとユーザー認証

続いての話題は認証問題について。現状では、それぞれのサイトやサービスにIDが存在し、ユーザー自身が各サービスやシステムにアクセスする仕組みになっています。IDへのアクセス方法を紛失した場合も、本人の問い合わせなどで再発行などが可能ですが、ユーザーの記憶やテキスト情報に依存してしまいます。

しかし、この仕組みにブロックチェーンを導入すると、中央集権を持たない分散台帳上にIDを記録して、それに対してサービスを対応させることが可能になります。つまり全員が相互管理しているような状態を作り、よりセキュリティを強化できますが、IDを紛失した場合にリカバリーが困難になるデメリットもあります。

すでに世界で運用が始まっている「顔認証」「指紋認証」「行動認証」「生体認証」など記憶などに依存しないID認証方法と、ブロックチェーンによる高い信頼性を組み合わせれば、不特定多数の人々の間で安心して共有ができる「シェアリングエコノミー」が実現できる可能性が高いと考えられます。

ただし、その実現のためには絶対的な「信頼」が必要になるため、ブロックチェーンの仕組み自体が信頼を生み出すことが確実にできなければなりませんし、世界全体がその問題に取り組んでいます。

現時点での課題は、リアルタイム性の高いシェアリングの対応が難しいこと。記録はブロックチェーンに残りますが、デジタルデータ以外の部分に関して、例えばシェアしている実物自体(自動車・部屋など)は物理的に記録できない(デジタル化できない)ことです。

IoT×AI×ブロックチェーンの可能性

さらに、さまざまな技術がすべて横断して繋がるきっかけとなっているのが、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」であり、今後、通信データの種類と量が爆発的に増加し、リアルタイム通信と判断のために、あらゆるデバイスでAIが搭載される可能性が高くなっています。

そこで必要なのが、データに信頼性をもたせる技術、その候補がブロックチェーンとなります。

IoTとブロックチェーンの可能性として、リアルタイム性とデータ信頼性の両立が必要となり、ネットワーク構造については「Fogコンピューティング(ドローンや自動運転のような、高度な処理をしつつリアルタイム性が必要な対応をする)」「エッジコンピューティング」それらを横断する、IoTデバイスと連動したスマートコントラクトが必要になります。

AIを一言で説明すると「デジタルデータを使って何かを自動化する技術」、ブロックチェーンを一言で説明すると「デジタルデータ自体を証明する技術」であり、お互いに補完する関係となっています。

将来的に、あらゆるデバイスでAIが稼働するのは確実であり、判断を自動化するAIにおいて、不具合時の影響は甚大なものになります。そのため、AIの判断内容・結果とAIの成長履歴の因果関係は極めて重要になります。改ざんされたAIにはもちろん信頼性がないので、改ざんや変更が不可能な仕組みが必須となります。

ゲームとブロックチェーン

ここまでの解説で、デジタルデータとブロックチェーンは強い関係性・信頼性が重要なことがわかってきました。

特にゲームは、シナリオ・キャラクター・アイテム・建造物など「デジタルアセットの塊」であり、ブロックチェーンにユーザーIDやアイテムなどのデータを保存すれば、ゲームタイトルを横断した非中央集権のアセット管理が可能になります。

ブロックチェーンによって活きるゲームのユースケースとして、アイテムの売買などの「ユーザー間でのアセット交換」「ゲームタイトルを横断したアセットの共有」「アセット活用の独自ゲームの構築」などが挙げられます。

特に運営会社に依存しないゲーム運営、アイテム取得確率など改ざんや不正ができないゲーム運営が可能になることは、運営の透明化を図り、ユーザーの信頼を得ることができるような重要なユースケースであり、ゲーム業界にとって重要なファクターとなっていくはずです。

ゲーム×ブロックチェーンにおいての向き不向き

向いている
データの信頼性や履歴が重視されるジャンル、アイテムやキャラクターなどのデータ売買や取得

向いていない
リアルタイム性が高く、更新頻度の多い対戦格闘やレーシングのような動的な処理、細かいキャラクターパラメータの更新処理など

運用中タイトル紹介

ここで石井氏は、ブロックチェーン技術を利用して運用されているタイトルを紹介。現在、どのようにゲームでこの技術が使われているのか、そして今後の展望予測などを述べました。

『OxUniverse』

ブロックチェーンベースの銀河探検家オンラインゲームで、惑星を購入して宇宙船を発明し、宇宙探索を楽しむゲームです。

このようなゲームについて、ブロックチェーンを使う必然性はないですが、ゲーム業界では新たなプラットフォームが生まれるたびに爆発的な伸びを示す傾向があり、ブロックチェーンベースのプラットフォームとしては、今後3~4年で成長する可能性が大きいと考えられています。

『Etheremon(イーサエモン)』

ブロックチェーンゲームの中でもかなり勢いのあるゲームで、イーサリアム版のモンスター収集&育成系のジャンルです。特にプラットフォームの健全性が中央の管理者ではなく、参加者によって保たれていることが特徴です。

ゲーム×AI×ブロックチェーン応用

続いて、クーガー株式会社がゲーム・AI・ブロックチェーンを横断して展開している「バーチャルヒューマンエージェント」について、デモ動画を使用して説明されました。

バーチャルヒューマンエージェントは、ゲームの世界に限定されていた3Dキャラクターを、現実世界の人間とコミュニケーションする取り組みです。これまで進化してきたデバイスの最新型は「人型」だと、石井氏は話しています。

デモ動画では、石井氏が現実の世界とモニターやタブレットを通して、女性のバーチャルヒューマンエージェントと自然に会話をしている様子が紹介されました。

この事業では、現実社会とバーチャル空間を繋げているのがポイントで、理解する部分はビッグデータを利用した機械学習AIを使用し、エージェントの振る舞いに関してはキャラクターAIを使用。その2つのAIが融合してリアルなインプットの理解をML(機械学習)させています。

また、ブロックチェーンによってデータおよびAIの信頼性を担保する仕組み「XAI(Explainable AI)」を作っており、このAIはゲーム開発において重要になってきます。

「XAI(Explainable AI)」の要素は、「数式やアルゴリズムの説明性」「ニューラルネットワークの設計」「学習データ」となっており、特に学習データの部分にブロックチェーンの技術の親和性が高いため、今後も研究を続けていくと石井氏は講演を締めくくりました。

質疑応答

Q:ブロックチェーンのゲームへの利用について、リアルタイム性の高いゲームへの対応、チート行為などへの対応などについて、どのようにお考えでしょうか?

石井氏:リアルタイム性の高いプレイが多いゲームタイトルには、ブロックチェーンの対応はすぐにはできないと思います。「プレイ終了後~次回ゲームを起動するまで」など、ブロックチェーンに記録されている前回のプレイデータが、一定の期間で保存されたデータ自体が透明性を担保できるような導入から、まずはスタートすると考えられます。

また、リアルタイムで複雑な動作をするチート行為には、現時点では対応できるかは不明です。オンラインゲームやソーシャルゲームなどの運営の透明化や、過去のデータを利用した確率データの公開などには対応可能と考えています。

Q:ブロックチェーンを利用したゲームの10年後はどの様になっていると思いますか?

石井氏:今後インターネットの中心は、機械が運用する「マシンインターネット」がメインになってくると思います、それによりロボットなど機械に合わせてスピードが出るような、データ通信の方式が変わっていくと考えています。

その状況では、人間が直接見ることが可能なデータがなくなってくるため、それを翻訳するアシスタントが登場し、人間とコミュニケーションをしていくと思われます。

さらに、さまざまなデバイスがお互いを検索し合い「どこに繋げばいいのか?」ということを、それぞれのAIが判断して、自律制御していきます。これがまさに「非中央集権型検索」と言えますね。

ゲーム側に関しては「ミラーワールド」といった最新の概念があります。ミラーワールドには世の中のすべての物質が、AR空間においてコピーとなって存在、つまり鏡の世界にもうひとつまったく同じ世界ができ、現実世界とARの世界でどちらも楽しめるほか、さらにミラーワールド自体も分裂して形成することができます。その仕組みを支えるのが、ブロックチェーンとなっていくと想像しています。

懇親会

クーガー石井氏からプレゼントも

講演終了後に実施された懇親会では、GDMおなじみのお寿司と、今回初登場のサンドイッチをつまみながら、積極的に交流がなされていました。また、今回クーガー株式会社と石井氏のご厚意で、参加者にオリジナルのTシャツやグッズが配られました。

参加したDeNA社員にちょっと聞いてみました

――まず、勉強会に参加した理由を教えてください。

社員Y:ブロックチェーンをどうやって利用すれば良いのか、現在では明確な答えがあまりないと思っており、技術的な話だけでなく、特にゲームとの関係性や実用例を知りたくて参加しました。

――石井氏の講演を聞いてどう感じましたか?

社員Y:Bitcoinなど仮想通貨取引だけでなく、さまざまな分野に活用できることを知ることができました。非中央集権で扱わなければいけないデータが世の中には思ったよりもたくさんあったことを知りましたが、なぜそうしなければいけないのか、というアイデアも自分なりの気付きに役立ちました。

もちろん、ブロックチェーンのコミュニティの存在は知っていましたが、コミュニティのこれからの動き方や、応用例、適用例なども知ることができましたね。

――もともと、ブロックチェーンの基礎的な仕組みは知っていましたか?

社員Y:社内でも研究している人はいますし、基本的なことはある程度調べていました。ゲーム開発にブロックチェーンを利用する際に、アクションゲームやレースゲームのようにリアルタイムかつデータを書き換える頻度高いジャンルには向いていない認識はしています。そういう流れから、自分達の現在の仕事には直接関連がなく、より深い勉強はしていませんでした。

――ゲームとブロックチェーンが組んだ、業界の将来はどのように進化していくと感じましたか?

社員Y:講演にあったゲームに関する「ミラーワールド」のような世界が実現してから、本格的に変わっていくのかもしれませんね。

運営の透明化についても、事業者そのものが行うというよりは、その世界の住人が「リアル道具屋」みたいな新たなサービスを経営するときなどに、透明性のあるロジックを公開することはあると思います。そこには競争原理などが生まれるかもしれませんね。

かつて話題になった『セカンドライフ』のような世界がさらに進化して、ゲームの内部でブロックチェーンを利用したサービスが生まれていくのだろうと予想していますが、そこでどのようなゲーム性を提供していくかは、まだまだ考えていく余地があると思います。

――ありがとうございました。

取材・文:細谷亮介
撮影:佐藤剛史/細谷亮介

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