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2019.12.16

【イベントレポ】令和時代を生き抜くゲームディレクター談義:歴戦ディレクターの「これまで」と「これから」

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毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

本稿では、2019年11月29日(金)に開催された「GDM Vol.38 ディレクター向け座談会」にて繰り広げられた当日の模様を、一部抜粋してお届けします

“ディレクターに関する”6つのテーマ

テーマその1「ディレクターに至るまでの経緯」

まずは現在ディレクターとして活躍中のセガ・インタラクティブ松永純氏、カプコン山田倫之氏に対しての1つめのテーマとして、彼らがディレクターになるまでの経緯が質問されました。

松永氏はもともとプランナー出身で、当時の業務の中で「企画や提案ではなく、自分で判断をしたくなった」と気付き、その後ディレクターを目指したと明かしました。

一方、山田氏はプログラマーからキャリアをスタート。当時担当していたMMORPGタイトル開発時にディレクターが空席となり、その権利を持った人が不在だった中、リーダー陣で補完しながらプロジェクトを進める状況を経て、その後ディレクターになったと語っています。

テーマその2「プランナーとディレクター、一番の違いは?」

続いては、プランナーとディレクターについて、実際に開発現場で感じている一番の違いは?というテーマです。

松永氏、山田氏ともに、ディレクターはゲームの完成形を判断し、プランナーは提案や企画をする役割を持つ職種だという見解を述べました。また、プロジェクトの規模に応じて、ディレクターも提案をする場合もあるとのこと。ちなみに松永氏は「自分は小さいプロジェクトの方が好きです」と微笑みました。

松永純氏 | 株式会社セガ・インタラクティブ
2002年にSEGAにプランナーとして入社。アーケードゲーム市場にて『三国志大戦』シリーズ、『戦国大戦』シリーズの企画原案、メインゲームデザイン、ディレクションを務める。その後、モバイルゲーム市場で本格RPGジャンルの草分けとなる『チェインクロニクル』を制作。このタイトルでは、企画原案、ゲームデザイン、ディレクションに加えて、キャラクター・世界観設定、シナリオ制作を担当。現在は各モバイルタイトルの総合ディレクションに従事している。CEDEC2019のアワードにて著述賞を受賞。

プランナーの延長線上、目指す先にディレクターがあるのか、それとも違うスキルセットが必要なのか?という質問に対しては、プランナーだけでなくデザイナーやプログラマーなど、それぞれのスペシャリストの中で、全体を広く見て判断したい人がディレクターになるのではないか、と山田氏は述べました。

また、プランナーは他の職種に比べ全体を見る機会が多いだけで、プログラマーなど他職種でも全体を俯瞰して見られる機会と意欲さえあれば、ディレクターになれる可能性はあると、松永氏は話しています。

ディレクターとして大事にしたいこと

一般的に大規模プロジェクトでは、プランナーからディレクターになりたての頃は、現場のプランニングの仕事ばかりに集中していると、ディレクションがおろそかになり、プロジェクトが停滞してしまう傾向があるとのこと。「ゲームを完成させる」方向を見据えてアプローチをするのが良いそうです。

ディレクターはゲームの進む道を守りつつ、チームメンバーや実際に遊ぶプレイヤーに対して、一番理解させたい部分だけに手をかけるべきで、その他の部分は思い切って他者に任せるような線引きも必要だと語られました。

描いたゲームの完成形を決してブラさず、必要な部分はディレクターが手を動かして進めていくべきですが、スペシャリストとしてこだわる部分は持ちつつも、ある程度俯瞰して全体を見ることを心がけることがポイントだそうです。

また、ディレクターに至るまでの出自はそれぞれ違うので、その人の能力やカラーを生かし、開発チームが前進するための役割を果たしながら、 「ディレクターとして元気にPJの最後まで存在すること」 が最も重要だと、全員が口を揃えて話していました。

企画書を大事にする意味

松永氏は自身の業務の進め方について、企画書をとにかく大事にしており、プレイヤーに届けたい本質の部分を変えないために、ゲームが完成するまで、自分の進行方向が間違っていないか、都度確認していると述べました。

さらにその企画書を開発チームのメンバーと共にチェックし、死守して欲しい箇所を再確認することも大切にしているとのことです。これに関しては山田氏も同意見だそうです。

ちなみに本イベントのモデレーターを務めるDeNA佐伯は自身の企画書の作り方について、プレイヤーが実際にゲームを遊んで感想インタビューを受けている場面を想定し、プレイ後にどのような意見が挙がるのか、指標や改善点などを探れるような手法を取っていると話しています。

佐伯嶺 | 株式会社ディー・エヌ・エー
コーエーテクモゲームスを経て、2013年中途入社。『FINAL FANTASY Record Keeper』開発から携わり、運営開始後はディレクターを担当。現在はDeNAのゲーム事業部の企画を統括する部門で副部長を担当。今回のGDMではモデレーターを務める。

テーマその3「ディレクターとして一番面白い部分」

次のテーマは、ひとりのディレクターとしてゲームを作る上で一番面白い部分について。

松永氏は、自分の頭の中のアイデアをチーム全体で共有できたときや、企画書を社内メンバーに共有して現実味について相談しながら、このプロジェクトで進めることができると確信したときが最も面白い時期だと述べました。

山田氏も作品が「これなら大丈夫、イケる!」状態にまで完成形が見えてきた時期が、達成感があって面白いと話しました。

ちなみにゲームが完成した時点は、嬉しいよりもホッとする、救われた気持ちが強くなると2人はうなづいていました。

またディレクションに携わっていると、リリース後のゲームがどのように展開して、どうやってプレイヤーが楽しむのか、ディレクターはある程度イメージできており、プロデューサーとは少し違った目線で状況判断していることも明かされました。

山田倫之氏 | 株式会社カプコン
2001年コーエーテクモゲームスに入社。プログラマからキャリアをスタートし、MMORPGやソーシャルゲームのプランナー、ディレクターを担当。2013年カプコンに入社。スマホアプリのプロデューサー、ディレクターを経て、現在『戦国BASARA バトルパーティー』のディレクターを担当。CEDEC2014~2019、運営委員会プログラムワーキンググループゲームデザイン担当。

テーマその4「ここはしんどい!と思う部分」

今度のテーマは逆にゲームを作る上で大変で苦労する部分について。「楽しい部分以外は、全部ツライです(笑)」と最初に松永氏は笑って話しました。

「孤独」との戦い

孤独感については、ゲームの完成形がディレクターの頭の中にしかない時期や、チームメンバーが増えて規模が大きくなっても、うまくアイデアや企画を共有できないときに感じることがあるようです。

※編集部補足
会話の中に登場する「孤独感」については、イベントの事前インタビューでも深く語っていただきました。以下からご覧ください。

【インタビュー】プロデューサーとの関係値にも変化が!? 現役ディレクター陣に聞く、ゲーム開発現場での本音

ゲームが世の中にリリースされる瞬間まで、開発陣や社内のメンバーに「これって本当に面白いの?」と思われ続けることも、ディレクターが孤独な時期なのかも知れません。

特にマルチプレイ搭載のゲームなどでは、プレイヤーの遊び方について一部のコアメンバーだけが想像できている状況が多く、遊び方の正解や面白さをハッキリと定義するのは難しいようです。

ただ松永氏がプランナーの時代には、周囲のメンバーが「このゲームって面白い?」と疑問に思っていても、全くツラくなかったのは、自身がディレクターという責任者(最終的に判断する人間)ではなかったためではないか、と話しました。

そしてこれまでの要素を総合して「ディレクターはタフで、最後まで生き残っていることが大切」だと共通の答えが出ていたのも印象的でした。

テーマその5「ディレクターの後進育成について」

次のテーマは、社内でのディレクターの育成とキャリア形成について。

ディレクターの定義については「これをやれば必ずディレクターになれる」と判断できる確固たる指標がないため、研修制度などもあまり導入されていないのが現状のようです。

また、いきなりプロジェクト内にディレクターとして業務することは難しいので、チームの中でどのような関わり方をするのか、現場の他の職種の人とのコミュニケーションの仕方によって、成長度合いは変わっていくようです。

ディレクターになりうる適性は「自分の意見はAですが、現在のプレイヤーはBだと感じている」といった複数方向の目線で考え、提案できるような人が向いているのかもしれないことも語られました。

また、猪突猛進型、バランス重視型、多角的な視点を持っているなど、メンバーの得意領域や能力、適性に合わせた役割分担、チームアップやディレクターのサポートが重要だと思われます。

さらに開発全般において、疑問を持つ、興味を常に持つ、好奇心旺盛といった姿勢は今後ディレクターにとって重要な素養になるようです。

テーマその6「これからのディレクターの戦い方」

これまでのディスカッションを踏まえ、最後のテーマとして今後のディレクターの戦い方や、将来必要とされるディレクター像などについて話し合いました。

現在のゲームサービスは、プレイヤーとの距離が昔より近くなり、自分たちが作ったゲームの魅力をどうやって届けるのか、収益を上げ方も含めて、プロデューサーだけでなく、総合的にディレクターが考えるべき責任の領域が大きくなっています。

そこに関して「一人で全部を対応するのは到底無理なので、信頼できるメンバーに自分の不得意な部分を任せて、各個人が責任を負えるような環境でゲームを完成させることが重要です」と松永氏は述べました。

これまで小規模のプロジェクトでの開発では、ソフトウェアやプログラム、デザインの知識が必要でしたが、現在のディレクターには「勝つ」ための要素に集中することが今後必要となるようです。

また、現在DeNAでマネージャーとして働いている山浦が当日来場者として会場に来ており、過去に松永氏と一緒に『チェインクロニクル』を開発していた時、α版の社内審査会の時は、実はサーバとまったく疎通していなかったというのを、サービスイン後に明かされて驚いた、というエピソードが紹介されました。

当時、社内にサーバ開発経験者が少なく、松永氏も実装が難航していたのは危惧していて、審査会の際にサーバが動いていないと、プロジェクト中止もありうると不安だったものの、現場を信じて任せていたら、実は山浦を含めたメンバーが、まるでサーバを介して動いているように見せかけて乗り切って、助けてくれていたことも説明されました。

この出来事にもあるように、ディレクターが何もわからないことを恥じずに、任せられるところは任せて、自分の限界をチームの限界にしてしまわないように、価値を作り上げるのがディレクターの手腕を発揮できる部分であり、醍醐味でもあると松永氏は述べました。

大切なのは、柔軟性

変に自分にこだわりすぎず、他人のセンスや意見を受け入れる姿勢、謙虚さを持つことも今後重要になると山田氏は述べています。その人の表面的な意見だけでなく、その裏側に隠された言葉、自分では理解できない要素を汲み取って形にできるディレクターが、今後必要になると予測できます。

これまで長くディレクターを続けてきても「完璧にディレクターとしてこなせた」と自負できることは全然なかったと山田氏は明かし、「今回うまくできなかった部分を次のチャレンジに活かすなど、自分なりに勉強する、そしてディレクターになることがゴールだと思っていない人が、今後は生き残るのかもしれません」と述べました。

さらに、松永氏が手がけた書籍 『チェインクロニクルから学ぶスマートフォンRPGのつくり方』 では、ディレクターの手法論だけでなく、開発に関わる話題が赤裸々に書かれており、ディレクターのことを深く知る機会になれば、ゲーム業界全体の底上げになると期待していると話していました。

そして最後に、ディレクター同士で情報交換できるイベントは本当に少なく、お互いのディレクターとしての手法などをもっと共有したいことを話し、実は「ディレクターは孤独じゃない!」とのメッセージで座談会は幕を閉じました。

話題のデザート

今回は、渋谷エリアに新たにオープンしたばかりの「渋谷スクランブルスクエア」の人気スイーツ店(毎日すごい行列!)で話題の、エシレバターをふんだんに使ったサブレサンドをご用意。

取材・文・撮影:細谷亮介

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