イベント

2019.11.21

【CEDEC2019】「ゲーム開発者とゲームメディアの理想の関係とは?」セッションレポート

  • Facebookでシェア
  • Twitterでツイート
  • はてなブックマークでブクマする!
  • LINEで送る
  • follow us in feedly
  • Facebookでシェア
  • Twitterでツイート
  • はてなブックマークでブクマする!
  • LINEで送る
  • follow us in feedly

2019年9月4日~6日の期間、パシフィコ横浜において、ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2019」が開催されました。

本記事では、9月4日に行われた「ゲーム開発者とゲームメディアの理想の関係とは?」において、DeNAのゲーム事業部を率いる佐々木悠と、2019年7月より、まったく新しいメディアの形を模索して完全独立系のメディアとして再スタートした「電ファミニコゲーマー」編集長のTAITAIこと平信一氏によるセッションの内容を、一部抜粋してレポートします。

ゲームメディアの変遷

セッション冒頭で、株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム・エンターテインメント事業本部 ゲーム事業部 事業部長の佐々木悠と、株式会社マレ 代表取締役社長の平信一氏より簡単な自己紹介と、自社での担当業務などが説明され、これまでのゲームメディアの変遷についてディスカッションが開始されました。

まず、2014年度のデータを基に、ゲーム雑誌とWebメディアについて部数やアクセス面からグラフ化した資料で現状を把握しました。

1995年頃はファミ通などゲーム雑誌が最盛期を迎えていましたが、雑誌売上が減少する中、2000年頃からWebゲームメディアが登場、2010年頃にはWebゲームメディア数も増え、攻略サイトやまとめブログなど、新興勢力が急激に台頭してきたことが読み取れます。

市場・ビジネス面から俯瞰すると、年々ゲーム雑誌の売上は下がる一方ですが、Webゲームメディアの収益は上がっています。平氏は「市場の規模がダウンサイジングしており、このままではゲームメディアの未来が危ない」と感じたため、これまでにない新しい取り組みを考えたと話しています。

また、ブラウザ型ソーシャルゲームが流行した時期には、いわゆるアイテムコードのような「おまけ」を付けて販売する冊子が、コンビニなどで飛ぶように売れていたことを思い出したと、佐々木は述べました。

続いて、攻略本の売上および攻略サイトのアクセス数をグラフ化しました。2000年頃からインターネットで個人的に攻略Wikiなどを作成して公開する人が増加、さらにアフィリエイト業者が介入して組織的に構築した攻略専門サイトが登場しはじめ、出版社はビジネスチェンジを迫られている状況でした。

佐々木は、モバイルゲームを専門的に開発してきており、攻略情報はネットで取得する世代であり、以前は時代に逆行してモノとして手元に残る攻略本のようなアイテムを作ろう、という動きが当時は多少あったことを明かしました。

リアルに対する接地面を作るため、ネットだけで完結していた時期に比べ、最近ではゲームのオフラインイベントなどを積極的に開催する動きも増えています。

さらに、あらゆるサイトがPCからスマートフォン対応に移行し始めており、広告の運用手法も変わるため、広告収益のみで運営しているサイトは現状かなり苦しく、Webメディアの危機と言えます。

過去にDeNAでは、自社で攻略サイトを制作・運営する取り組みをしてみたところ、とても効率が悪く、数年で中止となったことを佐々木は話しました。自社で攻略に使えるデータをすべて持っているのに、業者サイトに勝てない難しさがあることは確かなようです。

特にオフィシャルで攻略サイトを運営するには、工数や労力、使用した予算に対して効果が見合わず、プレイヤーにとっては、情報さえ早く、正しいものであれば、公式でも業者でもどちらでも構わないカルチャーだと認識できたとのことです。

昨今、スマートフォン向けゲームのシステムが複雑化していく中で、開発側から提供する一時的な攻略情報は「ゲームを売るための手段」として見られてしまいがちで、自身で攻略する楽しみなど、コア化が進めば進むほどその傾向は強くなると考えられます。

ネットの発達が何を変えたのか?

続いては、アクセス計測ツールを利用した2014年度の、商業ゲームメディア、ゲーム雑誌、攻略Wikiなどゲームに関連するメディアについて、発行部数やPV数に基づいた勢力図が発表されました。現在は国内ではTwitterなどのSNS運用が、かなり台頭していると思われると佐々木は話しています。

また、現在のゲーム実況に関してはYouTubeやMirrativ、Twitchなどにほとんどが移行しており、特に最近のゲーマーには動画配信が必須となっていると、平氏は述べました。

開発者とメディアの理想の関係

ここからは、現代に合わせたゲーム開発者とゲームメディアの理想の関係における、ゲームをプロモーションするためのメディア活用方法の変化などについて、フリーセッションが披露されました。

これまでは、ゲームメディアや雑誌が「ゲームを売るため」の媒体としての強い力を持っていましたが、時代や環境の変化によって、もはや現在ではプライオリティの高い媒体ではなくなっており、役割やミッションの在り方も変化しています。

開発側も、メディアに記事を書いてもらう、プレイ動画で解説をしてもらう、など違った手段でプロモーションを依頼することもありますが、大きな違いは「きちんと伝わりやすく編集されていること」「今思ったこの瞬間の気持を伝える」というどちらの手段にも価値を感じ、どうしても編集して伝えたいメッセージがあるときは、ゲームメディアに頼ることがベストに近い方法だと佐々木は話しています。

現在ではゲームメディアの役割や棲み分けも変化しており、「なぜこのゲームが好きなのか?」「ゲームのこの部分が良い」ことを言語化する、その部分をメディアがインタビューなどでシェアできれば、伝えたい情報をプレイヤーが捉えて反応するところまで含めて、メディアの役割になり得ると言えるようです。

佐々木が特に最近では、作り手の誠意や想い、どんな感情を持っているか、など注目されていることを感じており、開発者の発信が増えてきて、担当者がどんな人格を持ち、どのようなパーソナリティを発信するのかを考えることが重要だと話しました。

その手段として、SNS以外のインタビューなどで引き出させるもの、何を使って何を伝えるのかははっきりと開発側が考える必要がありそうです。特別なタイミングでは、メディア側にインタビューしてもらった記事を発信しないと、情報に偏りが出てしまいます。

一方で自社で完結する情報発信は、陽動的な印象をプレイヤーに与えてしまうことも多分にあるので、第三者が介入して良い質問や厳しい質問を含めた記事を利用することも必要となると、平氏は指摘しました。

ゲームを売るため以外の情報発信が、メディアの価値のひとつとなっていきますが、クリエイターが希望した時期や、ゲーム発売やリリースのタイミング以外のプロモーションでの情報発信を、ゲーム会社側も意識してすり合わせることが必要です。

中長期的な収益、プレイヤーとの関係性、エンゲージメントの部分に対するメディアでの発信の仕方について、KPI・KGIを計測するのはとても難しく、コミュニケーションの効果はすぐに結果として見えません。

数字として見えづらい部分に対して、開発者側が意思を持って取り組むことが重要で、投資判断も必要になります。

Webの世界では数値の換算は当然で、記事を掲載後のPV数や、実際のDL数などがKPIになりがちで、プレイヤーに広める、共感を得るようなインタビュー記事などの効果も、KPIとして計測しにくいのが現状です。

佐々木の過去の失敗事例として、あるタイトルの動画を制作したところ、約400万回再生されたが、実際のゲームDL数は約100人程度だったとのこと。蓋を開けてみると、ゲームではなく動画のファンが大多数を占めていたことが分かったそうです。

もちろん熱量を伝える手段として動画は重要ですが、プロモーションとして届ける目的地のプレイヤーが何を求めているかを正しく理解しないと、どれだけ投資しても効果は出ないことを体感したとのことです。

本当にゲームが好きなプレイヤーに対しては、メディアが発信する強い力を利用し、開発者が思っている気持ちを素直に届ける場合には、個人的に発信したほうが伝わる場合もあるので、開発側も方法を考え、選んでいくべきだと佐々木は述べています。

会場からの質問

参加者に向けて、現在悩んでいることを質疑応答形式で聞き、両者がそれぞれ回答しました。

Q:自社でIPタイトルについてTwitterで拡散をしているんですが、広告宣伝費はほとんどなく、IPの知名度も低く、現在Twitterのフォロワーが1,000人ほど、あと2ヶ月ほどで1万人にしたいのですが、どのようにすればよろしいでしょうか?

平氏:電ファミニコゲーマーでは、約1年ほどTwitterのフォロワーが伸びませんでした。良い記事は掲載されているのになぜだろうと悩んでいました。そこで学んだのは、Twitterに限らずWebの世界では、テクニカルにお客さんの背中を押すことが重要になっています。

また、他社のTwitterの取り組みの中で、フォロー&リツートでプレゼントする企画も増えていますが、単純にフォローさせるために、賞品など直接的な一手を何かしらの理由を付けて実施しています。

YouTuberとのコラボは、お互いのチャンネル登録者を交換するようなイメージの取り組みなんですね。コメントしてくれた人の中から抽選でプレゼント、番組に出演するからフォローしてね、みたいなテクニカルでフォローせざるを得ないような一手を考えると良いと思います。

佐々木:短期間で直接的にフォロワーを伸ばせれば、宣伝効果も高くなると思いますが、併せてTwitterの価値を含めて、基本的なエンゲージメントを伸ばすことも考えたほうが良いですね。

Q:プロモーションやマーケティングのコンサルや広告代理店に相談することはありますか?

平氏:僕の立場だと、広告代理店側から「どういうイベントや取り組みをすれば面白いですか?」と相談を受けることが多いですね(笑)。

佐々木:マーケティングのコンサルタントや、代理店にお願いすると、ほとんどが過去のタイトルで使用済みのパッケージ化されたアイデアが多いので、開発側が意識しなければいけないのは、これまでにない新しい手法を生み出すことですね。

また、費用対効果を含めて、(代理店などに)任せる部分、自分たちでアイデアを出して実行する部分を見極めるのが大事だと思っています。

日本モバイルゲーム産業史を制作中

そして最後に、本セッションの大きな目的とも言える、DeNA特別協賛で電ファミニコゲーマーと作る「日本モバイルゲーム産業史」の情報が公開されました。

電ファミニコゲーマーでは、平氏が率いる株式会社マレに運営が移管後、メディアとして企業協賛といった新しい試みをしています。

協賛第一社目としてDeNAが参画した理由として、まだ歴史が浅く、高速で成長したモバイルゲーム領域について、どのような変遷があり、クリエイターがどんな想いで関わっていたのかなど、これまで語られたことも少ないため、「日本モバイルゲーム産業史」を制作することを決めたとのことです。

平氏によると、「日本モバイルゲーム産業史」は約1年ほどかけて製作予定で、インタビューやコラム記事など展開予定だが、モバイルゲーム業界で過去に何が起こったのかを整理した年表をまず最初に作っていることが明かされました。

これまでどのようなことが起きたのかを当事者に連絡して、情報を持ち寄ってもらう声がけをしている最中とのことです。

取材・文・撮影:細谷亮介

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterアカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!