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2019.11.15

【CEDEC2019】「自由に移動できるVRゲームにおけるプレイヤーの誘導、こうやってみました」セッションレポート

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2019年9月4日~6日の期間、パシフィコ横浜において、ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2019」が開催されました。

本記事では、DeNAとあまた株式会社が研究開発している、謎解きアドベンチャーVRゲーム『VoxEl(ボクセル)』を実例として、VR空間内を自由に移動できるタイプのゲームにおいて、いかにプレイヤーの行動を制御しゴールまで導くかという課題を、どのように解決したかを解説する、ショートセッションの内容を一部抜粋してレポートします。

登壇者は、株式会社ディー・エヌ・エー ゲーム・エンターテインメント事業本部 ゲームデザイナーの永田峰弘、あまた株式会社 代表取締役社長・プロデューサー・ディレクターの高橋宏典氏となります。

『VoxEl(ボクセル)』とは

永田:『VoxEl(ボクセル)』は、ハイエンドVRの研究開発を目的としたタイトルとして着手し、過去に「東京ゲームショウ2018」や「LAVAL VIRTUAL 2018」などでプレイアブル出展、開発の中心メンバー10人が約5ヶ月を要してVIVE向けに開発しました。

ゲーム内容は、謎の少女「エル」と共に冒険するVRゲームで、フィールドのオブジェクトを使用したギミックを解きながらステージを進める「謎解き要素」と、そのギミックを利用して終盤に登場する巨大な敵と戦う「バトル要素」を融合させた作品になります。

VRゲーム『VoxEl』開発メンバーが語る技術的な試行錯誤

VRタイトルに必要なもの

永田:VRを利用した作品で必要なのは、その世界に「存在している」という実在感です。VRの世界に入り込んで楽しむためには必須の要素であり、その実在感を得られないものは、据え置き機のようにモニターで遊ぶ体験と大差がありません。

そして、実在感を得るために必要なのは「納得感」です。なぜプレイヤーはこの世界にいるのか、ビジュアルやサウンドはどんな理由で構築されているのか、表現がリアルである必要はなく、プレイヤーに納得してもらうことが重要になります。

DeNA 永田峰弘(左)・あまた株式会社 高橋宏典氏(右)

『VoxEl(ボクセル)』の遊び方

永田:プレイヤーはVIVEコントローラを、ワンドと呼ばれるアイテムとしてゲーム内で持つことで行動できます。移動はなるべくVR酔いをしないように、ワープ移動を採用していおり、VIVEではルームスケールで空間内を歩くことが可能なため、その機能も有効活用しています。

永田:ワンド(コントローラ)のトラックパッドを触れたまま、地面に向けるとサークルが出現し、その状態でトラックパッドを押し込むと、サークルにワープ可能です。もちろん操作によりワープ先の角度を変えることも可能です。

また、ステージに設置されているエネルギーの塊に向けてトリガーを引くと、エネルギーを抽出、再度トリガーを引くとストックしたエネルギーの発射が可能です。

永田:動かせるオブジェクトに関しては、物体に向けてトリガーを引くと、念力のように物体を動かすことが可能です。

プレイヤーへの情報提示と誘導

ゲーム開始時の情報制限

永田:ゲームを始めた際には、納得感を与えるために、プレイヤーが何者なのか、何をすればいいのかを理解してもらう必要があります。

ですが、プレイヤーを完全に自由な状態にしてしまうと、迷いを与え、余計な動作をしてしまうため、見てもらいたくない部分まで見られてしまう、という課題が発生します。

高橋氏:『VoxEl(ボクセル)』では、ゲームスタート時は真っ暗な通路のような場所に閉じ込め、少し先に光がもれている扉が見えるデザインにしています。

高橋氏:このように、情報を大きく制限することで見るべきポイントを明確にしています。その後に、扉の外からガイド役でもある少女エルから声がかかり、移動方法のレクチャーを受けるフローになっています。

チュートリアルを兼ねた初期誘導

永田:ここからは「世界観のチュートリアル」と「操作に関するチュートリアル」に分けて説明していきます。

『VoxEl(ボクセル)』は、短時間で完結するプレイアブルタイトルであり、冒頭でおおよその説明が入ります。この部分がないと、一体何をするゲームなのか理解できないまま、プレイすることになってしまいます。

家で長時間じっくりプレイをするタイトルでは、このような早急な説明は必要ありません。まずはどのようなタイトルで、どの程度のプレイ時間を必要とするのかを設計することが重要です。

ゲーム冒頭で暗い部屋から出ると、エルから「この世界について」「プレイヤーがここに存在する理由」「プレイヤーの現在の状態」など、簡単な説明が開始されます。

この演出により、ゲームシステムと世界観の融合を実行し、プレイヤー自身がVRの世界に来たことを実感させます。

高橋氏:VRにおいて、触感が得られない点は大きな問題になりますが、それを逆手に取って、プレイヤーは実体を持たずに、実際に触ることができるのは、ワンド(コントローラ)だけに限定しています。

高橋氏:その後の「不完全な召喚になった」と世界観側による補足と、エルによるキャラクター表現で補っています。

長時間一緒にゲーム内で旅をするゲームデザインでは、人間型のキャラクターを実装することは非常にコストも高いですが、その価値は大いにあると考えられます。

永田:続いて、エルから基本操作とゲームルールの説明がされますが、場所を比較的狭い空間にすることで、情報を制限しています。

永田:ゲーム内では序盤で「ゲームの操作方法」「どうやって進むのか」「何を見ればいいのか」についてレクチャーされます。

VR空間内にはデザインしたオブジェクトを自由に配置できますが、置きすぎるとプレイヤーが何をすればオブジェクトが動くのか、判断に迷ってしまいます。

そのため、この画面で印象的なオブジェクトを見せることで「この系統のデザインのモノを見て触れば次に進める」という感覚を持たせ、謎解き要素に集中できるようにしています。ここでも、テキストを使用せず、エルのセリフのみで説明、進行していきます。

謎解きステージでの情報提示

永田:本作では、進行方向について、基本的に「前を向いていれば理解できる」デザインにしています。VRでは360度自由に視点を変えることができるため、ゲームに関係する情報をさまざまな方向に置いてしまうと、プレイヤーは総当たり戦のようなプレイをしてしまう恐れがあります。

永田:それを回避するために、基本的に前進するような構造設計にしており、謎解きに必要な情報はすべて前方(進行方向)に置いてあります。実は、ゲーム内で360度の世界が広がっていても、VRに慣れていないプレイヤーは、ほとんど前方向しか見ない傾向があるんです。

分かりにくい場所にあるオブジェクトに対して、徐々に誘導して発見する体験をさせることも可能ですが、その場合にはきちんとした導線の設計が必要となります。

高橋氏:『VoxEl(ボクセル)』のレベルデザインについては、エリアを小分けにして、縦シューティングゲームのように奥に進むような構成が基本となっています。

高橋氏:エリアをまたぐたびにチェックポイントを設置し、途中で向きがわからなくなったり、エリアが変わったときに方向をリセットするようにしています。

本作では、最終ステージにて巨大なボスキャラクターが出現し、これまで駆使したギミックを使って戦いますが、このタイミングでは進行方向が逆になるので、進む方向と戻る方向を明確に認識できるようにしています。

キャラクターによる誘導

永田:現実と同様にVR空間内においても、単純に動いている物体よりも、コミュニケーションを取ろうとする物体に対して、人間は強い反応を見せます。

本作ではエルのセリフやモーションによって、「次に何を見ればいいか、何をするべきか」という情報を与えて、プレイヤーを導いています。

先に述べたとおり、VR空間内で成立する人間型のキャラクターの制作はコストが高いのですが、苦労に見合うほどの価値があるので、ぜひ挑戦してほしいと思います。

もちろん、人間型ではなく、シンプルなデザインのロボットのようなキャラクターでも、コミュニケーションを取る意思のある存在であれば、十分代用可能だと考えられます。

失敗例としては、とある場所に落ちてきた物体に対して、エルが「どかして」と話すのですが、その会話の際にエルの顔を別の方向に向けさせてしまい、かなりの人がそこで迷ってつまづいてしまったことです。

永田:視線誘導のギミックはVRタイトルでは良く採用されますが、本作では自由移動が可能なので、視線誘導の難易度が上がっています。そこで、要所ではガイドのキャラクターを動かしてプレイヤーの視線をコントロールしています。

もちろん、音による視線誘導もしていますが、ゲームのリテラシーが高くない人、ゲームに慣れていない人には、現実の音ほどの効果がないので、明確にやや長めに音を鳴らすことを意識した方が良いと言えます。

特にゲームショウなどの屋外イベント会場では騒音も大きく、それによって視覚情報がより重視されてしまう恐れがあり、サウンド設計時にはプレイする環境を考慮することも重要だと考えられます。

実在感を上げるための演出

高橋氏:VR空間において、キャラクターがプレイヤーの方向を向く、動いて話しかけてくる仕組みは、エルというキャラクターを使って表現しましたが、試遊した人のフィードバックを含めて、非常に大きな効果を上げた、とてもエモい経験でした。

高橋氏:これまでセッション内で伝えてきた通り、人間型のキャラクターをプログラムやモーションを開発して制御することは非常にコストも高く、チャレンジしづらい領域ではあります。ただ、エルと協力して謎を解いたり、敵と戦ったりする体験は、非常に魅力的でトライする価値がある演出だと感じました。

私は過去に、キャラクターとお話を楽しむPS対応タイトルの開発に携わっており、仮想キャラクターとコミュニケーション可能なゲームデザインをしていました。

VRの特徴として、自分がそのままゲーム空間に存在するような体験ができることだと考えており、キャラクターとのコミュニケーションにより、自分の心にもたらす変容のようなものが、VRの世界でも効果があると感じています。

永田:それでは最後に、サウンド開発に関する話をしたいと思います。VR空間では視覚情報の比重が大きくなりますが、サウンドの中でも特に「環境を表現する音」は非常に効果が高いと考えられます。

特に、ボイスやSEが鳴ることによって発生する「残響音」については、空間の中で鳴る、しゃべっている音声が残響するイメージを考慮して作ると、そこにいる雰囲気が強く感じられるので、コストも少なく、演出としては非常に効果が高くなります。

永田:本作のサウンドに関しては、研究開発の観点から、ミドルウェアを使用せずに、空間ごとにボイスの残響音を全て自力で計算して、エクスポートしましたが、その作業はかなり大変でした。

今回のセッションは以上となります。もし質問やVRタイトルの相談があれば、ぜひ、個別にご連絡ください!

取材・文・撮影:細谷亮介

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

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