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2019.11.14

【CEDEC2019】「サービス終了寸前だったタイトルが、CMを使わずにDAUを増やして九死に一生を得たSNSプロモーション術」セッションレポート

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2019年9月4日~6日の期間、パシフィコ横浜において、ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2019」が開催されました。

本記事では、9月6日に行われた「サービス終了寸前だったタイトルが、CMを使わずにDAUを増やして九死に一生を得たSNSプロモーション術」について、『天華百剣 -斬-』プロデューサーのナカムラケンタロウが登壇したセッションの内容を、一部抜粋してレポートします。

冒頭、ナカムラは今回のセッションの重要なポイントとして「プランナーとしてTwitterのプロモーション効果を意識しつつ、ゲームについて深く考えることが重要」だと述べ、マーケティングに携わる参加者には「プランナーと連携すれば、プロモーション効果をより高めることができる」といった視点で見てもらいたい、と説明しました。

『天華百剣 -斬-』とは

『天華百剣 -斬-』は、乙女の姿を持って生まれてきた刀剣「巫剣(みつるぎ)」 たちとともに、世を乱す邪悪な敵との戦いに挑む、スマートフォン向けベルトスクロールアクションゲームです。

本作はKADOKAWA社とDeNAの協業案件であり、ゲームだけでなく、コミカライズやノベライズ、キャラクターソングなど、各種メディア展開を続けているタイトルになります。

登壇者のナカムラは、2013年に株式会社DeNA Games Osakaに入社し、プランナーとして運用中および新規タイトルを担当。2017年の11月に『天華百剣 -斬-』にディレクターとして参加し、タイトルの一周年を迎えた2018年4月にプロデューサーに就任しました。

サービス終了寸前まで追い込まれた歴史

『天華百剣 -斬-』プロデューサー ナカムラケンタロウ

『天華百剣 -斬-』は2017年4月20日にリリース後、順調に運営がスタートしたものの、あるトラブルが原因となり、ユーザー数が減った経緯があります。

そんな低迷期の中、ナカムラは2017年11月に『天華百剣 -斬-』の開発チームに参加。2018年1月の半ばにプロデューサー交代の打診を受けました。

その直後の2〜3月が最も低迷した時期となり、会社から「2018年8月末の状況でサービス終了かどうかのジャッジをする」という通告も受けたとのことです。

下図は2017年4月~2018年3月の1年間の月間のアクティブユーザー数を、ざっくりとイメージしたグラフとなります。

あと数ヶ月後にはサービス終了の可能性がある状況で、ナカムラは「絶対にタイトルを終わらせたくない!」「そのためにどうすればいいか?」と自問自答していたそうです。

もともと本作のリリース時から一人のプレイヤーとして遊んでおり、個人的に思い入れが強いタイトルだったこともあって、彼のプロデューサー生活は「タイトルをサービス終了させないために、どうすればいいか?」を、具体的かつ真剣に考えることからスタートしました。

そんな彼が、絶対にサービス終了させないためにと心に決めたことは「予算が限られている中で必ず最大以上の成果を出す」こと。そして「最大以上の成果を出すために、できることは何でもやる!」ことだったそうです。そのような強い想いで様々なチャレンジを行っていきました。

Twitterのプロモーション効果に注目

『天華百剣 -斬-』の存在を、たくさんの人に知ってもらうためのプロモーション手法として、たとえば「テレビCM」はすぐに頭に思い浮かびますが、その実施にはかなりの費用が必要になります。また、電車の車体に広告を掲出するラッピング広告や、中吊り広告ジャック等もインパクトは強いのですが、こちらも一定の費用が必要になります。

そこでナカムラは大きな費用をかけてのプロモーションが不可能な中、「自分たちが届けたいと考えるターゲット層に、ピンポイントサーチで情報が届く」ことを目標設定しました。その理想の状態を実現させるためのツールとして「Twitter」がベターな選択肢だったと語っています。

Twitterの特徴

Twitterには「匿名性の高さ」と「他のSNSに比べて一人で複数アカウントを使い分けやすい」という2点の大きな特徴があります。ゲームやアニメなどのいわゆる「オタク系コンテンツ」と相性が良いため、「趣味嗜好が似た人同士が繋がっていることが多い」という状況がTwitterの世界では発生しています。

「自分が好きなゲームの話題をツイートする専用アカウントをつくり、同じゲームが好きな人をたくさんフォローする」といった使い方をしている人は珍しくありません。

そのように趣味嗜好が似た人たち同士で繋がっているため、「情報の伝播のしやすさ」と「情報の伝播の速さ」が、Twitterをプロモーションで使う際の大きなメリットになっており、それを最大利用することを考えたそうです。

たとえば、Aさんが「天華百剣の新情報」についてツイートすると、その新情報は趣味嗜好が同じフォロワーのBさんに伝わります。さらにBさんがその情報についてツイートやRTすることで、その情報はより広く、多くの人に伝播していきます。

伝播していく先々で、仮に『天華百剣 -斬-』についてまだ存在を知らない人がいた場合、その人はTwitterを通して本作を初めて知ることになります。このようにして情報が拡散していくことが「Twitterのプロモーション効果」であるとナカムラは説明しました。

Twitterを通して情報を広げるプロモーション手法と聞くと「バズる」「バズらせる」といった用語をイメージすることが多いかもしれませんが、ナカムラが目指したものは実はそうではなかったようです。

もちろん『天華百剣 -斬-』に関連する情報がバズり、これまで本作に興味がなかった層まで伝わることは、プロモーションとしては成功だと考えられます。

ただし、Twitterでバズった情報は、一定時間が経てばすぐに収束するため、中長期的にはほとんど効果がないと説明しました。

ナカムラが実現したかったのは「同時多発的にさまざまな情報がツイートされ続ける」「同時多発的に何かしらの新しい情報が発信され続ける」といった状況でした。これは「バズる」こととは、微妙に概念が違うと捉えることができます。

3つの法則

なぜ「同時多発的にさまざまな情報がツイートされ続ける」状態を目指したか、その理由は「3つの法則」を発動させられるから、と語りました。

まず上図1.のように、Twitterでつながっている人が注目している情報は、なぜか自分も気になってしまう法則です。

これは自分でCMを見て気になるより、知人が「このゲーム面白いよ」と発言しているのを見て、「あの人が言うなら、きっと面白いはず」と自然に気になってしまう現象です。

また、気になっている情報については2.「最近、○○をよく見る気がする」法則が発動すると考えられます。

ナカムラの過去の話で、母親が「緑色の車を買おうと思っている」と言った数日後に「世の中には緑色の車がたくさん走っているから、やっぱり別の色にしたい」と急に意見を変えたことがあったそうです。

そのような状況になったのは「緑色の車が欲しい」と考えていると、自然とそれに注目してしまい「世間には意外と緑色の車が多い」と感じてしまったと考えられます。

それと似たように、無意識に注目する情報は目につきやすく、記憶に残りやすい傾向があるようです。その状態をTwitter上で作りたいと、ナカムラは思っていたことを明かしました。

つまり、同時多発的に『天華百剣 -斬-』のさまざまな情報がツイートされ続けることで、今このゲームが盛り上がっている、という空気を作る部分が彼が目指したポイントになります。

プレイヤーと運営間のコミュニケーション

そしてプロモーション効果を高めるために、「プレイヤーと運営間のコミュニケーションについて、意識を変えること」をナカムラは挙ました。

ゲームプレイヤーと運営のコミュニケーション方法には、ゲーム内お知らせ、動画チャンネル、生放送やアンケート、人気投票、プロデューサーレターなど、さまざまな種類が存在します。

プレイヤーと運営の間での、何かしらのインタラクティブな要素は、全て広義にコミュニケーションだと捉えてもいいのではとナカムラは考えています。

直接的な発信はゲーム側より実施することが多く、プレイヤーからの発信手段は、Twitterでつぶやく、掲示板に書き込む、YouTubeに自分が撮ったプレイ動画をアップするなど、さまざまな手段が存在しています。

また、双方向のやりとりとして、リアルイベントで開発陣と直接会話したり、ゲーム内でアンケートを取り、意見を収集することもあります。

ゲーム内に実装している全てのコンテンツは、プレイヤーに対して何かしらの情報や運営のスタンス、メッセージを発信しています。それらをエゴサーチで受信することによって、間接的なコミュニケーションが成立するとナカムラは考えています。

つまり、ゲームに実装している全ての機能は、プレイヤーに対する広義のコミュニケーションであると認識することで、Twitterのプロモーション効果をより高めることが可能になるとのことです。

Twitterのプロモーション効果を高める3つの方法

その1:人格を意識して情報を開示

続いてプロモーション効果をさらに高めるために、プレイヤーが感じているゲーム全体の「人格」を意識しつつ、さらに運営側は可能な限りの情報を、さまざまな手段で「開示」していくことが重要だということが説明されました。

『天華百剣 -斬-』では、公式も含めてTwitterでは「天華百剣くんは~」「天華百剣ちゃんが~」のような呼ばれ方をすることが多く、ゲーム全体に人格があるかのように感じる、とナカムラは話しました。

そこに存在する「ゲームの人格」を意識することが非常に重要だと考え、運営側として、より良い人格を持っている状態を作るため、下図の2点を目指しました。

プロデューサーレター
2018年4月に1回目のプロデューサーレターを公開。プロデューサー交代の報告や、超低迷期を迎えていた時期、サービス終了の噂などでプレイヤーを不安にさせてしまったことへの謝罪や、今後のスケジュールなどが公開されました。

また、シナリオやボイス関連の制作上の都合の説明や、β版だったマルチバトル機能に寄せられた意見に対する返答などを実施し、それを重ねることでプレイヤーと運営側のコミュニケーションを具体的に進めていったとのことです。

エイプリルフール施策
エイプリルフール施策では、当時プレイヤーから嫌われていた敵キャラを主人公にした、ネタシナリオのイベントが実装されました。

その敵キャラは、主に掲示板の中でスラング的に「金棒先輩」という愛称で呼ばれていたため、ゲーム内でシナリオにそのまま採用してみたとのこと。

さらに、某人気ゲームのパロディを入れ込むことで、「運営はきちんと掲示板やTwitterを見ている」ことを、ゲームへのイベント実装で証明した形になり、それを意識させることで「自分のツイートやレスも運営側が見ている」ことを認識できるように設計したそうです。

 

このような施策の実施で、プレイヤーの声を積極的に取り入れるスタンスの表明に加え、SNSでの発信の意味や価値が高まりました。

その結果、ツイートの活性化にもつながり、Twitterのプロモーション効果を高める方法として、プレイヤーのツイートの意味と価値も高めることができたようです。

その2:ネタを仕込みまくる

さらにプロモーション効果を高める方法として、「ゲーム内にスクショを撮りたくなるポイントを仕込むこと」が挙げられました。

ツイート数が増えないとTwitterは盛り上がらないため、ゲーム内にスクショを撮りたくなるようなポイントを増やすことをまず考えたそうです。そしてスクショを取りたくなるポイントとして、「エモいポイント」と「ツッコミポイント」を2大ポイントとして挙げました。

エモいポイントの事例として、一周年イベントシナリオのエンディングの一幕が挙げられました。ここではシナリオに登場したキャラクター全員が出迎えてくれて、プレイヤー名を呼んで祝ってくれます。このような演出を入れることで、プレイヤーは思わずスクショを撮りたくなり、その中の何割かの人がTwitterなどにアップする効果が期待できます。

結果として、プレイヤーによるスクショの投稿数は大きく増加したと明かされ、「エモいポイント」をシナリオの内容や演出、バトルキャラクターの細かいこだわりなどに反映することは効果的だとナカムラは説明しました。

また、実在した刀剣をモデルにしたキャラクター同士の組み合わせも重要になっているようです、たとえば、伊達家の刀剣同士が絡んでいたり、史実をなぞるような演出やオマージュも、歴史が好きな人、他の歴史ものIPが好きな人には、特に喜ばれていると考えています。

ツッコミポイントの一例としては、普段はしゃべることのない敵キャラクターが、なぜか会話しているネタを設置したことが紹介されました。

たとえば「田舎のヤンキー口調でしゃべる」「普段の3倍くらいの長さの金棒を持っている」などのツッコミどころを用意し、スクショを撮ってプレイヤーにつぶやいてもらうことで、それ自体がツッコミとして成立することを設計しています。

そのようなツッコミポイントを増やすことが、同時にスクショポイントを増やし、さらに投稿数の増加につながっていくとナカムラは考えました。

その3:ゲーム内外の施策を連動

さらにプロモーションの効果を高める3つ目の方法として「ゲーム内外の施策を積極的に連動させる」ことが有効だそうです。

たとえば2018年6月から一か月に渡って開催されたコラボカフェでは、メニューや特典の他に、オリジナルの割り箸袋や紙ナプキンを来場されたお客様に提供しました。するとお客様が「こんな細かいところにまでこだわったグッズ作ってくれて嬉しい」とつぶやいてくれたそうです。

さらに店内ではボイスドラマを流し、実際にゲーム外の施策としてもツイートできるネタを仕込み、盛り上げていったとのことです。

それに加えてゲーム内連動として、実際にコラボしたお店の内装をそのまま再現した背景を作り、ゲーム内アイテムとして配布すると、実際に自分のお気に入りのキャラをセットして、それを撮ってつぶやく人がかなり増加したとのことです。

実際にコラボカフェに訪れた際に「配布された背景と一緒だ!」と、その様子をツイートする人もいたようです。

また、コラボカフェが終了したタイミングで、店内で流したボイスドラマをゲーム内に実装して、誰でも楽しめるようにしました。

それにより「店内で流れたボイスドラマがゲームでも聞けるようになった」「自分の好きなキャラのこの部分が可愛い」「次はこのキャラでボイスドラマ作ってほしい」など、派生したツイートも増え、連動させればさせるほど、ツイート数を増やすことが可能になったようです。

一周年に多くのお祝いツイートが

今まで紹介してきた取り組みの効果を加速したトピックスとして、2018年4月に一周年を迎えた際に、イラストレーターやキャスト、シナリオライターをはじめとする関係者やプレイヤー、ファンから、たくさんのお祝いツイートをもらったことをナカムラは明かしました。

そのおかげで『天華百剣 -斬-』をさらに多くの人に知ってもらえることができ、新たにゲームを始める人もたくさん増えたことが、本当に嬉しかったとナカムラは振り返りました。

結果、無事にタイトル継続が決定

冒頭でも述べられたように、2018年2月から3月が超低迷期、そして4月に一周年を迎えていますが、これまで説明された施策により新規ユーザー数を増やすことができ、8月に無事にタイトル継続が決定しました。

さらに上図の棒グラフが右上がりになっている部分では、2019年3月に実施した劇場版アニメ「魔法少女リリカルなのは Detonation」とのコラボの影響で新規ユーザーがさらに増え、そこから二周年に突入した時期だと読み取れます。

2019年10月より開始したショートアニメのTV放送や、2020年以降に向けての準備もスタートしているということで、継続的にタイトルを続けられる基盤が整いつつあるとナカムラは述べました。

プロデューサーそしてプランナーとして深く考える

ここまで紹介された「Twitterのプロモーション効果を高める方法」の3つの手法の組み合わせでツイート数が増え続け、比例してRT数やいいね数も増加していきました。

それらの相乗効果により、同時多発的にゲームのさまざまな情報がツイートされ続けることで「今、このゲームがアツい!」といった空気感を生み出すことができると考えられます。これがナカムラが考える『天華百剣 -斬-』が目指した状態に近いと言えるでしょう。

最後にナカムラは、

「『天華百剣 -斬-』のような、オリジナルIPのゲームは運営を続けるのが本当に難しく、さらにサービス終了の可能性と常に隣り合わせです。モバイルゲームの運営を任され、それを続けていく責任はかなり重いと感じています。

プランナーの目線で、Twitterのプロモーション効果を意識しながら、ゲームについてあれこれ考えることが重要で、チーム全体が協力して今後もタイトルを盛り上げていきたいと思っています。」

と、プロデューサーとしての自身の思い、実際に行ってきた施策のプロモーション効果など、これまでに得た知見や知識を最大限に生かして、今後も良質なタイトル運営を続けていくことを誓い、セッションを締め括りました。

取材・文・撮影:細谷亮介

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