【DeNAコミュニティテック最前線】ゲーム運営の課題をテクノロジーで解決! データをフル活用するコミュニティマーケティングは新たなステージへ

スマートフォンゲーム運営において、コミュニティマーケティングに取り組み続けてきたDeNAゲーム事業部マーケティング部。これまでさまざまな施策を通じて、コミュニティの形成/拡大を推進してきましたが、SNSを活用したブランディング活動の重要性を強く感じてきたそうです。

そして今回GeNOM編集部では、この領域を推進してきたマーケティング部の鶴川が、分析部やAIシステム部のメンバーとともに、データを活用してコミュニティマーケティングを進化させる取り組みを行なっていることを聞き、開発中のツールや高度な分析手法の詳細、そして今後の取り組みについてインタビューを実施しました。

コミュニティ運営をテクノロジーで進化させる

――まず最初に、鶴川さんが考えるコミュニティマーケティングの「あるべき姿」について教えてください。

鶴川:まず、コミュニティとはさまざまな定義があり、一言で纏めることは難しいですが、私は「同じ価値観/目的を持った人が集まり共感し合う集合体」だと考えています。

その上で、コミュニティマーケティングとは[su_highlight background=”#fcff99″]「プレイヤーと信頼関係を構築し、そのプレイヤーのゲーム愛を醸成しながら事業を拡張していくマーケティング活動」[/su_highlight]だと私は考えています。

この考え方に沿って、オンライン・オフライン問わず、さまざまなコミュニティ施策を各ゲームを通じて提供してきました。

――コミュニティマーケティングで大事にしていることや課題、今後の展開についてはいかがでしょうか?

鶴川:コミュニティマーケティングの施策の精度をより高めるためには「プレイヤーのことを正確に理解する」ことが、とても大切です。プレイヤーがゲームに求めていることを、誤認無く理解することが、より良いUI/UXの提供に繋がっていくと常に考えています。

ですが、プレイヤーの皆さんがゲームをプレイする目的は千差万別で、コミュニティマーケティングの施策を検討する際、プレイヤーの方々のニーズをMECE(モレなくダブりなく)に把握することに、とても時間がかかっていました。その部分に関して、より効果的な運営が実現できる基盤が必要だと感じていたんです。

――コミュニティを可視化していくことで、さらにプレイヤーの満足度を高めていこうと?

鶴川:はい。それを実現するためのツール開発には、専門的な知識が必要です。技術的な面など、マーケティング部内だけでは実現できないと悩んでいた中で、分析部の安達さんに出会ったのが、プロジェクト開始のきっかけです。

これまで私が抱えていた課題を安達さんに伝えると「全部可能だと思います!」と素晴らしい回答をいただき、さっそく要件を具体的に決め始めたのが2019年1月~3月、少しずつですが4月からツールの運用を開始し始めました。

鶴川将志 | マーケティング部ソーシャルメディアブランディングGr
DeNA入社後、ゲームタイトルのマーケティング全般(TVCMやイベントなど含む)の戦略を策定し、関連部署と連携して全体を推進するマーケティングプロデューサーとして従事。2018年4月にコミュニティマーケティンググループ グループマネージャーに就任し、2019年よりソーシャルメディアブランディンググループを立ち上げる。「ゲームプレイヤーの熱量を高める」ことをグループのミッションとし、オンライン/オフラインのコミュニティ施策の戦略立案と推進を行うチームをマネジメントしている。

――鶴川さんから相談を受けて、第一印象で安達さんはどのように感じましたか?

安達:提案された課題は、個人的にとても興味深かったです。コミュニティマーケティングをデータドリブンにして、コスト削減・業務効率化することで、ゲーム事業だけに留まらず、スポーツ事業やソーシャルライブ事業など、全社的に貢献することができます。

また、コミュニティ分析に関しては科学的な面白さもあります。私たちは、家族・学校・仕事から趣味・SNS上まで、さまざまなコミュニティに所属しています。それを抽出・分析・予測することで、我々はなぜコミュニティを形成するのか、などの本質に迫れたらいいな、と思いを巡らせていました。

鶴川:実は4年ほど前から、コミュニティの分析手法に対して、SNSの運用がどのような影響を与えているのか検討していたのですが、難易度が高く、ことごとく頓挫した経緯があります。ですので、このプロジェクト開始で、ようやく突破口が開けたと言えます。

マーケティング、分析、AIの専門家が、独自分析ツールを開発

――では改めて、今回開発に至ったツールの機能について教えてください。

鶴川:コミュニティマーケティングの分析は定量と定性の両面で行っていますが、定量データを取得することが非常に難しく、今までは定性データを軸にした分析を行っていました。しかしプレイヤーのことを、より正確に理解するためには定量データの分析が不可欠です。

だからこそ、この定量/定性データを照らし合わせて、効率良く分析ができる基盤を作りたいと常々考えていました。

詳細はこの後に説明していきますが、本ツールには主に3つの機能があります。

・分析自動化の強化(TwitterAPIを最大限活用しつつ、分析集計の工数を削減)
・コミュニティの可視化(日々変動するコミュニティの動きを可視化する)
・インフルエンサー発掘(影響力があるプレイヤーを発見する)

先程もお話ししたとおり、まずは安達さんに相談し、その後小口さんや田中さんを巻き込んでプロジェクトが進行していきました。具体的には分析自動化の強化は小口さん、コミュニティの可視化は安達さん、インフルエンサー発掘は田中さんに主に担当していただきつつ、全員で積極的に議論しながら開発を進めています。

安達:DeNAの各事業部において、TwitterなどのさまざまなSNS上で施策が行われているので、今回開発したツール、そして採用している分析手法は組織を横断して使えるため、かなり意義のあるものだと思いますね。

田中:それに、機械学習やAIをコミュニティマーケティングに活用している事例はあまり多くないので、この取り組みを通して、新しい市場を切り拓いていきたいですね。

分析自動化の強化

――それではツールの詳細について質問です。まずは、分析ツールの機能のひとつ「分析自動化の強化」に関して、機能紹介や仕組み、活用方法、運用実績、ケーススタディなどを教えてください。

鶴川:Twitterの数値分析を正しく、かつ少ない工数で可視化したいと考えたのが、この機能のはじまりでした。

小口:まずデータを可視化するため、TwitterのデータをGoogleスプレッドシート(以下GSS)でグラフ化、KPIの数値を出せる仕組みを作りました。

DeNAでは内製BIツール「Argus(アーガス)」を使い、ゲームの行動ログなどを用いてデータ分析をしており、それをプロダクトの改善やUX向上のための施策立案に役立てています。このプロジェクトでもArgusで可視化するという選択肢もありましたが、今回はGSSを採用しました。

その理由としては、[su_highlight background=”#fcff99″]データ分析を後続の業務とシームレスに繋げたいという意図があった[/su_highlight]からです。例えば現行の業務だと、Argusで可視化してそのデータをExcelに落とし、さらにExcelでまた集計してグラフにしてスライドに貼る、みたいな業務があったりします。

データを業務に用いるまでのプロセスが長いので、大元のデータベースが更新されたら、アウトプットのスライドまで一気に自動で更新されるような仕組みがあったらなと思っていました。そうすれば、データの集計作業ではなく、データの結果からプロダクトや施策のことを考えることにより時間を充てられると思いました。

DeNAでは、分析用のデータベースとしてGoogleのBigQueryを利用していますが、年々BigQueryを中心としたビッグデータ解析のエコシステムが成熟してきています。今回のGSSも裏側でBigQueryのデータベースと繋がっていて、誰もが見慣れたGSSのインターフェースからビッグデータ解析ができるようになっています。

また、今回のケースでは利用しませんでしたが、BigQuery MLというSQLで機械学習のモデル開発ができる機能もあり、それもGSSのみをインターフェースにして利用できたりします(詳しくはデータエンジニアリングGrのグループマネージャーが登壇したCloud Next Tokyo 2019の発表をご覧ください)。

小口力也 | 分析部データエンジニアリングGr
2017年に新卒で総合電機メーカーに入社し、全社ITの統括部門で社内システムの企画、開発に従事。2018年にDeNA入社後は、分析部データエンジニアリングGrの立ち上げに参加し、データエンジニアとしてアプリゲームのビッグデータ解析基盤の構築に従事。ゲーム内の行動ログをもとにしたデータウェアハウスの設計、開発から、機械学習を用いた高度な分析のシステム構築など、事業の意思決定をデータドリブンで実現するためのインフラ構築に取り組んでいる。

鶴川:このツールはただ数値を表示するだけではなく、その数値をどう使うかも含めて設計したので、集計結果をそのままレポートできるようになっています。

小口:SQLを用いたGSSからBigQueryへ問い合わせも、スケジューリングができるので、データベースが更新されていれば、GSS上のデータも更新されます。

もし、サマリのグラフなどをGoogle Slideのグラフに連携していれば、それも同様に最新の情報にアップデートされます。データベース、GSS、スライドを連携することで、コミュニティマーケティング関連の分析作業を、革新的ともいえるレベルで効率的にしました。

鶴川:小口さんが話してくれたように、使う側のユーザビリティも意識して作ってくれているので、他事業部への展開のしやすさも大きな強みですね。担当者には「ここに日付を入力するだけですよ」と説明するだけですぐに使えるのでマニュアルもいらず、助かっています。

それとは別で、データを元にどういう観点で、どういう示唆を導き出せるかの考え方を纏めた資料を作りました。ツールの価値を最大限引き出すために利用者の分析力を高める取り組みも、同時に行っています。

――ちなみに、どのようなデータが可視化できるようになっているのでしょうか?

小口:GSSで可視化できるのは「毎日のオーガニック(通常投稿)の投稿数」「リツイート数」「期間中に頻出して使用されたハッシュタグ」など、さまざまな指標です。

また、「Google Natural Language API」というGoogleのサービスを利用して、テキストの感情のスコアを定量的に取得しているので、BigQuery上にそれらのデータを保持しておけば、例えば「この施策におけるプレイヤーの反応がポジティブなのか、ネガティブなのか」といった情報などもGSS上で可視化することもできます。

鶴川:Google Natural Language APIを利用した分析結果と、こちらの感覚がほぼ合致しているので、精度は結構高いと感じましたね。

安達:あと、ツールのユーザビリティにはこだわりましたね。作ったものの、使われなくなってしまうツールが多々ある中で、それを防ぐために、鶴川さん側と、施策に繋げる上で必要・不必要な情報については徹底的に議論した覚えがあります。

鶴川:要件に関しては、自分が事前にマーケティングのメンバーからヒアリングして、安達さんたちとディスカッションしました。良い意味で無駄な要素を削ぎ落とせたと思っています。

小口:このツールでは、期間を指定するだけでKPIを可視化できるんですが、比較も可能になっていて「先月の施策に対する反応」と「今月の施策への反応」を比較したいとき、期間を別々に指定することで、どんな違いがあるのかひと目で分かるようになっています。

――誰でも簡単に扱えるようなユーザビリティが整備されているんですね。ちなみに可視化するまでの過程で苦労した点はありますか?

小口:GSSとBigQueryを連携する機能が「Connected Sheets」や「Data Connector」といった比較的新しい機能で、特にConnected Sheetsについては現在β版なので、周囲に実務で導入している人がおらず、またWeb上に知見もたまっていないので、手探りな部分はありました。

――ちなみに鶴川さんとの連携で大変だった点はありますか?

小口:強いて言えば、鶴川さんの推進力が高いので、次々と全社でニーズを引っ張ってきて頂いたところですかね(笑)。それだけ[su_highlight background=”#fcff99″]「ユーザーコミュニティをもっと良く理解したい、それを施策に活かしたい」[/su_highlight]という全社のニーズが高かったのだと思います。

――現在では案件はまだ増えているんですか?

鶴川:いえ、現在は一旦落ち着いていて、実績を生み出すフェーズに移行する段階に入っています。

小口:BIツールでの可視化については、今後[su_highlight background=”#fcff99″]「Looker」の導入が決まっている[/su_highlight]ことが最近のトピックです。

鶴川:Lookerを使用することでツールのユーザビリティがもっと向上しそうですね。

小口:そうですね。LookerにはViz Blocksというダッシュボードのテンプレートを使って、簡単にダッシュボードを作成できる機能があるのですが、社内外の人が活用できるコミュニティ分析のテンプレートを開発することにも、チャレンジしてみたいですね。

5時間の工数が、10分に短縮

――ちなみに小口さんの開発の成果として、かなり工数削減が実現したと聞いたのですが?

安達:そうなんです。世間でデータドリブンやAIといった概念が浸透している中、コミュニティマーケティングの仕事についてヒアリングしたとき、実はマニュアル作業が多いと聞いて驚かされたんです。これはイケてないね、ということで業務効率化を行いました。

鶴川:この効率化に関しては[su_highlight background=”#ffa299″]「5時間かかっていた作業が10分で終わった」[/su_highlight]という、ものすごいインパクトがありましたね。

プレイヤーのことを正確に理解するために、定量/定性データの収集を行い、そこからプレイヤーのインサイトを見つける業務を毎日欠かさず行っています。

特に定性データの収集は、集計結果の品質を高めるためには時間を要していたのですが、小口さんのツールのおかげでかなり短縮することができました。

――このツールと機能が広まれば、全社的に大幅な工数の削減ができるかも知れませんね。

鶴川:今まさに、それに取り組み始めています!

安達:データに対するリテラシーが高くないと気付きづらい面もあるので、この記事のように社内外に発信していくことで、導入を考える人が増えてほしいですね。また、こういった取り組みを通じて関係値を築くことで、高度な分析に対するアイデアのやりとりなどがスムーズに進むと良いですね。

鶴川:確かにルーチンワークがスリム化できたので、新しい企画やアイデアを考える時間に頭を使えるようになると期待しています。

コミュニティの可視化

――それでは次に「コミュニティの可視化」に関して、分析の詳細や活用方法などを教えてください。

安達:はい。まず特定のゲームで盛り上がっている人々の中からコミュニティを抽出して、それらが時系列でどのように拡大・縮小・結合・分裂・消滅していくのかを可視化しています。

また、各コミュニティが「イラストが好き」「ストーリーが好き」「運営について語りたい」など、どういった話題を中心に形成されているのかを調べています。

そこで得た知見を元に、SNS上全体のアクティビティを活性化させるためには、どのコミュニティ同士を繋げればいいのか、また、各コミュニティにどういった内容の施策を行うと反応が良さそうか、といった方向への活用の検討を行なっています。

また、さまざまなゲームコミュニティ間の距離を計測・可視化することで、あるゲームを始めてもらうためには、どの他ゲームに関連するコミュニティにどのようなキャンペーンを行えば良いのか、施策のヒントとなる分析を行なっています。

安達 涼 | 分析部第一Gr
人間の意思決定プロセスの数理モデル化と、その神経基盤を解明する研究に従事し、カリフォルニア工科大学PhD(計算論的神経科学)を取得。2018年にデータアナリストとしてDeNAに入社。機械学習の手法のみならず、行動経済学の知見などを用い、人間のゲーム内外での行動データを包括的に理解することで、ゲームタイトルの運営力・UX向上を目指している。

――特に苦労した点は?

安達:データが全くない状態からスタートしたので、小口さんのチームとデータ収集について連携してデータを用意し、そこから分析まで、ゼロからイチまで行う、というプロセスが大変でした。

でも実際、苦労したという感じはなく、そのプロセスも楽しく感じましたね。人と人とが興味で繋がってコミュニティを形成していく、そのプロセスがデータで確認できるってすごい時代ですよね。

海外では、SNSの会社が研究機関と連携してコミュニティ関連の分析を行なっていたりしますし、日本でも徐々に流行っていくのではと感じています。

――コミュニティを分析して数値で表現する仕組みを教えてください。

安達:コミュニティを抽出するためには、まずユーザーのネットワークを作成する必要がありますが、作成の仕方にもいろいろあり、例えば、フォロー・フォロワーの関係性で組んだり、ツイート・リツイートの関係性で組むこともできます。

この定義次第で分析できることが変わってくる、この曖昧さが難しい部分である一方、クリエイティブな方法を見つけたりできる面白い点でもあります。

日々変動するコミュニティの可視化によって、施策も改善・進化

――鶴川さんはこの機能について、実際に使ってみてどうでしたか?

鶴川:これから本格的に活用するフェーズに入りますが、新発見が多く、こちらの仮説が意外と外れていたことも分かりました。また、その仮説が外れたからこそ新しいアイデアが生まれるきっかけにも繋がっています。

――Twitterのリアルタイム性の高さに関しては、どのような対応ができますか?

安達:今回の分析では、ゲームのコミュニティがどのように拡大縮小しているのか、コミュニティごとに何に興味があるのか、などを抽出・可視化しています。

Twitterは非常にアクティブなSNSなので、ネットワークやコミュニティの変化は激しいと思っていたのですが、コミュニティというレベルでの変化は、割と安定していることがわかりました。

これはもちろん、リリースからの年月、そのゲームタイトルがカジュアル層向けかコア層向けか、でも変わりますが、この観点からのゲーム間比較も面白そうですね。

鶴川:複数のコミュニティがいつの間にか合体して大きくなったり、分裂したり、人間の目では分かりづらい様子が時系列で見えるので、面白いですよね。

あるゲームに関連するコミュニティの時系列遷移の可視化例。
各コミュニティは拡大・縮小・結合などを繰り返している。

――ちなみにコミュニティの動きが見れる画面は、基礎知識がなくてもすぐに理解できるのでしょうか?

安達:さまざまなサイズのコミュニティが週ごとに拡大・結合・消滅して遷移していく様子を可視化しています。

田中:その部分をより見やすく、わかりやすくするのが、まさに自分たちの今後の仕事ですね。

安達:ええ。コミュニティの遷移に加えて、各コミュニティで流行っている話題なども一目でわかるようなダッシュボードの制作も予定しています。

――これまでの話を聞いていると、なんとなく銀河系、宇宙空間をイメージしてしまいます。

田中:確かに似ているかも知れませんね。Twitterの拡散範囲は、人間が認知不可能なくらい広がっていますし。太陽系は今まで詳細に観測できているけど、さらに遠くの惑星や銀河には未知の部分も多くあるように、まだ見えていない部分を解明していくことが、本プロジェクトのひとつの目標ではありますね。

安達:そうですね。コミュニティの変遷はまるで生き物のようにも見えますよね。それをデータを元に分析して、これから色々な施策に活用していくことを考えるとワクワクしますね。

インフルエンサー発掘

――続いて、「インフルエンサー発掘」に関して、機能紹介や仕組み、活用方法、運用実績、ケーススタディなどを教えてください。

田中:この機能については研究開発のフェーズですが、現時点で行なっていることについてお話ししていきます。

当初の鶴川さんからの要望は、[su_highlight background=”#fcff9″]Twitterにおいてプレイヤーや運営の投稿が誰に届き、どうやって広まっているのか、誰を経由して強弱が変化しているのか、その伝播過程を知りたい[/su_highlight]といった内容でした。

さらに、熱量高くプレイを続けてくれるプレイヤーは誰なのかを、大規模なSNSの中から見つけて欲しい、といった「インフルエンサーを可視化してほしい」という内容も含まれていました。

田中 一樹 | AIシステム部データサイエンス第一Gr
2017年にDeNA入社後、データサイエンティストとしてアプリゲームに関する AI 機能の開発に従事。現在は、多様な事業へのデータサイエンス活用を目指した研究開発や課題発掘に従事。「速習 強化学習 – 基礎理論とアルゴリズム-」(共立出版) の翻訳、「Practical Developers ―機械学習時代のソフトウェア開発[ゲームアプリ-インフラ-エッジ編]」(技術評論社) の執筆に携わる。学生時代からデータ分析の大会に没頭し複数大会で入賞。Kaggle Master。

田中:「インフルエンサー発掘」と説明しましたが、実際には「インフルエンサーの可視化」「インフルエンサーのインフルエンス力(影響力)の可視化」「抽出したインフルエンサーの特徴分析」について重点的に実施しています。

インフルエンサー分析の可視化画像

田中:「インフルエンサーの可視化」については、すでにインフルエンサーになっている人を発見する分析と、将来インフルエンサーになりそうな「ポテンシャルインフルエンサー」を予測し、事前に発見する分析を行なっています。

既存のインフルエンサーについては、すでにさまざまなアルゴリズムが研究されており、それらを活用し抽出しています。

例えば良質な情報を発信している人、情報伝播や繋がりのハブとなっている人、拡散力があり情報の発信頻度が高い人、などさまざまな角度からインフルエンサーを発見しています。

まだPoCの段階ですが、汎用性の高いアルゴリズムが多く、現在では20~30種類の指標を使って、自動的にインフルエンサーを抽出し、分析することができるようになってきました。

また、未来のインフルエンサーをデータサイエンスやAIで予測することができれば、運営が事前に熱量が高まりそうなインフルエンサーと接点を持つことができます。ここではAIを使って過去のアクションや嗜好性、繋がっている人の情報などから、将来インフルエンサーになりそうかを予測しています。

――AIで未来のインフルエンサーを発掘するのは、DeNAならではの取り組みかもしれませんね!

田中:そうですね、AIの活用を通じてなるべく多くの方に情報を届けていきたいですね!

続いては「インフルエンサーのインフルエンス力(影響力)の可視化」についてお話しします。

インフルエンサーを可視化した後、実際にどのくらい拡散されるのか、どうやって拡散されていくのかを知りたくなりますよね。その部分を解明するために、我々はツイートの拡散シミュレーションに関する研究開発も行なっています。

インフルエンサーがあるツイートをしたときに、どんな経路で最終的にどれくらいの人数に拡散されるのかをシミュレーションする研究開発が進んでおり、マーケティングでの簡易的な運用は可能になり始めています。例えば、Twitterにおける広告配信など、SNS上の幅広い範囲に情報を行き渡らせるためのターゲティングに活かしたいと考えています。

ここで研究している手法の中身は、[su_highlight background=”#fcff9″]Influence Maximization(影響最大化)と呼ばれる最適化系の問題でバイラル(口コミ)マーケティングの文脈で語られることが多い[/su_highlight]です。「どこに施策を打つと情報の広がりが最大化されるか」というテーマで最適化をする分野で、一般的に解くのが困難な問題ではありますが、上手く工夫しながら実応用を目指して取り組んでいます。

しかし、現実世界のSNSは単純ではありません。自分が発信したツイートを他の誰かがX%の確率でリツイートしてくれる、といった確率を正確に把握することは、難しいことが多いです。

ただし、我々はそれを解決するためにツイート内容などから、情報が伝播する確率を推定する取り組みも行なっています。

例えば、親和性の高い人同士は高確率で情報伝播しやすい、嗜好が似ておらず興味が異なる人同士では情報がリツイートされにくいなど、さまざまな観点からより現実的な拡散シミュレーションができないか日々検証しています。

他にはフォローが多い人はタイムラインが流れやすく、ツイートが目に留まる確率が下がる傾向があるので、拡散される確率もその分減るのではないか、といった仮説検証もしています。

――Twitterなど投稿するのは人間なので、あいまいな部分を解明するのは大変では?

田中:そうですね。その部分に関しては安達さんが行なっているコミュニティの分析と連携しながら、この人はどのジャンルが好きなのかといった趣向も深掘って分析したいと考えています。

――このインフルエンサー発掘の機能について、鶴川さんはどう感じていますか?

鶴川:とても未来的で、今後のプロモーション施策などへの活用方法は多彩だと思います。さまざまな情報が行き交う今の時代では、サービス提供者の発信だけではコミュニティへ情報を十分に行き届かせるのは、とても難しく限界があると感じており、ゲームに関する情報発信していただけるプレイヤーの方々の力が、情報伝達に必要不可欠な時代になっています。

私たちは「フォロワー数が多い」「発信回数が多い」と言った表面上の数値だけではなく、もっと本質的な要素も含めてインフルエンサーの発掘をしたいと思っています。

田中:コミュニティとインフルエンサーの両方の観点を組み合わせて連携することで、今までできなかったような有効な取り組みができたら良いですね。

――今後のマーケティング施策も成功する確率をさらに上げることができると?

田中:まさに取り組んでいる最中ですが、このプロジェクトではAIによって作成されたシミュレーションや予測を元に施策を実施した後に、その結果をAIのアルゴリズムにフィードバックする工程をなんども繰り返し、全体のワークフローを精緻化することで成功確率を上げていきたいなと思っています。

鶴川:施策自体も変わりますが、それを作るプロセスも実際変わってきています。今まで見ていなかったデータを当たり前に見るようになってきていますし、施策を考える際に連携を図るチームも変わってきています。

田中:全員に全く同じマーケティングをするのではなく、イベント関連の施策はこのインフルエンサーに、バトル関連施策はこのコミュニティに、といったようにジャンルやゲーム毎に施策の検討方法が変わっていくと思いますし、そのクリエイティブを作り始める段階から連携できれば、新しい価値を生み出せるかもしれませんよね。

データはこれまでにない強い武器となる

――このようなコミュニティ分析ツールは、ゲーム業界以外でも開発・活用されているのでしょうか?

安達:日本だけでなく世界的にも、データサイエンスやAIを用いてコミュニティの分析を推進する取り組みは少ないと思います。

コミュニティという粒度で包括的に、データを元にした施策を考えていく取り組みはあまり耳にしないですね。

田中:Twitterの自動ボットやターゲティング広告などの取り組みはが多いと思いますが、コミュニティの性質をデータから細かく分析する取り組みは、あまり多くないと思います。

鶴川:このプロジェクトではマーケティング施策を最大化させていくという観点ももちろんありますが、それ以上にプレイヤーの体感・体験を向上することに強くフォーカスしています。

――冒頭でも少しお聞きしましたが、鶴川さんが安達さんに相談してから、ツールが開発されるまでのフローを改めて教えてください。

鶴川:まず最初に実現したいことをまとめつつ、ダッシュボードのイメージを含めて、安達さんと要件をすり合わせていきました。

安達:まずTwitterの基本的な統計量取得による工数削減および、データサイエンスを用いた高度な分析で実現したいこと・できそうなことをまとめました。それから自身でPoC(Proof of Concept:概念実証)をして、まずダッシュボードを作成しました。

その後、さらにスケールさせるために小口さんに相談をして、ダッシュボードにいろいろな人がアクセスできるよう拡張してもらいました。また、高度な分析でも実現したいことが多く、田中さんにも参加していただいた流れになります。

小口:自分が驚いたのは、鶴川さんの推進力の高さでした。データ分析を生業としている私たちデータエンジニアやデータサイエンティストが分析をして「こういう意思決定をするべき」とコンサルティングをして巻き込むというよりは、データを使ってより良い意思決定をしたい、と望んでいるメンバーが中心となって始まったプロジェクトだったので、スピード感や熱量が他のプロジェクトより高かったと思います。

また、鶴川さんがこの取り組みを他事業部に共有してくれたのも、嬉しかったですね。データは施策や意思決定に活用してもらわないと価値がないですし、それを全社に届ける動きをしていただいたのは非常に助かりました。

鶴川:少し照れますね……(笑)。実は自分のストレングスファインダーの資質の中では「分析思考」がかなり強いんです。もともと未知の発見が好きなので、なるべく食わず嫌いはしないようにしています。

また、時間が空いたときに安達さんからネットワーク理論について教えてもらって、勉強しています。これまでコミュニティマーケティングの人間が、何となく感覚で理解していた部分に、アカデミックな情報が加わると、明確に言語化できるので楽しいですし、学んでいきたいですね。

――ただ要件を依頼するだけでなく、お互い学びながら成長すると?

鶴川:はい。お互い似ている領域ではありますが、所持しているナレッジが違っていたのかなと思いますね。それを交換しながらパフォーマンスを上げていきました。

――このツールについて他の事業部からのフィードバックはどのようなものがありましたか?

鶴川:実はつい最近共有したばかりなんですが、一様にかなり驚いた反応をしていました。

これまでは「こんなツールあったら便利かも」くらいに抽象的なイメージしかなかった中、それを具体的に可視化、言語化できるツールが登場したので、驚きがあったのだと思います。

コミュニティの運用においては、どのようなデータを見れば良いのか、またそのデータをどのように取得すれば良いのか判断がとても難しいです。

本ツールで取得したデータを使用して、プロデューサーなどのメンバーと議論していますが、[su_highlight background=”#fcff9″]ファクト(事実)を示すことができる[/su_highlight]ので、議論の質も高まっていると思います。

――しっかりと説得できるデータが取得できているからこそ、これまでにない強い武器になると?

鶴川:はい。ほとんどの人は、Twitterやネット掲示板を常に見ているわけではなく、スキマ時間にチラッと見た情報が正になってしまうことが多いですが、コミュニティは常にリアルタイムに動いています。

全体を理解できていないのに結論付けてしまうことが、これまで課題だったのですが、このツールのおかげで、総合的にサマリを伝えることが可能になったのは、大きな強みと言えますね。

人と人を繋いでユーザー体験を向上したい

――今後、本ツールの運用で事業(ゲームだけでなく)に対してどのような成果を目指していきたいと考えていますか?

小口:今回はTwitterだけの取り組みでしたが、他のプラットホームにもコミュニティは存在しているので、それらのオープンデータを活用できる状態を実現したいですね。また、グローバルでのユーザーコミュニティの可視化にもトライしたいです。

安達:コミュニティはゲームに限らず、どこにでも存在するので、その汎用性を生かして他の分野に広げていきたいと考えています。また、ここ最近の機械学習手法の進展によって、高い精度でコミュニティ抽出ができるようになったり、かなりアクティブなリサーチエリアになっています。

コミュニティマーケティングの重要性の増加と相まって、今後活用先が増えるのは確実です。今回の分析をきっかけとして、社内外で協力して、マーケット全体のスタンダードを作れればと思っています。

田中:もちろん汎用的な技術なのでさまざまな事業へ横展開していきたいと考えていますが、私がデータサイエンスやAIを活用するときの軸としているのが[su_highlight background=”#fcff9″]「サービスに触れている方に楽しさや新たな体験を届ける」[/su_highlight]ことです。

抽象的ですが、人と人が繋がり、今まで以上にハッピーになる世界を目指したいですね。このプロジェクトでは、データサイエンスやAIを通じてその橋渡しができるきっかけを作りたいと思っています。

鶴川:コミュニティマーケティングは大きな可能性を秘めていて、テクノロジーの力を活用しコミュニティの可能性をもっと引き出せれば、今までにない新しい取り組みに繋がると考えています。その新しい取り組みで、より多くの人により楽しい体験を提供していきたいと思います。

――ゲームやサービスを通じて、プレイヤーをさらにハッピーにできる技術が進化していくのは、とても楽しみですね。ありがとうございました。

インタビュー・執筆:細谷亮介
編集:佐藤剛史
撮影:齋藤暁経

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