2019 06 Jun

【DeNAデザイン部特集Vol.2】ゲームの画は本の表紙絵や挿絵と一緒!? 最新技術への考え方とR&D実践の意図に迫る

【DeNAデザイン部特集Vol.2】ゲームの画は本の表紙絵や挿絵と一緒!? 最新技術への考え方とR&D実践の意図に迫る

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2019.06.06

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モバイル端末の性能は急速な進化を続け、近年はゲームの表現の幅もさらに広がりをみせています。それに伴ってグラフィックやUIなどデザイン面に関しても、これまでに比べさらに高い技術的レベルが要求される時代になりました。

「DeNAデザイン部特集Vol.2」では、DeNAデザイン部がこのような時代の流れをどのように考えているのか、そして現在の最新技術に対するR&D(研究開発)を含めた取り組みについて、デザイン部3D第一グループの中津基貴と、クリエイティブプロジェクトマネジメントグループの大西正人にインタビューを行いました。

――まずはお二人の簡単な自己紹介からお願いします。

中津基貴(以下、中津):私はドット絵を描く仕事からキャリアをスタートし、前職では映像やアニメーション、遊技機などエンタメ分野で2D・3D問わず幅広く手がけてきました。
DeNAには2011年に入社し、ずっとVO(ヴィジュアル・オーナー)(※1)を担当してきましたが、直近ではグループのマネジメントを担当しています。

※1. VO(ヴィジュアル・オーナー):ゲーム全体のグラフィックを監督するという意味でのアートディレクター。出自は2Dアーティスト、3D背景モデラ、モーションデザイナなどさまざま。

デザイン部3D第一グループ 中津基貴

大西正人(以下、大西):前職ではコンシューマゲーム開発会社でアクションゲームや格闘ゲームを手がけていました。そこから数社を経て、2018年3月にDeNAにCPM(クリエイティブプロジェクトマネージャー)(※2)として入社しました。

CPMとしての私の主な業務内容は、アーティストの進行管理や外注管理をはじめ、ワークフローの設計、作業効率化ツールの導入などを担当しています。

※2. CPM(クリエイティブプロジェクトマネージャー):アーティストが作業に集中できるように、アーティストのマネージメントを専属で担当する。また、外注管理や工数管理を行い、開発フェーズの進行を円滑に進め、作業環境の整備やワークフローの精査などを行い、クリエイティブ分野の制作環境を整える。

私はゲームプランナーからキャリアをスタートし、レベル・モーション・背景・エフェクト・UI・コンセプトアート・ムービー・ライティングなどの各種デザイン業務を担当して多彩な職種を経験してきました。幅広くアート関連の仕事を現場レベルで携わってきた経験や知識が、現在のCPM業務で大変役に立っています。

クリエイティブプロジェクトマネジメントグループ 大西正人

書店で惹き付けられる
表紙絵のように

――モバイルゲーム業界全体においても、年々グラフィックのクオリティが非常に上がっていると感じます。お二人はこの時代の流れをどのように感じていますか?

中津:まず、クオリティの高さについて語るとき、リッチさや表現できる幅の広さを指すことが多くなりがちですが、その背後には、そういう表現を採用したというデザインが存在します。そして、デザインとは「何かを解決するための手段」であり、解決すべき主体がないと語れない、という前提があります。

主体がゲームの場合は「そのゲームのメカニズム」という事になるので、それが十分に分かりやすく視覚化されているか、本来のメカニズムをより楽しみやすくできたか、といった観点からグラフィックを評価して、初めてクオリティが高い・低いという話ができるということですね。

ただ、グラフィックには「興味をもってもらう」という役割もあります。それまで不可能だった表現が実現できたら、それはゲームをプレイしてくれる人の注目を惹きつける要素となり得ますので、その観点も同時に大切にしなければなりません。

年々グラフィックのクオリティが上がっている、という話は後者の文脈で語られることが多いと思いますが、我々ももちろんその観点から新しい技術に興味をもって取り組んでいます。

大西:また、昨今のハードウェアの急速な進歩によって、グラフィック表現も格段に向上し、コンシューマゲーム機に匹敵するような、高性能なスマートフォンも登場しています。

そのような最新機種に対応するゲームを作る際に注意したいのが「グラフィックが美しいことが、ゲームの面白さに直結する」とは断言できない、ということです。

むしろそのゲームを知らない人や、未プレイの人に興味を持ってもらう手段として、デザインやビジュアルのクオリティの高さは必要な要素のひとつだ、と考えていただきたいですね。

――グラフィックが美しいからといって、それがゲームの面白さには直結しないと?

中津:そうですね。これはアートディレクションをするときや、ゲームグラフィックの仕事を説明する際によく使う例えなんですが、「ゲームのグラフィックを用意する仕事」は「本の表紙絵と挿絵を同時に扱う仕事」だと伝えています。

挿絵って、本来の物語の中に差し込むことで、情景をイメージしやすくなり、それによって物語に没入できるような役割を持っていますよね。ゲームではUIやアートアセットによって挿絵と同じ機能を果たそうとします。

それに対して表紙絵は、書店に並んだときに、パッと見て興味を惹き付ける役割があります。先ほど例に出たUIやアートアセットは、遊ぶときに面白く、より分かりやすくするためにあるのですが、それがスクリーンショットなどで世間に広まったときには、表紙絵の役割を果たすことにもなります。

なので、絵のクオリティを高く、リッチにする理由はその役割のためであり、ゲームを面白くするための手法とは少しズレる部分もあります。

「誰も知らない」状況を
つくらないために

――DeNAではグラフィック表現に関してのR&Dが2017年頃から進んでいたそうですが、この背景について教えてください。

中津:前提としてデザイン部が考えるR&Dは、必要とされる技術を当たり前にカバーしておきたい、という意味合いが強いのが特徴です。

例えば、開発チームのディレクターやプランナーから「こんな表現にしたい」というアイデアが出てきて、それがゲームの内容に関して最適な表現手法であったとき、その技術を扱える人が社内に一人もいない(少なくとも手掛かりが全くない)という状況は避けたいと考えています。

特に国内向けのプロダクトは、スタイライズドな表現が好まれる傾向があり、その部分は実務で習得することができます。それに対してフォトリアル系の技術は、しっかり意思を持って積極的に研究しないと、誰も扱えない状況が簡単に生まれてしまいます。

それにも関わらず、業界では徐々にPBRベース(※3)のレンダリングがスタンダードになってきている状況の中、その技術を当たり前に使っているプロジェクトが当時は社内になかったため、R&Dを推進する動きが生まれました。無論、それまでは個々が属人的に研究をしていたのですが、組織として進めていこうと意思決定したのがその頃ですね。

※3. PBR(Physical Based Rendering):現実世界を模倣した、光学的に正確なレンダリングのこと。

R&Dの一画面。実際にモバイル端末で動く状態になっている。

――では、現在はプロジェクト側の要望に応えられるような段階になっているのでしょうか?

中津:そうですね、当時使っていたPBRシーンデータを、あるプロジェクトで実験的に使用しています。そのおかげで少ない工数で組み立てることができ、実装まで可能になりました。

また、プログラマーが実際の描画における負荷について実験する場合でも、すぐに適切なデータを使うことができ、ここでもR&Dの成果を出すことができています。

――そういえば、大西さんは、DeNAのR&Dに興味を持って入社されたそうですね。

大西:そうなんです。前職ではライティングアーティストを担当していたので、最新技術のキャッチアップは習慣化していました。転職を検討する際、これは偏見だったのですが、モバイルゲーム開発現場では、最新技術に対するR&Dを重視していないのでは、と当時は感じていたんです。

ですが、たまたま外部の記事(※4)でDeNAのR&Dに対する取り組みを見て、しっかり実践していることがわかったため、安心して入社を決めました。

※4.
年々コンソールに近づくモバイルゲームの映像品質 DeNAが数年後を見すえてCGデザイナーを募集中
https://cgworld.jp/interview/dena-201708.html

――入社してみて、DeNAのR&Dはどのように感じましたか?

大西:特にPBRベースの作り方をUnity上で再現して、それをプロジェクトに移管する作業がスムーズにできていたので、研究の基礎はこのように流用できるんだな、と感心しました。

Unityで使い回しが可能な表現技法を一度組んでおけば、同じエンジン上の開発なら、かなりのローコストで転用ができるので、それは良いなと思います。

――現在進んでいるR&Dの事例などを教えてください。

中津:R&Dのためのプロジェクトというものはないのですが、レンダリングに関する部分で言えば「トゥーンシェーディング(※5)」と「PBR」は引き続き研究しています。

描画手法としてはこの2つがさまざまな意味において両極にあり、多くの表現がその組み合わせ方や程度によるもの、という風に解釈できるからです。しかし、研究の対象は描画表現だけではありませんので、モーションや制作環境などさまざまです。

※5. トゥーンシェーディング:3DCGのレンダリング方法の1つ。フォトリアリスティックな表現とは対照的な、セル画アニメ調(セルルック)の表現が可能。

――「プロシージャル(※6)」という言葉を近年は特に耳にすると思います。お二人はどのように感じていますか?

中津:「人の手を介さずにマシンに自動で仕事をさせたい」という考えは事業的に考えても当然なことですし、その観点でプロシージャルを研究しない、という判断はないと思います。

※6. プロシージャル:手続き型、計算による自動的・自動生成する機能のこと。

大西:プロシージャル技術が知られるようになり、多くのゲーム会社は研究を行い、中には「モーションをプロシージャル生成する」という取り組みを行っていた会社もあります。

現在、そのブームは落ち着いてきているのですが、技術的に確立されつつあるのは「モデリング自体をプロシージャル生成する」技法です。近い将来、人間がモデリング作業をする必要がなくなる可能性もあるかもしれませんね。

――突き詰めると、作業する人間はいらなくなると?

大西:突き詰めたら、ですけどね(笑)。例えば、キャラクターモデリングを1人で1体作るのに数日かかる作業を、マシンなら数時間で何百体も作れるようなことが当たり前になる時代が来るかもしれません。

中津:現時点では、クオリティのトップラインは人の手による制作物のほうが高いと感じます。ただ、表現としてのトップクオリティのものを作るのに1体数ヶ月かかるとして、その8割程度のクオリティのものが1ヶ月に500体できるとなった場合、どうなのでしょうか。

作品全体で見た場合には、密度や物量もまたクオリティと言えるわけですから、表現としてのトップラインだけを考えていては片手落ちです。

いずれにしても、今期のデザイン部は体制をさらに強化し、より事業に資する集団になっていきたいと思います。そのため、今後もさまざまな手法や可能性を模索していくことは間違いありません。

今後も挑戦し続ける
環境改善とR&D

――日々の業務における開発環境の整備も大切なことだと思います。昨年入社した大西さんは、はじめてゲーム事業部の開発環境を見て、どのように感じましたか?

大西:入社してまず驚いたのが、開発環境がコンシューマ開発に比べて、あまり整っていなかったことです(笑)。モニターなどの機材の選定やワークフローなど非効率になっている部分もあり、多くの改善の余地がありました。

私は無駄な工数をなくして、適切な環境で作業をすることが当たり前なカルチャーを作りたかったので、入社後は機材のテスト導入しながら、デザイナーがフルにスキルを発揮し、かつ開発コストを下げられるような環境作りを推進してきました。

中津:大西さんに指摘いただいた点はずっと気にかけていたのですが、進行しているプロジェクトの内容と天秤にかけた際、なかなか優先度を上げることができませんでした。ですが、大西さんが入社して「(環境の改善は)絶対やらなきゃダメですよ!」と強く提案してくれたので、積極的に実施することができ、本当に助かりました。

――現時点でお二人が思う社内の環境改善は、どのくらい進んでいますか?

大西:特定のプロジェクトではEIZO ColorEdgeシリーズのキャリブレーションモニターで統一するなど、アーティストの制作環境に力を入れて、かなりベストな状態になっています。

中津:あと極端な話をすれば、部屋の明かりをつけたまま仕事をしているのも問題だと言えなくはないですよね。

大西:確かに、蛍光灯の位置がアーティストの席によって違いますし。

以前勤めていた職場では蛍光灯や照明器具にこだわり、プリントアウトされたものが、職場のどこで見ても同じように見える環境を目指していました。ただ、印刷した時点でモニターと色は違うんですけど(笑)。そういった目的がズレた変なこだわりには気をつけたいですね。

――R&Dを推進しつつ、そこで得た知見を存分に発揮できる開発環境も整いつつあるのですね。

中津:そうですね。最新技術のキャッチアップはもちろん、R&Dなども含めて社内のノウハウの蓄積は今後も続けていきたいですね。ゲームのメカニズムとそこから生み出される面白さを最大化し、同時に注目してもらえる視覚表現を達成するために、技術を上手に適用していきたいと考えています。

大西:DeNAでは今後も大型IPをはじめとした新規タイトルをリリースしていく予定ですので、「本当に面白いゲームってなんだろう?」という観点を忘れず、その上で最新技術のアプローチについて検討していければと思いますし、私自身はそんなアーティストをこれからも支えていきたいと思います。

――ありがとうございました。

※本記事は2019年5月時点の情報です。

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