【GDMイベントレポ】ゲーム要素のコントロールと感情の対応関係とは?「2次元感情マップに基づくメタAI:里井大輝氏」

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年5月17日に開催された「GDM Vol.32 エンジニア向け勉強会:ゲーム産業におけるゲームAI研究・開発の最前線~会話AI、メタAI、ユーザ感情推定~」では、スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部のメンバーをお招きして、GDC2019で発表した内容を中心に、最新の研究成果を紹介していただきました。

本記事では、スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIリサーチャー「里井 大輝」氏より発表された「2次元感情マップに基づくメタAI」について、セッション内容をレポートします。

2次元感情マップに基づくメタAI

里井氏は冒頭で、自分の作っているゲームにメタAIをどのように適応させればいいか、イメージすることがなかなか難しい理由を語りました。

キャラクターAIなら賢そうに動く、ナビゲーションAIなら上手に経路探索してくれる、と役割がわかりやすいですが、メタAIはゲームを面白くするのにどうしたらいいかを判断するという、人間でもなかなか答えを判断できない難しいことをAIに任せているのが現実だと話しました。

例えば、ゲームのバトル部分について、プレイヤーキャラ・味方NPC・敵NPCが配置されているフィールドがあるとします。

このバトルを「面白くしてください」と言われたときに、何をどこまで改修するかを考えたときに、「プレイヤーが使える装備は大量にある(かも)」「各敵NPCは大量のパラメータを持っている(かも)」「このゲームには大量のレベルがある(かも)」などなど、想像できる要素が多く、バトルを面白くするのは容易ではありません。

このような場合、メタAIを使えば、ゲーム全体をまとめてコントロールすることが可能ですが、どの要素をどのようにコントロールすれば面白くなるのかを判断するのが、難しいポイントです。

ゲーム要素のコントロールの項目には「仲間NPCにプレイヤーを回復させる?」「敵NPCにもっとうまく回復させる?」「敵NPCにもっと強力な攻撃を使わせる?」など考えられることは無数にあります。

ここで達成したいことは「プレイヤーの感情を知り、それを特定の方向に動かす」ということです。例えば「ナーバスな気持ちのときは警戒させたい」など、企画している人はこのようなことを考えてシステムに落とし込んでいるはずです。

そこで、ゲーム要素のコントロールと、感情の動かし方との対応関係について考えます。

先行事例では、『Left 4 Dead』や『Warframe』のメタAIについて、GDC2009で発表された緊張度(intensity)に基づくメタAI(AI Director)について提案されています。

これは、ゲームのプレイログから計算したプレイヤーの緊張度が、周期的に上昇と下降を繰り返すようにコントロールすることで、プレイの流れに緩急をつける(ペーシング)ことができます。新規にスポーンする敵NPCの数や位置を変動させて、緊張度をコントロールしています。

このAI Directorの問題点は、多くのゲームでNPC数をメタAIの判断で変えることができないことです。シューターや格闘ゲーム、カードゲームなど、キャラクターやオブジェクトの数が固定されているゲームは実装が難しいと思われます。もし固定されていなくても、ゲームデザインやレベルの制約によって、メタAIが望んだタイミングや位置にNPCをスポーンさせることが難しいです。

もうひとつの問題点は、扱える感情の種類が少ないことです。これを解決するためキーアイディアが「2次元感情マップ」になります。

これは、プレイヤーの感情を横軸「勝利への期待感(H:Hope of Winning)と縦軸「敗北への不安感(F:Fear of Losing)を軸として、2次元平面上のベクトル(EP:Emotion Point)で表示します。このマップは認知心理学での感情分類モデルを参考にしています。

2次元感情マップが便利な理由は、さまざまなプレイヤーの感情とゲーム状況を紐付けて表現できることです。ここでは格闘ゲームを例として4つのケースを紹介します。

Case1:敵がプレイヤーを圧倒

勝てそうではなく、負けそうだと思っているため「ナーバス・ストレス」になります。

Case2:プレイヤーが敵を圧倒

勝てそうだと思い、負けないと思っているため「穏やか・リラックス」になります。

Case3:激戦

同じくらいの力量で殴り合っている状態は「勝てそうだけど負けるかも?」と言う気持ちで「興奮・うれしい」になります。

Case4:膠着状態

どちらも何もできず、動きが少ない膠着状態では、勝てそうではないけど負けそうでもない気持ちになり「落ち込んだ・退屈」となります。

このように直感的に感情のイメージと、HopeとFearの高低の対応ができていることがわかり、ゲームの状況を複雑に表現できます。

また、このマップを使うと、ゲーム要素と感情変化の対応付けを設計しやすくなるメリットがあります。

この手法の概要として、まずSensorsがゲームプレイデータを収集、メタAIで判断し、Effectorsでゲームワールドを操作します。本セッションでは2次元感情マップに基づくメタAIの内部機能「World Analyzer」「Game Maker」について詳細を公開します。

「World Analyzer」では、Current EPがプレイヤーの現在の感情を2次元座標でまず表示します。それを元に、数秒後にプレイヤーの感情が向かって欲しいポイント「Goal EP」を決め、続いて次にプレイヤーの感情を持っていく場所「Next EP」を更新します。

つまり、具体的なゲーム環境への操作は「Next EP」をベースにして決めていくということです。

格闘ゲームを例にすると、プレイヤーキャラと敵NPCがそれぞれHPと攻撃ヒット率を持っています。それぞれがHPは満タン、ヒット率50%の状態では、プレイヤーのヒット率が高ければ高いほどHope値は上がり、敵NPCのHPは低いほどHopeが高くなります。

逆に、プレイヤーのHPが低ければFear値が上がり、敵のHPが高ければFear値が上がります。

Current Hopeの計算方法の例として、攻撃ヒット率やHPの残量によって、変動するカーブ値を用意し、それぞれの評価値を足して判断します。

また、ゲームの状況が変わり、プレイヤーの攻撃ヒット率が60%に上がり、敵のHPが下がった場合は、Hopeの値が少し上がり、Current EPの数字が右にズレます。

Goal EPのプランニングについて、決め方はゲームデザインに大きく依存します。あるプロジェクトでは5秒ごとにCurrent EPの反対側に設定し、メタAIがプレイヤーの感情を常に揺さぶろうと試みました。

また、便利機能としてGoal EPにバイアスをかけることができ、あるプロジェクトではGoal EPの移動可能範囲を、バトルに進行度に応じて狭める処理をしており、終盤に向けて興奮もしくは幸せの感情になっていくと思われます。

この仕組みの良い点は、ゲームデザイナーがプレイヤーがどのように感じてほしいか、平面上で直接視覚的に設定できることです。

続いて、Next EPの更新にて、どうやってゲームをコントロールするのかを説明しましょう。

格闘ゲームを例にすると、Hope値は敵がプレイヤーに対してどれくらい攻撃しやすいか、という要素と結びつきます。危険な攻撃の使用頻度や、攻撃の開始距離(避けにくさ)に影響します。

Fear値は、プレイヤーが敵に対してどれくらい攻撃しやすいかという要素に結びついており、スキを見せる行動の使用頻度や使用距離、プレイヤーの攻撃に対する反応速度などに影響します。

これをまとめると、ゲームジャンルに対して「Current EPに影響を与えるもの」「Next EPから影響を受けるもの」という要素があることが考えられます。

単純な1on1バトルを用いたデモで、プレイヤーと敵NPCモデルと、2D感情マップのデバッグ表示が公開され、Next Fearが高い状態だと敵は避けにくい攻撃を使用する様子が、モデルの動きとともに確認することが可能です。

反対にNext Fearが低い場合(プレイヤーのHPが瀕死状態)は、敵は避けやすい攻撃を使うことが分かります。メリットとして、AIに「敵を攻撃しなさい」という指示を与えれば、内部でどの攻撃アクションを選択するのか、Next EPを見て攻撃種の区別をしてくれることです。

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIリサーチャー「里井 大輝」氏

この仕組みを実際にゲームで利用するには、大量のデータ収集が必要になるため、ブラウザベースの「ゲームプレイ分析ツール」を導入しました。このツールでは、2次元感情マップ上でのEPの軌跡を表示できます。

感情の強さのタイムライン表示では、8つの感情がそれぞれがどの時点でどう強かったかを可視化しています。この感情の強さの計算は、いろいろな感情が少しづつ混ざった類似度を計算しています。

また、企画側からの要望で、HPやMPのようなステータス情報や「プレイヤーの攻撃がヒット」のようなイベント時の感情の強さを並べて表示し、感情が動いた理由を分析しやすくしています。

この仕組みのテストプレイ時フィードバックでは、ほぼ狙い通りの結果が出ており、ゲームデザイナー側からは、プレイ中の様子を録画しながらメタAI側のパラメータを調整することで、今までのワークフローに比べて改善したとの声が上がっています。

最後に里井氏は、今後の展望として、最近プレイヤーが経験した感情に次は向かないようにする「ヒートマップ」や、Goal EPのプランニングに位置検索システムを導入する、などさまざまな可能性があることを語りました。

取材・文・撮影:細谷亮介

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■イントロダクション ゲームAI研究・開発の全容:三宅 陽一郎氏

■キャラクターとのインタラクション:Gautier BOEDA(ボエダ ゴティエ)氏

■メタAIの基本モデルとゲームデザイナーの役割:水野 勇太氏

※本記事は2019年5月時点の情報です。

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【GDMイベントレポ】実際にメタAIをデザインするには?「メタAIの汎用モデルとゲームデザイナー&エンジニアの役割:水野勇太氏」

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年5月17日に開催された「GDM Vol.32 エンジニア向け勉強会:ゲーム産業におけるゲームAI研究・開発の最前線~会話AI、メタAI、ユーザ感情推定~」では、スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部のメンバーをお招きして、GDC2019で発表した内容を中心に、最新の研究成果を紹介していただきました。

本記事では、スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIユニット AIテクニカルゲームデザイナー「水野 勇太」氏より、「GDC 2019」で発表した資料をもとに発表された「メタAIの汎用モデルとゲームデザイナー&エンジニアの役割」について、セッション内容をレポートします。

メタAIの汎用モデルと
ゲームデザイナー&エンジニアの役割

水野氏は今回のアジェンダとして「ゲームデザイナーとエンジニアを一つにする」「メタAIを道具として活用する」「状況分析(課題と解決案→メタAI設計)の順で考える」「妄想力を鍛える」の4つを掲げました。

ゲームのAIは主に3つ

キャラクターAI

キャラクターの知能のことで、『パックマン』に使用されたAIが始まりとも言われています。当初はフィールドとAIが合体した「お化け屋敷AI」のような状態でした。現在ではナビゲーションAIの発展とともに知的な行動が求められています。

ナビゲーションAI

FPSゲーム『カウンターストライク』において、ナビゲーションメッシュと呼ばれる地形情報を活用するナビゲーションAIが実装され、キャラクターが固定の位置やルートから解き放たれて自由に移動できるようになりました。それにより事前に仕込めないほど多様な位置での判断が必要となり、キャラクターAIが改めて発展していきました。

メタAI

ゲーム世界のすべての要素を、ゲームマスターのように神の視点から操るAIです。海外ではメタAIの一種であるAIディレクターが、『Left 4 Dead』の開発時に発展していった経緯があります。メタAIはゲームにおける環境を広く認識、問題を検知して、解決プランを立案することができます。

また、メタAIの汎用的な設計が水野氏から紹介されました。それは内部の「World Analyzer」で世界を分析、「Game Maker」でゲームをどう変えるかのプランを立案、それに基づいて「Parameter Generator」がどのようなパラメータで変化させるかを具体化して、Effectorでゲームの世界に通知されます。

敵マネージャーやアイテムのスポナーなど、ゲーム側の「Interaction Space」が変わることで、ゲーム世界に変化が生じ、プレイヤーの体感が変わっていく仕組みです。

ルイージ主義

メタAIは、かなり柔軟なコントロールが可能なため、メタAIに何をコントロールさせるべきなのかを決めることが重要になります。

そこで、ゲームクリエイターの米光一成氏が2006年に論文を発表した「ルイージ主義(RuIDi-ism)」を活用することを提案しました。

「ルイージ主義(RuIDi-ism)」とは、Rule・Interaction・Dilemmaの頭文字を取った考え方で、それぞれの要素に基づいて、ゲームのパラメータを抽出し、それをメタAIで変えていく仕組みになっています。特に面白いと評価されているゲームには、この主義が組み込まれているとのことです。

メタAIとゲームデザイナーとエンジニア

「GDC2019」では、実はあまり強烈に新しい理論は発表されませんでした。その中でプロシージャル技術の言い換えとも言える「Limited Situatuion Generator」は、プレイヤーそれぞれの固有のシチュエーションを生成する技術で、メタAIと親和性も高いと考えられます。

メタAIは、ゲームの状況をその場で分析・検知できるので、最初から仕込んでおく必要がないんですね。もし、その場で作られた事前に準備できないシチュエーションがあったとしても、メタAIが分析すれば最適なゲーム状態をメタAIが作り出すことが可能です。

これまでのゲーム開発のように、すべてを仕込んでおいて、状況に応じて対応させるという作業をした場合には、どうしても事前に仕込むパターンには限界があり、諦める部分も発生します。

例えば、A・B・Cの3つのパターンでそれぞれに違ったシチュエーションを作ったとしても、その3パターンのみになるため、パーソナルで完全に人ぞれぞれの固有な体験にすることはできません。

ですがその部分にメタAIを導入すると、まず作られた環境をメタAIが分析し、その環境において最適なゲーム体験を提供するため、固有の環境に対して固有のゲームを作ることができます。これがメタAIの特長を活かした最大の方法と言えるでしょう。

「GDC2019」では『Marvel’s Spider-Man』『GOD OF WAR』などのタイトルで、キャラクターの行動制御(移動の制御や画面外からの攻撃制御など)をしていると発表がありましたが、開発者はそれをシステム的に利用したり、マネージャーのように運用していただけで、メタAI的な視点ではなかったんです。

現時点では、我々が最先端に近い位置にいる状況であり、まだメタAIに取り組まれていない人も、この分野を今からスタートすれば、世界最先端のゲーム開発が実現できると思っています。

また、GDCでは、多くのエンジニアがゲームデザインについて語っており、『Marvel’s Spider-Man』のPostmortemのセッションを担当したエンジニアも、ゲームの面白さを熱く語っていました。

現在では、エンジニアがゲームメカニクスを語る時代になっていますし、ゲームデザイナーが実際にゲームエンジンを活用して、ゲームを制作する時代になっています。

自分が小島プロダクションに所属していた際に、プログラムマネージャーに言われていたのが「最後にゲームの面白さを担保するのはプログラマー」という言葉です。『MGS4』を開発している頃、プログラマーでありながら、常にゲームデザインを考えてゲームを作っていたことを覚えています。

そのような考え方や環境でゲーム開発に携われたため、世界で評価されるような面白いゲームを作ることができたと自負していますし、最近ではゲームデザイナーとエンジニアがひとつになる時代が、すぐそこに来ているのかな、と感じています。

ゲームデザイナーはテクノロジーを学ぶべきだし、エンジニアはゲームデザインを学ぶべきだと思います。どちらの要素も兼ね備えた「テクニカルゲームデザイナー」が最近の現場には求められていると感じます。

テクニカルゲームデザイナーという職種をいきなり設けるのは難しいかもしれませんが、ゲームデザイナーとエンジニアが互いに価値を提案しあい、お互いの領域に関係なく、面白さについて議論することが必要です。エンジニアは仕組みから、ゲームデザイナーは仕様から「メタAIって、こんなことができる!」という価値提案を目指すことがよりよいメタAIの実現には重要です。

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIユニット AIテクニカルゲームデザイナー「水野 勇太」氏

実際にメタAIをデザインするには

メタAIは魔法ではなく、道具です。「面白くないゲームだから面白くしたい」「ストレスを感じる挙動を直したい」という要求に対して、単純にメタAIを導入すれば解決できる、というわけではありません。

そんな状況において「なぜその現象が発生しているのか?」といった原因を見つけるのが人間の仕事ですし、判断するのも人間です。メタAIを入れればどうにかなる、という考え方は間違いだと考えています。

まずは、担当者が周辺技術を調査して、メタAIで応用させることが必要になります。メタAI設計の流れについては、「状況分析→課題と解決案を出す→メタAI設計」というフローをおすすめしています。

それでは、事例をもとに説明しましょう。

状況分析の部分において「ラスボス戦なのでプレイヤー全員にくじけて欲しくない、でも手応えが欲しい」と考えました。

その課題と解決案として、難度の設定に柔軟性がなく、感情を揺さぶることで刺激的なゲーム体験ができるのではと仮定しました。そして、ユーザーの状況から感情の推定をして、その感情に基づいて敵の行動を変えることができれば、誰でもくじけずに最後まで楽しく感情を揺さぶられるのではないか、と考えました。

そして、プレイヤーの感情をゲーム内の状況を収集してメタAIが推定する、という仕組みを作りました。その推定した感情に応じて行動を変えるように、メタAIが敵AIに指示をする仕組みが実際に動いています。この部分の仕組みについては、この後登壇する里井が担当しています。

現在のゲーム市場を見ても、モバイル対応ゲームの開発者が増えているのは明らかです。過去には「モバイルゲームにAIは必要ない」といった考えもありましたが、モバイルアプリにもメタAIの導入は可能です。

もしモバイルアプリにメタAIを導入するなら…として、仮想メタAIの例が紹介されました。パズルゲームでドロップの出現内容に難度が大きく左右されるのであれば、課題はドロップの内容がプレイヤーの腕前を考慮していないと考えられるので、プレイヤーの腕前を判定した上で、ドロップ内容を調整すれば、初心者でも最初からくじけないようなゲームにできるはずです。

ですが反対にメタAIが必要ない状況もあります。例えばテニスゲームにおいて上級者にラリーを1分間に120回続けさせたいという要求に対してなどが考えられます。

ラリーの回数には、球のスピードが最も強く関係しており、変な場所に打ち返しても上級者だから打ち返してくれる、といった状況では、もはやプレイヤーのクセや特徴の分析というよりも動作の精度を高めるという議論になってしまうので、わざわざメタAIを使わなくても良いと考えられます。本当にメタAIが必要なのか、メタAIでなくてもできることを、しっかり判断することが大切です。

そして、メタAIによる価値の提案も大切だといいます。課題の解決はマイナスをゼロもしくはプラスにするという行為ですが、導入すればプラスアルファになる価値の提案も可能だといいます。

例えばゲーム内に「直線で貫通するスキル」があることに気づけば、敵が一直線に並んでいたほうがプレイヤーは気持ち良い攻撃ができると考えられます。メタAIはそれに対応して、より爽快な手応えをプレイヤーに提供するために敵AIに指示をすることが可能です。

これは「仕様に対して妄想すること」で生まれるアイデアなので、ゲームデザイナーは自分の頭の中で自分の作るゲームを何度も何度もプレイし、「小学生」「女子高校生」「休日のパパ」「リタイアしたおじさん」など実際のプレイヤー像を想像して、妄想プレイで見つけたシチュエーションをメタAIでより面白くするのが、テクニカルゲームデザイナーの得意分野になると考えています。

取材・文・撮影:細谷亮介

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■イントロダクション ゲームAI研究・開発の全容:三宅 陽一郎氏

■キャラクターとのインタラクション:Gautier BOEDA(ボエダ ゴティエ)氏

■二次元感情モデルに基づくメタAI:里井 大輝氏

※本記事は2019年5月時点の情報です。

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【GDMイベントレポ】表現豊かなNPCを実装したデモ映像公開!「キャラクターとのインタラクション:ボエダ ゴティエ氏」

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年5月17日に開催された「GDM Vol.32 エンジニア向け勉強会:ゲーム産業におけるゲームAI研究・開発の最前線~会話AI、メタAI、ユーザ感情推定~」では、スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部のメンバーをお招きして、GDC2019で発表した内容を中心に、最新の研究成果を紹介していただきました。

本記事では、スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIエンジニア Gautier BOEDA(ボエダ ゴティエ)氏より発表された「キャラクターとのインタラクション」について、セッション内容をレポートします。

キャラクターとのインタラクション

ゴティエ氏は以前、NPCが配置されたリアルなゲーム空間で、NPCの気配に似たものを感じたことに驚き、そのヴァーチャル空間の中には自分が存在したように感じたと話しました。

しかし、ゲーム内でのNPCとのインタラクションについては、ボタンを押すなど比較的古典的な方法に限られており、(NPCと)視線が合ったり、自身がどんな行動をしてもNPCは何も反応してくれなかったことが悲しかったと明かしています。

そこで今回のプロジェクトでは、音声や身振りなど自然なインタラクションを開発し、プレイヤーにとって適切な反応や表現ができるような、生き生きとしたNPCを実装したとのことです。

ここからはデモ映像を使用しながら説明されました。

デモではまず、KOBUNと名付けられたNPC(※以下、一部エージェントと表記)や宇宙船、多彩なオブジェクトが配置されている惑星を舞台にして、音声認識を中心に指示を出していきます。

指示側は「あのドアを開けて」「オレンジのクリップを持って」「白いタンクに取り付けて」などKOBUNに音声で指示をしていきます。

しかし、指示通りにうまく動けなかったり、感電してしまうと、KOBUNが悲しい感情を持つことがわかります。

続いて、このシステムの実装の詳細について説明されました。

まず音声認識エンジンが入力を受け取ると、言葉と品詞のリストに変換。ゲーム側の文法パサーが言語に基づいてDNAブロックに抽象化し、その後抽象ブロックが単語に対して、言語に依存していない表現に変換します。

このプロジェクトの目的は、プレイヤーの使用できる語彙を制限せずに、複数の言語をサポートすることで、そのために言葉を言語に依存しない表現に抽象化することです。それを言葉のDNA(遺伝子)だと考えました。

例えば、「リンゴを取る」「休憩を取る」という2つの表現の中にある「取る」という言葉の意味合いは違います。そこで「取る」という言葉が持つすべての意味を、まずタグ付けします。

しかし、言語ごとに手動でタグ付けをするのは大変なので、どうすれば自動化できるかを考えました。そこでマルチに言語をサポートする同義語のデータベース「WordNet」を利用することを決めました。

例えば「大きいリンゴ」という言語を使いたい場合、ゲームの中に「大きい」という単語を組み込みます。

まずWordNetで「大きい」を検索、たくさんの概念の中から、自分が必要としている意味と比較して近いものを2つ選択して、DNAブロックが完成しました。

言葉の抽象化のステップが終わると、パサーに移行した部分は言語に依存しなくなりました。次の目的は抽象化された言葉を、ゲームに存在している概念につなぐことです。

続いて、抽象化された言葉を各概念ごとにスコア計算する作業に移行します。例えば「巨大」という単語のDNAを探して、ゲーム内のすべての形容詞の概念と比較しますが、「巨大」は存在しないので、他の形容詞の中からスコアが高いもの、DNAが似ているものが選ばれます。

意思決定については、Goal Managerがゴール(最終目的)を選択し、Plannerが選択されたゴールを実行するためのプランを立てます。

今回は「プレイヤーの声を聞く」というゴールが選ばれたため、「聞く」というアクションが実行され、発言を記憶に追加しました。その後、AIが命令に従うかを決めていく流れです。

次に「命令を実行する」ゴールが決められ、発言では「リンゴを取る」なので、Plannerは【リンゴを探す→リンゴの近くに移動→リンゴを取る】というプランを立てました。

「リンゴを探す」という発言の実行について、目的はエージェントの記憶の中で発言に対して一番適切なオブジェクトを見つけること、になります。

ターゲットのスコア計算方法は、発言によるオブジェクトにどれだけ似ているかを評価しています。タイプが同じなのか、サイズが合うかを判定して、すべてを組み合わせることでターゲットのスコアを合算します。

オブジェクトタイプの比較は、WordNetでは同義語が階層構造で並んでいるので、それを利用します。例えばリンゴは一番下にある「食べられる果物」のノードの下にあります。バナナも同じノードの下にありますが、テーブルとリンゴとの共通ノードは、全体を示しているので、なかなか一致するのは難しいです。

まず、表現にあるオブジェクトの「巨大なリンゴ」をヒエラルキーから探し、そのノードに位置を設定します。次にツリーのルートに0を設定、間にあるすべてのノードのスコアを保管します。

ではターゲットのスコアを探してみましょう。リンゴは発言にあるオブジェクトと同じなので、1になります。バナナとの共通ノードは「食べられる果物」なので、スコアはそのノードのスコア0.86になります。テーブルの全体ノードはスコアは0.14です。

ここまで来れば、バナナとリンゴのスコアはかなり近くなります。テーブルは果物ではなく、食べられるものではないのでスコアは低くなります。この計算方法を使えば、エージェントはより柔軟な判断ができるようになります。

次は、サイズの比較をします。発言による形容詞は「大きい」なので、エージェントの記憶にあるリンゴのサイズを比較します。

リンゴAのサイズは平均なので、スコアは0.5になります。別の軸で計算すると、リンゴAのスコアを計算することができ、0.81になります。

最終的にすべてのターゲットのスコアを計算すると、発言にあるオブジェクトと一番似ているものはリンゴBになることが分かります。そのおかげでリンゴを探すアクションでリンゴBを見つけることができました。するとエージェントはリンゴBの近くに移動して取るアクションをします。

デモ映像では、「オレンジのクリップを取れますか」「赤いものに接続できますか」などの音声の指示に従ってKOBUNが適切に動き、成功すると表情にも変化が現れました。

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIエンジニア「Gautier BOEDA(ボエダ ゴティエ)」氏

エモーショナルについて

次に、エモーショナルコンポーネントについて、各モジュールの説明をしていきます。最初は感情モデルで、短期的な感情を表します。喜び、苦痛など時間の経過とともに急速に変化する特長を持っています。

次はムードモジュールで、気分や長期的な感情を表します。時間とともにゆっくりスムーズな変化をするのが特長で、活力的、落ち込んでいる、不安な気分などを表します。感情モジュールとは相互関係にあります。

性格モジュールは、エージェントの構成を定義するモジュールで、時間で変化することはありません。例えば好奇心、恥ずかしい、怠惰などで、性格モジュールは感情、ムードと影響しています。

感情モジュール

まずは感情モジュールを説明します。利用モデルは「OCC Model」という感情モデルから着想を得て開発しています。

最初に、エージェントにとって、そのイベントの「良し悪し」を判断し、種類によってブランチが分かれます。イベントがオブジェクトの見た目に関することであるとき、例えばリンゴを見たときなど、好き嫌いという感情が発生します。

感電が起きるようなイベントのときには「苦痛」と「喜び」の感情が生まれます。もしイベントがエージェントのアクションであれば、さらに分岐していきます。自分のアクション時は「自尊心・羞恥心」、他人からのアクションのときは「称賛・非難」などが生成されます。

紹介されたデモ映像では、KOBUNがクリップを持って感電してしまいました。原因は指示側がボタンを押したせいで電気が流れてしまったからです。それを解析しましょう。

感電するということは、KOBUNにとって悪い(イヤな)イベントであり、苦痛という感情が生成されました。そして原因がプレイヤーがボタンを押したことだと分かり、KOBUNはプレイヤーに対して怒りという感情が生成されました。

ここで、感情の生成はできましたが、どのようにオブジェクトに好き嫌いという気持ちを持つのでしょうか? 実は、感情を生成するときにもうひとつの感情が流れています。先ほど感電したときに苦痛の感情が生成された後に、クリップが帯電しているという形容詞に対して、ネガティブなアフェクトを追加します。

アフェクトは挙動と記憶に残る時間の値を持っています。悪いアフェクトをクリップと帯電の形容詞に与えたので、クリップと帯電しているオブジェクトに出会うと、KOBUNが嫌がって逃げると考えられます。その結果、KOBUNは電気が通っているクリップを嫌いになりました。

その後、もう一度「そのクリップを取ってください」と頼むと、どう反応するのでしょうか?

一旦はクリップを探すアクションはしますが、ビリビリしているクリップを見つけたKOBUNは提示されたプランを拒否して、その驚異をプレイヤーに表現します。

ムードモジュール

続いてムードモジュール「PAD MODEL」です。キューブをイメージして開発されており、P(Pleasure=喜び)、A(Arousal=激情)、D(Dominance=怒り)を司り、これは自分の感情のコントロールがどれだけできるか、という値を表します。

このキューブの中には、すべての感情が内包されており、8つのエリアに分かれ、中央にはデフォルトムードのポイントが存在します。各エリアにはそれぞれ違った感情が存在しています。

感情が生成されると、ムードポイントが時間と共にスムーズに移動していきます。感情は強度と表現時間の値ともに生成され、強度の値が高ければ高いほど、ムードの変化速度が大きくなります。表現時間が経過したら、ムードポイントがゆっくりとデフォルトの位置に戻っていきます。

喜びや怒りの感情に関連して、KOBUNが喜んだり、起こったり、表情も変化していきます。気分によってブレンド機能を使い、スムーズなアニメーションが実現できます。

性格モジュール

最後に性格モジュールになります。これはすごくシンプルなモデルで、怠惰・好奇心などUtilityの値だけとなります。

怠惰10%に設定したKOBUNは、指示したクリップをきちんと取りにいきました。怠惰90%に設定すると、遠くにあるクリップまで行くのを面倒と判断し、近くにある指示とは違うクリップを取ってしまいました。ちょっと横着者な性格になっていますね。

そこで、どうやって怠惰の性格を実装したのか、説明しましょう。

怠惰の性格は、オブジェクトを探すアクションに影響します。適切にオブジェクトを見つけるゴールでは、ターゲットのスコアを計算しており、その軸の一つに「近さ」があります。

働き者のKOBUNの場合、近さの軸の値は0.1とすごく低くなっています。それはあまりスコアに影響しません。近さより大事なことだからです。怠け者のKOBUNの場合は、怠惰の値が高ければ高いほど、近さの軸の重みが変わります。つまりオブジェクトが近ければ近いほど、優先させようとします。

その結果、怠け者のKOBUNは色やサイズの軸を無視してしまいます。一般的に性格モジュールは簡単ですが、たくさんのバリエーションが実現でき、性格のパラメータはいろいろな部分に影響させることが可能です。

例えばゴールのスコアに影響する、プランナーのアクションのセット、コスト、好き嫌いや感情の表現やデフォルトのムードにも影響が出ますし、その性格モジュールのおかげでNPCはひとりひとり違っていることを感じることができます。

取材・文・撮影:細谷亮介

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■イントロダクション ゲームAI研究・開発の全容:三宅 陽一郎氏

■メタAIの基本モデルとゲームデザイナーの役割:水野 勇太氏

■二次元感情モデルに基づくメタAI:里井 大輝氏

※この記事は2019年5月時点の情報です。

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【GDMイベントレポ】スクウェア・エニックス テクノロジー推進部メンバーが明かす、ゲームAI研究開発の最前線―三宅陽一郎氏からのイントロダクション

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年5月17日(金)に開催された「GDM Vol.32 エンジニア向け勉強会:ゲーム産業におけるゲームAI研究・開発の最前線~会話AI、メタAI、ユーザ感情推定~」では、スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部のメンバーをお招きして、GDC2019で発表した内容を中心に、最新の研究成果を紹介していただきました。

本レポート記事では、イベント冒頭で語られた三宅陽一郎氏からのイントロダクションの内容と、イベント後に実施した、GDM運営を仕切るDeNA藤村幹雄へのインタビューをお届けします。

イントロダクション:ゲームAI研究・開発の全容

セッション冒頭で、テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー「三宅 陽一郎」氏より、スクウェア・エニックスの人工知能研究について、全体の概要が説明されました。

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー「三宅 陽一郎」氏

テクノロジー推進部は、スクウェア・エニックスの中でも特に技術研究をメインとしている部署であり、研究とタイトルへの実装の実現を目指す方針を掲げている。そして、知能に対する知見をより深く育成し、その成果を各ゲームタイトルに実装する役割を担っていると語りました。

ゲーム人工知能の分野は、キャラクター・メタ・ナビゲーションの3つのAIの連携で成り立つ「ゲームの内部のAI」と、ゲーム開発に関連する「ゲーム周辺AI」が存在します。

特にゲーム周辺AIの中で重要なのが、品質保証を担保する「QA-AI」であり、密接に関連するそれぞれのメンバーが、各分野において世界をリードするような第一人者になることを目標にしながら、研究開発を続けているとのことです。

そして、社外へのアウトプットの形として、ゲームタイトル・学術論文・ゲーム産業カンファレンスでの発表といった、3つの柱を掲げていることも明かされました。

また、社内ではGDCなどの海外カンファレンスでの講演の内容説明や、ニューラルネットワークについての特集を組んだセミナーを毎週実施し、社内の文化の中に「ゲームAIの在り方」を浸透させることで、当たり前にAIを活用できる意識作りをすることを推進しています。

また三宅氏は、参考文献として『FINAL FANTASY XV』を題材にした記事を、学術論文「GAME AI PRO 3」や人工知能学会誌に寄稿する他、新たな書籍の出版を手がけたり、GDCやSIGGRAPH ASIAなどの講演でも積極的に紹介しています。

セッション内容の紹介

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部のAIユニットでは、ゲームAIの研究開発と ゲームタイトルへの実装に2011年から継続して取り組んでおり、その成果は国内外の学術会議でも多数発表されています。

今回のGDMでは、最新の研究成果について、GDC2019で発表した内容を中心に各セッションが披露されました。各記事レポートは以下のリンクからどうぞ。

登壇者紹介(左から):ボエダ ゴティエ氏、水野勇太氏、里井大輝氏

■キャラクターとのインタラクション:Gautier BOEDA(ボエダ ゴティエ)氏

■メタAIの基本モデルとゲームデザイナーの役割:水野 勇太氏

■二次元感情モデルに基づくメタAI:里井 大輝氏

DeNA藤村幹雄に聞く”GDMの今とこれから”

GDMの運営のディレクションや司会進行も担当するDeNAの藤村幹雄に、GDMの現在とこれからについて、ちょっとインタビューしてみました。

DeNA「藤村 幹雄」

――今回のGDMを終えて、登壇者からはどのような意見がありましたか?

ゲームAIに関連した施策や最新の研究結果の情報は、短い時間ではありますが今後も共有していきたいと伺っています。もちろん各人のスケジュールの都合もあるため、連続での登壇はできませんが、次回以降の開催も、前向きに考えていただきました。

――参加者アンケートでは、高評価な意見が多かったと聞きましたが?

今回登壇していただいた三宅氏は、ゲーム分野だけでなく、AIの研究開発に関するプロフェッショナルであり、知名度もとても高い方なので、彼が統括するテクノロジー推進部のメンバーから最前線の話を聞けたのは、参加者にとってメリットだと思います。

また、学術的な話だけでなく、実際のゲームタイトルや商品、ビジネスにも実際に応用されている話題も、評価が高くなった理由かも知れませんね。

――ほとんどの来場者が次回も参加したいと回答していたと聞きましたが?

ええ、そうです。GDMでは、登壇者のブッキングやセッション内容を「自分の職種に近い人」「隣の会社の同じような職種の人」など、身近な人がどんな仕事をしているのかを紹介するコンセプトを掲げていることが、次回に対する高い期待の表れかも知れませんね。

ゲームクリエイター向け勉強会「GDM」概要【次回告知&開催レポート集つき】
https://genom.dena.com/event/gdm2019/

――これからのGDMでの課題や反省点を教えてください。

毎回、開催後に関係者と振り返りを行うのですが、反省ももちろんありますが、それよりも皆さまからのご意見を参考に、次回はもっとこうしたい、これを取り入れてみようなど、次に向けての楽しみが増えています。

最近申し込みも増えてきており、会場のキャパシティの問題で抽選制にしているんですが、当日のドタキャンも多く見られるので、それを改善するのが課題ですね。

もちろん、料金制にしてドタキャン率を下げることも可能ですが、GDMは収益を目的にしているイベントではないため、参加者が業務調整を一生懸命にして「どうしても行きたい!」となるような、魅力的なコンテンツを用意することで解決したいと考えています。

――今後のGDMはどのように進化していくのでしょうか?

規模を大きくしていくよりも、現在のようにコンスタントに毎月開催して、自分の業務に活かせるような話題を持って帰ってもらったり、会社同士の交流や繋がりを作るコミュニティーの場を形成することを第一に考えて、常に安定した運営を心がけようと思っています。

同時に、複数のセッションが続くような中規模な特別イベントも企画して、年に一回ほど開催したいと画策しています。お楽しみに!

――ありがとうございました!

集計アンケートに寄せられたコメント

今回のGDMに参加した来場者から頂いたコメントを、一部抜粋して紹介します。いただいたご意見は運営チームがすべて目を通しており、今後の運用に役立ててくれるとのことです!

[su_quote]大変勉強になりました。また次回も参加したいです。(プランナー)[/su_quote]

[su_quote]凄く良かったです!特にメタAIの発表は参考になりました。今のプロジェクトでも活用できそうです。(エンジニア)[/su_quote]

[su_quote]特に二次元表面上の感情マップを用いた感情特定などは、分析業務に活かせそうだと思いました。(分析)[/su_quote]

[su_quote]とても未来に期待ができる良いセッション内容でした。 設計方法をもとに自分でも考えたいと思います。ありがとうございました!(エンジニア)[/su_quote]

[su_quote]内容は素晴らしかったですが、5分程度で良いので休憩をはさんで欲しいです(ディレクター)[/su_quote]

取材・インタビュー・文・撮影:細谷亮介

※本記事は2019年5月時点の情報です。

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GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

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【イベントレポ】日本ゲーム大賞2019「U18部門」決勝大会進出は7チームに決定! 審査員を務めたDeNAプロデューサー山口誠にインタビュー

CESA(一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会)は6月9日、セガサミーグループが運営する「TUNNEL TOKYO」において、日本ゲーム大賞2019「U18部門」予選大会を開催しました。

本大会は、18歳以下の次世代クリエイター発掘を目的としたイベントで、チーム(最大5名、1名でも可)にて参加し、制作したゲームの試遊とプレゼンテーション内容を加味して、審査が実施されるものです。

予選大会を勝ち抜いたチームは、「東京ゲームショウ2019」期間中に実施される決勝大会に参加することができます。

司会進行にはスクウェア・エニックス「時田貴司」氏、審査員にグリー「下田翔大」氏、セガゲームス「麓一博」氏、Cygames「星野健一」氏、そしてディー・エヌ・エー(以下、DeNA)からは「山口誠」が参加しました。

スクウェア・エニックス 時田貴司氏司会進行を務めたスクウェア・エニックス「時田貴司」氏

審査を担当した、グリー「下田翔大」氏、DeNA「山口誠」、Cygames「星野健一」氏、セガゲームス「麓一博」氏(左から)

本記事では予選大会の模様と、イベント終了後に審査員を務めた山口にインタビューを実施したので、紹介します。

セガゲームス 代表取締役社長COO 松原健二氏セガゲームス 代表取締役社長COO「松原健二」氏

開催の挨拶として、CESA人材育成部会 部会長 セガゲームス 代表取締役社長COO「松原健二」氏が登壇し、まず参加クリエイターや当日の来場者にお礼を述べました。

そして日本ゲーム大賞「U18部門」を設立した狙いについて、18歳以下のゲームクリエイター志望者が「ゲーム作りを目指しながら、周りの人に楽しんでもらうこと」を経験してほしいため、と話しました。

その後、抽選(なかなか決まらない全員ジャンケン!)によってプレゼンの順番を決定し、予選大会が開始されました。

審査員は、予選大会の前にすべての作品を試遊した上での採点は済ませており、本プレゼンでの評価を加点して、決勝大会に出場する作品を決定するルールとなっています。プレゼンの持ち時間は5分、その後審査員からの質疑応答が実施されました。

参加者の各プレゼン内容を紹介

[su_accordion][su_spoiler title=”『Drag Voxel Distance』 開発者:早坂空也/奥澤大輝/尾崎将志(バンタンゲームアカデミー高等部)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『Drag Voxel Distance』

チーム名:エスカルゴ
開発者:早坂空也、奥澤大輝、尾崎将志(バンタンゲームアカデミー高等部)

すごろくの要素に、キャラを引っ張るシンプルな操作方法を組み合わせたボードゲーム。コンセプトは「圧倒的に親しみやすいゲーム」を目指している。

サイコロの出目によってパワーが変化、マップ内のさまざまなトラップに引っかかると「移動速度低下」など不利な効果を受け、モンスターの範囲内に入っても「1ターン休み」などのデメリットが。他のプレイヤーの邪魔をすることも可能。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『幽体離脱』 開発者:伊豫冬馬(茨城県立竹園高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『幽体離脱』

チーム名:すいか
開発者:伊豫冬馬(茨城県立竹園高等学校)

まず、大きく深呼吸をしてプレゼンを始めた伊豫君。本作品の特長は肉体から幽体が抜け出して動く「幽体離脱」を使った「アクション×謎解き」。主人公は光に弱く、ランプの光の範囲に触れるとアウト。幽体離脱をうまく駆使して突破、謎解きをしながら最深部を目指す。

幽体の状態で使える「フリーズ」を使うと、光を消すことができる。つまり、肉体から幽体離脱→幽体がフリーズで光を消す→肉体に戻りカギを取る、と工夫してステージのギミックを解いていく仕組み。幽体には時間制限があり、幽体で触れるとアウトな光も存在する。

また、世界観を大切にしたストーリーと、その先を暗示するような意味を持った旋律を自作したとのこと。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『ぷるりんの冒険』 開発者:住友嵩征/岡田明樹/川染翔吾(城南高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『ぷるりんの冒険』

チーム名:Swing-bye
開発者:住友嵩征、岡田明樹、川染 翔吾(城南高等学校)

本作品は、スライムのようなキャラクター「ぷるりん」を操ってゴールを目指す、全方向スクロールの2Dアクションゲーム。ぷるりんは緑と赤の2種類存在し、くっついたり離れたりでき、2人プレイも可能。

縦長に合体すると赤と青のぬいぐるみのような姿に、横長に合体すると虎のような姿に変化。通常時は「ジャンプ:普通・スピード:普通・攻撃:遠距離」となり、横長時は「ジャンプ:高い・スピード:低い・攻撃:近距離」、横長時は「ジャンプ:低い・スピード:高い・攻撃:近距離」と能力が変化する。

ゲーム内のグラフィックはテキスト以外すべて自作で、イラスト担当の岡田君が1人で制作したとのこと。またキーボードだけでなくゲームコントローラにも対応し、コンフィグで設定をカスタマイズ可能。裏設定が読める「プルペディア」も実装。

工夫した点として、キャラの動きに対して画面が少し遅れて追随するように設定したり、変わった動きをする敵キャラには、数学で習った「リサージュ曲線」を採用。マップ上には一方通行やカギを使って開ける特殊なブロックも設置している。

今後はマップエディタ、スクリーンショットUI、新ブロック、新キャラの実装を予定しているとのこと。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『Treasure Hunting』 開発者:堤日向(大阪電気通信大学高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『Treasure Hunting』

開発者:堤日向(大阪電気通信大学高等学校)

開発を手がけた堤君は、将来の夢はプログラマーで、高校では情報処理部に所属しており、ちょっとおっちょこちょいな一面もあると自己紹介。「基本情報技術者試験」を取るためにシステムの作り方や考え方を学んだと話している。

本作品は、制限時間内にどれだけスコアを集められるかを競うアクションゲームとなっており、プレイヤーに何回も遊んでもらうため、リピート性の高いゲーム性を考えたとのこと。

ゲーム内でスコアを稼ぐためには「探索してお宝集め」「敵を倒して宝石を奪う」といった2種類の遊び方ができ、ミニマップにはステージ全体が表示され、さまざまなエリアに興味が湧くようなオブジェクトが多数用意されているとのこと。

また、会場に用意した試遊用のビルドにはバグが残っており、本来は行けない場所にも入れてしまい、貴重なアイテムも置いてあるので、ぜひ試遊してそれをゲットして欲しいと、会場の笑いを誘っていた。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『Imaginary World』 開発者:藤澤秀彦(芝浦工業大学附属高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『Imaginary World』

チーム名:Hidetyo’s App
開発者:藤澤秀彦(芝浦工業大学附属高等学校)

開発を手がけた藤澤君は、小学6年生のときにUnityでゲーム制作をはじめ、これまでたくさんの作品を仕上げてきたことを冒頭で話す。

本作品は、謎の世界で目を覚ました自分の名前がわからない少女と、謎のぬいぐるみが協力して世界の謎を解いていくオープンワールドゲーム。これまで作ってきた作品とは規模が違い、プレゼン時の開発状況は約15%程度とのこと。

本作のテーマは「空気を描く」ことで、昼間・夜・雨などの天気の変化によって環境に合ったエフェクトを演出。風景では画面の中心に遠景、手前に近景を表現することによって、プレイヤーが目的意識をしっかり持てるようなデザインを心がけたようだ。

また、シーンによって自然音と環境音を分けて制作し、音が再生される場所の設定を工夫し、臨場感と没入感を実現している。

ゲーム内のモブキャラに関しては、昼夜の行動の違いを細かく設定、さらに「焚き火が雨によって消える」など、状況によって変化する風景にもこだわっている。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『Overturn』 開発者:松田活(函館ラ・サール高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『Overturn』

開発者:松田活(函館ラ・サール高等学校)

本作品を手がけた松田君は、現在高校2年生で普段はUnityでモバイルアプリを開発したり、競技プログラミングに参加しているとのこと。

今回の作品はモバイル対応のパズルゲームで、シンプルなブロックを組み合わせたステージで、プレイヤーを動かしてゴールへ導くルールとなっている。

既存のパズルゲームに多い、プレイヤーを上下左右に動かすのではなく、本作では動き方が異なり、マス目に正三角形がくっつき、回転して壁に沿うような動きをするのが特長。

ステージ上のブロックの特性について、茶色のブロックは固定されて動かず、灰色のブロックは押して平行移動や回転させることが可能。

ゴールの条件は、青い丸の地点で静止することが必要で、簡単にゴールできそうなステージでもゴール地点にピッタリと止まらなければダメ。氷のようにすべるブロックも存在する。シンプルな見た目とは裏腹に考える要素も多いパズルとなっている。

ステージのシーン遷移の際にブロックが動くアニメーションを導入し、物理エンジンなどは一切使っておらず、自作のプログラムでそれらしい動きを再現。今後はゲームタイトルにある「Overturn(ひっくり返る)」という意味と同じく、ステージが反転する、ブロックに触れると反転するなどギミックを実装予定とのこと。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『浮遊大陸』 開発者:髙橋勇輝/岡野日翔/香田駿/本間崚太郎(山形県立米沢興譲館高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『浮遊大陸』

チーム名:戦場に咲く一輪の草
開発者:髙橋勇輝、岡野日翔、香田駿、本間崚太郎(山形県立米沢興譲館高等学校)

4名のチームで制作された本作品は、部活でC言語プログラミングを学習し、さらなるゲーム制作による技術の向上を図るために開発したとのこと。DxlibとC++を用いて制作されている。

ゲームジャンルは2Dアクションゲームで、想定プレイ時間は約15分、空に浮かぶ大陸が舞台となっており、空中に生成された敵が大陸を破壊する中、それをかわしながら生き残ることが目的になっている。

「鉱石回収システム」は、4種類の武器を使うためにそれぞれに対応した鉱石が必要となり、敵が大陸を破壊した際に露出したものを回収。ステージの後半になると強い鉱石が取れるように。

敵を倒すと入手できるコインは道具屋で「HP1000回復」「攻撃力2倍」などバフ効果を購入することが可能。このシステムのおかげで、生き残るだけでなく敵を倒す目的にもつながっている。

マウスの右クリック長押しで照準を合わせ、左クリックで攻撃。正確な攻撃にはプレイヤースキルが求められる。

プレイヤーの武器は近接武器・ナイフ・ランス・大剣の4種類、ダメージ量と攻撃範囲がそれぞれ異なっており、状況に応じて使い分けることが必要になる。また、プレイするたびにマップの構成が変わるランダムマッピングシステムも導入。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『shotlix』 開発者:鎌谷天馬/池田逸水/改野由尚(N高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『shotlix』

チーム名:shotlix
開発者:鎌谷天馬、池田逸水、改野由尚(N高等学校)

本作品は、邪魔してくるブロックを銃弾で消したり、回避しながら散らばっている数字を集めてハイスコアを狙うシューティングゲーム。

自機はオートで進み、十字キーで進行方向を操作して数値を拾っていく。途中の邪魔ブロック(数秒に一回縦または横一列に登場する)は銃弾を発射して突破する。邪魔ブロックに当たるか、枠外に出てしまうとゲームオーバー。ステージ上には、縦断補充や獲得点数が2倍になるアイテムなどが出現する。

十字キーとスペースキーだけの簡単な操作、シンプルでありながら奥が深いプレイが魅力となっている。ログインが必要ないランキング機能やSNS共有機能も搭載。

制作には、ライブラリに「phina.js」「jQuery」、サーバサイドに「Node.js(Express)」を使用。Unityを採用しなかったのは、限りある時間の中で、エフェクト作成に時間を割かれてシステム自体がおろそかになる恐れがあったため。

また、対戦機能を実装する予定だったが、通信にラグが出てしまい、予選大会までには間に合わなかったとのこと。

息抜きにプレイできるように、UIはフラットデザインにパステルカラーを用いてオシャレで親しみやすいデザインを実現、また事前にテストプレイを多くの人にしてもらい、そのフィードバックを元に改善を繰り返している。

今後の展望は、モバイル端末のサイズに応じて、ステージの幅や高さ、グリッド数を変える予定。対戦モードの追加も考えているとのこと。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『Flick Drop』 開発者:大西海人(大阪電気通信大学高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『Flick Drop』

開発者:大西海人(大阪電気通信大学高等学校)

この作品を担当した大西君は、『Treasure Hunting』を制作した堤君と同じ高校で同じ部活の同級生とのこと。

本作品はスマホ対応のパズルゲームで、四方向のフリック操作のみに限定し、誤動作の可能性をなくしている。

ルールは「同じ色のブロックを4つ揃えると消える」「灰色のブロックは周囲のブロックを消すと消える」「ブロックを消すと出現するはずだったお邪魔ブロックを消せる」という3つとなる。

特長として、フリック操作で感覚的にブロックを操作して、爽快な連鎖を楽しむことができ、ちょっとした空き時間に手軽に遊べること。ランキング機能や難易度選択も実装。

今回の制作で大西君が感じたのはグラフィックの改善について。「プログラムが書けても絵は描けないこと」を痛感したとのこと。そして1人で1つのゲームを作ることは本当に大変で、データが飛んだり、致命的なバグで一から作り直しになったときは、床に突っ伏して、悲しさと悔しさが入り混じったよくわからない感情のまま、笑い泣きをしていたとのことだ。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『手裏剣Jump』 開発者:池上颯人(横浜市立美しが丘小学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『手裏剣Jump』

開発者:池上颯人(横浜市立美しが丘小学校)

池上君は、日本ゲーム大賞2018「U18部門」で銀賞を受賞した小学生のクリエイター。去年よりもっと面白いゲームを作るために動きや仕掛けが楽しい忍者アクションゲームを作り始めたと話す。

まず、敵を凍らせながら進む「氷結の術」や、手裏剣の間を進んでいく「手裏剣ジャンプ」などの仕掛けを考えていき、締切一ヶ月半前に完成した!と思いきや、ゲームを面白くするいちばん大事な動きがないことに気が付いたとのこと。

忍者といえば「手裏剣」、それに身軽なジャンプを組み合わせたアイデアで、相手に手裏剣を当てて倒し、跳ね返ってきた手裏剣でジャンプすることを実装。

手裏剣を投げると「当てた敵を倒す」「跳ね返った手裏剣に当たるとジャンプ」「アイテムを取って発動」ができる。

ゲームの魅力は、手裏剣を当てて敵を倒しながらジャンプする新しい操作感、英語と日本語のチグハグなやりとりが展開する笑えるシナリオ、ステージに登場する多彩な仕掛けの3つ。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『朝を知らぬ星』 開発者:梅村時空(N高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『朝を知らぬ星』

開発者:梅村時空(N高等学校)

梅村君は小学生の頃からプログラミングをはじめ、Unityインターハイ2018で審査員特別賞を受賞した経歴を持つ。

このゲームを作ったきっかけは、友達と一緒に遊べるゲームを作りたいと考え、協力プレイ対応の3Dアクションゲームが遊びたいと思ったからとのこと。

本作品の世界観は「太陽が昇らなくなった世界」で、地上にはバケモノが徘徊し、主人公は地下鉄の駅を拠点として戦う。バトルの難易度は高めに設定。

難易度と爽快感のバランスを考え、ジャスト回避でチャンスを作って一気に攻める「静と動の対比」を大切にしている。画面分割と役割分担ができるマルチプレイも検討中。

キャラクターの造形はブレンダーを使ってリアル調に制作、電柱やガードレールなどオブジェクトはほぼ自作して空気感を演出。

作業効率の上げるために、Unityのタイムラインで技の調整をしており、今後はネットワークマルチプレイ、きせかえのシステムなどを実装予定。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『ふにゃごん』 開発者:宮崎章太/西岡明矢斗(神戸市立科学技術高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『ふにゃごん』

チーム名:ふにゃごん制作委員会
開発者:宮崎章太、西岡明矢斗(神戸市立科学技術高等学校)

本作品は独特の操作性を持つ、ふにゃっとした怪獣「ふにゃごん」を操作する巨大化3Dアクションゲーム。

操作はスティックのみ、右で左足、左で右足が動き、左右交互に動かすことで移動できる。上で火炎放射、下で吸い込み行動。操作に慣れると楽しくなるような感覚を実現している。

広い街のステージでは、建物を壊したり、火炎で燃やして進んでいき、設置されている銅像を吸い込めばクリアになる。しかし銅像を含めて自分より背の高い物体は吸い込めないため、自分より小さいオブジェクトを吸いながらふにゃごんを大きくしていく必要がある。

高いオブジェクトをシッポで倒して吸ったり、障害物を燃やして進むことも可能。隠されたトレジャーアイテムも存在する。

また、ふにゃごんにはアニメーションではなく、ラグドール物理を採用。各関節にジョイントを作りパーツをつなげ、パラメータを調整することでバネのような効果を与えている。

この手法だと、ふにゃごんが巨大化するとジョイントのバランスが崩れて、まともに動かなくなる問題が発生。解決法としてステージを小さくするとともに、質量も変化させることを考えたとのこと。

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[su_accordion][su_spoiler title=”『KAISENDOOOON!!!』 開発者:田染颯野/水上嵩大(ヒューマンキャンパス高等学校)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

『KAISENDOOOON!!!』

チーム名:バーチャルSUSHI↓
開発者:田染颯野、水上嵩大(ヒューマンキャンパス高等学校)

本作品は、産地直送の釣りゲームで、コンセプトは「狙って、釣って、盛り付けて」。このゲームは、小さい頃海鮮丼に好きな具を思う存分乗せることができなかった、悔しい思いをした人に向けて作ったとのこと。

魚をタイミングよくアワセ、タップして釣り上げ、そのまま上にフリックして丼に盛り付ける。魚影である程度の魚種を判断でき、マグロやサーモン、潜水艦なども釣れる(ここで会場では笑いが起きた)。

盛り付け時には、魚は自動的に切り身に変わり、制限時間内にどれだけ乗せられるかがポイントになる。完成した丼は視点変更で観察することが可能。

釣った魚を飛ばす表現や、フィジカルベースのテクスチャを使用して、魚のオブジェクトをリアルに再現、魚の質感や鮮度にもこだわっているとのこと。

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決勝大会進出は7作品に決定!

すべてのプレゼン終了後、厳正なる審査が実施されました。激論を繰り広げた結果、当選枠が1つ増えて7作品に変更されたことが時田氏よりアナウンスされ、会場はざわめきに包まれました。決勝大会進出作品は以下に決定!

『朝を知らぬ星』
選考理由:アクションゲームの基礎の部分を理解しているクリエイターが作っていると感じ、プレゼンでも、この先の展開も期待できると思われたので選考しました。

『KAISENDOOOON!!!』
選考理由:コンセプトがわかりやすく、シンプルなゲームシステムは審査員にも刺激になる作品でした。今後は釣りの楽しさを追求し、魚種のバリエーションを増やしてほしいですね。ちなみに、本作品を手がけた水上嵩大君は、前大会で落選して悔し泣きした選手なんです。

『Overturn』
選考理由:非常にシンプルなゲームシステムですが、細かい演出部分など完成度も高かったです。また、ひとつの作品を作り切ること、手を抜かずに完成させる気持ち、さらに先を目指す姿勢を感じました。

『ふにゃごん』
選考理由:一番目を引いたのが独特の操作性で、難しいと思いつつ慣れてくると楽しくなる操作感は、ゲームを楽しむ根幹の部分であり、それを上手に表現できていた作品でした。

『幽体離脱』
選考理由:「幽体離脱」を採用したテーマ性が素晴らしかったです。幽体離脱の仕組みをどうにか伝えたいという試行錯誤と、ゲームプレイ時のユーザーのことを考慮する、導入方法も好感を持てました。

『手裏剣Jump』
選考理由:去年に比べてゲーム内容だけでなく、プレゼンもパワーアップしています。アクションゲームの仕組みのコア部分も面白いので、ステージだけでなく敵もギミックのひとつとして調整するともっと面白くなると思います。

『shotlix』
選考理由:試遊の段階で完成度がとても高く、チームで力をあわせて考え、きちんと完成した作品をユーザーに届けることを見据えて作っていることが、決め手となりました。

バンダイナムコスタジオ 斎藤直宏氏バンダイナムコスタジオ「斎藤直宏」氏

最後に閉会の挨拶として、CESA人材育成部会 副部会長 バンダイナムコスタジオ「斎藤直宏」氏より、本大会が、若い人にゲーム作りのチャンスを与える場になることを目指すだけではなく、出場者の「自分が作りたい、遊びたいゲームを作る姿勢」や「これまでに見たことないアイデア」を目の当たりにして、会場のプロのクリエイターが刺激を受けていることが嬉しいと話しました。

イベント後インタビュー

今回の審査員に抜擢されたDeNAプロデューサー山口誠に、今回のイベントの感想などを直撃インタビューしてきました。山口は、2018年および2019年の2年連続で審査を担当しています。

――審査お疲れ様でした。今回のイベント、審査を終えて率直な感想を教えてください。

お疲れ様でした! 今年の応募作品は、去年と比べて完成度が高いことが印象的でした。やりこみ要素やリプレイ性も含めて、実際に手に取ってプレイしたくなる作品が多かったですね。

プレゼンに関しては、みなさん上手だと感心しました。国内では、海外のイベントのようにプレゼンの文化が浸透しているわけではないのに、自分の伝えたいことを、高いクオリティできちんと発表できているのは驚きでした。

――まだ会社などで経験してないはずなのに、すごいですよね。

そうですよね。企業で普通のプレゼンとして、十分通用するレベルだと思いましたよ。

――このような次世代の若いゲームクリエイターを育てるイベントに関して、どう感じていますか?

まず、このようなチャレンジをする場所があるのは貴重だと感じています。ゲーム作りを目指している若いクリエイターに向けた「賞レース」というゲームのような目標となっているので、燃えることができる条件は揃っていると思います。

一方で、これから開催が続いていく中で、厳選された作品ばかりがフューチャーされてしまうことが、今後の課題になりそうだと懸念しています。

予選大会を知らない人が優秀作品だけを見て「自分の作品だと太刀打ちできない」と感じてしまわないように、メディアを通じて幅の広い作品がたくさん応募されていることを伝えてあげてほしいです。参加への敷居は本当に低いので、未完成の作品でも予選大会を突破できる可能性は大いにあるんですよ。

――確かに荒削りだけど「こんなゲームを作りたい!」という熱量は感じましたね。

例を挙げると、決勝大会に進出した『KAISENDOOOON!!!』に関して、審査員の中でも残したいという声が多かったんです。いわゆるネタ枠に捉えられがちな作品なんですが、ゲームって、一見ふざけたような発想からできることもありますし、後からコンセプトを磨いていけば面白いゲームになり得ます。とにかく気軽に考えて、まずはトライできる環境になればいいな、と思います。

決勝大会進出が決まって、思わず喜びハイタッチする『KAISENDOOOON!!!』開発者の田染颯野君と水上嵩大君

――参加者たちとは、どのような交流をしましたか?

自分たちが同じ年齢のときに比べて、意識が高いのがビックリしました。イベントの現場で大人と話すことって緊張して気後れしがちですが、ちゃんと会話をしながら自分をアピールする姿勢はすごいですね。

控室で登壇を待つ参加メンバーたち。とにかく楽しそうで、緊張している様子はありませんでした。

――プレゼン後の質疑応答もしっかり受け答えしていましたね。

ええ。みなさんクリエイターとして、作りたいものを作る、という気概を強く持っているので、思いがブレずに言葉に現れるのかな、と感じました。

――参加した若いクリエイターや会場の様子、作品を見てどう感じましたか?

ゲーム業界の人は、時間があればぜひ足を運んでほしいですね。現在活躍しているプロのクリエイターは大きな視野を持ちながら、ゲームそのものを事業・サービス、商品として扱わなければならず、思考が「大人っぽく」なりがちです。

ですが、純粋な楽しみをゲームで表現する幅に限界はないので、ちょっと脱線したアイデアや、くだらない企画もどんどん形にするような純粋な「面白い」を追求するゲーム作りに触れられる良い機会であることが、参加者や会場を見て改めて感じられると思います。

去年と今年の応募作品が誰でもプレイできる試遊コーナーが設置され、大盛況!

また、技術面を含めて今回の大会はレベルが高いので、後ろから新しい風に追いかけられるような経験もしてほしいな、と思いました。僕も偉そうに審査員していますが、自分が同じ歳でゲームを作れと言われたら、なかなか難しいと思いますよ(笑)。

そう考えると、今回参加している若いクリエイターは若いけどすでに頼もしいので、現在バリバリ働いているクリエイターも、お互いに切磋琢磨できることに気付くはずです。

――制作だけでなくマネジメントの役割を組み込んでいるチームもいましたね。

実は、そのチームメンバーと話をしたんですが、学校では起業部に所属しており、部活動で学んだマネジメント関連のエッセンスも開発に取り入れているらしいんです。

プロの開発チームに必ずマネジメント担当者がいるのと同じく、完成までどう作るのか、スケジュール感を含めてきちんとチームで考え、構築できるチームが出現してきたのは、驚きですね。

――この年齢でマネジメントまでできるなんて驚異ですよね。

そうですね! もし、昔ながらの感覚値だけで開発する古いチームに彼らが参画したら、そもそものチームビルドの方法や完成予定の目標について、質問の嵐になると思いますよ(笑)。特に彼らのチームではきちんと「捨てる」という工程を踏んでいるのが、興味深かったポイントです。

少人数で開発していると、やりたいことをどんどん追加してしまい、仕様が複雑になることが多いのですが、(本作品を作る上で)彼らはUnityは使わないという「捨てる」選択をしました。良いところを活かし、できない部分はバッサリと捨てることは、チームビルドが完成している証拠ですし、そこに感銘を受けました。

――最終的に決勝大会の枠が1チーム分追加になりましたが、審査はかなり大変でした?

そうですね。今回は審査チーム内で、審査点を基準としたときに、点数にへだたりがあった大きい議論がありました。最終的にゲームの分類や目指すべきコンセプトを考え、7作品に決定しました。

5作品に絞ってしまうと、方向性の選択肢が少なくなり「こんなゲームを作ってもいいんだ」といったU18部門が目指すメッセージングに偏りが出てしまいます。「応募するにはちゃんとしたゲームを作らなければいけない」という先入観を持たれないようにしたいんです。

――予選大会の作品の中で個人的に気になったものは?

やはり、去年銀賞を受賞した池上颯人くんの『手裏剣Jump』ですね。彼の独特のセンスや特長がゲームに現れていて、すでに作家性を持っているのもスゴイですね。今年もアクションゲームを作っていますし、ボクセルで表現したモデリングや、アクションとしての面白さにフォーカスしている、彼らしいカラーに惹かれますね。ホント、末恐ろしいですよ(笑)。

選出を喜びながら「決勝大会までにもっと頑張ってゲームを完成させます」と力強く話す池上颯人君

――DeNAとして、このような取り組みに今後どのように関わっていきたいと思いますか?

私は社内で新卒採用と育成に関わったり、業界の若い人にどうやってゲームの作り方を広めるか、チャレンジを続けています。ゲーム制作に自発的に興味を持てる場所とタイミングを、我々から提供していくことが大きな目標です。

タイミングを与える時期については、年齢的にできれば早いほうが良いと考えています。

高校より前にゲームクリエイターを職業と考えるきっかけがあれば、専門学校やゲーム作りを教えている大学などを選ぶ機会がありますし、いかに若いうちにゲーム開発者になる方法をアプローチできるかが、次のクリエイターを増やすカギになると考えています。

以前、新卒社員にヒアリングしたところ、インターンなどの時期でようやく「ゲームプランナーっておもしろそう」と気づき、そこから勉強を始めたと話していました。インターンからの成長を見ていると、もっと早い時期から勉強していたらどうなったんだろう?と思うことがあります。ですので、18歳以下の時期にゲーム作りに接点を持てるイベントがあるのは、とても有効だと思っています。

――U18部門で学んだこと、気づいたことを社内のチームにどうフィードバックしていきますか?

まずは、予選大会を終えて決勝大会が東京ゲームショウで開催されることに、社内の人間にも興味を持ってもらい、観戦してもらえるようにしたいですね。

――将来、自分の子供がゲームクリエイターを目指したらどう感じますか?

それこそ、まずはU18部門を目指してゲームを作ってほしいですね!

――それでは最後に、会場に来れなかった人に一言。

決勝大会や来年の予選大会では、ぜひ会場に足を運んで、プレゼンを見たり、試遊したりして会場の空気を感じて、若いクリエイターの勢いを感じてほしいですね。

――ありがとうございました。

取材・文・撮影:細谷亮介

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GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

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DeNAのビジネスプロデューサーは信念と熱量で勝負! ブラウザゲームの開発経験が活きる理由とは

『逆転オセロニア』とマクドナルド様のコラボレーションなど、数々の新しい驚きと楽しさを生み出したビジネスプロデューサー大沼諒昌。誰もが驚くような組み合わせで、新たなエンタメを生み出すビジネスプロデューサーの仕事とは、一体どのようなものなのでしょうか。GeNOM編集部が紐解いていきます。

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大沼 諒昌 | Ryosuke Onuma

2012年DeNA新卒入社。ブラウザゲームのプランナーからスタートし、大型IPタイトルのプロデューサーなどを経て、『逆転オセロニア』のビジネスプロデューサーに就任。数々の大手企業とのコラボレーションを手がけてきた豊富な実績を持つ。現在はeスポーツ事業に従事。特技はマジック。[/su_note]

ビジネスプロデューサーとは

――「ビジネスプロデューサー」という職能は業界の中でも珍しいと思います。まずはビジネスプロデューサーの役割を教えてください。

一言で分かりやすくお伝えすると、ゲーム内のイベントやリアルイベントで、異業種の企業様との「コラボ」や「イベント」を企画し、実現させていく仕事です。

具体的な流れとしては、まずは企画全体の青写真を描いて、社内外のステークホルダーに相談し始めます。そこから、プレイヤーの体験や関係者のメリットを考えつつ、周囲のメンバーを熱量高く巻き込んでいき、あらゆる課題を乗り越えながら企画を実現する。これが私の考えるビジネスプロデューサー像です。

そのため、常日頃からゲームと企業、企業と企業、ゲームとサービスなど「何と何を結びつけて、どんなものを生み、どんな人に向けて提供すると面白いか? 」など妄想をしたりもしています。

――仕事を進める上で、特に大変だと思うことは何ですか? 

ビジネスプロデューサーの仕事は、コラボによって誰も見たことがない価値(=楽しさ)を生み出すことで、それによってプレイヤーや関係各社が喜んでくれることを目指しています。

常に未知の企画を生み出していくことになるので、実現に向けての進め方など一切正解はありません。それに加えて、企画から実現まで思ったように進むこともありません。前例のないことばかりなので、どこで何が起きるのか分からず、いつも大変ですね(笑)。

でも、そういう状況の中でも、前のめりに「これが実現したい! 」という情熱を絶やさないことを大事にしています。実現することが目的ではないですが、やったほうが良いと考えた以上は、ピンチをチャンスに切り替えながら、実現してしまうような情熱的な人が、ビジネスプロデューサーに向いているタイプかもしれませんね。

――企画力も大事ですが、さらにそれを実現させていく「情熱」も大事なのですね。

はい。さらに実現に向けては、その情熱とともに、事業としていかに成功させるかというビジネス的なジャッジもしていきます。数々の意思決定をする必要もありますし、このあたりは世界観や理想の体験を描いて企画を実現させていく、過去のブラウザゲームのプロデューサー経験が活きていると思います。

コラボ企画実現の舞台裏

――『逆転オセロニア』3周年(2019年2月)で開催されたマクドナルド様とのコラボは印象深い企画でした。このときの立案のきっかけや、印象に残っている出来事を教えてください。

2018年に開催した2周年のときにもマクドナルドさんとはコラボさせていただいていて、今回のコラボのキッカケは、そのときにさかのぼります。

当時、いろいろな経緯から是非マクドナルドさんとコラボさせていただきたい、と思うに至った際、まだまだ『逆転オセロニア』(以下、オセロニア)は日本で一番プレイされているゲームとは言えないため、先方にとって『オセロニア』と組むメリットを提供できます! と、胸を張って言える企画を設計するのに苦労しました。

そこで着目したのが、『オセロニア』は、リアルイベントに家族連れでも安心して遊べたり、対戦で負けた人も笑顔で帰れるようなアットホームな雰囲気が支持されている点。そのほか、友達と一緒に対戦したり、情報交換したりできるゲーム性も相まって、私個人としてもマクドナルドで集まって『オセロニア』で遊ぶ、といったイメージが持ちやすかったんです。

2019年2月2日に開催された3周年記念リアルイベント「オセロニアンの祭典」の様子

そこで、目指しているコンセプトやアプリのダウンロード数だけでなく「マクドナルドさんと一緒に夢を描きたい」とご相談させていただいたところ、先方の担当者様が尽力してくださったのもあって、コラボが実現できました。その過程には、実にいろいろなドラマがあったのですが、最終的には大きな成功になったと思います。

そして今回は3周年ということで、マクドナルドさんともう一度コラボしたいとご相談させていただいたところ、すぐにご担当者様と顔を突き合わせて、企画を詰める機会をいただけました。

――なるほど、昨年の実績が今年の実現につながったのですね。コラボイベントを企画する際に、何かコツはあるのでしょうか? 

まずは、ペルソナ(人物像)やユーザー体験を徹底的に細部まで想像・設計することです。

2周年の時のコラボ企画の話になりますが、そのときは「俺たちオセロニア部」というコンセプトをまず決めました。クラスで仲の良いグループの中で一人『オセロニア』をやっている男子高校生を想像してペルソナに設定したんです。ピンポイントですよね(笑)。

その男子高校生は普段から「みんなも『オセロニア』やってほしいな」と思っていて、以前『オセロニア』に誘ったものの友達はダウンロードしてちょっと遊んだだけで離脱してしまった、という状態なんです。

独自コンテンツや限定キャラクターが登場した、3周年コラボ時のゲーム内画面

そんな中、実施したコラボを利用して「今プレイしたらセットが割引になるって! もっと遊ぶとハンバーガーが無料でもらえるぞ! 」みたいな、友達を再度誘うきっかけになるようなネタをたくさん提供しようと考えました。あわせて、有名YouTuberが出演するCMを見て「もしかして昨日CMでやってたアレ? 」みたいに話題にもなりやすいかな、と考えました。

そんな風に誘われた友達が、実際にゲームをやってもストレスなくランクを上げたり、所持していないキャラクターもお試しで使える強いデッキで遊べるように、まずはゲームをサクサク楽しんでもらうような施策も組み込んでいったんです。

実は悩んでいた新卒時代

――企業コラボなど、新たな企画を生み出すことに苦労されていた経緯もありますが、全体的には順調にキャリアを積まれている印象があります。

いえいえ、そんなことはありません。2012年に新卒入社して、1年目は新規のブラウザゲームの開発プランナーになりましたが、恥ずかしながらノーバリューでそのプロジェクトを卒業しました。当時は、毎日大量のインプットを受けて、わかっているつもりだけどわかってない! みたいな未熟者でした。今でこそ笑い話ですが、当時はとても悔しかったのを覚えてます(笑)。

その後、2年目以降はいくつかのブラウザゲームプランナーを担当しました。運用プロジェクトに途中から参加する際には、そこでは意見を言い合いつつ、信頼関係を築きながらタイトルに貢献していくことを学びました。

それから入社6年目くらいまで、ブラウザゲームの大型IPタイトルにプロデューサーとして関わらせていただき、仲間の支援も盛大に受けながらではありますが、このタイトルを好調に運用できたことは、現在の自信にもつながっています。

悩んで、そして徹底的に考え抜く

――時期が前後しますが、ビジネスプロデューサーに転身したきっかけを教えてください。

若手の時期に他のプロジェクトで、現在『オセロニア』のプロデューサーのけいじぇいさん(※1)に本当にお世話になったんです。その恩返しの意味でも、彼を日本一のプロデューサーにしたいと思い、社内で募集がかかったタイミングで立候補しました。

※1…『逆転オセロニア』プロデューサー香城の愛称

――ビジネスプロデューサーになった当初は、どんな状況でしたか?

最初は「ビジネスプロデューサーの存在価値って、一体なんなんだ……」って悩んでいた時期があり、正直苦しかったのを覚えています。まわりがバリバリ仕事をこなしている中、2週間くらい進捗せず、アイデア用のノート1ページも埋まらず、何も思いつかない時期もありました。アウトプットに何が必要なのかも理解できず、一週間、ずっとゲームの動画だけを見て過ごすこともありました。

――かなり悩んだ時期があったんですね。そこからどのように気持ちを切り替えていったのでしょうか?

まずは基本に立ち戻り、『オセロニア』のプレイヤーをもっと楽しませることは何だろう、と徹底的に考えるようになりました。そのためにもプレイヤー目線に近づくため、リアルイベントも全部参加して会場でプレイヤーの熱量を肌で感じたり、ゲームもすごい勢いでプレイしたんです。はじめて最高クラスに到達できたときは、とても嬉しかったですね(笑)。

――そんな経験を通じて、先ほどのマクドナルド様との企画のように、他のプレイヤーと交流するようなイベントを実施してみようと思ったんですね。

そうですね。最終的に「もっとプレイヤーが熱狂するためには、こんなイベントが良いかもしれない」とある程度、自分のアイデアに自信を持ち始めたのが半年後くらいで、実際に開催までこぎつけたのは、さらにその半年後くらいでしたね。

ブラウザ時代の経験が、今に繋がっている

――冒頭でも少し触れていただきましたが、ブラウザゲームのプロデューサー経験はどのように活きているのでしょうか?

ブラウザゲームの魅力って、他のプレイヤーと交流するソーシャル性にあると思います。今流行っているSNSや動画配信サービスなども、すべて「人」と関係しているコンテンツですよね。

ですので、「プレイヤー同士」や「来場者同士」など、いろいろな人の組み合わせにプラスして「これを組み合わせたら、もっと盛り上がる!」と考える設計方法に、過去のブラウザゲーム開発時代に経験した「コミュニティを活性化させる」という手法が活きていると思います。

ブラウザゲームのプロデューサーは、コミュニティの形成が得意な部分が一番の武器でもありますし、その点は『オセロニア』もリアルイベントなどコミュニティを重視しているタイトルなので、親和性はとても高かったですね。

また、IPを利用したタイトルを担当していたとき、版元様がいかにそのIPを大切に扱っているかを学んだ経験は、現在の自分の下地になっています。

――開発チームとのコミュニケーションにも活きていそうですね。

そうですね! 自分が企画した施策については、社内の各セクションに作業をお願いする立場でもあるので、説明責任が常に問われます。その点においても、デザイナーやエンジニアなど開発側の目線や心情もわかっているので、相手の立場に立って施策の説明をしたり、具体的な実装の相談に乗れたりしているかなと思います。

業界での活躍の場は確実に増えている

――ブラウザゲームのプロデューサー経験もそうですが、いろいろな開発チームの中で磨き上げられてきた大沼さんのコミュニケーション能力が、ビジネスプロデューサーにも活きているように感じます。

そうですね、ビジネスプロデューサーになれる人って、ちょっと調子乗ってるような人が合っているかも知れません(笑)。冒頭でお話したこととちょっと重複しますが、「このゲームを自分が支えてやる! 」みたいに、熱量が高く、やりたいことに溢れている人のほうがいいですし、市場的にもそんな気概を持った人は貴重な存在だと思いますよ。

ただ私の場合、この仕事においてゲームプロデューサーなどの経験が役立ちましたが、「IPの取扱いには自信がある」「渉外活動なら負けない」という違った強みがある方でも、チャレンジし甲斐のある仕事だと思っています。自分の道は自分で切り拓いていく、という気概のある方でしたらチャレンジいただきたいと思っています。


 

以上、まったく新しい驚きを生み出す使命を持った、DeNAのビジネスプロデューサー大沼のインタビューでした。

これからも、強い信念とコミュニケーション能力の高さ、何より人と人の関係性が大好きな「人柄の良さ」を存分に活かして、世の中にはまだないような、ワクワクする化学反応を起こしてくれると期待しています。

インタビュー・執筆:細谷亮介
編集:佐藤剛史/細谷亮介
撮影:佐藤剛史

※この記事は2019年3月時点の情報です。

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【DeNA分析部特集Vol.5(後編)】未来を予測し、最適解を導き出し続ける組織 〜アナリストとして成長し続けるための環境とは〜

DeNAのゲーム事業において、参謀として様々な意思決定をサポートする分析部。Vol.4までは、アナリストをはじめとした各メンバーの役割を紹介してきました。さらに、Vol.5前編では、2011年から始まったDeNAゲーム事業における分析の歴史や現在のカルチャー、そして今後の課題などを分析部マネージャー3人の方に語っていただきました。

https://genom.dena.com/other/analysis_department2019_a/

Vol.5(後編)では、分析部の研修プログラムやキャリアなどをご紹介していきます。前編に引き続き、部長の藤江清隆に加え、マネージャーの吉川正晃と松﨑友哉の3人に話をうかがいました。

若手からシニアまでをサポートする研修の仕組み

――これまでの分析部特集で、個々の役割からビジョンまでを聞かせていただきました。後編ではまず、分析部の研修システムについて教えてください。

藤江清隆(以下、藤江:分析部では研修プログラムを充実させており、SQLを全く書けない人が書けるようになったりなど、一人前のアナリストとして活躍できる技術的なスキルアップを研修として用意しています。

そのため、アナリストとして必要なロジカルシンキングやゲーム業界の動向、マーケティングの基礎知識など、幅広く座学を受けられる体制になっています。

――そうすると、研修は若手メンバーが対象で、シニア向けには行わないのでしょうか。

藤江:いえ、そういうわけではありません。分析にも行動ログ分析やユーザーリサーチ、市場分析などいろいろな領域があり、それぞれ求められるスキルセットも異なります。

たとえば、行動ログ分析においてはシニアレベルのスキルを有していてもユーザーリサーチは未経験、といったケースもままあります。そういった場合、業務上の必要に応じて足りないスキルを身につけるための研修を受けることができます。

分析部 部長/藤江清隆

――具体的にはどのような研修を行うのでしょうか。

松﨑友哉(以下、松﨑:技術的なキャッチアップの面で言うと、まずはデータの流れをフロー図で可視化し、それぞれの役割において、どのような技術やツールを使っているかということをオリエンテーションします。そして、その方がどの役割を担うかによって、どの研修を受けるかを相談していきます。

研修というと座学がメインのイメージがあるかもしれませんが、分析部では思考力はもちろん、コミュニケーションの取り方も重視しているので、そこに苦手意識がある方でも、DeNAなりの分析の考え方をキャッチアップできると思います。

――研修はどのような流れで進めるのでしょうか。

松﨑:分析部の資料などを講師の方に説明してもらいながら、課題を解いてそのフィードバックを受けるので、キャッチアップはしやすいと思います。この研修が終わった瞬間から、社内で価値を出し始めることができるように、ひとりひとりカスタマイズした研修プログラムを組んでいることも、分析部ならではの特徴だと思います。

分析部 マネージャー/松﨑友哉

https://genom.dena.com/develop/analyst/

どんな初歩的な質問でも、誰かが迅速で答えてくれる

――講師はどんな方が務めるのですか?

松﨑:基本的には講師は現場で一緒に働くリーダーや、その部署で一番環境を理解しているメンバーが担当します。座学でわからないことがあれば、その場で質問をすることも可能です。

藤江:社内の連絡ツールとして使っているSlackチャンネルの中で、「お助けコーナー」という質問チャンネルがあり、新メンバーは必ずここに参加します。

ここでは、どんな初歩的な質問をしても構いません。自分のメンターが忙しくて聞きづらい時でも、Slackチャンネルなら40人近く在籍する分析部の誰かがすぐに答えてくれます。分析部のメンバーは、かつてここで質疑応答しながら、徐々にキャッチアップしていきました。

もちろん自分で調べることも大切ですが、わからないことはすぐに聞くというのも、アナリストとして求められる姿勢だと思っています。ちなみに、この「お助けコーナー」にはマネージャーは参加していないので「こんな初歩的な質問をするのは恥ずかしい」「同じようなことを何回も聞くのは気が引ける」など気にせずに、安心して質問ができます。

――それは良いコーナーですね。一方で、シニアの方から研修について「こうした方がよいのでは」といった意見が出たら、どんな対応をされますか?

吉川正晃(以下、吉川:意見はありがたく頂戴し、一緒に研修を良くしてもらうお手伝いに少しだけ参加してもらいます。「こうしたらどうか?」といった意見は常に受け付けていますので、特にシニアの方であればこれまでの経験を積極的にフィードバックしていただければと思います。

もちろん、研修生に対して講義や資料の改善点などのアンケートは取っているので、その内容をもとに常に内容のアップデートはしています。

――なるほど。常に研修プログラムがアップデートされているというわけですね。ところで、個人差はあると思いますが、期間はどのぐらいでしょうか。

吉川:早い人ですと1ヶ月、遅くても大体2ヶ月ぐらいでしょうか。前半で登場した岩尾のように、既に一定のスキルがある場合は2週間ほどで研修を終えるケースもあります。

分析部 マネージャー/吉川正晃

本人の特性と意思を尊重して、次のキャリアアップを目指す

――シニア向けの研修の方向性を教えてください。

藤江:分析部では、幅広く柔軟な対応ができるようになることを重要視しています。使えるスキルの種類が増えるほど、担当できる範囲も広がっていきます。

もちろん、本人の志向や特性を見ながら、特化型とオールラウンダー型に分かれていきます。ただ、機械学習やAIに関しては専門性が高いので、その領域のスキルに特化して伸ばしたいという人が多い傾向にあります。

――特性と個人の意思、どちらが優先されるものなのでしょうか。

藤江:総合的に判断しますが、基本的には本人の意思、やりたいかどうかを重視します。実際に業務に関わってはじめて「自分に向いている」「この分野は難しい」と判断できることもあるので、本人と納得いくまで話し合い、その後のキャリアステップを検討していきます。

機械学習の分野であれば、社内に在籍するKagglerのような世界トップクラスのプレイヤーと交流することで、スキルレベルを可視化して自分なりの判断材料にすることもできると思います。

――ほかの部署のメンバーと交流することで、自分の向き不向きを理解することができると?

吉川:はい。分析部の中だけでなく、社内を見渡してもさまざまなスキルや経験を持った人がいます。そういった人たちとも交流をすることで新しい知見を得たり、逆に自分の足りない部分をアドバイスいただけることも、DeNAという会社の魅力だと思います。

実際に、ネット上ですごい技術を持っているな、と思っていた人が実は社内にいたというエピソードもありました。すぐに社内のSlackで直接連絡して、世界レベルの情報を聞きにいけたそうですが、部署間の交流に隔たりがないところも、DeNAという会社ならではだと思います。

藤江:AI、機械学習、データサイエンスは似通った要素も多いですし、社内全体でさまざまな分野で高レベルの人たちが働いているので、切磋琢磨したい人には向いていると思いますね。モチベーションが高い人は、積極的にそういう人とコンタクトを取って共同で勉強会などを実施しています。

https://genom.dena.com/develop/mlanalyst_ai/

業務とメンバーとの議論の中で、スキルレベルを向上させる

――マネージャーとして活躍されている吉川さんや松﨑さんは、ご自身の成長をどのように実感していますか?

吉川:私の場合、社内の異動で分析部にジョインしました。分析について未経験でしたので、最初の壁は正しい事業課題を設定することでしたが、解決すべき課題の洗い出しや優先順位の付け方が得意になりました。

これは、分析部での業務と、メンバーとの議論の中で成長したものです。自分が欲しい知見を問いかければ、メンバー全員が回答してくれるので、次々と自分の経験値になっていきました。

――スキルレベルも上がった実感はありますか?

吉川:関わるタイトルが増えるほど、行動ログ分析だけでなく、ユーザーリサーチの知見や、ゲームのデザインについても幅広い理解が必要になってきます。

そのため、アナリストとして担当するタイトルが運用タイトルだけでなく、行動ログがまだ存在しない開発中タイトルもスコープに入ったときには、自分のスキルレベルが向上したと感じましたね。

行動ログだけで見ていた最初のフェーズから、どのようにリサーチ手法を活用すべきかという観点が増えたフェーズを経て、ゲームの中身へのインプットへと領域が広がり、現在では機械学習について判断する機会も増えていきました。

――松﨑さんはいかがですか?

松﨑:私の場合、前職はSEだったため未経験ながら、いちアナリストとしてやりがいのある業務を任せてもらい、非常に成長できる環境にありました。そうやって、タイトルをいくつか任されていく中で、事例を自分の中に積み重ねて経験していくほど、質の良い仮説を速いペースでアウトプットできるようになったことが成長実感としてありますね。

2年ぐらい経つと、それなりに結果も出てきて、これからどう成長していこうか考えていたところで、マネジメントというキャリアとしてのステップをうまく組み合わせていただけました。

マネジメントに携わり始めると、事業に対して自分がどう関わるかではなく、分析部として、組織のメンバーがどのように、どういった形で関わっていくかを考えるようになり、視野が広がっていったと思います。

分析部から広がるキャリアアップの道

――マネージャーとしての研修はあるのでしょうか。

藤江:ありますが、それよりも大切なのは、マネージャーの前にチームリーダーを経験し、マネジメントスキルを実地で身につけていくことだと考えています。まずはチームリーダーとして複数人のユニットを束ねられるかを見ていきます。

松﨑:チームリーダーを任された時期は、複数のタイトルを担当しながらだったので、まず余裕がなくなくなったのを覚えています(笑)。その段階で、どうやったら複数の業務を最適化できるんだろうと考えるようになりました。

結果として、自分がアウトプットを出すというのはHOWのひとつに過ぎず、他のメンバーが同じようにアウトプットして出しても、事業に対するインパクトは変わらないということに気付きました。いかに、組織全体を巻き込んでアウトプットを出していくかという思考が鍛えられましたね。

――チームリーダーからマネージャーへというステップアップも、ひとつのキャリアアップかと思いますが、分析部でチャレンジしていくことで将来拓かれるキャリアにはどのようなものがあるのでしょうか?

藤江:大きく分けて、部内でのキャリアアップと、部署単位で異動してのキャリアアップの2つがあります。一般的な分析部内のキャリアとしては、マネージャーになるだけでなく、スペシャリストとして現在携わっている業務領域を究めていく働き方もあります。

また、アナリストとしても、最初はひとつのタイトルの参謀、次に複数タイトルを横断しての参謀、さらには開発部長や事業部長の参謀と、担当範囲をどんどん広げていくのもわかりやすいキャリアアップの例だと思います。

一方、部署を異動してのキャリアアップは幅広いです。分析から事業責任者、事業管理をする部署で経営層の意思決定をサポートする人や、プロデューサーを束ねるマネージャーのような役割を担っている人もいます。

また、今注目されている分野として、人事を技術や分析の力で最適化させていく「HRtech」という領域がありますが、分析部から異動してその領域を担当している人もいます。

効率よく仕事をして趣味やコミュニケーションを楽しむ

――最後に、分析部の皆さんの働き方やプライベートについても教えてください。聞くところによると、現在ベビーラッシュだそうですね。

吉川:ベビーラッシュですし、サウナラッシュでもあります(笑)。

――えっ、サウナですか?

吉川:私と松﨑は毎週通っているんです。最近は、他部署の方も誘って、会社から歩いていけるサウナに入ってコミュニケーションしています。趣味のゲームの話をしたりして、思ったより息抜きになっていますね。

藤江:この業界は激務で毎晩遅く帰るというイメージが強いかもしれないですが、決してそんなことはありません。

分析に関わる職業柄、きちんと寝て休んで、頭をクリアな状態で効率よく仕事をして、きちんとアウトプットをしたら、早めに帰ろうという方針なんです。

もちろんゲーム開発にコミットすることが最優先なので、運用タイトルが大変な時期や、新作リリース直前は忙しい時期もありますが、基本は効率重視でやってほしいと、メンバーにはマネージャーからオーダーしています。

特に、子どもが生まれたばかりのメンバーは19時には帰宅して、子育てや奥さんのサポートをしていますね。早く帰るけれど、最大限のバリューは出すことは大前提としています。

松﨑:私たちもサウナ行くために、決まった日は業務を効率的に終わらせて早く帰るようにしています(笑)。

藤江:普段から会社と家の往復だけにならず、他のエンタメやゲームを楽しむことを積極的にやってもらいたいですね。もちろん、人によってはデータ分析やKaggleに取り組むなど、趣味として分析に取り組んでいる人もいます。

サウナ通いにしても、会社以外の場所で部外の人とネットワークをつなげていくと、仕事もやり易くなりますし、分析部だけで閉じるようなコミュニティーにはしてほしくないと思っています。

――ちなみに、日常で「分析部あるある」みたいな行動ってあるのでしょうか。

吉川:すぐ「本質」とか言っちゃいます。

松﨑:「あるべき」とか。

吉川:すぐ分析したがるのは職業病みたいなものですが、それゆえに気にしているのはオン/オフを切り替えることなんです。オフの時は思考しない、分析はプライベートに使わないように心がけています。

藤江:もともとDeNAは、社風がロジカルという傾向もあります。ロジックや数字を重視してゲームを開発しているという部分では、業界でトップレベルに近いのではないかと思います。ただし、これは良し悪しの話ではなく、いろいろな個性の会社があって良いと思っています。

思いやパッションも大事ですが、ロジックや数字の裏付けをきちんと作って、パッションとロジックの両輪でものを作っていくのがDeNAの社風です。だからこそ、分析の果たす役割も他社と比べて大きいと思いますし、DeNAの分析が意思決定に確実に寄与していると胸を張って言えると思います。

――ありがとうございました。


DeNAにおいて意思決定のサポートを担う分析部は今後も参謀として活躍し、さらにAIや機械学習などの導入でますます精度を上げていくことが期待できます。

インタビューにご対応いただいた分析部の皆さん、ありがとうございました!

※本記事は2019年3月時点の情報です。

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DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

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【DeNA分析部特集Vol.5(前編)】未来を予測し、最適解を導き出し続ける組織 〜分析の高度化に向けた次のチャレンジとは〜

DeNAが様々なゲームやサービスを運営していくうえで、欠かせない存在となっている分析部。Vol1〜4までは、アナリストやユーザーリサーチ、データエンジニア、MLアナリストといった分析部のメンバーの役割を紹介してきました。

シリーズ最終回となるVol.5では前後編に分けて、分析部ならではのカルチャーや課題、研修プログラム、メンバーの意外なブームまでを紹介していきます。今回の前編では、分析部を束ねる部長の藤江清隆、マネージャーの中川友喜と岩尾一優の3人に話をうかがいました。

ブラウザゲーム時代から積み重ねられてきた、分析への信頼

――分析部特集では、Vol.1~4まではメンバーの具体的な業務を紹介してきましたが、改めて「分析部」の役割を教えてください

藤江清隆(以下、藤江:現在の分析部は、DeNAのゲーム事業における意思決定のサポートという役割を担っています。

新規タイトルの開発だと「今後どんなゲームを開発をしていけば成功できるのか」、運用中のタイトルあれば「今後どういう方針で運営していくか」など、ゲームの開発現場にはさまざまな意思決定が求められます。このような大小問わずさまざまな粒度の意思決定のサポートをすることが、分析部の役割です。

――具体的な人数や構成について教えてください。

藤江:分析部全体で40名強(2019年3月時点)です。アナリストやユーザーリサーチャー、データエンジニア、機械学習を強みにしたMLアナリストらが所属しています。

――人数としても大所帯ですね。DeNAのゲーム事業部は、いつぐらいから「分析」に力を注いでいるのでしょうか?

藤江:歴史的な話になりますが、分析組織としては2011年からありました。当時、DeNAはブラウザゲームが中心でしたので、その分析をメインとしてやっていました。

当時のメンバーは外資系コンサルティング会社出身などのシニアメンバーが中心となり、小規模組織ではありましたが、圧倒的に速いスピードとクオリティーでサービスをクリティカルに改善する示唆を提供することができ、DeNAゲーム事業の中で「分析は重要だ!」というイメージを強く持ってもらうことができました。

それから8年間、立ち位置や組織の形は事業の状況に合わせて変化を続けてきましたが、事業やサービスの成功にコミットし、正しい意思決定を支えるという方針はブレずに運営してきました。

分析組織、しかも横断型となると、一般的には分析結果を事業に反映できるかが課題になることも多いと思います。DeNAの場合は、これまで8年間の信頼を積み重ねてきたこともあり、サービス側のメンバーにも分析アウトプットを積極的に取り入れていく文化が根付いているため、分析としては非常に動きやすくなっています。

分析部 部長/藤江清隆

ゲーム開発ならではの、分析の面白さと難しさ

――ゲーム分析には、どのようなスタンスが求められるのでしょうか?

藤江: 世の中には数多くのインターネットサービスがあり、その裏にはさまざまな分析手法があると思います。我々分析部は、他の業種の方や他社のアナリストとお話させていただく機会が多いのですが、その中で“ゲーム開発ならではの面白さと難しさ”というものを感じています。

これは表裏一体なのですが、ゲームというものは、分析するにしても事業を進めていくにしても、正解というものがありません。「プレイヤーが楽しめればいい」というゴールは明確ですが、楽しみ方は千差万別。レベルを上げて強くなりたい、コミュニティを楽しみたいなど、プレイヤーがゲームに求めている価値や体験は全然違ってくるのです。

ですので、ゲームのサービスの完成度を上げる、改善するといった場合でも、何を目指すべきかという指標がとても多彩なんですね。それが分析としての面白い部分でもありますし、ゲームならではだと思います。

分析として何をすればいいかという正解がないので、自分で課題を設定して、考えていかなければいけないことは、難易度としては高いと思います。まず自分の担当タイトルが決まった際に、プレイヤーがゲームに何を求めているのかを理解し、分析の手法を設計していくことが求められるのです。

――ゲームのジャンルに合わせた柔軟な分析が求められそうですね。

藤江:そうですね。ゲームによって分析の目的や手法も変わっていきますので、「このように分析するのが正しい!」という答えがありません。先ほどお話ししたように自分で課題設計して答えを求めていく思考力も大事です。

さらに、タイトルを運営しているプロデューサーらの意思決定におけるサポートがとても大事ですので、彼らが何を考えているか、何を課題として考えているかということを、きちんと対話して引き出し、その本質を捉えることも重要です。つまり、コミュニケーション能力も非常に重要になってきますね。

そのため、単純にデータを見るだけで、ロジカルに「これが正解だ!」と考えるタイプの人はDeNAの分析部にいません。チームの開発メンバーと一緒になって、「こうすればプレイヤーが楽しめるだろう」という方向をきちんと見定めて、事業が前に進むような意思決定のサポートができることが、ゲームの分析で求められるものと考えています。

https://genom.dena.com/develop/analyst/

変化の早い業界だからこそ、未来予測を行っていきたい

――マネージャーである中川さんは、ゲームにおける分析部としてのチャレンジについてはいかがですか。

中川友喜(以下、中川:考えとしては藤江と同じですが、分析もゲームという事業も、非常に変化が早いので、即時キャッチアップしていかないと業界的にも立ち遅れてしまいます。

ゲーム市場も成熟を迎える中で、今はこれまでの成功体験の殻を破り、次はどういうところに価値を見出して、組織としてより貢献しなければいけないかを考えるタイミングなのではと思います。

分析部 マネージャー/中川友喜

――長期運用タイトルも増えていき、今後差別化が激しくなっていく業界の中で、DeNAのゲーム分析はどう変化していくのでしょうか。

藤江:事業としてどうすれば成功確度を上げられるのかという“勝ち筋”を見定めていきたいと思っています。

分析部は、2019年から組織として「事業・サービスの未来を見通し、100%の成功へと導く」というビジョンを掲げています。過去を分析しパターン化することは、従来の分析業務の中で一定レベルに達していると思いますが、それだけではさらなる事業の加速に対しては不十分だと考えています。そこで「未来予測」を重要課題として位置づけ、組織として目指すビジョンにも組み込みました。

実際にこれからやっていくべきことは、新たに生み出すゲームの方向性について示唆を出したり、どんなIPと連携すれば事業として成功確度が上がるかということを、きちんと見定めていくことです。未来を予測するという分析は、これからはより多く求められるだろうと思っています。

具体的なアプローチとして、AIや機械学習分野に強いメンバーの増強や、Vol.4でお話したようなAIスペシャリストとの連携を通じてより精緻な未来予測に取り組んでいます。

https://genom.dena.com/develop/mlanalyst_ai/

ゼロベースから始まった、入社半年での新部署設立

――DeNAは、今後も新規タイトルリリースを控えていると思うのですが、分析部の体制や人員も変化していくのでしょうか?

藤江:理想像としては、ひとつひとつのタイトルに専任のアナリストをアサインできる規模にすることを目指しています。運用タイトルも増えれば、アナリスト以外の分析部メンバーも必要になるため、さらに組織を拡大していく方向で考えています。

その中で、岩尾のように、新部署を立ち上げるような提案を実現できる地盤を固めていこうと思っています。

https://genom.dena.com/develop/date_engineer/

――Vol.3で紹介された入社半年で新部署を起ち上げた岩尾さんのエピソードは反響がありましたが、上司の藤江さんとしてはその当時はどのように感じていたのでしょうか。

藤江:Vol.3でも出ていましたが、まずこの話はミッションとしてトップダウンで依頼したわけではありません。業務に取り組む中、現在の分析部の組織全体をとらえた時に、もっとこうした方がいいのではないか、この機能を強化するべきではないかと岩尾からの提案を受けて、ゼロベースから考えました。

もともと分析部は、意思決定が早いことが強みのひとつです。そこに、マネージャー陣も課題だと思っていた部分を、岩尾が的確に改善点を提案してくれたので、意思決定者であるマネージャーも「それやろう!」とすぐに承諾できたという状況でしたね。

岩尾一優(以下、岩尾:中途で分析部に入社した自分は、最初はSQLやシステムの細かい部分を見て「なんとなく、無駄なところがあるな」と感じていました。

さらに全体を見ていくうちに、コストの規模感や、どれぐらいのタイトルを運用して、どんなペースでデータ量が増えていくかを徐々に可視化していきました。それによって、分析が売り上げに貢献する以前に、システム面の本来不要なコストがかかり過ぎているということが分かったんです。

その問題に対して、具体的に削減する案をすでに思いついていたので、特定のタイトルで実際に導入して削減を実現させ、「これだけコストの削減が可能です」ということを説明したというわけです。

分析部 マネージャー/岩尾一優

藤江:岩尾のように、エンジニアとしてのバックグラウンドを持っているメンバーもがいることも、分析部の強みになっています。実は、分析部はDeNA社内の中でも、メンバーのバックグラウンドが非常に多彩なので、いろいろな視点があることも含めて、分析部としての強みになっていると思います。

意思があるメンバーには、社歴関係なくどんどん任せていきたい

――藤江さんとしては、最初にこの新組織立ち上げの提案があった時、「岩尾ならこのぐらいできる」と予想していたのでしょうか?

藤江:正直に言いますと、当初はそこまで一気に組織を立ち上げるイメージはなく、機能を強化していけばOKくらいに感じていました(笑) 。ですので、入社早々に想定以上の意欲とスピード感で取り組んでくれた印象ですね。今後はほかのメンバーでもこのような提案を出してくれたら、任せていきたいとは思っています。

分析部の平均年齢は比較的若く、20代のマネージャーもいます。その中で、アナリストとしての本業だけでなく、分析部という組織全体を変えていける可能性のある課題を、社歴関係なくどんどん任せて、一緒に組織を変えていこうという取り組みを行っていきたいですね。

――権限委譲や、意思決定を早くする体制が、分析部の中にあるということでしょうか。

藤江:そうです。DeNAという会社自体が、事業のサイクルや意思決定の速度もはやいので、権限委譲して、メンバーが正しく意思決定をして事業や組織を変えていけるような体制を作っていくことは大事だと思っています。今後はシニアメンバーも積極的に迎え入れていきたいと考えているので、さまざまな経験を組織にも反映させていきたいですね。

――マネージャーのお二人から見た、分析部のカルチャーってどんなものなのでしょうか。

岩尾:当事者意識がすごく高いですね。事業への貢献意欲が高いメンバーばかりなので、私もさらに意欲をかき立てられるような環境だと思います。

中川:私も同じです。前職を経験したうえで感じたことは、個々のメンバーが課題と当事者意識を持ち、どう解決していくかをすごく必死に考えている組織だと思っています。さらに、こうしていきたいと思ったら、立場や役職に関わらず、必要なことは自分で動きながら解決をどんどん推進していくメンバーが多いですね。

多彩なスキルを、身につけてほしい

――ちなみに、分析部内では横の異動はありますか? アナリストがユーザーリサーチをやりたいと希望した場合はどうなるのでしょうか。

藤江:一言で分析やアナリストといっても、いろいろなスキルを持った人がいます。いわゆる行動ログの分析を主体としたアナリストもいれば、ユーザーリサーチを基本の武器としているアナリストもいますし、岩尾のようにデータエンジニアの技術をベースにしている人もいます。

つまり、いろいろなパターンのスキルセットの人が、分析部には在籍しているということです。部の方針としては、スキルセットの組み合わせを、できるだけ多彩なパターンで身につけてほしいと思っています。

今後、分析のアナリストとして価値を高めていくためには、どれだけ珍しくてニーズの高い組み合わせのスキルセットを身につけられるかが重要になってくるかなと思います。

なので、メンバーから「機械学習をもっとやっていきたい」とか「今は、行動ログしか分析できないけれど、将来的にユーザーリサーチも経験したい」などの希望があったときには、できるだけ叶えられるようなアサインを考えています。

――マネージャーとメンバー間の日頃のコミュニケーションも大事になりそうですね。

藤江:そうですね、「自分はこれをやっていきたい!」といった思いは、1on1などでどんどんマネージャーに話してもらうようにしています。もちろん、100%希望に沿えるわけではありませんが、話したことによって初めて動き出すプロジェクトもたくさんありますので、できるだけメンバーのやりたいことを聞く方針でやっています。

分析のさらなる高度化に向けて

――今まで何か良い話ばかりだったのですが(笑)。逆に、課題などはありませんか?

藤江:分析の高度化を実現させていくこと、そしてそれに伴う強い組織を構築していくことが、我々の課題になっているかなと思います。

そのためのアプローチとして、ユーザーリサーチやAIの活用など、いろいろな方法を模索しています。幸い人数も多く、さまざまなことに興味を持っているメンバーがたくさんいるので、それぞれの得意分野で、より高度化し、バリューを出すためには、自分たちでどういうスキルを身につけたらいいかを考えながら進めています。

高度化という観点では、従来の分析手法にとらわれない新しいアウトプットを作ろうという部内プロジェクトに取り組んでいます。ユーザー体験やそこで生まれる感情を把握・分析できないかという大テーマに向かって専門性を有するメンバーがチャレンジしており、ゲーム業界の大規模外部セミナーで発表するレベルの成果も生まれています。

https://genom.dena.com/develop/user_research/

岩尾:分析部は、個々のスキルが高いメンバーが多い反面、スキルが属人化しやすい状況になっていると思います。システム運用は誰が携わっても同じ結果になるのがベストであって、特定の人が作業したから障害が起きたなど、対応者によって結果が変わることがあってはなりません。

そういった一定の品質を保つプロセスやノウハウは、誰が関わっても同じ結果になるように、徹底して培っていかなければいけないとも思っていますし、そこに向けてもチャレンジしている最中です。

――ありがとうございました。後編では、一人前のアナリストにまで育成する研修プログラムやキャリア、さらには裏話をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

 

※本記事は2019年6月時点の情報です。

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DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

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【DeNAデザイン部特集Vol.2】ゲームの画は本の表紙絵や挿絵と一緒!? 最新技術への考え方とR&D実践の意図に迫る

モバイル端末の性能は急速な進化を続け、近年はゲームの表現の幅もさらに広がりをみせています。それに伴ってグラフィックやUIなどデザイン面に関しても、これまでに比べさらに高い技術的レベルが要求される時代になりました。

「DeNAデザイン部特集Vol.2」では、DeNAデザイン部がこのような時代の流れをどのように考えているのか、そして現在の最新技術に対するR&D(研究開発)を含めた取り組みについて、デザイン部3D第一グループの中津基貴と、クリエイティブプロジェクトマネジメントグループの大西正人にインタビューを行いました。

――まずはお二人の簡単な自己紹介からお願いします。

中津基貴(以下、中津):私はドット絵を描く仕事からキャリアをスタートし、前職では映像やアニメーション、遊技機などエンタメ分野で2D・3D問わず幅広く手がけてきました。
DeNAには2011年に入社し、ずっとVO(ヴィジュアル・オーナー)(※1)を担当してきましたが、直近ではグループのマネジメントを担当しています。

※1. VO(ヴィジュアル・オーナー):ゲーム全体のグラフィックを監督するという意味でのアートディレクター。出自は2Dアーティスト、3D背景モデラ、モーションデザイナなどさまざま。

デザイン部3D第一グループ 中津基貴

大西正人(以下、大西):前職ではコンシューマゲーム開発会社でアクションゲームや格闘ゲームを手がけていました。そこから数社を経て、2018年3月にDeNAにCPM(クリエイティブプロジェクトマネージャー)(※2)として入社しました。

CPMとしての私の主な業務内容は、アーティストの進行管理や外注管理をはじめ、ワークフローの設計、作業効率化ツールの導入などを担当しています。

※2. CPM(クリエイティブプロジェクトマネージャー):アーティストが作業に集中できるように、アーティストのマネージメントを専属で担当する。また、外注管理や工数管理を行い、開発フェーズの進行を円滑に進め、作業環境の整備やワークフローの精査などを行い、クリエイティブ分野の制作環境を整える。

私はゲームプランナーからキャリアをスタートし、レベル・モーション・背景・エフェクト・UI・コンセプトアート・ムービー・ライティングなどの各種デザイン業務を担当して多彩な職種を経験してきました。幅広くアート関連の仕事を現場レベルで携わってきた経験や知識が、現在のCPM業務で大変役に立っています。

クリエイティブプロジェクトマネジメントグループ 大西正人

書店で惹き付けられる
表紙絵のように

――モバイルゲーム業界全体においても、年々グラフィックのクオリティが非常に上がっていると感じます。お二人はこの時代の流れをどのように感じていますか?

中津:まず、クオリティの高さについて語るとき、リッチさや表現できる幅の広さを指すことが多くなりがちですが、その背後には、そういう表現を採用したというデザインが存在します。そして、デザインとは「何かを解決するための手段」であり、解決すべき主体がないと語れない、という前提があります。

主体がゲームの場合は「そのゲームのメカニズム」という事になるので、それが十分に分かりやすく視覚化されているか、本来のメカニズムをより楽しみやすくできたか、といった観点からグラフィックを評価して、初めてクオリティが高い・低いという話ができるということですね。

ただ、グラフィックには「興味をもってもらう」という役割もあります。それまで不可能だった表現が実現できたら、それはゲームをプレイしてくれる人の注目を惹きつける要素となり得ますので、その観点も同時に大切にしなければなりません。

年々グラフィックのクオリティが上がっている、という話は後者の文脈で語られることが多いと思いますが、我々ももちろんその観点から新しい技術に興味をもって取り組んでいます。

大西:また、昨今のハードウェアの急速な進歩によって、グラフィック表現も格段に向上し、コンシューマゲーム機に匹敵するような、高性能なスマートフォンも登場しています。

そのような最新機種に対応するゲームを作る際に注意したいのが「グラフィックが美しいことが、ゲームの面白さに直結する」とは断言できない、ということです。

むしろそのゲームを知らない人や、未プレイの人に興味を持ってもらう手段として、デザインやビジュアルのクオリティの高さは必要な要素のひとつだ、と考えていただきたいですね。

――グラフィックが美しいからといって、それがゲームの面白さには直結しないと?

中津:そうですね。これはアートディレクションをするときや、ゲームグラフィックの仕事を説明する際によく使う例えなんですが、「ゲームのグラフィックを用意する仕事」は「本の表紙絵と挿絵を同時に扱う仕事」だと伝えています。

挿絵って、本来の物語の中に差し込むことで、情景をイメージしやすくなり、それによって物語に没入できるような役割を持っていますよね。ゲームではUIやアートアセットによって挿絵と同じ機能を果たそうとします。

それに対して表紙絵は、書店に並んだときに、パッと見て興味を惹き付ける役割があります。先ほど例に出たUIやアートアセットは、遊ぶときに面白く、より分かりやすくするためにあるのですが、それがスクリーンショットなどで世間に広まったときには、表紙絵の役割を果たすことにもなります。

なので、絵のクオリティを高く、リッチにする理由はその役割のためであり、ゲームを面白くするための手法とは少しズレる部分もあります。

「誰も知らない」状況を
つくらないために

――DeNAではグラフィック表現に関してのR&Dが2017年頃から進んでいたそうですが、この背景について教えてください。

中津:前提としてデザイン部が考えるR&Dは、必要とされる技術を当たり前にカバーしておきたい、という意味合いが強いのが特徴です。

例えば、開発チームのディレクターやプランナーから「こんな表現にしたい」というアイデアが出てきて、それがゲームの内容に関して最適な表現手法であったとき、その技術を扱える人が社内に一人もいない(少なくとも手掛かりが全くない)という状況は避けたいと考えています。

特に国内向けのプロダクトは、スタイライズドな表現が好まれる傾向があり、その部分は実務で習得することができます。それに対してフォトリアル系の技術は、しっかり意思を持って積極的に研究しないと、誰も扱えない状況が簡単に生まれてしまいます。

それにも関わらず、業界では徐々にPBRベース(※3)のレンダリングがスタンダードになってきている状況の中、その技術を当たり前に使っているプロジェクトが当時は社内になかったため、R&Dを推進する動きが生まれました。無論、それまでは個々が属人的に研究をしていたのですが、組織として進めていこうと意思決定したのがその頃ですね。

※3. PBR(Physical Based Rendering):現実世界を模倣した、光学的に正確なレンダリングのこと。

R&Dの一画面。実際にモバイル端末で動く状態になっている。

――では、現在はプロジェクト側の要望に応えられるような段階になっているのでしょうか?

中津:そうですね、当時使っていたPBRシーンデータを、あるプロジェクトで実験的に使用しています。そのおかげで少ない工数で組み立てることができ、実装まで可能になりました。

また、プログラマーが実際の描画における負荷について実験する場合でも、すぐに適切なデータを使うことができ、ここでもR&Dの成果を出すことができています。

――そういえば、大西さんは、DeNAのR&Dに興味を持って入社されたそうですね。

大西:そうなんです。前職ではライティングアーティストを担当していたので、最新技術のキャッチアップは習慣化していました。転職を検討する際、これは偏見だったのですが、モバイルゲーム開発現場では、最新技術に対するR&Dを重視していないのでは、と当時は感じていたんです。

ですが、たまたま外部の記事(※4)でDeNAのR&Dに対する取り組みを見て、しっかり実践していることがわかったため、安心して入社を決めました。

※4.
年々コンソールに近づくモバイルゲームの映像品質 DeNAが数年後を見すえてCGデザイナーを募集中
https://cgworld.jp/interview/dena-201708.html

――入社してみて、DeNAのR&Dはどのように感じましたか?

大西:特にPBRベースの作り方をUnity上で再現して、それをプロジェクトに移管する作業がスムーズにできていたので、研究の基礎はこのように流用できるんだな、と感心しました。

Unityで使い回しが可能な表現技法を一度組んでおけば、同じエンジン上の開発なら、かなりのローコストで転用ができるので、それは良いなと思います。

――現在進んでいるR&Dの事例などを教えてください。

中津:R&Dのためのプロジェクトというものはないのですが、レンダリングに関する部分で言えば「トゥーンシェーディング(※5)」と「PBR」は引き続き研究しています。

描画手法としてはこの2つがさまざまな意味において両極にあり、多くの表現がその組み合わせ方や程度によるもの、という風に解釈できるからです。しかし、研究の対象は描画表現だけではありませんので、モーションや制作環境などさまざまです。

※5. トゥーンシェーディング:3DCGのレンダリング方法の1つ。フォトリアリスティックな表現とは対照的な、セル画アニメ調(セルルック)の表現が可能。

――「プロシージャル(※6)」という言葉を近年は特に耳にすると思います。お二人はどのように感じていますか?

中津:「人の手を介さずにマシンに自動で仕事をさせたい」という考えは事業的に考えても当然なことですし、その観点でプロシージャルを研究しない、という判断はないと思います。

※6. プロシージャル:手続き型、計算による自動的・自動生成する機能のこと。

大西:プロシージャル技術が知られるようになり、多くのゲーム会社は研究を行い、中には「モーションをプロシージャル生成する」という取り組みを行っていた会社もあります。

現在、そのブームは落ち着いてきているのですが、技術的に確立されつつあるのは「モデリング自体をプロシージャル生成する」技法です。近い将来、人間がモデリング作業をする必要がなくなる可能性もあるかもしれませんね。

――突き詰めると、作業する人間はいらなくなると?

大西:突き詰めたら、ですけどね(笑)。例えば、キャラクターモデリングを1人で1体作るのに数日かかる作業を、マシンなら数時間で何百体も作れるようなことが当たり前になる時代が来るかもしれません。

中津:現時点では、クオリティのトップラインは人の手による制作物のほうが高いと感じます。ただ、表現としてのトップクオリティのものを作るのに1体数ヶ月かかるとして、その8割程度のクオリティのものが1ヶ月に500体できるとなった場合、どうなのでしょうか。

作品全体で見た場合には、密度や物量もまたクオリティと言えるわけですから、表現としてのトップラインだけを考えていては片手落ちです。

いずれにしても、今期のデザイン部は体制をさらに強化し、より事業に資する集団になっていきたいと思います。そのため、今後もさまざまな手法や可能性を模索していくことは間違いありません。

今後も挑戦し続ける
環境改善とR&D

――日々の業務における開発環境の整備も大切なことだと思います。昨年入社した大西さんは、はじめてゲーム事業部の開発環境を見て、どのように感じましたか?

大西:入社してまず驚いたのが、開発環境がコンシューマ開発に比べて、あまり整っていなかったことです(笑)。モニターなどの機材の選定やワークフローなど非効率になっている部分もあり、多くの改善の余地がありました。

私は無駄な工数をなくして、適切な環境で作業をすることが当たり前なカルチャーを作りたかったので、入社後は機材のテスト導入しながら、デザイナーがフルにスキルを発揮し、かつ開発コストを下げられるような環境作りを推進してきました。

中津:大西さんに指摘いただいた点はずっと気にかけていたのですが、進行しているプロジェクトの内容と天秤にかけた際、なかなか優先度を上げることができませんでした。ですが、大西さんが入社して「(環境の改善は)絶対やらなきゃダメですよ!」と強く提案してくれたので、積極的に実施することができ、本当に助かりました。

――現時点でお二人が思う社内の環境改善は、どのくらい進んでいますか?

大西:特定のプロジェクトではEIZO ColorEdgeシリーズのキャリブレーションモニターで統一するなど、アーティストの制作環境に力を入れて、かなりベストな状態になっています。

中津:あと極端な話をすれば、部屋の明かりをつけたまま仕事をしているのも問題だと言えなくはないですよね。

大西:確かに、蛍光灯の位置がアーティストの席によって違いますし。

以前勤めていた職場では蛍光灯や照明器具にこだわり、プリントアウトされたものが、職場のどこで見ても同じように見える環境を目指していました。ただ、印刷した時点でモニターと色は違うんですけど(笑)。そういった目的がズレた変なこだわりには気をつけたいですね。

――R&Dを推進しつつ、そこで得た知見を存分に発揮できる開発環境も整いつつあるのですね。

中津:そうですね。最新技術のキャッチアップはもちろん、R&Dなども含めて社内のノウハウの蓄積は今後も続けていきたいですね。ゲームのメカニズムとそこから生み出される面白さを最大化し、同時に注目してもらえる視覚表現を達成するために、技術を上手に適用していきたいと考えています。

大西:DeNAでは今後も大型IPをはじめとした新規タイトルをリリースしていく予定ですので、「本当に面白いゲームってなんだろう?」という観点を忘れず、その上で最新技術のアプローチについて検討していければと思いますし、私自身はそんなアーティストをこれからも支えていきたいと思います。

――ありがとうございました。

※本記事は2019年5月時点の情報です。

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ゲームクリエイター向け勉強会「GDM」概要【次回告知&開催レポート集つき】

毎回様々なテーマやゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会【Game Developers Meeting】(以下、GDM)

カジュアルに参加・交流できる会を目指しゲームクリエイターの「見たい、知りたい、会いたい」が実現できる場をつくり、ゲーム業界の発展に貢献するための活動として、毎月開催しています。

GDM概要

[su_highlight background=”#fcff99″]”価値ある情報を提供し、業界を活性化させたい”[/su_highlight]という目標を掲げるGDM運営事務局。2016年の第1回目の開催から現在に至るまで、計30回以上の勉強会や座談会を開催し、 各回100名以上のゲーム開発者が参加申し込みするまでに開催規模が成長しています。

開催レポート

[su_accordion][su_spoiler title=”エンジニア向け勉強会” open=”yes” style=”fancy” icon=”plus-square-1″ anchor=”” class=””]
・Unityのバージョンアップによって発生した問題への対処【登壇資料つき】
・ゲーム x AI x ブロックチェーンの可能性と世界最新動向【登壇資料つき】
・ゲーム産業におけるゲームAI研究・開発の最前線~会話AI、メタAI、ユーザ感情推定~
・今だからこそ「Unreal Engine」を学ぼう (初級編)
・開発者向け書籍を展示! 著者であるゲームクリエイター3名が関連ショートセッションを実施
[/su_spoiler][/su_accordion]

[su_accordion][su_spoiler title=”デザイナー向け勉強会” open=”yes” style=”fancy” icon=”plus-square-1″ anchor=”” class=””]
・『FINAL FANTASY XV』を事例として課題に対する今後の改善について~
・テクニカルアーティスト座談会(前半)~やってみる、から一歩先へ~
・テクニカルアーティスト座談会(後半)~やってみる、から一歩先へ~
[/su_spoiler] [/su_accordion]

[su_accordion][su_spoiler title=”プランナー向け勉強会” open=”yes” style=”fancy” icon=”plus-square-1″ anchor=”” class=””]
・コミュニティファーストなプロダクト運営
・10年の貫禄! 平成を駆け抜けた超長期運営レジェンドタイトルの「これまで」と「これから」
[/su_spoiler][/su_accordion]

[su_accordion][su_spoiler title=”ローカライズ向け勉強会” open=”yes” style=”fancy” icon=”plus-square-1″ anchor=”” class=””]
・多種多様なゲームタイトルに対応する為のローカライゼーションとは?
[/su_spoiler][/su_accordion]

[su_accordion][su_spoiler title=”サウンド向け勉強会” open=”yes” style=”fancy” icon=”plus-square-1″ anchor=”” class=””]
・現在のゲーム開発者側の視点で必要な「サウンドディレクション」について
[/su_spoiler][/su_accordion]

イベント概要

当日の基本的な流れ

〜 GDM趣旨説明
〜勉強会または座談会
〜 懇親会

このTシャツを着たスタッフが会場で対応しています!

会場

株式会社ディー・エヌ・エー
東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ
[su_gmap address=”東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ”]

ヒカリエ到着後、まずは11F総合受付(GDM特設受付)でPeatixのQRコードをご提示ください。

[su_accordion][su_spoiler title=”ヒカリエ11F総合受付(GDM特設受付)” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

渋谷ヒカリエ総合受付の左側にGDM専用の受付が設置されています



こちらが専用受付。名刺2枚をご用意の上、Peatixチケット画面を提示してください



受付後、エレベーターホールに向かいます



17F〜26F行きのエレベーターホールまで進みます



こちらのエレベーターから会場(21Fまたは24F)へ昇っていきます

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その後、会場(21F:SeminarRoomまたは24F:SakuraCafe)まで直接お越しください。

[su_accordion][su_spoiler title=”21F:SeminarRoom” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

21Fに着いたら、看板の横を進みます



すると正面にGDMの看板が見えてきます

ここを左に曲がると……



こちらが会場の入り口です

[/su_spoiler][/su_accordion]

[su_accordion][su_spoiler title=”24F:SakuraCafe” open=”no” style=”fancy” icon=”plus” anchor=”” class=””]

正面の入り口ではなく、左に直角に曲がります



こちらのドアから入場してください(当日は扉は開いています)



こちらが会場となるSakuraCafe

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参加対象

ゲーム開発職に従事されている方

参加費

無料 ※参加は毎回抽選

主催

株式会社ディー・エヌ・エー
http://dena.com/jp/

★今後のGDMの情報は、GDM公式Facebookページ・Peatixグループをチェック!

公式Facebookページ:https://www.facebook.com/GameDevelopersMeeting/
Peatixグループ:https://gamedevelopersmeeting.peatix.com/

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GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントやFacebookページにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

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【イベントレポ】クーガー石井氏が語るゲーム×AI×ブロックチェーンの可能性―未来のキーワードは「マシンインターネット」と「ミラーワールド」

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年4月26日に開催された「GDM勉強会~ゲーム×AI×ブロックチェーンの可能性と世界最新動向~」では、クーガー株式会社CEOの石井敦氏を招いて、ブロックチェーンとゲームのシナジーやAIとの関係性、最先端技術の世界最新動向が紹介されました。

今回登壇した石井氏は、IBMを経て、楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発を手がけ、日米韓を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括なども担当した経歴を持っています。

またゲーム分野では、スマートフォン向けゲームアプリ開発やGDCへの登壇、PlayStation Networkのコア部分の設計などに参画、2017年に開始したブロックチェーン技術コミュニティ「Blockchain EXE」の代表も務めています。

本記事では、発表された内容の一部を抜粋してレポートします。

ブロックチェーンについて

ブロックチェーンとは「価値のインターネット」と呼ばれ、価値を乗せて移転することのできるインターネットのことです。

時系列で発生したことを、ダイジェストにしてブロック化する基本原理を持ち、そのブロックが鎖のように連結していくため「ブロックチェーン」と呼ばれます。

前ブロックのアウトプットが次ブロックのインプットとなり、一つのブロックを書き換えようとすると、それ以降のブロックすべてを書き換えなくてはならないため、改ざんが非常に困難な仕組みとなっています。

ブロックチェーンの主な構成要素は「P2Pネットワーク」「コンセンサスアルゴリズム」「電子署名」「ハッシュ関数」「スマートコントラクト」で、代表的なブロックチェーンコミュニティは以下の3つとなります。

Bitcoin Core:通貨を受け渡すためのブロックチェーン
Ethereum(読み:イーサリアム):特定の目的を持たないブロックチェーン
Hyperledger fabric:IBMが主導する企業型のブロックチェーン

また、なぜBitcoinが最初のキラーアプリになり得たのか、石井氏は大きな理由を3点挙げました。

1つは通貨は誰もが重視するわかりやすい価値であること、2つ目はデータ形式が数値のみで技術的に扱いやすいこと、3つ目は通貨(お金)は人から人に移転され、移動のニーズが高く、頻繁に移動されるから、と解説しました。

ブロックチェーンの大きな特徴は「透明性」「公明性」「トレーサビリティ」であり、これらは限られたデータであるからこそ、公開しても成立するので、対象のデータが個人情報や企業の機密情報などになると公開されるリスクが大きくなります。

ブロックチェーンでデータを扱う方向性に関して「On Chain(ブロックチェーンの内部にデータを記録)」「Off Chain(ブロックチェーン自体にデータは記録せず紐付けキーのみ記録)」の2つに分けられ、それぞれのメリット・デメリットを含めて、どちらの手法に対応するか、この選択の考え方・決定方法はゲーム開発とも密接に関わります。

既存技術とブロックチェーンの進化

ブロックチェーンネットワークの種類の中でも、利用率が高いパブリック型(パーミッションレス型)と呼ばれるブロックチェーンを、既存の技術と比べた際の特徴として、以下の3つが挙げられます。

管理者がいない(非中央集権型)
→命令や司令がなく、処理に立候補した管理者に報酬を与えるなど、普遍的なインセンティブコントロールが可能に。

起きた事実の取り消しができない
→そもそもリセットができないため、信頼関係が生まれる

改ざんが極めて難しい
→これまで共有が難しいとされていた、複雑な関係性におけるデータ共有が実現可能

また、現時点の技術適用先の相性について、スピードよりデータの信頼性・公明性が重視されるものが向いており、リアルタイム性の高い更新頻度の高いものには向いていないと言われています。

現在、ブロックチェーンは、トランザクションの処理スピードを上げるだけでなく、データ規模やスピードを両立したスケールの拡大、データの保存や機密性を高めることが世界的ニーズとして求められています。

次世代ブロックチェーン

石井氏は、先述したブロックチェーン以外にも、最近では以下の種類も注目を集めていると紹介しました。

『IOTA』(読み:アイオータ)

「IOTA」は、リアルタイム性の高いIoT対応に特化したブロックチェーンです。M2Mマイクロペイメントでブロックもチェーンを持たない構造になっています。

「IOTA」が描く未来の姿は、ドローンが自動で飛びながらステーションで充電し、支払いもしてくれるような、一切の行動に人間を介さない世界です。セキュリティに関しては、糸のもつれのような仕組みを使った「Tangle」と呼ばれる手法で、改ざんをほぼ不可能にしています。

『BigchainDB』(読み:ビッグチェーンデービー)

「BigchainDB」は、処理速度を最大限に高めたブロックチェーンです。分散型DBとブロックチェーンそれぞれのメリットを融合しており、汎用的なデータでかつ、大規模データの保存を可能にしています。

ブロックチェーンとユーザー認証

続いての話題は認証問題について。現状では、それぞれのサイトやサービスにIDが存在し、ユーザー自身が各サービスやシステムにアクセスする仕組みになっています。IDへのアクセス方法を紛失した場合も、本人の問い合わせなどで再発行などが可能ですが、ユーザーの記憶やテキスト情報に依存してしまいます。

しかし、この仕組みにブロックチェーンを導入すると、中央集権を持たない分散台帳上にIDを記録して、それに対してサービスを対応させることが可能になります。つまり全員が相互管理しているような状態を作り、よりセキュリティを強化できますが、IDを紛失した場合にリカバリーが困難になるデメリットもあります。

すでに世界で運用が始まっている「顔認証」「指紋認証」「行動認証」「生体認証」など記憶などに依存しないID認証方法と、ブロックチェーンによる高い信頼性を組み合わせれば、不特定多数の人々の間で安心して共有ができる「シェアリングエコノミー」が実現できる可能性が高いと考えられます。

ただし、その実現のためには絶対的な「信頼」が必要になるため、ブロックチェーンの仕組み自体が信頼を生み出すことが確実にできなければなりませんし、世界全体がその問題に取り組んでいます。

現時点での課題は、リアルタイム性の高いシェアリングの対応が難しいこと。記録はブロックチェーンに残りますが、デジタルデータ以外の部分に関して、例えばシェアしている実物自体(自動車・部屋など)は物理的に記録できない(デジタル化できない)ことです。

IoT×AI×ブロックチェーンの可能性

さらに、さまざまな技術がすべて横断して繋がるきっかけとなっているのが、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」であり、今後、通信データの種類と量が爆発的に増加し、リアルタイム通信と判断のために、あらゆるデバイスでAIが搭載される可能性が高くなっています。

そこで必要なのが、データに信頼性をもたせる技術、その候補がブロックチェーンとなります。

IoTとブロックチェーンの可能性として、リアルタイム性とデータ信頼性の両立が必要となり、ネットワーク構造については「Fogコンピューティング(ドローンや自動運転のような、高度な処理をしつつリアルタイム性が必要な対応をする)」「エッジコンピューティング」それらを横断する、IoTデバイスと連動したスマートコントラクトが必要になります。

AIを一言で説明すると「デジタルデータを使って何かを自動化する技術」、ブロックチェーンを一言で説明すると「デジタルデータ自体を証明する技術」であり、お互いに補完する関係となっています。

将来的に、あらゆるデバイスでAIが稼働するのは確実であり、判断を自動化するAIにおいて、不具合時の影響は甚大なものになります。そのため、AIの判断内容・結果とAIの成長履歴の因果関係は極めて重要になります。改ざんされたAIにはもちろん信頼性がないので、改ざんや変更が不可能な仕組みが必須となります。

ゲームとブロックチェーン

ここまでの解説で、デジタルデータとブロックチェーンは強い関係性・信頼性が重要なことがわかってきました。

特にゲームは、シナリオ・キャラクター・アイテム・建造物など「デジタルアセットの塊」であり、ブロックチェーンにユーザーIDやアイテムなどのデータを保存すれば、ゲームタイトルを横断した非中央集権のアセット管理が可能になります。

ブロックチェーンによって活きるゲームのユースケースとして、アイテムの売買などの「ユーザー間でのアセット交換」「ゲームタイトルを横断したアセットの共有」「アセット活用の独自ゲームの構築」などが挙げられます。

特に運営会社に依存しないゲーム運営、アイテム取得確率など改ざんや不正ができないゲーム運営が可能になることは、運営の透明化を図り、ユーザーの信頼を得ることができるような重要なユースケースであり、ゲーム業界にとって重要なファクターとなっていくはずです。

ゲーム×ブロックチェーンにおいての向き不向き

向いている
データの信頼性や履歴が重視されるジャンル、アイテムやキャラクターなどのデータ売買や取得

向いていない
リアルタイム性が高く、更新頻度の多い対戦格闘やレーシングのような動的な処理、細かいキャラクターパラメータの更新処理など

運用中タイトル紹介

ここで石井氏は、ブロックチェーン技術を利用して運用されているタイトルを紹介。現在、どのようにゲームでこの技術が使われているのか、そして今後の展望予測などを述べました。

『OxUniverse』

ブロックチェーンベースの銀河探検家オンラインゲームで、惑星を購入して宇宙船を発明し、宇宙探索を楽しむゲームです。

このようなゲームについて、ブロックチェーンを使う必然性はないですが、ゲーム業界では新たなプラットフォームが生まれるたびに爆発的な伸びを示す傾向があり、ブロックチェーンベースのプラットフォームとしては、今後3~4年で成長する可能性が大きいと考えられています。

『Etheremon(イーサエモン)』

ブロックチェーンゲームの中でもかなり勢いのあるゲームで、イーサリアム版のモンスター収集&育成系のジャンルです。特にプラットフォームの健全性が中央の管理者ではなく、参加者によって保たれていることが特徴です。

ゲーム×AI×ブロックチェーン応用

続いて、クーガー株式会社がゲーム・AI・ブロックチェーンを横断して展開している「バーチャルヒューマンエージェント」について、デモ動画を使用して説明されました。

バーチャルヒューマンエージェントは、ゲームの世界に限定されていた3Dキャラクターを、現実世界の人間とコミュニケーションする取り組みです。これまで進化してきたデバイスの最新型は「人型」だと、石井氏は話しています。

デモ動画では、石井氏が現実の世界とモニターやタブレットを通して、女性のバーチャルヒューマンエージェントと自然に会話をしている様子が紹介されました。

この事業では、現実社会とバーチャル空間を繋げているのがポイントで、理解する部分はビッグデータを利用した機械学習AIを使用し、エージェントの振る舞いに関してはキャラクターAIを使用。その2つのAIが融合してリアルなインプットの理解をML(機械学習)させています。

また、ブロックチェーンによってデータおよびAIの信頼性を担保する仕組み「XAI(Explainable AI)」を作っており、このAIはゲーム開発において重要になってきます。

「XAI(Explainable AI)」の要素は、「数式やアルゴリズムの説明性」「ニューラルネットワークの設計」「学習データ」となっており、特に学習データの部分にブロックチェーンの技術の親和性が高いため、今後も研究を続けていくと石井氏は講演を締めくくりました。

質疑応答

Q:ブロックチェーンのゲームへの利用について、リアルタイム性の高いゲームへの対応、チート行為などへの対応などについて、どのようにお考えでしょうか?

石井氏:リアルタイム性の高いプレイが多いゲームタイトルには、ブロックチェーンの対応はすぐにはできないと思います。「プレイ終了後~次回ゲームを起動するまで」など、ブロックチェーンに記録されている前回のプレイデータが、一定の期間で保存されたデータ自体が透明性を担保できるような導入から、まずはスタートすると考えられます。

また、リアルタイムで複雑な動作をするチート行為には、現時点では対応できるかは不明です。オンラインゲームやソーシャルゲームなどの運営の透明化や、過去のデータを利用した確率データの公開などには対応可能と考えています。

Q:ブロックチェーンを利用したゲームの10年後はどの様になっていると思いますか?

石井氏:今後インターネットの中心は、機械が運用する「マシンインターネット」がメインになってくると思います、それによりロボットなど機械に合わせてスピードが出るような、データ通信の方式が変わっていくと考えています。

その状況では、人間が直接見ることが可能なデータがなくなってくるため、それを翻訳するアシスタントが登場し、人間とコミュニケーションをしていくと思われます。

さらに、さまざまなデバイスがお互いを検索し合い「どこに繋げばいいのか?」ということを、それぞれのAIが判断して、自律制御していきます。これがまさに「非中央集権型検索」と言えますね。

ゲーム側に関しては「ミラーワールド」といった最新の概念があります。ミラーワールドには世の中のすべての物質が、AR空間においてコピーとなって存在、つまり鏡の世界にもうひとつまったく同じ世界ができ、現実世界とARの世界でどちらも楽しめるほか、さらにミラーワールド自体も分裂して形成することができます。その仕組みを支えるのが、ブロックチェーンとなっていくと想像しています。

懇親会

クーガー石井氏からプレゼントも

講演終了後に実施された懇親会では、GDMおなじみのお寿司と、今回初登場のサンドイッチをつまみながら、積極的に交流がなされていました。また、今回クーガー株式会社と石井氏のご厚意で、参加者にオリジナルのTシャツやグッズが配られました。

参加したDeNA社員にちょっと聞いてみました

――まず、勉強会に参加した理由を教えてください。

社員Y:ブロックチェーンをどうやって利用すれば良いのか、現在では明確な答えがあまりないと思っており、技術的な話だけでなく、特にゲームとの関係性や実用例を知りたくて参加しました。

――石井氏の講演を聞いてどう感じましたか?

社員Y:Bitcoinなど仮想通貨取引だけでなく、さまざまな分野に活用できることを知ることができました。非中央集権で扱わなければいけないデータが世の中には思ったよりもたくさんあったことを知りましたが、なぜそうしなければいけないのか、というアイデアも自分なりの気付きに役立ちました。

もちろん、ブロックチェーンのコミュニティの存在は知っていましたが、コミュニティのこれからの動き方や、応用例、適用例なども知ることができましたね。

――もともと、ブロックチェーンの基礎的な仕組みは知っていましたか?

社員Y:社内でも研究している人はいますし、基本的なことはある程度調べていました。ゲーム開発にブロックチェーンを利用する際に、アクションゲームやレースゲームのようにリアルタイムかつデータを書き換える頻度高いジャンルには向いていない認識はしています。そういう流れから、自分達の現在の仕事には直接関連がなく、より深い勉強はしていませんでした。

――ゲームとブロックチェーンが組んだ、業界の将来はどのように進化していくと感じましたか?

社員Y:講演にあったゲームに関する「ミラーワールド」のような世界が実現してから、本格的に変わっていくのかもしれませんね。

運営の透明化についても、事業者そのものが行うというよりは、その世界の住人が「リアル道具屋」みたいな新たなサービスを経営するときなどに、透明性のあるロジックを公開することはあると思います。そこには競争原理などが生まれるかもしれませんね。

かつて話題になった『セカンドライフ』のような世界がさらに進化して、ゲームの内部でブロックチェーンを利用したサービスが生まれていくのだろうと予想していますが、そこでどのようなゲーム性を提供していくかは、まだまだ考えていく余地があると思います。

――ありがとうございました。

取材・文:細谷亮介
撮影:佐藤剛史/細谷亮介

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GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

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【イベントレポ:第2回DeNA×CA勉強会】両社のエンジニアが推進する技術的アプローチとは?

2019年3月27日、DeNA本社にて、DeNAとサイバーエージェントの二社合同でゲーム開発・運用技術に関する、若手向けのクローズドな勉強会&交流会が開催されました。

第二回目となる本勉強会のコンセプトは「若手のエンジニアが発表しやすい雰囲気の勉強会」となっており、DeNAとサイバーエージェント関連会社のエンジニアが2名ずつ、それぞれ約15分ほどのプレゼンテーションを実施しました。本記事ではその発表内容の一部をレポートします。

▼前回の勉強会の模様はこちら!

【イベントレポ】DeNA×サイバーエージェントのエンジニア合同勉強会に潜入!

DeNAマスタデータ管理システムOyakataの全容

DeNA開発基盤部の人西 聖樹から、マスタデータの編集・管理システム「Oyakata」の機能を中心に紹介するプレゼンが実施されました。

DeNA人西 聖樹DeNA 人西 聖樹

マスタデータについて

マスタデータとは、ゲームプランナーが主に編集する、ゲームのパラメータを設定するデータのことで、本勉強会ではレベルデザインに関するものはマスタデータと呼ばないことにすると、冒頭で人西は話しました。

DeNAの今のマスタデータ運用

DeNAの運用中タイトルについて、ゲームはUnity製、マスタデータの管理はGoogle Spread Sheet、Jenkins上でSpread Sheet->ゲームデータ(JSON)に変換、バージョン管理はgitおよびGithubをそれぞれ利用しており、主な制作フローも公開されました。そして、現状のフローでの課題点として、以下の3点が挙げられました。

課題1:並行での開発に対応できていない

現在のフローでは、複数のイベントを並行開発する際に、イベント間での編集の影響範囲が切り分けられず、前段でシート編集中の場合、後続の作業も影響を受けてエラーになっていまいます。

同じく、前段のイベント作業でエラーが出るような値を入力していると、後続も影響を受けてエラーになってしまいます。

課題2:実機確認までに時間がかかる

並行での開発に対応できないと、以下のような弊害が発生します。

・マスタデータのゲームデータへの変換がjenkins頼みになる
・jenkinsのビルドを長時間待たないと、入力したマスタをゲーム実機で確認できない

課題3:差分が見にくい

マスタデータの変更レビュー時や、変換後のデータをgithub上で差分の確認の際、JSONやCSVでのテキスト差分を肉眼で確認するのはとても見づらく、誤った編集の見落としの原因にもなっています。

Oyakataのおもな機能

上記で説明したような課題の解決のために、DeNAでは「Oyakata」というマスタデータの編集・管理システムを開発しています。構成するコンポーネントの機能の詳細は以下の通りです。

ビューワー(viewer)

Webアプリケーションでマスタデータを一覧で表示できる機能を持ち、テーブルを複数に分割して表示、分割したテーブルをまとめて表示。オーソドックスな検索機能で絞り込みも可能です。

編集履歴表示機能では、git likeなコミット単位でのバージョン管理が可能で、編集差分、リリースブランチの差分や、ブランチ間の編集の影響範囲の切り分けなどの表示が可能です。

エディター(editor)

マスタデータを編集する機能で、マスタデータのスキーマの作成・変更・削除ができます。マスタデータはWebおよびExcel上で作成・変更・削除ができ、編集したデータはゲーム上のデータに変換することが可能です。

編集したマスタデータをレビューする機能(いわゆるGithubのPull Request)では、見やすく、人間の目に優しい差分表示ができます。

コンバーター(converter)

マスタデータをゲーム用のデータに変換する機能で、CLIツールとして提供。今後JSONやFlatBuffers Protocol Buffersなど一通りのデータやフォーマットに対応する予定です。

この機能はプランナーのローカルPC上で実行できるので、実機確認をjenkinsを介さないで実施することが可能です。

バリデーター(validator)

マスタデータが正しいのかをチェックする機能で、CLIツールとして提供します。外部テーブルが存在するかを確認する「リレーションチェック」や、タイトル固有の数値を確認する「バリデーションチェック」などが可能です。

Excel上での入力規則チェック、およびチェックスクリプトでの2種類のチェックが可能。タイトル固有でのカスタマイズも可能です。

Oyakataはこれまでの仕組みと何が違う?

大きな違いは「ブランチ管理」をサポートしていることです。他の人の作業の影響を受けなくなり、エンジニアがgitで当たり前のように受けている恩恵を、プランナーも享受することができます。

また、ゲームデータへの変換が個々のローカルPCで可能なため、jenkinsの処理を待たずに実機確認がすばやくできます。さらに、マスタデータ形式に特化した差分表示で、見やすい表示が可能になりました。

まとめと課題

DeNAではこれまでGoogle Spread Sheet、Jenkinsでマスタデータ管理の仕組みを構築し続けたため、並行開発の切り分けやjenkinsに依存した管理と順番待ちの時間が発生していました。さらに人間の目を悩ますcsvやJSONの目視確認もつらかったとのことです。

そのような課題をすべて解決する、マスタデータ管理の共通基盤としてOyakataを開発しています。

質疑応答

Q:Oyakataは開発完了後、社内ツールとしてクローズドで使うのでしょうか?

A:まずは、社内と協力している外部の開発会社さんに導入することを目指しています。Oyakataはあまり他にはないマスタデータ管理システムなので、他社で使えるようなOSSや技術サポートのように、将来的に他のモバイルゲーム開発会社で当たり前に使用できるようなツールになればいいと考えています。

『逆転オセロニア』対戦型AIのバックエンドの実装

続いては、DeNAエンジニア宮下 奨平より、『逆転オセロニア』において対戦型AIのバックエンドの実装についてプレゼンを行いました。

DeNA宮下 奨平DeNA 宮下 奨平

『逆転オセロニア』とAIプロジェクト

『逆転オセロニア』は通常の「オセロ」と同じく、黒と白の駒ではさんでひっくりかえすルールで対戦していきます。プレイヤーは、それぞれHPや攻撃力、さまざまなスキルが設定されたキャラクター駒をデッキを組みます。相手のHPをゼロにすれば勝利となるため盤面を有利に取っていくだけではない、戦略的な立ち回りが必要です。

一般的なボードゲーム「オセロ」については、すでに人間の頭脳を上回るAIが開発されていますが、『逆転オセロニア』ではオセロよりも複雑なルールであり、手駒の置き方などで状況は変わっていくため、一般的なゲームAIの構築手法では強いCPUの実装が困難になっていました。そこで深層学習を利用して『逆転オセロニア』のAIを構築することになりました。

このAIプロジェクトのスケジュールとして、2017年4月から深層学習を用いたAIの研究開発を行い、その後、2018年4月頃からAIが本当に十分な強さを持っているかの検証、さらに2018年9月にAIをゲーム内で利用するための実装を開始し、2019年3月に代表的なデッキタイプのAIと戦える「オセロニア道場」がリリースされました。

『逆転オセロニア』深層学習AI

ゲーム内のPvPにおける大量の棋譜の中から、ランクが高いプレイヤーの棋譜を抽出し、学習用データとして利用します。このデータでAIは特徴量から「強いプレイヤーが打ちそうな手」を推測できるようになり、人間レベルのAIを作ることが可能になりました。前処理はPythonで実装しています。

※棋譜とは:ボードゲームなどで、お互いの対局者の手を順番に記録したデータのこと

盤面、手駒の状況やお互いのデッキなどの情報など、ゲームのすべての情報はJSONファイルで管理し、棋譜には同じ状況を再現できるすべての情報を持っています。

ただし、AIは棋譜(JSON)をそのまま理解することはできないため、テンソル(数字だけの多次元配列)に変換する必要があります。その工程を特徴量の抽出と呼びます。

学習の全体像として、プレイヤー同士の対戦で集まる棋譜を特徴量抽出器(Python)で特徴量に変換、それをAIが読み取って学習していきます。

つまり、とある盤面を再現できる十分な情報を持った棋譜をAIを通して、すべての打ち手に対する盤面を考慮した打ちての良さを「評価値」として算出できるということです。

『逆転オセロニア』AIサーバー

ゲームと深層学習AIをつなげる方法について、サーバー側の実装で、クライアントから都度、推論対象の棋譜をリクエストとして送ってもらう形を採用しました。

プラットフォームは「Google Cloud Platform」を使用、AIモデルをデプロイするシステムを持っている、AI研究の段階でも使用していたことが採用の大きな理由となります。

AIのデプロイについて、Google Cloud Machine Learning Engineに学習済みAIモデルをデプロイすると、APIを通じて推論が可能になり、かつ、負荷に応じてクラスタをオートスケールしてくれるため、構築しやすいのが利点です。

AI APIサーバを実装した要件は「クライアントから棋譜を受け取り、評価値を返す」こと、RPS(秒間リクエスト)1000に耐えること(過去のPvEイベントからあり得る最大のRPSを見積もり)です。この部分はかなり苦労したとのことです。

原因を究明したところ、盤面の特徴量がかなり大量のデータであり抽出にCPUリソースを使ってしまうこと、Google Cloud Machine Learning Engineのレスポンスを平均3秒ほど待つ必要が出ることがわかりました。

Google App Engine(GAE)は、ソースコードをデプロイするだけでさまざまな恩恵を受けることができますが、その中で並列リクエスト数の上限に引っかかってしまったことが原因となったようです。

解決策として、Google Cloud Machine Learning Engine APIや特徴量抽出を待つためのサーバーと特徴量を抽出するためにサーバーを区別します。

特徴量抽出サーバーは、学習時に作ったPythonのプログラムをサーバー化、Google Cloud Machine Learning Engineとは関わらず特徴量の抽出だけをするサーバーとしてGAEをデプロイしています。

またフロントエンドでAPIサーバー(Go)として、Google Kubernetes Engineにデプロイし、処理を待つためだけのクライアントと直接繋がるAPIサーバーを作成しました。

この結果完成したGoogle Cloud Platformの大まかな構成は、クライアントからまずLoad BalencerからGoogle Kubernetes Engineの内部APIサーバーを通り、棋譜を受け取り、それを特徴量抽出サーバーで抽出。そのデータをGoogle Cloud Machine Learning Engineに投げて評価値を算出する、となっています。

この構成なら秒間リクエスト1000に耐えることができるようになりました。

まとめ

Google Cloud Platformは、Google App Engine(GAE)やGoogle Kubernetes Engine(GKE)など多彩なサービスが用意されているため、AIコンテンツを実装しやすいが、実装してみると思わぬ落とし穴があるので、それに負けない強い心が必要だと感じたと、宮下は締めくくりました。

質疑応答

Q:APIサーバーにGoを選定した理由は?

A:Pythonでは、シングルセットで動く場合に並列を待ち受けるワーカーの仕組みでは、あらかじめ固定数で指定する必要があり、それを超えて並列で待つとレスポンスが結構遅くなります。

それに比べてGoなら、リクエストの数に応じてそのたびにGoルーチンを発行して待つことが得意だったため、Goを選びました。

横軸技術組織の成果と学び

最後のプレゼンは、QualiArtsおよびSGE Unity代表責任者の住田 直樹氏より、「横軸技術組織の成果と学び」について発表されました。

QualiArts Unityクライアントエンジニア 住田 直樹QualiArts Unityクライアントエンジニア 住田 直樹氏

SGEとは

Smartphone Game&Entertainment(SGE)は、サイバーエージェントのゲーム事業をメインとした13社が集まった子会社群のことです。また、SGE Unityとは、SGE全体でUnityの技術共有や活性化を図るコミュニティ組織になります。メンバーは、新卒者やボードメンバーなどさまざまな役職の人間で構成されています。

主な活動内容は、勉強会の運営・技術施策の運用などで、週1回のMTGで相談をしています。目的としては、SGE全体においてUnityの技術力の向上、プロジェクトのスピードやクオリティの向上を目指し、会社間の技術的な隔たりをなくして助け合えるように、それぞれが持っているノウハウや失敗例やライブラリの共有をしています。

活動内容

各種勉強会の企画と運営について、さまざまな軸で勉強会を運用しています。特にCygamesやUnityなど外部との合同勉強会に注力し、特別講演などでクリエイターとの繋がりを作っています。

そのほか、外部カンファレンス参加による知見の獲得と共有をする「Unite報告会」、Zenjectなど独自ツールのハンズオンをプロジェクトのエンジニアを呼んで講演する「勉強会」や、Cygames・Unity・SGEの3社合同の勉強会などを実施しました。

最近では勉強会などの参加人数も増えていて、講演の模様は録画と社内動画ストリーミングで配信しており、参加できない人も後日チェックすることが可能です。

また、イベント開催による技術発信の促進のため、それぞれのプロジェクト事例を文章化して蓄積・共有する社内Qiita Teamが存在し、各職種のエンジニアやクリエイターが自由に投稿ができます。

技術書の作成では、有志を募ってUnityの開発に役立つTips集「UniTips」を作成、個人開発や業務で得た知見をまとめて文書化しています。シリーズを通して住田氏も執筆に参加しているとのこと。

技術書典では、学生やフリーランスなどさまざまなエンジニア、クリエイターが多数来場しているようです。

組織としての成果

大きな成果は「ナレッジの蓄積」で、約1年で1,000件を超える数を持つSGE Qiitaの記事では、個々のプロジェクトを踏まえた特有のケースなども多数収録されています。

SGE内の動画配信媒体「SGETube」を活用し、参加できなかった人も後日に閲覧が可能になっています。

また、会社間のノウハウ共有による開発の効率化も実現でき、それぞれの分野の知見を活かし各社の不足している部分を補填でき、技術組織の底上げができています。

さらに、Unityに関する勉強会や懇親会などの施策実施について、相談窓口の存在となっており、外部との交流を深め、インプットとアウトプットを通しての組織力の向上が図れました。

個人としての学び

住田氏が自身の学びとして強く感じたことは、技術者としての視野の拡張だと話し、多くのエンジニアやプロジェクトと交流したことで、ノウハウを学びながら、どのような技術施策が組織開発の活性化に繋がるか、技術的にどのような挑戦をしていくかを経験ができたことと、嬉しそうに話しました。

また、何よりも技術組織の責任者を経験したことも良いプレッシャーとなり、さらに良い技術者になるためのエネルギー源にもなったと語っています。

まとめ

技術組織を活性化させることによる、幅広い知見の共有と獲得
さまざまな得意分野・技術・開発体型を持つ子会社群のノウハウの有効活用。動画や文書などによる知的財産の蓄積

横軸規模の技術組織を運営することによる技術者としての成長
多くのエンジニアとの交流や技術施策の運営を通した知見の獲得、業界的な技術挑戦に対するアプローチの検討

技術者としての目線上げ
組織的にどう貢献するか、技術者としてどう成長していくか?

質疑応答

Q:SGE Unityの活動について、ゲームタイトル開発側の評価はいかがでしょうか?

A:詳細なヒアリングをしていないのですが、個人的に活動についてのポジティブな反応をさまざまな職種の人から聞いています。

エンジニア同士で盛り上がる懇親会

各社エンジニアのプレゼンテーション後は、懇親会が開催され、会社の垣根を超えて積極的に親睦を深めていました。このような勉強会は今後も定期的に開催していくとのことです。

取材・文・撮影:細谷亮介

※本記事は2019年3月時点の情報です。

オセロ・Othelloは登録商標です。TM&© Othello,Co. and MegaHouse
© 2016 DeNA Co.,Ltd.

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GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

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