【DeNAコミュニティテック最前線】ゲーム運営の課題をテクノロジーで解決! データをフル活用するコミュニティマーケティングは新たなステージへ

スマートフォンゲーム運営において、コミュニティマーケティングに取り組み続けてきたDeNAゲーム事業部マーケティング部。これまでさまざまな施策を通じて、コミュニティの形成/拡大を推進してきましたが、SNSを活用したブランディング活動の重要性を強く感じてきたそうです。

そして今回GeNOM編集部では、この領域を推進してきたマーケティング部の鶴川が、分析部やAIシステム部のメンバーとともに、データを活用してコミュニティマーケティングを進化させる取り組みを行なっていることを聞き、開発中のツールや高度な分析手法の詳細、そして今後の取り組みについてインタビューを実施しました。

コミュニティ運営をテクノロジーで進化させる

――まず最初に、鶴川さんが考えるコミュニティマーケティングの「あるべき姿」について教えてください。

鶴川:まず、コミュニティとはさまざまな定義があり、一言で纏めることは難しいですが、私は「同じ価値観/目的を持った人が集まり共感し合う集合体」だと考えています。

その上で、コミュニティマーケティングとは[su_highlight background=”#fcff99″]「プレイヤーと信頼関係を構築し、そのプレイヤーのゲーム愛を醸成しながら事業を拡張していくマーケティング活動」[/su_highlight]だと私は考えています。

この考え方に沿って、オンライン・オフライン問わず、さまざまなコミュニティ施策を各ゲームを通じて提供してきました。

――コミュニティマーケティングで大事にしていることや課題、今後の展開についてはいかがでしょうか?

鶴川:コミュニティマーケティングの施策の精度をより高めるためには「プレイヤーのことを正確に理解する」ことが、とても大切です。プレイヤーがゲームに求めていることを、誤認無く理解することが、より良いUI/UXの提供に繋がっていくと常に考えています。

ですが、プレイヤーの皆さんがゲームをプレイする目的は千差万別で、コミュニティマーケティングの施策を検討する際、プレイヤーの方々のニーズをMECE(モレなくダブりなく)に把握することに、とても時間がかかっていました。その部分に関して、より効果的な運営が実現できる基盤が必要だと感じていたんです。

――コミュニティを可視化していくことで、さらにプレイヤーの満足度を高めていこうと?

鶴川:はい。それを実現するためのツール開発には、専門的な知識が必要です。技術的な面など、マーケティング部内だけでは実現できないと悩んでいた中で、分析部の安達さんに出会ったのが、プロジェクト開始のきっかけです。

これまで私が抱えていた課題を安達さんに伝えると「全部可能だと思います!」と素晴らしい回答をいただき、さっそく要件を具体的に決め始めたのが2019年1月~3月、少しずつですが4月からツールの運用を開始し始めました。

鶴川将志 | マーケティング部ソーシャルメディアブランディングGr
DeNA入社後、ゲームタイトルのマーケティング全般(TVCMやイベントなど含む)の戦略を策定し、関連部署と連携して全体を推進するマーケティングプロデューサーとして従事。2018年4月にコミュニティマーケティンググループ グループマネージャーに就任し、2019年よりソーシャルメディアブランディンググループを立ち上げる。「ゲームプレイヤーの熱量を高める」ことをグループのミッションとし、オンライン/オフラインのコミュニティ施策の戦略立案と推進を行うチームをマネジメントしている。

――鶴川さんから相談を受けて、第一印象で安達さんはどのように感じましたか?

安達:提案された課題は、個人的にとても興味深かったです。コミュニティマーケティングをデータドリブンにして、コスト削減・業務効率化することで、ゲーム事業だけに留まらず、スポーツ事業やソーシャルライブ事業など、全社的に貢献することができます。

また、コミュニティ分析に関しては科学的な面白さもあります。私たちは、家族・学校・仕事から趣味・SNS上まで、さまざまなコミュニティに所属しています。それを抽出・分析・予測することで、我々はなぜコミュニティを形成するのか、などの本質に迫れたらいいな、と思いを巡らせていました。

鶴川:実は4年ほど前から、コミュニティの分析手法に対して、SNSの運用がどのような影響を与えているのか検討していたのですが、難易度が高く、ことごとく頓挫した経緯があります。ですので、このプロジェクト開始で、ようやく突破口が開けたと言えます。

マーケティング、分析、AIの専門家が、独自分析ツールを開発

――では改めて、今回開発に至ったツールの機能について教えてください。

鶴川:コミュニティマーケティングの分析は定量と定性の両面で行っていますが、定量データを取得することが非常に難しく、今までは定性データを軸にした分析を行っていました。しかしプレイヤーのことを、より正確に理解するためには定量データの分析が不可欠です。

だからこそ、この定量/定性データを照らし合わせて、効率良く分析ができる基盤を作りたいと常々考えていました。

詳細はこの後に説明していきますが、本ツールには主に3つの機能があります。

・分析自動化の強化(TwitterAPIを最大限活用しつつ、分析集計の工数を削減)
・コミュニティの可視化(日々変動するコミュニティの動きを可視化する)
・インフルエンサー発掘(影響力があるプレイヤーを発見する)

先程もお話ししたとおり、まずは安達さんに相談し、その後小口さんや田中さんを巻き込んでプロジェクトが進行していきました。具体的には分析自動化の強化は小口さん、コミュニティの可視化は安達さん、インフルエンサー発掘は田中さんに主に担当していただきつつ、全員で積極的に議論しながら開発を進めています。

安達:DeNAの各事業部において、TwitterなどのさまざまなSNS上で施策が行われているので、今回開発したツール、そして採用している分析手法は組織を横断して使えるため、かなり意義のあるものだと思いますね。

田中:それに、機械学習やAIをコミュニティマーケティングに活用している事例はあまり多くないので、この取り組みを通して、新しい市場を切り拓いていきたいですね。

分析自動化の強化

――それではツールの詳細について質問です。まずは、分析ツールの機能のひとつ「分析自動化の強化」に関して、機能紹介や仕組み、活用方法、運用実績、ケーススタディなどを教えてください。

鶴川:Twitterの数値分析を正しく、かつ少ない工数で可視化したいと考えたのが、この機能のはじまりでした。

小口:まずデータを可視化するため、TwitterのデータをGoogleスプレッドシート(以下GSS)でグラフ化、KPIの数値を出せる仕組みを作りました。

DeNAでは内製BIツール「Argus(アーガス)」を使い、ゲームの行動ログなどを用いてデータ分析をしており、それをプロダクトの改善やUX向上のための施策立案に役立てています。このプロジェクトでもArgusで可視化するという選択肢もありましたが、今回はGSSを採用しました。

その理由としては、[su_highlight background=”#fcff99″]データ分析を後続の業務とシームレスに繋げたいという意図があった[/su_highlight]からです。例えば現行の業務だと、Argusで可視化してそのデータをExcelに落とし、さらにExcelでまた集計してグラフにしてスライドに貼る、みたいな業務があったりします。

データを業務に用いるまでのプロセスが長いので、大元のデータベースが更新されたら、アウトプットのスライドまで一気に自動で更新されるような仕組みがあったらなと思っていました。そうすれば、データの集計作業ではなく、データの結果からプロダクトや施策のことを考えることにより時間を充てられると思いました。

DeNAでは、分析用のデータベースとしてGoogleのBigQueryを利用していますが、年々BigQueryを中心としたビッグデータ解析のエコシステムが成熟してきています。今回のGSSも裏側でBigQueryのデータベースと繋がっていて、誰もが見慣れたGSSのインターフェースからビッグデータ解析ができるようになっています。

また、今回のケースでは利用しませんでしたが、BigQuery MLというSQLで機械学習のモデル開発ができる機能もあり、それもGSSのみをインターフェースにして利用できたりします(詳しくはデータエンジニアリングGrのグループマネージャーが登壇したCloud Next Tokyo 2019の発表をご覧ください)。

小口力也 | 分析部データエンジニアリングGr
2017年に新卒で総合電機メーカーに入社し、全社ITの統括部門で社内システムの企画、開発に従事。2018年にDeNA入社後は、分析部データエンジニアリングGrの立ち上げに参加し、データエンジニアとしてアプリゲームのビッグデータ解析基盤の構築に従事。ゲーム内の行動ログをもとにしたデータウェアハウスの設計、開発から、機械学習を用いた高度な分析のシステム構築など、事業の意思決定をデータドリブンで実現するためのインフラ構築に取り組んでいる。

鶴川:このツールはただ数値を表示するだけではなく、その数値をどう使うかも含めて設計したので、集計結果をそのままレポートできるようになっています。

小口:SQLを用いたGSSからBigQueryへ問い合わせも、スケジューリングができるので、データベースが更新されていれば、GSS上のデータも更新されます。

もし、サマリのグラフなどをGoogle Slideのグラフに連携していれば、それも同様に最新の情報にアップデートされます。データベース、GSS、スライドを連携することで、コミュニティマーケティング関連の分析作業を、革新的ともいえるレベルで効率的にしました。

鶴川:小口さんが話してくれたように、使う側のユーザビリティも意識して作ってくれているので、他事業部への展開のしやすさも大きな強みですね。担当者には「ここに日付を入力するだけですよ」と説明するだけですぐに使えるのでマニュアルもいらず、助かっています。

それとは別で、データを元にどういう観点で、どういう示唆を導き出せるかの考え方を纏めた資料を作りました。ツールの価値を最大限引き出すために利用者の分析力を高める取り組みも、同時に行っています。

――ちなみに、どのようなデータが可視化できるようになっているのでしょうか?

小口:GSSで可視化できるのは「毎日のオーガニック(通常投稿)の投稿数」「リツイート数」「期間中に頻出して使用されたハッシュタグ」など、さまざまな指標です。

また、「Google Natural Language API」というGoogleのサービスを利用して、テキストの感情のスコアを定量的に取得しているので、BigQuery上にそれらのデータを保持しておけば、例えば「この施策におけるプレイヤーの反応がポジティブなのか、ネガティブなのか」といった情報などもGSS上で可視化することもできます。

鶴川:Google Natural Language APIを利用した分析結果と、こちらの感覚がほぼ合致しているので、精度は結構高いと感じましたね。

安達:あと、ツールのユーザビリティにはこだわりましたね。作ったものの、使われなくなってしまうツールが多々ある中で、それを防ぐために、鶴川さん側と、施策に繋げる上で必要・不必要な情報については徹底的に議論した覚えがあります。

鶴川:要件に関しては、自分が事前にマーケティングのメンバーからヒアリングして、安達さんたちとディスカッションしました。良い意味で無駄な要素を削ぎ落とせたと思っています。

小口:このツールでは、期間を指定するだけでKPIを可視化できるんですが、比較も可能になっていて「先月の施策に対する反応」と「今月の施策への反応」を比較したいとき、期間を別々に指定することで、どんな違いがあるのかひと目で分かるようになっています。

――誰でも簡単に扱えるようなユーザビリティが整備されているんですね。ちなみに可視化するまでの過程で苦労した点はありますか?

小口:GSSとBigQueryを連携する機能が「Connected Sheets」や「Data Connector」といった比較的新しい機能で、特にConnected Sheetsについては現在β版なので、周囲に実務で導入している人がおらず、またWeb上に知見もたまっていないので、手探りな部分はありました。

――ちなみに鶴川さんとの連携で大変だった点はありますか?

小口:強いて言えば、鶴川さんの推進力が高いので、次々と全社でニーズを引っ張ってきて頂いたところですかね(笑)。それだけ[su_highlight background=”#fcff99″]「ユーザーコミュニティをもっと良く理解したい、それを施策に活かしたい」[/su_highlight]という全社のニーズが高かったのだと思います。

――現在では案件はまだ増えているんですか?

鶴川:いえ、現在は一旦落ち着いていて、実績を生み出すフェーズに移行する段階に入っています。

小口:BIツールでの可視化については、今後[su_highlight background=”#fcff99″]「Looker」の導入が決まっている[/su_highlight]ことが最近のトピックです。

鶴川:Lookerを使用することでツールのユーザビリティがもっと向上しそうですね。

小口:そうですね。LookerにはViz Blocksというダッシュボードのテンプレートを使って、簡単にダッシュボードを作成できる機能があるのですが、社内外の人が活用できるコミュニティ分析のテンプレートを開発することにも、チャレンジしてみたいですね。

5時間の工数が、10分に短縮

――ちなみに小口さんの開発の成果として、かなり工数削減が実現したと聞いたのですが?

安達:そうなんです。世間でデータドリブンやAIといった概念が浸透している中、コミュニティマーケティングの仕事についてヒアリングしたとき、実はマニュアル作業が多いと聞いて驚かされたんです。これはイケてないね、ということで業務効率化を行いました。

鶴川:この効率化に関しては[su_highlight background=”#ffa299″]「5時間かかっていた作業が10分で終わった」[/su_highlight]という、ものすごいインパクトがありましたね。

プレイヤーのことを正確に理解するために、定量/定性データの収集を行い、そこからプレイヤーのインサイトを見つける業務を毎日欠かさず行っています。

特に定性データの収集は、集計結果の品質を高めるためには時間を要していたのですが、小口さんのツールのおかげでかなり短縮することができました。

――このツールと機能が広まれば、全社的に大幅な工数の削減ができるかも知れませんね。

鶴川:今まさに、それに取り組み始めています!

安達:データに対するリテラシーが高くないと気付きづらい面もあるので、この記事のように社内外に発信していくことで、導入を考える人が増えてほしいですね。また、こういった取り組みを通じて関係値を築くことで、高度な分析に対するアイデアのやりとりなどがスムーズに進むと良いですね。

鶴川:確かにルーチンワークがスリム化できたので、新しい企画やアイデアを考える時間に頭を使えるようになると期待しています。

コミュニティの可視化

――それでは次に「コミュニティの可視化」に関して、分析の詳細や活用方法などを教えてください。

安達:はい。まず特定のゲームで盛り上がっている人々の中からコミュニティを抽出して、それらが時系列でどのように拡大・縮小・結合・分裂・消滅していくのかを可視化しています。

また、各コミュニティが「イラストが好き」「ストーリーが好き」「運営について語りたい」など、どういった話題を中心に形成されているのかを調べています。

そこで得た知見を元に、SNS上全体のアクティビティを活性化させるためには、どのコミュニティ同士を繋げればいいのか、また、各コミュニティにどういった内容の施策を行うと反応が良さそうか、といった方向への活用の検討を行なっています。

また、さまざまなゲームコミュニティ間の距離を計測・可視化することで、あるゲームを始めてもらうためには、どの他ゲームに関連するコミュニティにどのようなキャンペーンを行えば良いのか、施策のヒントとなる分析を行なっています。

安達 涼 | 分析部第一Gr
人間の意思決定プロセスの数理モデル化と、その神経基盤を解明する研究に従事し、カリフォルニア工科大学PhD(計算論的神経科学)を取得。2018年にデータアナリストとしてDeNAに入社。機械学習の手法のみならず、行動経済学の知見などを用い、人間のゲーム内外での行動データを包括的に理解することで、ゲームタイトルの運営力・UX向上を目指している。

――特に苦労した点は?

安達:データが全くない状態からスタートしたので、小口さんのチームとデータ収集について連携してデータを用意し、そこから分析まで、ゼロからイチまで行う、というプロセスが大変でした。

でも実際、苦労したという感じはなく、そのプロセスも楽しく感じましたね。人と人とが興味で繋がってコミュニティを形成していく、そのプロセスがデータで確認できるってすごい時代ですよね。

海外では、SNSの会社が研究機関と連携してコミュニティ関連の分析を行なっていたりしますし、日本でも徐々に流行っていくのではと感じています。

――コミュニティを分析して数値で表現する仕組みを教えてください。

安達:コミュニティを抽出するためには、まずユーザーのネットワークを作成する必要がありますが、作成の仕方にもいろいろあり、例えば、フォロー・フォロワーの関係性で組んだり、ツイート・リツイートの関係性で組むこともできます。

この定義次第で分析できることが変わってくる、この曖昧さが難しい部分である一方、クリエイティブな方法を見つけたりできる面白い点でもあります。

日々変動するコミュニティの可視化によって、施策も改善・進化

――鶴川さんはこの機能について、実際に使ってみてどうでしたか?

鶴川:これから本格的に活用するフェーズに入りますが、新発見が多く、こちらの仮説が意外と外れていたことも分かりました。また、その仮説が外れたからこそ新しいアイデアが生まれるきっかけにも繋がっています。

――Twitterのリアルタイム性の高さに関しては、どのような対応ができますか?

安達:今回の分析では、ゲームのコミュニティがどのように拡大縮小しているのか、コミュニティごとに何に興味があるのか、などを抽出・可視化しています。

Twitterは非常にアクティブなSNSなので、ネットワークやコミュニティの変化は激しいと思っていたのですが、コミュニティというレベルでの変化は、割と安定していることがわかりました。

これはもちろん、リリースからの年月、そのゲームタイトルがカジュアル層向けかコア層向けか、でも変わりますが、この観点からのゲーム間比較も面白そうですね。

鶴川:複数のコミュニティがいつの間にか合体して大きくなったり、分裂したり、人間の目では分かりづらい様子が時系列で見えるので、面白いですよね。

あるゲームに関連するコミュニティの時系列遷移の可視化例。
各コミュニティは拡大・縮小・結合などを繰り返している。

――ちなみにコミュニティの動きが見れる画面は、基礎知識がなくてもすぐに理解できるのでしょうか?

安達:さまざまなサイズのコミュニティが週ごとに拡大・結合・消滅して遷移していく様子を可視化しています。

田中:その部分をより見やすく、わかりやすくするのが、まさに自分たちの今後の仕事ですね。

安達:ええ。コミュニティの遷移に加えて、各コミュニティで流行っている話題なども一目でわかるようなダッシュボードの制作も予定しています。

――これまでの話を聞いていると、なんとなく銀河系、宇宙空間をイメージしてしまいます。

田中:確かに似ているかも知れませんね。Twitterの拡散範囲は、人間が認知不可能なくらい広がっていますし。太陽系は今まで詳細に観測できているけど、さらに遠くの惑星や銀河には未知の部分も多くあるように、まだ見えていない部分を解明していくことが、本プロジェクトのひとつの目標ではありますね。

安達:そうですね。コミュニティの変遷はまるで生き物のようにも見えますよね。それをデータを元に分析して、これから色々な施策に活用していくことを考えるとワクワクしますね。

インフルエンサー発掘

――続いて、「インフルエンサー発掘」に関して、機能紹介や仕組み、活用方法、運用実績、ケーススタディなどを教えてください。

田中:この機能については研究開発のフェーズですが、現時点で行なっていることについてお話ししていきます。

当初の鶴川さんからの要望は、[su_highlight background=”#fcff9″]Twitterにおいてプレイヤーや運営の投稿が誰に届き、どうやって広まっているのか、誰を経由して強弱が変化しているのか、その伝播過程を知りたい[/su_highlight]といった内容でした。

さらに、熱量高くプレイを続けてくれるプレイヤーは誰なのかを、大規模なSNSの中から見つけて欲しい、といった「インフルエンサーを可視化してほしい」という内容も含まれていました。

田中 一樹 | AIシステム部データサイエンス第一Gr
2017年にDeNA入社後、データサイエンティストとしてアプリゲームに関する AI 機能の開発に従事。現在は、多様な事業へのデータサイエンス活用を目指した研究開発や課題発掘に従事。「速習 強化学習 – 基礎理論とアルゴリズム-」(共立出版) の翻訳、「Practical Developers ―機械学習時代のソフトウェア開発[ゲームアプリ-インフラ-エッジ編]」(技術評論社) の執筆に携わる。学生時代からデータ分析の大会に没頭し複数大会で入賞。Kaggle Master。

田中:「インフルエンサー発掘」と説明しましたが、実際には「インフルエンサーの可視化」「インフルエンサーのインフルエンス力(影響力)の可視化」「抽出したインフルエンサーの特徴分析」について重点的に実施しています。

インフルエンサー分析の可視化画像

田中:「インフルエンサーの可視化」については、すでにインフルエンサーになっている人を発見する分析と、将来インフルエンサーになりそうな「ポテンシャルインフルエンサー」を予測し、事前に発見する分析を行なっています。

既存のインフルエンサーについては、すでにさまざまなアルゴリズムが研究されており、それらを活用し抽出しています。

例えば良質な情報を発信している人、情報伝播や繋がりのハブとなっている人、拡散力があり情報の発信頻度が高い人、などさまざまな角度からインフルエンサーを発見しています。

まだPoCの段階ですが、汎用性の高いアルゴリズムが多く、現在では20~30種類の指標を使って、自動的にインフルエンサーを抽出し、分析することができるようになってきました。

また、未来のインフルエンサーをデータサイエンスやAIで予測することができれば、運営が事前に熱量が高まりそうなインフルエンサーと接点を持つことができます。ここではAIを使って過去のアクションや嗜好性、繋がっている人の情報などから、将来インフルエンサーになりそうかを予測しています。

――AIで未来のインフルエンサーを発掘するのは、DeNAならではの取り組みかもしれませんね!

田中:そうですね、AIの活用を通じてなるべく多くの方に情報を届けていきたいですね!

続いては「インフルエンサーのインフルエンス力(影響力)の可視化」についてお話しします。

インフルエンサーを可視化した後、実際にどのくらい拡散されるのか、どうやって拡散されていくのかを知りたくなりますよね。その部分を解明するために、我々はツイートの拡散シミュレーションに関する研究開発も行なっています。

インフルエンサーがあるツイートをしたときに、どんな経路で最終的にどれくらいの人数に拡散されるのかをシミュレーションする研究開発が進んでおり、マーケティングでの簡易的な運用は可能になり始めています。例えば、Twitterにおける広告配信など、SNS上の幅広い範囲に情報を行き渡らせるためのターゲティングに活かしたいと考えています。

ここで研究している手法の中身は、[su_highlight background=”#fcff9″]Influence Maximization(影響最大化)と呼ばれる最適化系の問題でバイラル(口コミ)マーケティングの文脈で語られることが多い[/su_highlight]です。「どこに施策を打つと情報の広がりが最大化されるか」というテーマで最適化をする分野で、一般的に解くのが困難な問題ではありますが、上手く工夫しながら実応用を目指して取り組んでいます。

しかし、現実世界のSNSは単純ではありません。自分が発信したツイートを他の誰かがX%の確率でリツイートしてくれる、といった確率を正確に把握することは、難しいことが多いです。

ただし、我々はそれを解決するためにツイート内容などから、情報が伝播する確率を推定する取り組みも行なっています。

例えば、親和性の高い人同士は高確率で情報伝播しやすい、嗜好が似ておらず興味が異なる人同士では情報がリツイートされにくいなど、さまざまな観点からより現実的な拡散シミュレーションができないか日々検証しています。

他にはフォローが多い人はタイムラインが流れやすく、ツイートが目に留まる確率が下がる傾向があるので、拡散される確率もその分減るのではないか、といった仮説検証もしています。

――Twitterなど投稿するのは人間なので、あいまいな部分を解明するのは大変では?

田中:そうですね。その部分に関しては安達さんが行なっているコミュニティの分析と連携しながら、この人はどのジャンルが好きなのかといった趣向も深掘って分析したいと考えています。

――このインフルエンサー発掘の機能について、鶴川さんはどう感じていますか?

鶴川:とても未来的で、今後のプロモーション施策などへの活用方法は多彩だと思います。さまざまな情報が行き交う今の時代では、サービス提供者の発信だけではコミュニティへ情報を十分に行き届かせるのは、とても難しく限界があると感じており、ゲームに関する情報発信していただけるプレイヤーの方々の力が、情報伝達に必要不可欠な時代になっています。

私たちは「フォロワー数が多い」「発信回数が多い」と言った表面上の数値だけではなく、もっと本質的な要素も含めてインフルエンサーの発掘をしたいと思っています。

田中:コミュニティとインフルエンサーの両方の観点を組み合わせて連携することで、今までできなかったような有効な取り組みができたら良いですね。

――今後のマーケティング施策も成功する確率をさらに上げることができると?

田中:まさに取り組んでいる最中ですが、このプロジェクトではAIによって作成されたシミュレーションや予測を元に施策を実施した後に、その結果をAIのアルゴリズムにフィードバックする工程をなんども繰り返し、全体のワークフローを精緻化することで成功確率を上げていきたいなと思っています。

鶴川:施策自体も変わりますが、それを作るプロセスも実際変わってきています。今まで見ていなかったデータを当たり前に見るようになってきていますし、施策を考える際に連携を図るチームも変わってきています。

田中:全員に全く同じマーケティングをするのではなく、イベント関連の施策はこのインフルエンサーに、バトル関連施策はこのコミュニティに、といったようにジャンルやゲーム毎に施策の検討方法が変わっていくと思いますし、そのクリエイティブを作り始める段階から連携できれば、新しい価値を生み出せるかもしれませんよね。

データはこれまでにない強い武器となる

――このようなコミュニティ分析ツールは、ゲーム業界以外でも開発・活用されているのでしょうか?

安達:日本だけでなく世界的にも、データサイエンスやAIを用いてコミュニティの分析を推進する取り組みは少ないと思います。

コミュニティという粒度で包括的に、データを元にした施策を考えていく取り組みはあまり耳にしないですね。

田中:Twitterの自動ボットやターゲティング広告などの取り組みはが多いと思いますが、コミュニティの性質をデータから細かく分析する取り組みは、あまり多くないと思います。

鶴川:このプロジェクトではマーケティング施策を最大化させていくという観点ももちろんありますが、それ以上にプレイヤーの体感・体験を向上することに強くフォーカスしています。

――冒頭でも少しお聞きしましたが、鶴川さんが安達さんに相談してから、ツールが開発されるまでのフローを改めて教えてください。

鶴川:まず最初に実現したいことをまとめつつ、ダッシュボードのイメージを含めて、安達さんと要件をすり合わせていきました。

安達:まずTwitterの基本的な統計量取得による工数削減および、データサイエンスを用いた高度な分析で実現したいこと・できそうなことをまとめました。それから自身でPoC(Proof of Concept:概念実証)をして、まずダッシュボードを作成しました。

その後、さらにスケールさせるために小口さんに相談をして、ダッシュボードにいろいろな人がアクセスできるよう拡張してもらいました。また、高度な分析でも実現したいことが多く、田中さんにも参加していただいた流れになります。

小口:自分が驚いたのは、鶴川さんの推進力の高さでした。データ分析を生業としている私たちデータエンジニアやデータサイエンティストが分析をして「こういう意思決定をするべき」とコンサルティングをして巻き込むというよりは、データを使ってより良い意思決定をしたい、と望んでいるメンバーが中心となって始まったプロジェクトだったので、スピード感や熱量が他のプロジェクトより高かったと思います。

また、鶴川さんがこの取り組みを他事業部に共有してくれたのも、嬉しかったですね。データは施策や意思決定に活用してもらわないと価値がないですし、それを全社に届ける動きをしていただいたのは非常に助かりました。

鶴川:少し照れますね……(笑)。実は自分のストレングスファインダーの資質の中では「分析思考」がかなり強いんです。もともと未知の発見が好きなので、なるべく食わず嫌いはしないようにしています。

また、時間が空いたときに安達さんからネットワーク理論について教えてもらって、勉強しています。これまでコミュニティマーケティングの人間が、何となく感覚で理解していた部分に、アカデミックな情報が加わると、明確に言語化できるので楽しいですし、学んでいきたいですね。

――ただ要件を依頼するだけでなく、お互い学びながら成長すると?

鶴川:はい。お互い似ている領域ではありますが、所持しているナレッジが違っていたのかなと思いますね。それを交換しながらパフォーマンスを上げていきました。

――このツールについて他の事業部からのフィードバックはどのようなものがありましたか?

鶴川:実はつい最近共有したばかりなんですが、一様にかなり驚いた反応をしていました。

これまでは「こんなツールあったら便利かも」くらいに抽象的なイメージしかなかった中、それを具体的に可視化、言語化できるツールが登場したので、驚きがあったのだと思います。

コミュニティの運用においては、どのようなデータを見れば良いのか、またそのデータをどのように取得すれば良いのか判断がとても難しいです。

本ツールで取得したデータを使用して、プロデューサーなどのメンバーと議論していますが、[su_highlight background=”#fcff9″]ファクト(事実)を示すことができる[/su_highlight]ので、議論の質も高まっていると思います。

――しっかりと説得できるデータが取得できているからこそ、これまでにない強い武器になると?

鶴川:はい。ほとんどの人は、Twitterやネット掲示板を常に見ているわけではなく、スキマ時間にチラッと見た情報が正になってしまうことが多いですが、コミュニティは常にリアルタイムに動いています。

全体を理解できていないのに結論付けてしまうことが、これまで課題だったのですが、このツールのおかげで、総合的にサマリを伝えることが可能になったのは、大きな強みと言えますね。

人と人を繋いでユーザー体験を向上したい

――今後、本ツールの運用で事業(ゲームだけでなく)に対してどのような成果を目指していきたいと考えていますか?

小口:今回はTwitterだけの取り組みでしたが、他のプラットホームにもコミュニティは存在しているので、それらのオープンデータを活用できる状態を実現したいですね。また、グローバルでのユーザーコミュニティの可視化にもトライしたいです。

安達:コミュニティはゲームに限らず、どこにでも存在するので、その汎用性を生かして他の分野に広げていきたいと考えています。また、ここ最近の機械学習手法の進展によって、高い精度でコミュニティ抽出ができるようになったり、かなりアクティブなリサーチエリアになっています。

コミュニティマーケティングの重要性の増加と相まって、今後活用先が増えるのは確実です。今回の分析をきっかけとして、社内外で協力して、マーケット全体のスタンダードを作れればと思っています。

田中:もちろん汎用的な技術なのでさまざまな事業へ横展開していきたいと考えていますが、私がデータサイエンスやAIを活用するときの軸としているのが[su_highlight background=”#fcff9″]「サービスに触れている方に楽しさや新たな体験を届ける」[/su_highlight]ことです。

抽象的ですが、人と人が繋がり、今まで以上にハッピーになる世界を目指したいですね。このプロジェクトでは、データサイエンスやAIを通じてその橋渡しができるきっかけを作りたいと思っています。

鶴川:コミュニティマーケティングは大きな可能性を秘めていて、テクノロジーの力を活用しコミュニティの可能性をもっと引き出せれば、今までにない新しい取り組みに繋がると考えています。その新しい取り組みで、より多くの人により楽しい体験を提供していきたいと思います。

――ゲームやサービスを通じて、プレイヤーをさらにハッピーにできる技術が進化していくのは、とても楽しみですね。ありがとうございました。

インタビュー・執筆:細谷亮介
編集:佐藤剛史
撮影:齋藤暁経

【CEDEC2019】「『逆転オセロニア』における、機械学習モデルを用いたデッキのアーキタイプ抽出とゲーム運用への活用」セッションレポート

2019年9月4日~6日の期間、パシフィコ横浜において、ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2019」が開催されました。

本記事では9月5日に実施された、『逆転オセロニア』における、機械学習モデル (トピックモデル) を用いた、大規模データからのデッキアーキタイプの抽出、関連するKPIの可視化などについて紹介されたセッションの内容を一部抜粋してレポートします。

セッションの冒頭では、分析部 アナリストの安達涼より、登壇者の簡単な自己紹介のあと、DeNAゲーム事業部分析部について、現在では各ゲームタイトルに専属アナリストをアサインする体制があること、行動ログ分析、ユーザー調査など、さまざま分析手法を利用して分析に取り組んでいることが説明されました。

また、新しい分析手法や機械学習などの高度な技術を活用したR&Dにも挑戦しており、本セッションでの発表は、その実践例の一部を抜粋して紹介するとのことです。

『逆転オセロニア』では、これまで積極的にAIや機械学習の活用を実施しており、特に深層学習を用いた「対戦AI」、アソシエーション分析を用いた「デッキのオススメ編成」などをゲーム内に実装するなど、プレイヤー体験を向上させる施策を実施してきました。

最近では、ゲーム外(運営側)でも、AIや機械学習の手法を用いて、作業の効率化やプレイヤー体験の向上のために、さまざまな検証を行っていると、安達は述べました。

DeNA 安達 涼

『逆転オセロニア』とデッキアーキタイプ

『逆転オセロニア』は、オセロのルールに基づいた対戦型スマートフォンゲームアプリで、駒のスキルやコンボを組み合わせて戦う高い戦略性と、劣勢からでもドラマチックに逆転できることが特徴となっています。

ゲームプレイコンテンツとしては、キャラクター(駒)の中からプレイヤーが自由に構築したデッキでの対戦が中心で、PvPがメインで遊ばれています。

なお、PvPコンテンツ内ではプレイヤー同士でポイントを奪い合い、月間の到達クラスを競うリアルタイム対戦「クラスマッチ」が最も遊ばれていることが分かるデータも紹介されました。

『逆転オセロニア』のキャラクター(駒)には「神・魔・竜」の3種類の属性が設定されていますが、これらの属性に属性間の相克や優劣などはありません。

また、クラスマッチには「属性補正」が設定されており、「神・魔・竜」それぞれの属性のキャラクター(駒)のHP/ATKなどに対して、ステータス補正が設定され、属性補正によって毎日環境が変化するため、その日の相性の良いデッキを選ぶことで、飽きを防ぐ仕組みになっているとのことです。

プレイヤーは約3,500種類以上存在する駒の中で、自分が保有している駒から16個を選んでデッキを構築し、そのうち1つをリーダーの駒に指定します。

それぞれの駒には固有のスキルやステータスが存在するため、盤上に駒を置いた際、相手の駒を自分の駒で挟んだ場合に特定条件下で発動する「コンボスキル」を決めて勝利するには、駒同士のシナジーを考えてデッキを組むことが重要なようです。

このデッキ構築に関して、戦い方を考慮したおおまかなデッキ構成に「アーキタイプ」という概念が存在します。

『逆転オセロニア』には、現在20種類前後のアーキタイプが存在しており、アーキタイプは属性を統一することで効果を発揮するものなどもありますが、リーダー駒とアーキタイプは必ずしも紐づいていないとのことです。

デッキアーキタイプの例として、竜属性の駒のみで構成され、高い攻撃力と強力なコンボスキルで早い決着を狙える「貫通速攻」と、3属性の駒で構成され、バランス良く戦える「混合」のアーキタイプが安達より紹介されました。

アーキタイプの相互関係は、対戦環境に大きな影響を及ぼすため、バランスが崩れると「特定のアーキタイプが強すぎてつまらない」など、中長期の継続率に大きな影響を及ぼします。

特に『逆転オセロニア』のようなPvPが主体のゲームでは、プレイヤー数は非常に大切なため、バランスの把握やメンテナンスが重要になります。

運用上の問題点と、既存手法の限界

これまでの運用上の問題点として、「特定のアーキタイプが強すぎる」「アーキタイプの優劣が固定化されている」ことが挙げられ、対戦環境を平均化かつダイナミックにして、プレイヤー体験を向上させることが必要となってきたとのこと。

強い駒を単純に禁止や制限する運用もありますが、『逆転オセロニア』では、駒の追加と属性の追加がプランニングの主なアクションになるようです。

運用チームでは対戦環境の改善のためにプランニングを実施する際、これまではプランナーがクラスマッチを徹底的にプレイすること、プレイヤーの声をもとに人力で対戦環境を把握し、その定性情報を用いてプランニングをしていたと語られました。

この方法での問題点は3つあり、まず1つは、さまざまなデッキを使って、何ヶ月も膨大なバトル数を消費するため「プレイング習熟まで時間が必要となる」こと。

2つ目はプレイヤーの声や人間の主観的な見解は、ネガティブな要素に引っ張られる傾向など、心理的なバイアスにも影響を受ける恐れがあることです。

3つ目は、増え続けるアーキタイプ数への対応が難しいこと。アーキタイプが少ない時期は、徹底的にプレイすることにより、異なるアーキタイプ間の対戦を網羅的に十分なサンプル数を取得できますが、現状20種類ほどのアーキタイプがある中で、人的リソースの観点からも、人力で対応するには現実的ではなくなっているようです。

これら述べてきた理由で、定量的に対戦環境を把握することが、必要不可欠と言えるでしょう。

そこで、ログデータを参照し、リーダー駒の編成率や勝率を分析してみると、デッキアーキタイプという抽象度でデータを解釈するのが難しく、リーダー駒レベルの情報でプランニングをすると、意図せずに対戦環境のバランスを崩す可能性があることが説明されました。

例えば、勝率35%のリーダーaのデッキ、勝率50%のリーダーbのデッキがあった場合、対戦環境を整えるためにリーダーaのデッキに駒を追加すると勝率が50%に上がりますが、なぜかリーダーbの勝率が65%に上がってしまいました。

このプランニングの失敗の理由は、どちらのデッキもアーキタイプAに属しており、追加した駒はどちらのデッキにも組み込まれてしまったため、バランスが崩れてしまったことにあります

アーキタイプレベルでプランニングをすれば、デッキのコンセプト自体が異なるため、勝率を上げることを狙ったアーキタイプには効果的で、他のアーキタイプでは使用されないような駒をピンポイントに考えられ、このような事故を防ぐことができます。

アーキタイプの抽出方法について、ルールベース(定義に基づいた分類)で対応できないのは、3,500種類以上の駒が存在し、同じリーダーでも異なるアーキタイプに所属することもあるため、ルールを構築することが不可能になっているようです。

また、プランナーが抽出したいアーキタイプに含まれる駒を事前に指定しなければならず、プレイヤーが編み出した、プランナーが想定しない新しいアーキタイプは抽出できなかったとのこと。これらの問題点をふまえてチーム全体で「機械学習によるデッキのアーキタイプ抽出してみよう」という動きになったと、安達は述べています。

機械学習モデルの概要

機械学習のデータについて、プレイヤーのリテラシーが高く、デッキのアーキタイプが成立している、クラスマッチのダイヤモンドクラスデッキデータを使用しています。

このデータを用いて、数十万のデッキでアーキタイプを抽出する週次データと、月次データで属性補正ごと、2種類の粒度で分析を行っているとのことです。

概要として、トピックモデルと呼ばれる手法、その中でも良く使われるLDA(Latent Dirichlet Allocation)のアルゴリズムを用いて、アーキタイプ抽出を行っています。

このモデルに大量のデッキデータ、パラメータとして抽出するアーキタイプ数を入力すると、2つの結果を出力し、1つは自動的に抽出されたアーキタイプそれぞれの組成になります。

各アーキタイプはデッキに存在した、すべての駒上の確率分布として表現されます、つまりそれぞれのアーキタイプのデッキで各駒がどのくらい採用されやすいのか、ということが表現されているとのこと。

アーキタイプAは駒1と駒99の確率が高く、これらの駒が良く採用されているアーキタイプだと解釈することができます。

このキャラクター組成の情報をもとに、それぞれがどんなアーキタイプなのか、という解釈をプランナーが実行します。

今回のデータでは『逆転オセロニア』をある程度遊んでいるプレイヤーなら、この組成を見れば何のアーキタイプなのか、紐付けられるレベルの抽出ができていると考えられています。

これは使用データをダイヤモンドクラスに絞っていることで、成立しているデッキタイプが多く、ノイズが少ないことが考えられます。

2つ目は、1~100,000番目までのデッキがそれぞれどのアーキタイプに属するのか、という情報が出力されます。

それぞれのデッキはアーキタイプ上の確率分布として表現され、デッキ1だとアーキタイプBに属する可能性が高く、デッキ100,000だと、アーキタイプGに属する可能性が高いと言えます。

LDAというアルゴリズムは、大量のドキュメントをその中の単語の分布をもとに、トピック別に分類する用途で開発されたことも明かされました。

本モデルでは、各トピックはドキュメントに出てくるすべての単語上の確率分布、各ドキュメントはトピック上の確率分布として表現されます。

ドキュメント内の各単語に対し、そのドキュメントに紐付いたトピックの確率分布を参照し、その単語が何のトピックから生成されているのかを決めます。

次に、選ばれたトピックに対応する確率分布を参照し、その単語が生成される確率を求めます。この作業をドキュメント内のすべての単語について実行し、ドキュメントが生成されます。

続いて、トピックに紐付いた確率分布と、ドキュメントに紐付いた確率分布の事前分布に、Dirichlet分布を仮定し、サンプリング手法によってこれらの事後分布を求めます。

次にトピックモデルを用いたデッキアーキタイプ抽出に活用するために、ドキュメント内の単語を「デッキ内の駒」、ドキュメントを「デッキ」、トピックを「アーキタイプ」に置き換えます。

先述のモデル推定を実行することで、ここではアーキタイプが駒上において、各ドキュメントがトピック上の確率分布でしたが、ここでは各デッキがアーキタイプ上の確率分布として求められます。

トピックモデルの利点は、実装が簡単で、新しいアーキタイプを抽出可能、時系列でのアーキタイプの紐付けが容易、パフォーマンスも良いことが挙げられました。

デッキアーキタイプの抽出フローは、まずBigQueryからRaw対戦ログ(デッキ情報、勝敗など)を取り出し、その中からタスクキルなどの使用しないデータを取り除いたり、デッキ情報をモデルが使える形に変換したりと前処理をします。

次にルールベースで抽出できるアーキタイプを抽出します。LDAだけでもきちんと抽出できますが、ルールベースで抽出されるアーキタイプ、機械学習で抽出するアーキタイプの両方にとってノイズが減ることが判明しているとのことです。

実際の運用では、プランナーに依頼し、Googleスプレッドシートにルールベースで抽出するアーキタイプ名と駒に関するルールを書いてもらい、アルゴリズムがそのシートを読み込み、指定されたものを抽出しています。

その後、デッキデータに関してLDAアルゴリズムを適用し、指定した数だけアーキタイプを抽出します。最後にそれぞれアーキタイプに関して、過去に抽出されたアーキタイプと比較して紐付けをします。

アーキタイプは駒上の確率分布なので、分布間の距離を用いて紐付けを行います。これを抽出したすべてのアーキタイプについて繰り返し実行し、どのアーキタイプとも紐付かない場合は、新しいアーキタイプとして検出します。

可視化ツールの紹介

対戦環境の改善により、プレイヤー体験向上を実現するという目標を考えたとき、2つのポイントが重要だと、安達は述べています。

1つ目は「現状把握と運営のアクションの効果確認が容易にできる」こと。ここでは使用率や勝率などアーキタイプに関連する統計量がひと目で分かり、かつ時系列で比較できる必要があります。既存の内製BIツールでは自由度が低く、実現できなかったとのこと。

2つ目は「運営チームの誰もが対戦環境を意識できる状況を作り出す」ことです。今回の分析手法により対戦環境が誰にでもわかるようになったため、ゲームプランナーだけでなく、運営チームの他のメンバーにもプレイヤー体験向上のためにできることのアイデアを出して欲しいとの思いがあったことも語られました。

これを実現するためには、ローカルPCで結果を表示してスライドに貼って共有する方法では不十分と考えたようです。

この要件を実現するために、「Dash」と呼ばれるPython製のWebアプリケーションのフレームワークを採用しました。これを利用することでベーシックなレポート、インタラクティブなダッシュボードなどを作成することができます。

さらにDashはオープンソースであり、無料で使用できる上、開発もアクティブに実施されています。JavaScriptの知識がなくてもPythonのみですぐにダッシュボードを作ることが可能だとのこと。

高い自由度も魅力で、レイアウトも簡単に変更でき、公式ページには40を超えるダッシュボード例とソースコードが公開されています。

また、誰でも簡単に対戦環境を確認できる点に関しては、ダッシュボードをGCP(Google Cloud Platform)インスタンス上でデプロイすることで解決しています。運営チームのメンバーは、Webブラウザからダッシュボードにアクセスすることで、いつでも対戦環境を確認することが可能になったとのことです。

また、週次と月次の2種類のデータを使用してアーキタイプ抽出を行っていますが、可視化ツールも用途に応じてそれぞれに対応するものを作っています。

週次の可視化ツールは、月~日まで一週間のデータを用いてアーキタイプを抽出し、月曜日にツールを更新しています。ここでは、新しい駒の追加で対戦環境が崩れていないかなど、最新の対戦環境の把握のために使用しています。

このツールで「このアーキタイプにはどんなデッキが含まれるのか」「どの駒がどのくらいの確率で採用されているのか」「使用しているプレイヤー数や勝率」「自分が先行/後攻の場合の変化」「決着までの平均ターン数」などを簡単に確認できます。

対戦分布では、対戦表で抽出された各アーキタイプの勝率や、アーキタイプ間の勝率を確認可能で、プレイヤー分布ではそれぞれのアーキタイプを使用しているプレイヤー数を表示しています。

月次データを使ったツールでは、属性補正ごとにアーキタイプを抽出した結果を表示しています。月次のクラスマッチの補正ごとの抽出結果を表示、より詳細な対戦環境情報の把握やプランニングのPDCAサイクルに活用しているとのことです。

ゲーム運用への活用

ここからはDevelop統括部 企画部 プランナーの岩城にバトンタッチし、実際の運用現場でこの分析ツールがどのように活用されているのか、いくつかの具体例と共に説明されました。

DeNA 岩城 惇

『逆転オセロニア』の運用課題について、分析ツール導入前は「アーキタイプの優劣が固定化」「特定のアーキタイプが強すぎる」という2点の問題点を挙げました。

これまではプレイングを習熟したプランナーの意見および、プレイヤーからの定性意見を中心に、一部ですがルールベースの定量分析を加えつつ、改善とプランニングを実施してきたとのこと。

ですが、「客観的に判断をする難易度が高い」「プレイング習熟まで時間が必要」「増え続けるアーキタイプ数の対応が難しい」「新しいアーキタイプを検知しづらい」といった課題で、正確で網羅的な現状把握が難しく、改善結果が正確に評価しづらくなっていました。

分析ツールの導入後は、運用チームなら誰でもアクセスできるツールを採用したことで、運用上の問題点は変わりませんが、定性意見とツールによる定量評価を併用することにより、チームに非常に良いインパクトをもたらしたようです。

客観性に関しては「実際に数値として環境の情報が確認できるので、客観的な判断がしやすくなり、さらにトッププレイヤー傾向を分析しやすくなったことで、プレイング習熟の時間が短縮され、プランナーの属人化が大きく改善しました」と岩城は語っています。

また、アーキタイプが増えても相性があるため、相関関係をひと目で確認でき、新しいアーキタイプの検知についても、ツールが自動で検知するためスムーズに対応できるようになったようです。

その結果、正確に網羅的な現状把握を継続的に行い、改善アクションがスムーズになりました。その中でも個人的にインパクトがあったのは、ツールのデータをWebブラウザ上でいつでも手軽に確認できることによって、誰でも客観的に確認できる点だと、岩城は述べました。

プランニングの前段階の問題が改善されたことで、課題点に確信が持てなくて日々悩んでいたプランナーにとって、改善のプランニングに集中でき、今までに比べて業務効率が何倍にも向上した印象がありました。

続いては、実際に活用された改善プランニング具体例が紹介されました。

改善アクション1「対戦環境のバランス平均化」

運用チームでは対戦環境のひとつの理想状態として、アーキタイプ同士の相性が拮抗していて、プレイヤーの選択肢が多様に存在する状態を考えているようです。

その多様性が失われることがしばしばあり、一部のアーキタイプが駒追加が続いたり、属性補正に相性が良かったり、いくつかの要因によって相性の弱点がなくなり、一強状態になる状態が実際に発生しました。

一強状態が続くと、他のアーキタイプが淘汰されてしまい、代わり映えのしない対戦が続き、中長期の継続率に大きな影響を及ぼします。

分析ツールで抽出した勝率のグラフでは突出しているようには見えませんが、対戦表を見ると、他のアーキタイプにほとんど勝ち越していることから、一強になる可能性をはらんでいると判断できます。

このように実際にグラフとして可視化されることで、明確に課題が検出できると同時に、一強状態を改善し、多様性を維持するために何らかの対策が必要だと感じたとのことです。

そこで実施したアクションが「適切な抑止力の選定と対戦環境への配慮」になります。

簡単に既存のアーキタイプの弱体化を行えない制約を考慮しつつ、一強になりそうなアーキタイプを平均化しようというアクションです。平均化の実現のために、対戦表の相性比較から「すくみ」が生まれるように、抑止力となるアーキタイプを複数選出しました。

そして一強の抑止力となるアーキタイプを強化することで、相対的に一強状態を解消することを狙いました。

ここで大事なのが環境への配慮で、単純に抑止力を選定するとどちらかのバランスが崩れやすいため、必ず複数を強化することでアーキタイプの勝率バランスを平均化することを心がけた、とのことです。

そのため属性補正に関しても、複数のアーキタイプの勝率が拮抗するものを採用したり、使用率の低いアーキタイプに駒を追加して、強化と普及を促しました。

このアクションの結果、突出しかけていたアーキタイプのバランスを、対戦環境に配慮しながら抑えることができ、適切な属性補正を特定し、スムーズに調整ができた上、抑止力となるアーキタイプの選定がピンポイントに実施できたとのことです。

改善アクション2「勝てるアーキタイプの選択肢を増やす」

このアクションでは、アーキタイプ間の優劣が固定化しているという課題に対応しています。

一定のアーキタイプの勝率が相対的に他のアーキタイプより高いことから、プレイヤーの使用が偏り、他のアーキタイプが徐々に淘汰され、結果的にプレイヤーの選択肢が少なくなってしまう状況になります。

アーキタイプ間の優劣が固定化してしまうと、プレイヤーの選択肢が少なくなり、それにより「飽き」につながり、中長期的の継続率に影響が出てしまいます。

ある月の同じ属性補正で、3ヶ月後の勝率を比較すると、いくつかのアーキタイプの順位は多少上下しましたが、上位の序列に変化がないことがわかりました。

この課題に対する改善アクションは「既存のアーキタイプを強化することで、固定化した環境を変化させることを目指してプランニングしています」と岩城は話しました。

つまり固定化したグラフに割って入るように、アーキタイプを強化しました。参照したのは勝率の比較とアーキタイプの使用率の比較データになります。

まずは勝率の比較によって、勝率は悪くなく、かつ使用率の低いといった条件を満たすアーキタイプを探します。

その理由は、キーとなる駒が足りない、プレイヤーにあまり普及していないといったアーキタイプそのものの強さに比較的ネガティブな要素が少なく、強化および普及が容易だと考えられたためです。

具体的な改善アクションは、選出したアーキタイプに対戦環境をもとに、その勝率が高くなる属性補正を追加、デッキの核となる駒の追加、アーキタイプに必要な駒を普及させるために定期的に開催されるガチャを実装しました。

結果として、アーキタイプの選択肢を増やすことに成功し、キャラクターの設計方針がスムーズにでき、アーキタイプそのものを追加する場合に比べて、少ないコストで環境を変化させることができました。

改善アクション3「新しいアーキタイプの検知と使用率向上」

アーキタイプは運用から提供するもの以外でも、プレイヤー間で日々生み出されているそうです。想定外のアーキタイプは『逆転オセロニア』でも検知されており、毎月新たなアーキタイプを見つけることができます。

この事象は、アーキタイプの優劣が固定化していることに対して、新しい選択肢を広げるという意味で、良い影響を与えることが可能です。

新しいアーキタイプについては、ツール上で「NEW」と表示され、それらの勝率や使用率を参照可能になっているとのことです

検知したアーキタイプについて運用側では、対戦環境に悪影響はないのか、どうやったら強化できるかを調べる必要があると、岩城は話しました。

ここでツールを用いて対戦成績と使用率を比較して、検出したアーキタイプを分析します。まず新しいアーキタイプと既存のアーキタイプの使用率を差分比較します。一見新しいアーキタイプに見えても、広義では他のアーキタイプに含まれる可能性もあるからです。

この時点で新しいアーキタイプであると判断された場合、次に対戦成績を比較し、勝率が高くなる補正は何か、逆に勝率が突出してしまう補正はないか、について検討しています。

そこで問題ない場合、この属性補正について新しいパターンとして蓄積し、新しいアーキタイプの使用率の向上を図りたい場合、適切に使用できる体制を整えました。

このアクションの結果、新しいアーキタイプの使用率が向上するシーンを生み出すことができました。

検知に関しては、ツールがない場合は、非常に難易度が高く、明確に新しいアーキタイプを検知できたことは大きな価値になっています。

また、新しい場合でも対戦表や相性を確認できるので、対戦環境の傾向をつかむことで、もし将来的に新しいアーキタイプを強化したい、再検知したときに強化したいときでも速やかに対応できるナレッジを蓄積できたことも、大きなメリットだと岩城は述べています。

まとめと展望

最後に安達から、今回のセッションの簡単なまとめと、今後取り組みたいこととして、現在『逆転オセロニア』に実装されている駒の属性レベルでのレコメンデーションに、アーキタイプレベルでのデッキレコメンデーションを追加すること、対戦環境のダイナミックさを担保する「属性補正の最適化」「プランニングプロセスの自動化」や、対戦環境変化の予測などにも注力していきたいと、本セッションを締め括りました。

取材・文・撮影:細谷亮介

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterアカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【ナカノヒトTalk #004:アナリスト中川友喜】Kaggle初挑戦で金メダル! 常に付加価値を高める意識作りの秘訣

DeNAのゲーム開発の現場には、どんな人が働いていて、どのような思いを持って仕事に取り組んでいるのかーー「ナカノヒトTalk」は、社内のさまざまな職種の人へのインタビューを通して「人となり」をお伝えする特集です。

今回の「ナカノヒトTalk #004」では、分析部でマネージャーを務めるアナリストの中川友喜に、社内で驚きの声も多かったKaggle初挑戦でのメダル獲得に関して、話を伺いました。

最近では新設されたユーザーインテリジェンス部の業務も兼任し、今年3月には待望のお子さんも誕生。公私共に忙しいながらも充実した毎日を過ごしている、彼の人となりをのぞいてみましょう。

分析部マネージャーと
ユーザーインテリジェンス部を兼務

――お忙しい中ですが、本日はよろしくお願いします!まずはじめに、最近のお仕事について教えてください。

これまで担当してきた分析部でのマネージャー業務に加えて、4月からは新設されたユーザーインテリジェンス部で、さらに幅広く分析の仕事を兼務するようになりました。

もちろん、引き続き分析部のマネージャーとしても、組織の課題解決やメンバーのサポートを担当しています。

――ユーザーインテリジェンス部では何を?

新規開発中のゲームタイトルに対して、投資承認の場で関係者が皆納得した上で、よりよい意思決定を行うための支援をすることをミッションとしています。経営の意思決定に直結する業務が多く、単純に分析力だけではなく、より良い意思決定を行うにあたって、理想的なプロセスとはどういうものであるかなど、深く考えることが必要になっています。

ヒットの確率を1%でも高く!ゲームの“面白さ”を科学する、DeNAの新たな挑戦【ユーザーインテリジェンス部 小東祥】

――兼務で大変だと思いますが、中川さんが仕事を進める上で、大切にしていることはなんですか?

自分が関わっている業務の中で、いかに付加価値を高めるか、ということを意識しています。組織としての成長だけでなく、個々の仕事に対しても、少しずつでもレベルを上げていくために、小さなチャレンジを重ねています。

Kaggle初挑戦で金メダルを獲得

――それでは本題です! 今年の3月にKaggle初挑戦で金メダル(9th place)を獲得したことについて、苦労した部分や気づいた部分を教えてください。

自分が初挑戦したKaggleのコンペは、いわゆる電線と呼ばれる「架空線」に取り付けられたセンサーの信号データから、異常を検知する仕組みを作って、その精度を競う内容です。

このコンペには、全世界で約1,500人ほどの参加があり、自分はチームではなくソロ(1人)で挑戦して、その中で9位を獲得しました。

今回の挑戦は、まったくの未経験からのスタートだったため、まずはKernelsやDiscussionなどに公開されている他の参加者の解法やソリューション、議論を参考にしました。

また、コンペのお題に似ている「信号から異常を検知する」トピックや、それに関連する論文に目を通し、ネットや本で情報を得ながら、ひたすら試行錯誤を繰り返したことを覚えています。

――かなり勉強されていたのでしょうか?

DeNAでは、業務時間中にkaggleに時間を使える制度(kaggleランク制度)があるのですが、対象はいわゆるkagglerと呼ばれるAIシステム部のデータサイエンスチーム(※1)になります。

※1……【データサイエンスの競技者”Kaggler”が活躍する職場】社内での立ち回りやエンジニアやアナリストとの関わり方、今後のビジョンが語られた

自分はその対象外なので、業務外のプライベートな時間を使ってコンペにチャレンジしたんですが、その費やした時間が、トップランクのKagglerと同じくらいと、周りにツッコまれてしまいました(笑)。

――相当な労力をかけてメダルを獲得したということですね。そういえば、中川さんって8ヶ国語を操ると聞いたんですが……。

学生時代に必要にかられて勉強していただけですよ(笑)。普段は日本語で、Kaggleの勉強のときは英語を使っています。

――金メダルを獲得してから、その後の周囲の反応はどうですか?

獲得したばかりのときは、社内だけでなくSNSでつながっているKaggleコミュニティの人たちから、お祝いの言葉をたくさんいただきました。社内では「突然現れた新人がメダルを獲ったぞ!」とザワついていたようです(笑)。

獲得してから以降も、自然言語処理(NLP)や音声認識、画像認識など、引き続き複数のコンペに参加して、メダルを複数獲得することができました。

――現在では、どのくらいKaggleに時間を費やしていますか?

これまでは、家に帰ってKaggleをやって寝る、休日もほとんどKaggleをするような生活だったのですが、子供が生まれたことと、担当する業務量も増えてきているので、最近はなかなか時間を使えていませんね……(泣)。

――社内のKagglerたちとも仲良くなり、Meetupにも参加しているとお聞きしましたが。

以前DeNAで開催した「Data Analyst Meetup」に参加しないか、と声をかけていただき、一緒にパネルディスカッションをさせてもらいました。

おかげさまで社外のアナリストとも交流することができ、仕事内容や課題、チャレンジしていることを共有することができました。

――当時、Kaggleに挑戦しようと思ったきっかけは?

社内では2018年にKaggle制度が導入されましたが、当時はKaggleの存在は知っていたけれど、あまり興味はなかったんです。

そんな中、分析部内でもスキル向上のためにKaggleを始める人が増え、今後さらにバリューを発揮するために、積極的に挑戦していく動きになっていきました。

自分はマネージャーとして、必要な知識として習得しておかなければいけないと考え、スタートしたのがきっかけですね。気付いたら思っていたよりハマってますが……(笑)。

――ちなみに、Kaggleをはじめて自分の中で変わったなと思うことはありますか?

これまでは、Kaggleで扱うデータサイエンスの問題に対しての知識・知見がほとんどなかったので、ノウハウを蓄積できましたし、Kaggleに関連した新しい人脈も作ることができました。

もちろん、成績ではまだまだトッププレイヤーの足元には及びませんが、Kaggleで習得した解法を仕事に生かすことができたり、課題の整理や、これまで解決できなかった難題を解けるようになったことは嬉しい限りですね。

――今後チャレンジしていきたいこと、考える将来像などを教えてください。

これまでも分析部は組織として事業の課題解決に貢献してきたと思っていますが、今後はさらに分析を通じて解決できる課題の領域やレベルを拡大していきたいと考えています。

そのために、部として最重要視している「ビジネスに貢献する」という価値観を守りつつ、広く深く分析技術を習得した上で、これまでうまくアプローチできていなかった課題解決にも取り組んでいきたいと考えています。

またDeNAの分析部を、取り組んでいる分析の技術レベルが高いというだけでなく、そういったハイレベルな分析を当たり前のように事業の意思決定やサービスの改善に還元できている世界を作り、社内外に誇れるような組織(※2)にしたいと考えています。

※2……【DeNA分析部特集Vol.5(前編)】未来を予測し、最適解を導き出し続ける組織 〜分析の高度化に向けた次のチャレンジとは〜

子供が生まれて生活にも変化が

――ちょっとプライベートなお話をさせてください。待望のお子さんが生まれたと聞きましたが?

そうなんです!今年の3月に子供が生まれて、だいぶ生活が変わりました。昼間は妻が子育てをしてくれていて、休日は2人で協力して子育てを頑張っています。

分析部では去年がベビーラッシュで、パパママ社員が増えました。子供が生まれる前は「プライベートと仕事」のバランスを重視し、働きやすい環境を作ることは大事だと、頭では理解していたんですが、実際に自分の子供が生まれたら、より実感がわきましたね。

――小さい子供を持つ社員が多いチーム内で、残業を減らすことに対して何か工夫をしていますか?

去年マネージャーに就任したときから、メンバー全員で業務の効率化や残業時間を減らす取り組みは続けていて、グループとしてかなり改善してきたな、と思っています。

開発・運用タイトル数の増加に合わせて、工数も増えていくので、削減の仕組みやアサインの調整など、効率化を考えて全体で取り組んでいます。

――ちなみに、お子さんをアナリストやKagglerにしたいと思いますか?(笑)。

今は特に考えてないですね(笑)。本人がやりたくて、のめりこめることができればいいな、と考えています。メンバーに対しても「これをやりなさい」という強制はしないですし、得意なこと、仕事としてやるべきことを自分で判断し、そこに全力でコミットして欲しい、というスタンスです。

――今日はありがとうございました。

インタビュー・執筆:細谷亮介
編集・撮影:佐藤剛史

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterアカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【ナカノヒトTalk #003:データエンジニア岩尾一優】自分に、そしてメンバーにいつも正直であること。プライベートでは子育てに奮闘中!

DeNAのゲーム開発の現場には、どんな人が働いていて、どのような思いを持って仕事に取り組んでいるのかーー「ナカノヒトTalk」は、社内のさまざまな職種の人へのインタビューを通して「人となり」をお伝えする特集です。

今回の「ナカノヒトTalk #003」では、分析部データエンジニアリンググループのマネージャーとして活躍する岩尾一優にインタビュー。

マネージャーを務めながら採用活動にも積極的に取り組んでおり、岩尾との面接が決め手で入社を決めたメンバーも多いのだそう。そこで、彼のコミュニケーション能力の秘密に迫りながら、普段の働き方で心がけていることや、プライベートの過ごし方についても、根掘り葉掘り聞いてきました。

全社横断の分析組織を兼務

――本日はよろしくお願いします! それでは最初に、最近のお仕事について教えてください。

こちらこそ、よろしくお願いします。まず、仕事面で最近大きく変化があったのは、全社の機能を支えるシステム本部の分析推進部と兼務になったことですね。これまでと同じく、楽しく業務をしながらも、考えなければいけないことも増えました。

特に、これまでゲーム事業部の中で行ってきた分析業務の効率化・高度化を全社にいかに伝播していくかなど、どうやって全社のデータ活用水準を高めていくかを考える機会が増えたかな、と思います。

また、全社内でオンプレミスで動いている機能を、すべてクラウドに移行するプロジェクトに関わっていることは自分にとって、大きなチャレンジです。

※オンプレミス:企業などが情報システムの設備を自社で保有、運用すること。

オンプレミスに強みをもつDeNAはなぜクラウド化を決めたのか? その舞台裏と今後の展望

今回のクラウド移行は、全社的にも大規模なプロジェクトで難易度も高く、分析部のデータエンジニアリンググループが環境移行を担当する部分も大きいんです。

新たなインフラ部分は専門部署が用意してくれますが、その他にもデータ移行やデータパイプラインの移行など、本来のアナリストのスキルセットとはかけ離れた技術も必要とされるので、データエンジニアとして、手厚く介入するようにしています。

面接では一緒に働くことを強くイメージ

――それでは本題なんですが、最近は面接官としても大活躍されているという噂を耳にしたんですが……!?

そうなんですか!? 自分がまず面接のときに重要視するのは「自分と働きたいと思ってほしい」ということです。

候補者の方は、DeNAだけでなく複数の会社を受けているはずですし、自分が「ぜひ入社して欲しい」と思えるような方は、他社でも必要とされる人材だと思うので、多くの会社の中から自分(DeNA)を選んでもらえるように意識しています。

そのためにも、面接の前準備については、事前に共有されるレジュメ(履歴書/経歴書)も丁寧に読み込みながら、どの部分を深く質問していくかなど、ある程度シナリオを考えています。

――面接時の会話で心がけていることなどありますか?

その人の特化した部分を探すようにしています。エンジニアリングに強みを持っている方には、アーキテクチャ設計図をホワイトボードに描いてもらうなどした上で「この部分、こういう設計も考えられますが、どうしてこの設計を選択したのでしょうか?」というような聞き方をするなど、ディスカッションに近い面接をしています。

また、ビジネスマンとして動くのが得意な人は、システム構築だけでなく、当時の導入や展開について話してくれる傾向が強いので、社内でどんな摩擦が起きたかなど、苦労した部分の質問に切り替えるときもあります。

――面接ではどの点を重視されているのでしょうか?

まず、DeNAという会社の文化にマッチできるのかを考えます。具体的には、DeNAの行動指針であるDQ(DeNA Quality)を理解・体現できることがマストだと思っています。そして、課題解決に関する質問に対しての「回答の目線の高さ」で差がつくこともありますね。

※DQ(DeNA Quality):チームとして最大限のパフォーマンスを発揮するために掲げられた、全社員に必要な共通の姿勢や意識(「こと」に向かう・全力コミット・2ランクアップ・透明性・発言責任)

また、課題にぶつかったときに「上司に報告して終わり」ではなく、メンバーを巻き込んだり、解決するためのプロトタイプを作って提案するなど、未来を見据えて動ける人は強いと思いますよ。

――チームメンバーとの相性の組み合わせも考慮しますか?

もちろん。最近入社が決まったメンバーは、バランス感覚に優れてどっしりと構えるタイプの人で、これまでチームにいなかったタイプです。サッカーで例えるとセンターバックやキーパーのような役割を期待しています。

ちなみに、よくチーム編成について話す時に「そういえばこのチームって、キーパーいないよね」というようにサッカーのポジション、フォーメーションに例えて話すことが多いんですよ(笑)。

――過去に出演したインタビュー記事の反響についてはどうですか?

紹介した記事を読み込んで来てくれている方も多いです。ありがたいことに、これから入社する方も自分の記事を読んでくれていたそうです。最近では逆に、こちらから私の登場している記事を事前に紹介し、一定の理解をしていただいた上で面接に臨んでいただくこともあります。

【DeNA分析部特集Vol.3】データエンジニアリンググループ発足の狙いとは?MLOps導入や新技術によるコスト削減などで事業貢献を目指す

また、両親には自分が載った記事を必ず報告しています。親は「有名人になっちゃって!」と無条件に喜んでくれていますね(笑)。

あとこれは余談ですが、某BIツールの会社から「GeNOMの記事見ました!」と連絡を受け、実際に社内のデータ活用水準を高めるためにそのツールを導入して、一緒にPoCを始めようと考えています。それを考えると、記事の反響も大きく、少しずつ活用ができていると思いますね。

自分に、そしてメンバーに常に正直であれ

――マネージャーとして、普段からメンバーとのコミュニケーションで心がけていることはありますか?

常に、自分の意見を正直に話すことを心がけています。多少の議論に発展して、仮にちょっと気まずい雰囲気になったとしても、自分の考えとその理由は率直に、相手が誰であろうと伝えるようにしています。

また、メンバーへの期待レベルについては、当人と入念にすり合わせていて、チームがどう成長していくべきか、大きなビジョンと整合して、本人のWILLと合致させることを徹底しています。

現在はチームが拡大フェーズに入っており、自分がすべてをチェックすることができないため、間接マネジメントをしないと、組織も発展していかないと感じています。メンバー自身が、誰とどのような調整をして進めていくのかを考えて、自走してほしいですね。

――グループの課題はありますか?

今期はPM(プロジェクトマネージャー)的なスキルが足りていないと感じています。技術的には長けているメンバーは多いのですが、全体を俯瞰して見て、適切に優先順位をつけることができれば、もっと広範囲を任せることができますね。

スキルレベルは明確に数値化できるわけではないので、どんな行動や習慣ができているか、など可視化できる部分と、未来像を定義しながら1on1でフォローアップしています。

あとは、暇を見つけてコーヒーブレイクをしていますね。自分がメンバーに対して何でも言えるのは、日頃から仲良くて、仕事のことだけじゃなく、家族やプライベートなことを話しているからなんです。周囲には先輩メンバーもいますが、気軽に言い合える関係を築けています。

社内外のイベントにも積極的に登壇

――Google Cloud Nextにも登壇されましたね!

はい。おかげさまで500名ほどの会場が満席でした。最初は大きい会場をアサインされたので、不安でしたが、練習の甲斐もあり、無事に乗り切ることができました。応援にかけつけてくれたメンバーもいて大変心強かったです。

――岩尾さんって、緊張します? 「TechCon2019」でも堂々とプレゼンをしていた印象が。

もちろん、しますよ(笑)。始まってしまえば平気なんですが、登壇直前が一番緊張します。とにかく練習をしまくって、チームメンバーに参加者役をしてもらって裏で何度もリハーサルしていました。「DeNA TechCon 2019」のときは、空いていたセミナールームでギリギリまで練習していました(笑)。

プレゼンでは、バックグラウンドが違う人にどう伝えるか、そもそも誰に向けて伝えるのかを考えて、資料を何度も修正し、実際にしゃべりながら細かくチューニングしていますね。

【後編】DeNAゲーム事業におけるデータエンジニアの貢献〜客観性を担保したLTV予測やBigQuery運用におけるコスト最適化、そしてMLOpsへの挑戦〜

――普段から仕事の効率やメンタル面のコントロールでやっていることはありますか?

朝の時間を使って、最優先でやることを集中して作業するようにしています。昼過ぎからはランチを外で食べつつ、ちょっと社内をウロウロして考え事をしたりしますね。個人的に仕事にコーヒーは欠かせません。

忙しい中でも、人と話すことが気分転換にもなりますし、気軽に課題を話しているうちに解決の糸口が見つかることもあるので、個人的にメンタル面を大きく崩すことはないですね。怒ることもほとんどないですよ。

2人の娘の子育て真っ最中!

――最後に、プライベートについて教えてください。

3歳と0歳の娘がいます。平日の日中は妻が見てくれているのですが、それでも毎日大変です(笑)。特に上の子は活発で、休みの日はほとんど外に連れて行って遊んでいます。

でも、外でたっぷり遊んで帰ってきても全然お昼寝してくれなくて、室内でジャングルジムやトランポリンで遊ばせています。お父さんの体力はいつもゼロに近いです……(笑)。

また、最近ではひらがなや数字などの勉強もはじめました。基本は横に座って教えているのですが、ほうっておくと、教えてない他のページの問題を解いてたり、大人が思っているより、成長が早いので驚きますよ。

――もちろん、まだゲームに興味はないですよね?

さすがにまだゲームは遊ばせてないですが、映像配信の画面にあるリモコン操作を覚えて使っているのを見かけました(笑)。

最近は活発な上の子にかかりっきりなんで、まだ小さな下の子はおとなしくて、ちょっとかわいがるとニッコリ笑ってくれるんです。子どもたちは本当に癒やしの存在ですね。

――家庭では良きパパのようですね。今日はありがとうございました!

インタビュー・執筆:細谷亮介
編集・撮影:佐藤剛史

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterアカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【DeNA分析部特集Vol.5(後編)】未来を予測し、最適解を導き出し続ける組織 〜アナリストとして成長し続けるための環境とは〜

DeNAのゲーム事業において、参謀として様々な意思決定をサポートする分析部。Vol.4までは、アナリストをはじめとした各メンバーの役割を紹介してきました。さらに、Vol.5前編では、2011年から始まったDeNAゲーム事業における分析の歴史や現在のカルチャー、そして今後の課題などを分析部マネージャー3人の方に語っていただきました。

https://genom.dena.com/other/analysis_department2019_a/

Vol.5(後編)では、分析部の研修プログラムやキャリアなどをご紹介していきます。前編に引き続き、部長の藤江清隆に加え、マネージャーの吉川正晃と松﨑友哉の3人に話をうかがいました。

若手からシニアまでをサポートする研修の仕組み

――これまでの分析部特集で、個々の役割からビジョンまでを聞かせていただきました。後編ではまず、分析部の研修システムについて教えてください。

藤江清隆(以下、藤江:分析部では研修プログラムを充実させており、SQLを全く書けない人が書けるようになったりなど、一人前のアナリストとして活躍できる技術的なスキルアップを研修として用意しています。

そのため、アナリストとして必要なロジカルシンキングやゲーム業界の動向、マーケティングの基礎知識など、幅広く座学を受けられる体制になっています。

――そうすると、研修は若手メンバーが対象で、シニア向けには行わないのでしょうか。

藤江:いえ、そういうわけではありません。分析にも行動ログ分析やユーザーリサーチ、市場分析などいろいろな領域があり、それぞれ求められるスキルセットも異なります。

たとえば、行動ログ分析においてはシニアレベルのスキルを有していてもユーザーリサーチは未経験、といったケースもままあります。そういった場合、業務上の必要に応じて足りないスキルを身につけるための研修を受けることができます。

分析部 部長/藤江清隆

――具体的にはどのような研修を行うのでしょうか。

松﨑友哉(以下、松﨑:技術的なキャッチアップの面で言うと、まずはデータの流れをフロー図で可視化し、それぞれの役割において、どのような技術やツールを使っているかということをオリエンテーションします。そして、その方がどの役割を担うかによって、どの研修を受けるかを相談していきます。

研修というと座学がメインのイメージがあるかもしれませんが、分析部では思考力はもちろん、コミュニケーションの取り方も重視しているので、そこに苦手意識がある方でも、DeNAなりの分析の考え方をキャッチアップできると思います。

――研修はどのような流れで進めるのでしょうか。

松﨑:分析部の資料などを講師の方に説明してもらいながら、課題を解いてそのフィードバックを受けるので、キャッチアップはしやすいと思います。この研修が終わった瞬間から、社内で価値を出し始めることができるように、ひとりひとりカスタマイズした研修プログラムを組んでいることも、分析部ならではの特徴だと思います。

分析部 マネージャー/松﨑友哉

https://genom.dena.com/develop/analyst/

どんな初歩的な質問でも、誰かが迅速で答えてくれる

――講師はどんな方が務めるのですか?

松﨑:基本的には講師は現場で一緒に働くリーダーや、その部署で一番環境を理解しているメンバーが担当します。座学でわからないことがあれば、その場で質問をすることも可能です。

藤江:社内の連絡ツールとして使っているSlackチャンネルの中で、「お助けコーナー」という質問チャンネルがあり、新メンバーは必ずここに参加します。

ここでは、どんな初歩的な質問をしても構いません。自分のメンターが忙しくて聞きづらい時でも、Slackチャンネルなら40人近く在籍する分析部の誰かがすぐに答えてくれます。分析部のメンバーは、かつてここで質疑応答しながら、徐々にキャッチアップしていきました。

もちろん自分で調べることも大切ですが、わからないことはすぐに聞くというのも、アナリストとして求められる姿勢だと思っています。ちなみに、この「お助けコーナー」にはマネージャーは参加していないので「こんな初歩的な質問をするのは恥ずかしい」「同じようなことを何回も聞くのは気が引ける」など気にせずに、安心して質問ができます。

――それは良いコーナーですね。一方で、シニアの方から研修について「こうした方がよいのでは」といった意見が出たら、どんな対応をされますか?

吉川正晃(以下、吉川:意見はありがたく頂戴し、一緒に研修を良くしてもらうお手伝いに少しだけ参加してもらいます。「こうしたらどうか?」といった意見は常に受け付けていますので、特にシニアの方であればこれまでの経験を積極的にフィードバックしていただければと思います。

もちろん、研修生に対して講義や資料の改善点などのアンケートは取っているので、その内容をもとに常に内容のアップデートはしています。

――なるほど。常に研修プログラムがアップデートされているというわけですね。ところで、個人差はあると思いますが、期間はどのぐらいでしょうか。

吉川:早い人ですと1ヶ月、遅くても大体2ヶ月ぐらいでしょうか。前半で登場した岩尾のように、既に一定のスキルがある場合は2週間ほどで研修を終えるケースもあります。

分析部 マネージャー/吉川正晃

本人の特性と意思を尊重して、次のキャリアアップを目指す

――シニア向けの研修の方向性を教えてください。

藤江:分析部では、幅広く柔軟な対応ができるようになることを重要視しています。使えるスキルの種類が増えるほど、担当できる範囲も広がっていきます。

もちろん、本人の志向や特性を見ながら、特化型とオールラウンダー型に分かれていきます。ただ、機械学習やAIに関しては専門性が高いので、その領域のスキルに特化して伸ばしたいという人が多い傾向にあります。

――特性と個人の意思、どちらが優先されるものなのでしょうか。

藤江:総合的に判断しますが、基本的には本人の意思、やりたいかどうかを重視します。実際に業務に関わってはじめて「自分に向いている」「この分野は難しい」と判断できることもあるので、本人と納得いくまで話し合い、その後のキャリアステップを検討していきます。

機械学習の分野であれば、社内に在籍するKagglerのような世界トップクラスのプレイヤーと交流することで、スキルレベルを可視化して自分なりの判断材料にすることもできると思います。

――ほかの部署のメンバーと交流することで、自分の向き不向きを理解することができると?

吉川:はい。分析部の中だけでなく、社内を見渡してもさまざまなスキルや経験を持った人がいます。そういった人たちとも交流をすることで新しい知見を得たり、逆に自分の足りない部分をアドバイスいただけることも、DeNAという会社の魅力だと思います。

実際に、ネット上ですごい技術を持っているな、と思っていた人が実は社内にいたというエピソードもありました。すぐに社内のSlackで直接連絡して、世界レベルの情報を聞きにいけたそうですが、部署間の交流に隔たりがないところも、DeNAという会社ならではだと思います。

藤江:AI、機械学習、データサイエンスは似通った要素も多いですし、社内全体でさまざまな分野で高レベルの人たちが働いているので、切磋琢磨したい人には向いていると思いますね。モチベーションが高い人は、積極的にそういう人とコンタクトを取って共同で勉強会などを実施しています。

https://genom.dena.com/develop/mlanalyst_ai/

業務とメンバーとの議論の中で、スキルレベルを向上させる

――マネージャーとして活躍されている吉川さんや松﨑さんは、ご自身の成長をどのように実感していますか?

吉川:私の場合、社内の異動で分析部にジョインしました。分析について未経験でしたので、最初の壁は正しい事業課題を設定することでしたが、解決すべき課題の洗い出しや優先順位の付け方が得意になりました。

これは、分析部での業務と、メンバーとの議論の中で成長したものです。自分が欲しい知見を問いかければ、メンバー全員が回答してくれるので、次々と自分の経験値になっていきました。

――スキルレベルも上がった実感はありますか?

吉川:関わるタイトルが増えるほど、行動ログ分析だけでなく、ユーザーリサーチの知見や、ゲームのデザインについても幅広い理解が必要になってきます。

そのため、アナリストとして担当するタイトルが運用タイトルだけでなく、行動ログがまだ存在しない開発中タイトルもスコープに入ったときには、自分のスキルレベルが向上したと感じましたね。

行動ログだけで見ていた最初のフェーズから、どのようにリサーチ手法を活用すべきかという観点が増えたフェーズを経て、ゲームの中身へのインプットへと領域が広がり、現在では機械学習について判断する機会も増えていきました。

――松﨑さんはいかがですか?

松﨑:私の場合、前職はSEだったため未経験ながら、いちアナリストとしてやりがいのある業務を任せてもらい、非常に成長できる環境にありました。そうやって、タイトルをいくつか任されていく中で、事例を自分の中に積み重ねて経験していくほど、質の良い仮説を速いペースでアウトプットできるようになったことが成長実感としてありますね。

2年ぐらい経つと、それなりに結果も出てきて、これからどう成長していこうか考えていたところで、マネジメントというキャリアとしてのステップをうまく組み合わせていただけました。

マネジメントに携わり始めると、事業に対して自分がどう関わるかではなく、分析部として、組織のメンバーがどのように、どういった形で関わっていくかを考えるようになり、視野が広がっていったと思います。

分析部から広がるキャリアアップの道

――マネージャーとしての研修はあるのでしょうか。

藤江:ありますが、それよりも大切なのは、マネージャーの前にチームリーダーを経験し、マネジメントスキルを実地で身につけていくことだと考えています。まずはチームリーダーとして複数人のユニットを束ねられるかを見ていきます。

松﨑:チームリーダーを任された時期は、複数のタイトルを担当しながらだったので、まず余裕がなくなくなったのを覚えています(笑)。その段階で、どうやったら複数の業務を最適化できるんだろうと考えるようになりました。

結果として、自分がアウトプットを出すというのはHOWのひとつに過ぎず、他のメンバーが同じようにアウトプットして出しても、事業に対するインパクトは変わらないということに気付きました。いかに、組織全体を巻き込んでアウトプットを出していくかという思考が鍛えられましたね。

――チームリーダーからマネージャーへというステップアップも、ひとつのキャリアアップかと思いますが、分析部でチャレンジしていくことで将来拓かれるキャリアにはどのようなものがあるのでしょうか?

藤江:大きく分けて、部内でのキャリアアップと、部署単位で異動してのキャリアアップの2つがあります。一般的な分析部内のキャリアとしては、マネージャーになるだけでなく、スペシャリストとして現在携わっている業務領域を究めていく働き方もあります。

また、アナリストとしても、最初はひとつのタイトルの参謀、次に複数タイトルを横断しての参謀、さらには開発部長や事業部長の参謀と、担当範囲をどんどん広げていくのもわかりやすいキャリアアップの例だと思います。

一方、部署を異動してのキャリアアップは幅広いです。分析から事業責任者、事業管理をする部署で経営層の意思決定をサポートする人や、プロデューサーを束ねるマネージャーのような役割を担っている人もいます。

また、今注目されている分野として、人事を技術や分析の力で最適化させていく「HRtech」という領域がありますが、分析部から異動してその領域を担当している人もいます。

効率よく仕事をして趣味やコミュニケーションを楽しむ

――最後に、分析部の皆さんの働き方やプライベートについても教えてください。聞くところによると、現在ベビーラッシュだそうですね。

吉川:ベビーラッシュですし、サウナラッシュでもあります(笑)。

――えっ、サウナですか?

吉川:私と松﨑は毎週通っているんです。最近は、他部署の方も誘って、会社から歩いていけるサウナに入ってコミュニケーションしています。趣味のゲームの話をしたりして、思ったより息抜きになっていますね。

藤江:この業界は激務で毎晩遅く帰るというイメージが強いかもしれないですが、決してそんなことはありません。

分析に関わる職業柄、きちんと寝て休んで、頭をクリアな状態で効率よく仕事をして、きちんとアウトプットをしたら、早めに帰ろうという方針なんです。

もちろんゲーム開発にコミットすることが最優先なので、運用タイトルが大変な時期や、新作リリース直前は忙しい時期もありますが、基本は効率重視でやってほしいと、メンバーにはマネージャーからオーダーしています。

特に、子どもが生まれたばかりのメンバーは19時には帰宅して、子育てや奥さんのサポートをしていますね。早く帰るけれど、最大限のバリューは出すことは大前提としています。

松﨑:私たちもサウナ行くために、決まった日は業務を効率的に終わらせて早く帰るようにしています(笑)。

藤江:普段から会社と家の往復だけにならず、他のエンタメやゲームを楽しむことを積極的にやってもらいたいですね。もちろん、人によってはデータ分析やKaggleに取り組むなど、趣味として分析に取り組んでいる人もいます。

サウナ通いにしても、会社以外の場所で部外の人とネットワークをつなげていくと、仕事もやり易くなりますし、分析部だけで閉じるようなコミュニティーにはしてほしくないと思っています。

――ちなみに、日常で「分析部あるある」みたいな行動ってあるのでしょうか。

吉川:すぐ「本質」とか言っちゃいます。

松﨑:「あるべき」とか。

吉川:すぐ分析したがるのは職業病みたいなものですが、それゆえに気にしているのはオン/オフを切り替えることなんです。オフの時は思考しない、分析はプライベートに使わないように心がけています。

藤江:もともとDeNAは、社風がロジカルという傾向もあります。ロジックや数字を重視してゲームを開発しているという部分では、業界でトップレベルに近いのではないかと思います。ただし、これは良し悪しの話ではなく、いろいろな個性の会社があって良いと思っています。

思いやパッションも大事ですが、ロジックや数字の裏付けをきちんと作って、パッションとロジックの両輪でものを作っていくのがDeNAの社風です。だからこそ、分析の果たす役割も他社と比べて大きいと思いますし、DeNAの分析が意思決定に確実に寄与していると胸を張って言えると思います。

――ありがとうございました。


DeNAにおいて意思決定のサポートを担う分析部は今後も参謀として活躍し、さらにAIや機械学習などの導入でますます精度を上げていくことが期待できます。

インタビューにご対応いただいた分析部の皆さん、ありがとうございました!

※本記事は2019年3月時点の情報です。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterアカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【DeNA分析部特集Vol.5(前編)】未来を予測し、最適解を導き出し続ける組織 〜分析の高度化に向けた次のチャレンジとは〜

DeNAが様々なゲームやサービスを運営していくうえで、欠かせない存在となっている分析部。Vol1〜4までは、アナリストやユーザーリサーチ、データエンジニア、MLアナリストといった分析部のメンバーの役割を紹介してきました。

シリーズ最終回となるVol.5では前後編に分けて、分析部ならではのカルチャーや課題、研修プログラム、メンバーの意外なブームまでを紹介していきます。今回の前編では、分析部を束ねる部長の藤江清隆、マネージャーの中川友喜と岩尾一優の3人に話をうかがいました。

ブラウザゲーム時代から積み重ねられてきた、分析への信頼

――分析部特集では、Vol.1~4まではメンバーの具体的な業務を紹介してきましたが、改めて「分析部」の役割を教えてください

藤江清隆(以下、藤江:現在の分析部は、DeNAのゲーム事業における意思決定のサポートという役割を担っています。

新規タイトルの開発だと「今後どんなゲームを開発をしていけば成功できるのか」、運用中のタイトルあれば「今後どういう方針で運営していくか」など、ゲームの開発現場にはさまざまな意思決定が求められます。このような大小問わずさまざまな粒度の意思決定のサポートをすることが、分析部の役割です。

――具体的な人数や構成について教えてください。

藤江:分析部全体で40名強(2019年3月時点)です。アナリストやユーザーリサーチャー、データエンジニア、機械学習を強みにしたMLアナリストらが所属しています。

――人数としても大所帯ですね。DeNAのゲーム事業部は、いつぐらいから「分析」に力を注いでいるのでしょうか?

藤江:歴史的な話になりますが、分析組織としては2011年からありました。当時、DeNAはブラウザゲームが中心でしたので、その分析をメインとしてやっていました。

当時のメンバーは外資系コンサルティング会社出身などのシニアメンバーが中心となり、小規模組織ではありましたが、圧倒的に速いスピードとクオリティーでサービスをクリティカルに改善する示唆を提供することができ、DeNAゲーム事業の中で「分析は重要だ!」というイメージを強く持ってもらうことができました。

それから8年間、立ち位置や組織の形は事業の状況に合わせて変化を続けてきましたが、事業やサービスの成功にコミットし、正しい意思決定を支えるという方針はブレずに運営してきました。

分析組織、しかも横断型となると、一般的には分析結果を事業に反映できるかが課題になることも多いと思います。DeNAの場合は、これまで8年間の信頼を積み重ねてきたこともあり、サービス側のメンバーにも分析アウトプットを積極的に取り入れていく文化が根付いているため、分析としては非常に動きやすくなっています。

分析部 部長/藤江清隆

ゲーム開発ならではの、分析の面白さと難しさ

――ゲーム分析には、どのようなスタンスが求められるのでしょうか?

藤江: 世の中には数多くのインターネットサービスがあり、その裏にはさまざまな分析手法があると思います。我々分析部は、他の業種の方や他社のアナリストとお話させていただく機会が多いのですが、その中で“ゲーム開発ならではの面白さと難しさ”というものを感じています。

これは表裏一体なのですが、ゲームというものは、分析するにしても事業を進めていくにしても、正解というものがありません。「プレイヤーが楽しめればいい」というゴールは明確ですが、楽しみ方は千差万別。レベルを上げて強くなりたい、コミュニティを楽しみたいなど、プレイヤーがゲームに求めている価値や体験は全然違ってくるのです。

ですので、ゲームのサービスの完成度を上げる、改善するといった場合でも、何を目指すべきかという指標がとても多彩なんですね。それが分析としての面白い部分でもありますし、ゲームならではだと思います。

分析として何をすればいいかという正解がないので、自分で課題を設定して、考えていかなければいけないことは、難易度としては高いと思います。まず自分の担当タイトルが決まった際に、プレイヤーがゲームに何を求めているのかを理解し、分析の手法を設計していくことが求められるのです。

――ゲームのジャンルに合わせた柔軟な分析が求められそうですね。

藤江:そうですね。ゲームによって分析の目的や手法も変わっていきますので、「このように分析するのが正しい!」という答えがありません。先ほどお話ししたように自分で課題設計して答えを求めていく思考力も大事です。

さらに、タイトルを運営しているプロデューサーらの意思決定におけるサポートがとても大事ですので、彼らが何を考えているか、何を課題として考えているかということを、きちんと対話して引き出し、その本質を捉えることも重要です。つまり、コミュニケーション能力も非常に重要になってきますね。

そのため、単純にデータを見るだけで、ロジカルに「これが正解だ!」と考えるタイプの人はDeNAの分析部にいません。チームの開発メンバーと一緒になって、「こうすればプレイヤーが楽しめるだろう」という方向をきちんと見定めて、事業が前に進むような意思決定のサポートができることが、ゲームの分析で求められるものと考えています。

https://genom.dena.com/develop/analyst/

変化の早い業界だからこそ、未来予測を行っていきたい

――マネージャーである中川さんは、ゲームにおける分析部としてのチャレンジについてはいかがですか。

中川友喜(以下、中川:考えとしては藤江と同じですが、分析もゲームという事業も、非常に変化が早いので、即時キャッチアップしていかないと業界的にも立ち遅れてしまいます。

ゲーム市場も成熟を迎える中で、今はこれまでの成功体験の殻を破り、次はどういうところに価値を見出して、組織としてより貢献しなければいけないかを考えるタイミングなのではと思います。

分析部 マネージャー/中川友喜

――長期運用タイトルも増えていき、今後差別化が激しくなっていく業界の中で、DeNAのゲーム分析はどう変化していくのでしょうか。

藤江:事業としてどうすれば成功確度を上げられるのかという“勝ち筋”を見定めていきたいと思っています。

分析部は、2019年から組織として「事業・サービスの未来を見通し、100%の成功へと導く」というビジョンを掲げています。過去を分析しパターン化することは、従来の分析業務の中で一定レベルに達していると思いますが、それだけではさらなる事業の加速に対しては不十分だと考えています。そこで「未来予測」を重要課題として位置づけ、組織として目指すビジョンにも組み込みました。

実際にこれからやっていくべきことは、新たに生み出すゲームの方向性について示唆を出したり、どんなIPと連携すれば事業として成功確度が上がるかということを、きちんと見定めていくことです。未来を予測するという分析は、これからはより多く求められるだろうと思っています。

具体的なアプローチとして、AIや機械学習分野に強いメンバーの増強や、Vol.4でお話したようなAIスペシャリストとの連携を通じてより精緻な未来予測に取り組んでいます。

https://genom.dena.com/develop/mlanalyst_ai/

ゼロベースから始まった、入社半年での新部署設立

――DeNAは、今後も新規タイトルリリースを控えていると思うのですが、分析部の体制や人員も変化していくのでしょうか?

藤江:理想像としては、ひとつひとつのタイトルに専任のアナリストをアサインできる規模にすることを目指しています。運用タイトルも増えれば、アナリスト以外の分析部メンバーも必要になるため、さらに組織を拡大していく方向で考えています。

その中で、岩尾のように、新部署を立ち上げるような提案を実現できる地盤を固めていこうと思っています。

https://genom.dena.com/develop/date_engineer/

――Vol.3で紹介された入社半年で新部署を起ち上げた岩尾さんのエピソードは反響がありましたが、上司の藤江さんとしてはその当時はどのように感じていたのでしょうか。

藤江:Vol.3でも出ていましたが、まずこの話はミッションとしてトップダウンで依頼したわけではありません。業務に取り組む中、現在の分析部の組織全体をとらえた時に、もっとこうした方がいいのではないか、この機能を強化するべきではないかと岩尾からの提案を受けて、ゼロベースから考えました。

もともと分析部は、意思決定が早いことが強みのひとつです。そこに、マネージャー陣も課題だと思っていた部分を、岩尾が的確に改善点を提案してくれたので、意思決定者であるマネージャーも「それやろう!」とすぐに承諾できたという状況でしたね。

岩尾一優(以下、岩尾:中途で分析部に入社した自分は、最初はSQLやシステムの細かい部分を見て「なんとなく、無駄なところがあるな」と感じていました。

さらに全体を見ていくうちに、コストの規模感や、どれぐらいのタイトルを運用して、どんなペースでデータ量が増えていくかを徐々に可視化していきました。それによって、分析が売り上げに貢献する以前に、システム面の本来不要なコストがかかり過ぎているということが分かったんです。

その問題に対して、具体的に削減する案をすでに思いついていたので、特定のタイトルで実際に導入して削減を実現させ、「これだけコストの削減が可能です」ということを説明したというわけです。

分析部 マネージャー/岩尾一優

藤江:岩尾のように、エンジニアとしてのバックグラウンドを持っているメンバーもがいることも、分析部の強みになっています。実は、分析部はDeNA社内の中でも、メンバーのバックグラウンドが非常に多彩なので、いろいろな視点があることも含めて、分析部としての強みになっていると思います。

意思があるメンバーには、社歴関係なくどんどん任せていきたい

――藤江さんとしては、最初にこの新組織立ち上げの提案があった時、「岩尾ならこのぐらいできる」と予想していたのでしょうか?

藤江:正直に言いますと、当初はそこまで一気に組織を立ち上げるイメージはなく、機能を強化していけばOKくらいに感じていました(笑) 。ですので、入社早々に想定以上の意欲とスピード感で取り組んでくれた印象ですね。今後はほかのメンバーでもこのような提案を出してくれたら、任せていきたいとは思っています。

分析部の平均年齢は比較的若く、20代のマネージャーもいます。その中で、アナリストとしての本業だけでなく、分析部という組織全体を変えていける可能性のある課題を、社歴関係なくどんどん任せて、一緒に組織を変えていこうという取り組みを行っていきたいですね。

――権限委譲や、意思決定を早くする体制が、分析部の中にあるということでしょうか。

藤江:そうです。DeNAという会社自体が、事業のサイクルや意思決定の速度もはやいので、権限委譲して、メンバーが正しく意思決定をして事業や組織を変えていけるような体制を作っていくことは大事だと思っています。今後はシニアメンバーも積極的に迎え入れていきたいと考えているので、さまざまな経験を組織にも反映させていきたいですね。

――マネージャーのお二人から見た、分析部のカルチャーってどんなものなのでしょうか。

岩尾:当事者意識がすごく高いですね。事業への貢献意欲が高いメンバーばかりなので、私もさらに意欲をかき立てられるような環境だと思います。

中川:私も同じです。前職を経験したうえで感じたことは、個々のメンバーが課題と当事者意識を持ち、どう解決していくかをすごく必死に考えている組織だと思っています。さらに、こうしていきたいと思ったら、立場や役職に関わらず、必要なことは自分で動きながら解決をどんどん推進していくメンバーが多いですね。

多彩なスキルを、身につけてほしい

――ちなみに、分析部内では横の異動はありますか? アナリストがユーザーリサーチをやりたいと希望した場合はどうなるのでしょうか。

藤江:一言で分析やアナリストといっても、いろいろなスキルを持った人がいます。いわゆる行動ログの分析を主体としたアナリストもいれば、ユーザーリサーチを基本の武器としているアナリストもいますし、岩尾のようにデータエンジニアの技術をベースにしている人もいます。

つまり、いろいろなパターンのスキルセットの人が、分析部には在籍しているということです。部の方針としては、スキルセットの組み合わせを、できるだけ多彩なパターンで身につけてほしいと思っています。

今後、分析のアナリストとして価値を高めていくためには、どれだけ珍しくてニーズの高い組み合わせのスキルセットを身につけられるかが重要になってくるかなと思います。

なので、メンバーから「機械学習をもっとやっていきたい」とか「今は、行動ログしか分析できないけれど、将来的にユーザーリサーチも経験したい」などの希望があったときには、できるだけ叶えられるようなアサインを考えています。

――マネージャーとメンバー間の日頃のコミュニケーションも大事になりそうですね。

藤江:そうですね、「自分はこれをやっていきたい!」といった思いは、1on1などでどんどんマネージャーに話してもらうようにしています。もちろん、100%希望に沿えるわけではありませんが、話したことによって初めて動き出すプロジェクトもたくさんありますので、できるだけメンバーのやりたいことを聞く方針でやっています。

分析のさらなる高度化に向けて

――今まで何か良い話ばかりだったのですが(笑)。逆に、課題などはありませんか?

藤江:分析の高度化を実現させていくこと、そしてそれに伴う強い組織を構築していくことが、我々の課題になっているかなと思います。

そのためのアプローチとして、ユーザーリサーチやAIの活用など、いろいろな方法を模索しています。幸い人数も多く、さまざまなことに興味を持っているメンバーがたくさんいるので、それぞれの得意分野で、より高度化し、バリューを出すためには、自分たちでどういうスキルを身につけたらいいかを考えながら進めています。

高度化という観点では、従来の分析手法にとらわれない新しいアウトプットを作ろうという部内プロジェクトに取り組んでいます。ユーザー体験やそこで生まれる感情を把握・分析できないかという大テーマに向かって専門性を有するメンバーがチャレンジしており、ゲーム業界の大規模外部セミナーで発表するレベルの成果も生まれています。

https://genom.dena.com/develop/user_research/

岩尾:分析部は、個々のスキルが高いメンバーが多い反面、スキルが属人化しやすい状況になっていると思います。システム運用は誰が携わっても同じ結果になるのがベストであって、特定の人が作業したから障害が起きたなど、対応者によって結果が変わることがあってはなりません。

そういった一定の品質を保つプロセスやノウハウは、誰が関わっても同じ結果になるように、徹底して培っていかなければいけないとも思っていますし、そこに向けてもチャレンジしている最中です。

――ありがとうございました。後編では、一人前のアナリストにまで育成する研修プログラムやキャリア、さらには裏話をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

 

※本記事は2019年6月時点の情報です。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【DeNA分析部特集Vol.4】Kaggleトッププレイヤー陣と事業課題の解決に奔走するMLアナリスト―信頼関係が生み出す強固な連携とは

DeNAが運営するゲームはプロデューサーやディレクター、プランナーなど様々な職種によって支えられていますが、分析の役割もゲームの開発・運営にとって重要な存在と言えます。

今回は、分析部のMLアナリスト山川要一と、自身もKagglerであり、データサイエンスグループでKaggler陣をまとめる原田慧を迎え、彼らの密接な連携手法にスポットを当てたインタビューを実施しました。

Kagglerと目指すミッションは”分析の高度化

――はじめに、お二人の経歴を教えてください。

原田慧(以下、原田):私は大学院で数理学の博士号を取得したのち、金融機関向けのデータ分析を行う会社に入社しました。そこでは機械学習を活用した金融機関の支援をするデータ分析などを担当し、そこで7年近く勤めた後、2018年2月にDeNAに転職しました。

DeNAでは、オートモーティブ関連事業に関わる分析を主に担当し、2018年8月からマネージャーとして、オートモーティブ以外のプロジェクトにも横断的に加わっています。

山川要一(以下、山川):僕は企画者としてDeNAに入社して、1年目はアプリの企画や分析を担当していました。2年目からは分析部に異動して、ゲーム領域において分析業務を本格的に行っています。

実際の業務としては、いわゆるアナリスト的な役割でKPIを集計し、より難易度の高い課題に対してゲームタイトルの各プロデューサーと一緒に取り組んでいます。上流の課題を見ていく中で、これまでのKPI集計で終わるのではなく、もっとプレイヤーに寄り添った分析をすると、何が実現できるかを日頃から考えています。

そして原田さんが率いるKagglerの方々と一緒に、分析のさらなる高度化を目指して、新たな分析手法の開発や、そもそも分析組織のあるべき姿を定義するような仕事をしています。

――分析部のMLアナリストのミッションは具体的にどういったものでしょうか?

山川:ミッションについては先程もお伝えしたように、「分析の高度化」です。DeNAでは従来の分析基盤が整っており、例えばプレイヤー数の推移など、多彩なデータをクロス集計レベルで分析できる環境があります。

ただ、これまでの分析結果だけではわからないような、プレイヤーの趣向性や行動予測にもっと取り組めないかと考えていて、新しいデータサイエンスを取り入れた分析手法にも取り組んでいます。

――一方、原田さんはKagglerをまとめている立場ということですが、現在DeNAにはKagglerは何名在籍しているんですか?

原田:当初は私も含めて3名からのスタートでしたが、今は社員が10名、アルバイトで3名が所属(※2019年2月時点)しています。

【データサイエンスの競技者”Kaggler”が活躍する職場】社内での立ち回りやエンジニアやアナリストとの関わり方、今後のビジョンが語られた
https://genom.dena.com/event/techcon2019_kaggler/

――日々KaggleをやっているKagglerの皆さんですが、ゲームをプレイすることはあるんですか?

原田:Kaggle自体が、ネットゲームをプレイする感覚に近いんです。ユーザーランキングや、ゲーム内イベントの仕組みもKaggleに近い要素があるので、大学生の頃ゲームにすごくハマっていたメンバーは多いです。特にKaggleに熱狂的な人は、かなりの『逆転オセロニア』好きなので、メンバーの多くはダイヤモンドクラスに到達しています(笑)。

密接な連携による、効率的な課題の解決

――山川さんと原田さんはお互いの部署間で仕事を進める際、どのような連携を取っているのでしょうか?

原田:2人で毎週定例MTGを設け、山川さんが集めてきてくれたゲーム事業部および分析部が抱えている課題に対して1つずつチェックし、データ分析で解決できそうだと判断したら、担当Kagglerをアサインして実際に動き出していきます。

山川:MTG時には、事業部側ではどんな動きがあるのか、できるだけ細かく原田さんに共有するようにしています。

横断組織であるKagglerのチームは、各事業部が持つ課題がどうしても見えにくくなります。逆に、私たち分析部は日々事業部の中でチームと一緒に動いているので、各タイトルが実際にどういう課題を持っているのかを吸い上げることができます。

そのように表面化した課題について、原田さんと一緒にまずディスカッションしていく流れになっています。

原田:私たちはその課題に合わせた手法や解法、データ分析で解決できるのか、より簡単な分析を粘り強く続けて解決するのかなどを判断しつつ、今後の進行方向を決めていきます。

それからもう1つ、分析部の中で「データ分析技術強化」という取り組みがあり、そこに私を含めたKagglerのメンバーが2名参加しています。この取り組みは、データ分析技術の基本的を学ぶOJTのような役割を持っており、勉強も兼ねながら、案件を一緒に進めることにもトライしています。

――DeNAの各タイトルにはそれぞれアナリストが担当していると思いますが、山川さんが事業部内の課題を集める際、ヒアリングするのは各アナリストなのか、それともプロデューサーなのでしょうか?

山川:一番多いケースはアナリストですね。ただ状況によってはプロデューサーから直接聞くこともありますよ。『逆転オセロニア』なら、担当アナリストである松﨑さんやけいじぇいプロデューサーから、タイトル運営の課題をヒアリングしています。

【DeNA分析部特集Vol.1】3周年を迎えた『逆転オセロニア』を支え続けるDeNAゲーム分析の強さとアナリストに求められる役割とは?
https://genom.dena.com/develop/analyst/

――そうして吸い上げた課題に対して、自分自身でできる、できないを判断して、難しいものを原田さんに持っていくと。

山川:いえ、基本的にデータサイエンスに関わるものはすべて原田さんと一緒に見ています。僕自身が適切な判断ができない場合もあるので、リスクを回避する意味でも、原田さんに確認してもらうのが一番確実だと考えています。

――山川さんが原田さんに各タイトルの課題を吸い上げて持っていくときは、どのように持っていくんですか。

山川:まず「長期滞在者を短期行動から分類したい」「デッキ編成の最適化を考えたい」といった大枠の目的が決まっている課題を持っていきます。それを原田さんが裏を読み、もう少し深く細分化して、分析の可能・不可能の提案をしてくれます。

原田:案件によっては、最初から一緒に取り組む場合もあります。問題解決の基本は、1つの難しい問題を分解するところにあると思うんですが、それにはドメイン知識も必要なんです。山川さんのような、その能力に優れたアナリストがいてくれると、判断作業がとてもスムーズに進みます。

山川:課題の解決方法について、例えば難易度レベル10の事業課題があるとします。それを機械学習でいきなり最初から全工数を投入して挑むのは、他の進行中の課題との兼ね合いや、経営判断的にもなかなか難しいと思われます。

そこで、アナリスト側で難易度レベル10の問題を、「難易度レベル1×5タスク」「難易度レベル2×1タスク」「難易度レベル3×1タスク」といった形に分解してみます。

このようにステップを踏んで解決していけば、最終的には難易度レベル10の案件をクリアできますよね。このような的確なブレイクダウンなら、難易度レベルに応じたタスクを判断しやすく、可能・不可能の見極めも素早くできるメリットが生まれます。

原田:Kagglerは小さなタスクなら、わずか1日で終わらせることもできるので、分解する意義は大きいと思います。逆に分解してみて、ものすごく手強い問題だと分かれば、元の大きい問題の解法の方針を少し変更したり、ブレイクダウンの方向性や、そもそもの問題設定を見直す必要があることを、事業側と交渉する選択肢を生むことなども可能です。

――ちなみに運営する各タイトルごとに見ている分析は違うのですか?

原田:はい、違います。ですが、ゲームシステムに”デッキを組む”ような共通要素を持つタイトルでは、目的が似通っている部分もあります。プレイヤーにどうやって楽しんでもらうか、継続的にプレイしてもらうにはどうすればよいのか、といった課題感については、タイトルごとであまり変わらないかも知れませんね。

山川:クリアしやすいデッキの組み方など、すべてのプレイヤーが自力でベストな組み合わせを見つけられるわけではありません。そこで、組み合わせを分析し、ゲーム内の施策を考えれば、オススメ編成のような仕組みを入れるなどの検討も可能になります。

このように、ゲーム内でプレイヤーが快適に過ごすためのサポートを担う分析は、とても汎用的で、ニーズも高いんです。

――なるほど。では、実際に現場からはどんな課題が上がってきて、どう進めようとしているかという具体例があれば。

山川:ゲームを遊びたいと考えている方は、さまざまな広告チャネルをきっかけに、好きなゲームをダウンロードしてプレイを開始することが多いと思います。そこで、どんなプレイヤーがどこでゲームを知り、どれくらい継続的に楽しんでいるかを把握することで、広告の投資効果の検証をしていきたいという要望が求められています。

それを目的とした分析結果は、どのSNS広告が効果的なのかを決める際に役立ちます。プレイヤーの180日後の行動はその日には計測できませんが、1週間や1ヵ月など、中長期的に予測できるようになれば、ある程度の傾向を知ることが可能です。

1週間のデータを使って得た指標をもとにすれば、広告の出稿方法を変えるなどの投資判断に使えると考え、プレイヤーの行動を予測する取り組みに挑戦しています。

原田:このような”予測”というキーワードが出てくると、Kagglerは活躍しやすいです。そもそもKaggleで日々やっているのは、「今までのデータを与えるから、未来の何かを予測しなさい」といった予測の問題なんです。

無論、未来予測ではない問題もKaggleにはありますが、基本形は与えられたデータから道の何かを予測するというものになります。

――DeNAでKaggler枠が出来て、実際にKaggleメンバーが集まってきました。山川さんの立場として仕事をする上でどのような点がメリットだと感じていますか。

山川:やはり、分析者からのアウトプット品質が、段階的に上がったと感じています。KagglerがDeNAに集まったことによって、今までできなかった取り組みを実現できるようになってきたことを実感しています。

特に、プレイヤー数の予測精度が上がったり、今まではわからなかったプレイヤーの特性が見えたことは大きなメリットです。Kagglerが参加したことで分析結果がレベルアップして、施策にうまく活かすことが可能になり、プレイヤーニーズに応えられるサービスを作れるようになってきたのは、組織としては大きな前進です。

――お二人はお互いをどういう存在だと感じていますか。

原田:私から見ると、山川さんはとても頼りになる人です。何か問題が起きても、とりあえず山川さんがどうにかしてくれると……(笑)。

山川:僕も原田さんは神様のように、頼りにしています(笑)。僕はアナリスト側、原田さんはKaggler側で自分の役割を持ちつつ、お互いに信頼し合えて良い形で連携できていると感じています。一緒に働く中で、長所を引き出し合っている気がしますね。

また、原田さんは良い意味で介入しないで任せてくれますし、こちらが悩んでいることも親身に相談に乗ってくれます。お互いのプロフェッショナルな部分を尊重しつつ、違う部分も受け入れつつ、協力できているのはとてもありがたいなと思います。

MLアナリストに求められるスキルや経験

――Kagglerと事業部のハブのような役割を担う山川さんのポジションには、どのようなスキルや経験が求められるのでしょうか。

山川:主に3つ挙げられます。1つは事業責任者視点で、これが一番重要ですね。細かなタスクはいくらでも作ることはできますが、それを解くことに意味があるのか、そもそも何が最優先で最重要な問題なのか、課題に対する優先順位を付ける視点が必要になります。

2つ目に問題設定です。事業として設定した目標や理想が達成できればOKなのか、収益など他の要素も複合的にチェックしなければならないのかなど、問題の本質を見誤ることなく、事業で最も大事にすべきことの定義ができることです。

3つ目は、Kagglerの方と対話をする上でのデータサイエンスの知識です。Kaggleに関してMasterまで到達せずとも、いくらかは勉強して欲しいですね。手法の選択や解決方法を日頃から考えたり、意欲的にサービス改善のために何ができるか、アイデアを膨らませることが大事だと思います。

原田:もちろん、Kaggler側の努力でいくらか改善できる部分もあります。我々Kagglerも若いメンバーからシニアメンバーが在籍しているので、技術面の足りないところはフォローができますし、「これってどういう意味があるの?」といったざっくりとした観点でも一緒に考えることができます。

――今後の話になりますが将来のビジョンや目標などがあれば教えてください。

山川:視野をさらに広げていきたいですね。分析部はゲーム事業に直結している組織なので、アナリストがもう少し幅広い課題まで目が届くようになって、全社レベルのいろいろな課題を引っ張って集約できると良いと考えています。その上で優先順位をつけて原田さんたちKagglerに相談できれば、全社的にも常に高いバリューを出せるんじゃないかと思っています。

――最後に、アナリストとKagglerが連携して新しいことに挑戦し続けるDeNAという会社はどういうところが魅力でしょうか?

原田:さまざまな事業を複合的に推進している、おもしろい会社だという印象は入社前から変わっていません。実際に入社して魅力的だと思ったのは、データ分析に関してほとんどの人が前向きだということですね。

DeNAはデータ分析に対する基盤がしっかり構築されていて、当たり前にデータを集めています。データを分析すれば必ず何か良いことがあるはず、ということに対して疑っている人がいないんです。Kagglerにとっては、とても働きやすい環境だと言えますね。

山川:「あなたはこの役割だからこれだけやっていればいい」というような、決まったラベルを貼らない風潮も魅力かも知れません。

僕は分析担当ですが、いろいろな事業に関わらせてもらっていて、新規事業責任者の相談相手になることもありました。誰が何をやっても、それが意味のあることなら実行する、という風土を持った会社なので、責任も大きいですが、強いやりがいも感じられます。

さらに自分の専門領域ではない部分にもチャレンジできますし、それを否定する人がいないのも嬉しいです。DeNAでは「こっちの事業に口を出してくるんじゃない」と言われることはまずありませんよ。

※本記事は2019年2月時点の情報です。
※本記事は、SocialGameinfoに掲載された内容を一部構成を変更して掲載しています。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterアカウントやにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【DeNA分析部特集Vol.3】データエンジニアリンググループ発足の狙いとは?MLOps導入や新技術によるコスト削減などで事業貢献を目指す

DeNAが運営するゲームはプロデューサーやディレクター、プランナーなど様々な職種によって支えられていますが、分析の役割もゲームの開発・運営にとって重要な存在と言えます。

今回は、分析部内に新たに組織されたデータエンジニアリンググループにスポットを当て、同グループ発起人である岩尾一優と、前回に続いて吉川正晃にインタビューを実施。

データエンジニアリンググループ立ち上げの背景や目的、DeNAの中でデータエンジニアとしてどのように貢献しているかなど語っていただきました。

データエンジニアリンググループ立ち上げの背景

――まずはこれまでの経歴についてお聞かせください。

岩尾一優(以下、岩尾 私は昨年7月にDeNAに入社しました。それまでは富士ゼロックスでコンビニのネットプリントサービスのアーキテクト設計を担当していました。前職でもデータ分析基盤の立ち上げをしていたことがあって、DeNAに入ってからはデータエンジニア担当として、主に分析の効率化や高度化を推進するようなことをやっています。

2月からデータエンジニアリンググループを立ち上げ、マネジメントも担当しています。

吉川正晃(以下、吉川 DeNAには7年間在籍していて、最初の4年間はセキュリティー技術、その後3年間は分析を担当し、直近1年は分析グループのマネジメントに力を入れています。岩尾さんが入社当時は、私のグループに在籍していたんですよ。

――岩尾さんは2018年7月の入社から半年が経ちましたが、DeNAの印象はいかがですか?

岩尾: エンジニア天国という印象です(笑)。PCや椅子など、職場環境が良いと感じています。社風も良い意味で自由な所があり、自分でパフォーマンスをコントロールしやすい職場だと感じています。

――ゲーム業界外から転職された岩尾さんは元々ゲームがお好きだったんですか? また分析部の皆さんは普段からゲームをプレイされているのでしょうか。

岩尾: ゲームは小さい頃から遊んでいます。コンソールではRPGや洋ゲーが好きでプレイしています。スマホでは『メギド72』をプレイしていますよ。

吉川: 僕はかなりやりますね。最近はコンソールはあまりやっていないんですが、普段からスマホゲームは他社さんのアプリも含めてやっています。その他のメンバーもゲーム好きが多いです。

――分析部に新たに組織されたデータエンジニアリンググループですが、どのような背景で立ち上がったのでしょうか。

岩尾: 私が入社する以前から、DeNAはデータ分析費用にかなりの金額がかかっていたことが背景としてあります。入社後、それって本当に必要な額になのか調べたところ、いろいろ改善の余地があることがわかってきました。

その中で、コスト最適化もそうですし、コードの保守性や一部業務の属人化など、エンジニアリング周辺で、色々と課題があると感じていて。その度に上長だった吉川さんに相談したり、1on1の場で改善の提案をしてきました。

そして実際に改善に力を入れ始めてみると、目に見えてコスト削減ができ、本格的に1度本来のあるべき役割や何をやるべきかを整理して、組織化することでそこの部分を改善していこうと考えました。

吉川: そもそも分析部としてコスト管理の部分がしっかり定義されないまま運用していた部分も正直ありました。分析部として、コスト改善をしっかりやっていこうというフェーズになっていたところに、ちょうど岩尾さんの入社が重なったんです。

そこからコスト削減という活動が目に見えて実績として生まれてきて、それを推進してくれる岩尾さんに組織を立ち上げてもらいました。

――吉川さん自身も以前からコスト削減は課題として感じていたんですか。

吉川: 正直に言うと、一番の課題とは思っていませんでした。恥ずかしながら、できるメンバーが対応している体制だったので、まさに属人化の状態でした。

分析部の元々のミッションであるデータ基盤を安定的に運用するところは、あくまでもミッション達成の一過程でしかないという考えで組織で取り組む優先度を下げていましたが、今後クラウドにシフトしていくことを踏まえ、優先度を上げていかなければならないということで認識を改めました。

岩尾: これはエンジニアのあるある話ですが、事業に向けた開発や作業は優先されるけど、保守や改善がどうしてもおろそかになりがちなんです。それを放置しておくと、ある時に何かちょっとした変更をするにしても、どこに影響が出るかわからないという状況に陥ってしまいます。

そうなる前に一度、保守や改善をすることで事業開発の工数を削減できれば、全体のキャパも上がっていくと考えて今回取り組みました。

吉川: そうなった背景としては、元々分析部のミッションが事業の最重要課題を抽出して解決することで事業に貢献するというところにフォーカスされていて、スピード感を持って取り組むことを優先している文化にあります。

事業の意思決定に必要な動きを優先してしまっていたことは反省しています。ただ、人員が足りずどうしようもなかったことも事実です。そこで岩尾さんに入社していただき、魅力的な提案もあって、一気に動きが加速できた、ということで非常に感謝しています。

――データエンジニアリンググループ立ち上げの実現に向けて、実際にどのようなことをされましたか?

岩尾: まず足りていない役割、あるべき役割を設定しました。例えばGoogleやAmazonのデータエンジニアが何を持っているのかを調べて、我々ができているところ、できていないところを見つめ直しました。

できていない部分は保守もそうですが、ML系とかシステムに載せていくという所が分析部としてちょっと弱いと感じたので、週次でマネージャー陣とレビューなどを行いました。次にミッションについて、もうちょっと短期の目標からどうすべきかを壁打ちしながら磨いていきました。

吉川: その過程で、実際に今の分析部と将来の分析部にどれくらいのエンジニア力を持った人材が必要なのかも含めて、設計してもらったのはかなり大きかったです。

――実際に昨年7月に入社して組織立ち上げを相談したタイミングは?

岩尾: 入社して3ヶ月後の10月です。コスト削減の成果がだいぶ出ていたくらいの時期でした。

吉川: その成果は誰が見てもすぐわかるもので衝撃的でした。かなり早い段階から岩尾さんの力が発揮されていたのも、データエンジニアの組織化に向けた意思決定のスピードにつながったと思います。

新たな技術を使った挑戦

――現在データエンジニアリンググループで取り組んでいることについて教えてください。

岩尾: 1つはMLOpsの導入です。機械学習って、例えばデータサイエンティストがデータ分析して、マーケティングや事業部に分析結果を説明して、理解を得てプロジェクトにつなげていくことがあると思います。ただ、事業部の立場からすると、朝出社したら分析データの計算が終わったものを確認できるという状態が一番理想的ではないでしょうか。

MLOpsはそれをシステム化するということなんですが、そこまではまだできていない状況です。一部ゲームにはAIが組み込まれていますが、ゲームの機能としてではなく、分析を目的としたMLのシステム化みたいな部分はまだできていなかったので、そこは我々データエンジニアリンググループの役割と考え注力しています。

今は全てのモデルで動いているわけではないですが、一部のモデルで導入して動かしているという状態で、これからどんどん載せ替えていくところを本格化させていきます。

――MLOps導入は、分析の工数を削減することが目的なんですか?

岩尾: 主な目的として、「工数の削減」と「機械学習について高い専門性のない人でも使えるようにすること」があげられます。

特に後者はシステム化することでハードルがグッと下がります。機械学習って、はじめの環境構築が難しくて、知識も必要になってきます。高い専門性も必要であるため機械学習モデルを作れる人ってどうしても限られるんですが、それを配布して誰でも使えるようにする、という仕組みを作ることでハードルを下げて、専門知識がないアナリストでも使えるようにしようと考えています。

――そのMLOps導入で苦労されていることはありますか。

岩尾: 苦労としては、DeNAは色々なサービスを運営している会社なので、それらにどう伝播させていくかを前提として考えているというところが大きいです。

単一のサービスであればそれに特化したシステムを作れば良いですが、我々は複数のサービスを走らせているので、そこに適用できる形のシステムがどうあるべきか考える必要があります。

吉川: そこのハードルはかなり高いかなと思いますが、それを乗り越えて実現できたときの効果は絶大だと思います。

――MLOpsのほかに、新しい技術を使った取り組みや事例はありますか?

岩尾: Googleのクラウド系はシステムアップデートが結構頻繁に行われるので、そういうところをウォッチしながら取り入れるものは随時ピックアップするようにしています。

BigQueryというデータ分析基盤では、それ1つとっても新しい機能が毎月のように出ているので、β版からどんどん検証して、我々にとって良いなと思えるものならβ版であっても導入するくらいのスピード感でやっていきたいと思っています。

――今後データエンジニアリンググループとして取り組んでいこう、進めていこうと考えていることはありますか?

吉川: アイデアベースですが、機械学習が増えていくことにより、一人ひとりのプレイヤーにフォーカスすることや、カスタマイズした分析が今後は必要になってくるというところで、データウェアハウスそのものもプレイヤー単位で持てるのが理想だと考えています。

岩尾: あとはクラウド移行ですね。これは全社の意向もありつつですが、元々物理のサーバーを使って大きなサーバーストレージを使いながらやっているんですが、それをすべてGoogleであったりAWSのサービスに載せて、クラウドで管理するように分析基盤も移管する予定です。

GCPやAWSにシステムが集約されることで、GoogleやAWSが新しく機能を出したときに、我々もすぐにキャッチアップできる体制が常にできているという状態が実現できますし、コスト削減の面でも物理サーバーを持つよりも、より安価にデータ分析の環境を維持できます。その部分に対して遅れを取らないような体制を今後作っていきたいです。

――新しい機能が出たときの技術のキャッチアップについて、具体的にどのようなことをしているんですか?

岩尾: Google社の方と頻繁にお会いして話をしています。手を動かしてみると設計段階の構想と違うと感じることがあったので、そういうところは積極的に聞いています。

あとは我々自身も国内外のカンファレンスに参加して、世界の事例を見て良い所は取り入れるようにしています。先日もラスベガスで開催された「AWS re:Invent」に参加しました。どんなことが行われているかとか、我々がやろうとしていることは世間と比べてどのくらいのレベルなのか、ということを認識することも欠かさないようにしています。

――技術をキャッチアップしつつ、今後は分析基盤のクラウド移管をしていくということですが、結構大変な作業になるのでしょうか?

岩尾: かなり大変ですね。BigQueryに載っていないものがまだまだあって、それを全て載せ替えようということになります。関連するドキュメントの書き直しや、あるいは我々で取捨選択をして必要ないものをちゃんと伝えてあげて、アナリストに影響のないような形でなるべく本業に集中できる形のデータ基盤の移管を進めていかなければなりません。

「この業務って本当にまだ必要?」「意味があるんだっけ?」という業務の棚卸をして、最適なシステムをもう1回組むということはやりたいと考えています。

――アナリストへの影響なども考慮して移管を進める必要があると。ところで岩尾さんはアナリストとどのように連携して仕事をしているんでしょうか。

岩尾: DeNAは、分析部内にアナリスト、リサーチャー、サイエンティスト、エンジニアがいるところが強みかなと思っています。データエンジニアって開発側に属している会社が多いと思いますが、我々はビジネス部門である分析部の中にいます。だからこそゲームのドメイン知識も持っているので、そういったことを活かしつつエンジニアリングを発揮できる良い体制になっています。

その中でアナリストとの連携の仕方は色々ありますが、例えばゲーム内でイベント用の分析が必要になったときに、どういうデータの持ち方をすると最も効率的かという所をアドバイスしたりします。

吉川: 同じような作業を繰り返しているチームの相談もあって、そこの効率化など横断的にデータ基盤を見る機会が多いので、我々からのインプットをアナリスト全員にシェアしていくという動き方がメインですね。

岩尾: あとアナリストやカスタマーサポートの方は、結構SQLをたたけるんですけど、その際に良いSQLと最適ではないSQLがあるんです。BigQueryは何ギガ、何テラ検索したかで料金が発生する従量課金が特徴としてあるので、やはり最適にQueryを書く必要があります。

ですから、そこで最適ではないQueryを書いてしまったときに、slackで通知してわかるようになっていて、みんなでこのQueryはどこが悪かったか議論できるようにしています。

DeNAは失敗を活かす文化があるので、我々はデータエンジニアリンググループとして最適でないQueryが発行されてしまったときにslackに通知するシステムを裏で開発して、要は気付きを与えてみんなで改善していく狙いで実施しています。

もちろん、何ギガ以上のQueryを投げたらシステム的にガードすることもできるんですが、それをやってしまうととメンバーを信頼していないと感じられてしまいますし、本当に必要なQueryだった場合に実行してエラーだったらストレスにもなると思います。

それよりも、仮に失敗したとしてもみんなで改善していったほうが学びにもなるし、長期的に見ても良い組織になるのではないかという理由でそのようなアプローチを続けています。

吉川: データエンジニアリンググループは単純なティーチングだけでなく、コーチングも組織として取り組んでいるんです。

岩尾: それって同じ部内にエンジニアもアナリストも一緒にいて、お互いに信頼関係があるからできることだと思います。

アナリストから「こういう分析がしたいんだけど、今のテーブル構成ではどうしても1回で1テラ以上検索してしまってお金がかかってしまう」と相談を受けたときには、そのテーブル設計を見てアナリスト側からの要求を受けて「テーブル構成を効率化しましょう」という働きもあります。お互いに意見を出し合って最適化を目指している組織ですね。

働きやすく挑戦しやすい環境

――データエンジニアリンググループはまだ立ち上げ期ですが、業務的に大変ではないですか?

岩尾: そこは皆ちゃんと定時に帰れています(笑)。というのも仕事の優先順位をしっかりつけているので、普通に19時には帰宅できます。あと私事ですが、先日2人目の子どもが生まれたんです。最近、分析部自体もベビーラッシュで、私に限らずみんな早く帰っていますね。

吉川: 手分けしてちゃんと仕事ができていると思います。今はグループと各メンバーのタスクを管理していて、1人に負荷がかかったり、チーム全体で負荷が高くなるという状況がなるべくないような状態を維持しています。

岩尾: あとは重要かつ緊急の仕事を持たないように意識することが大切です。緊急だけど「それって本当に緊急なのか?」を考え、そこまで実は緊急じゃない案件についてはスケジュールをきちんと引き直すなどの工夫をしながら仕事をしているので、残業はほとんどありません。

我々は本質的に重要なことに集中したいと思っていて、そうできるようにがんばっています。この2ヶ月くらいでタスクすべてを棚卸して、優先順位を付け直し、さらに優先順位を付けるためのルールも作成してみんなで作業しています。

吉川: また、関係している部署に対しては定例などをしっかりと設けて、その仕事が重要なのかどうかをタスクが発生する前に事前にキャッチできるような関係値を作り、重要な仕事は緊急になる前に依頼してもらうようなリマインドができる体制になっています。

岩尾: これは前職から気をつけていたことですが、エンジニアって仕事ばかりしているとそればかりになってしまうんです。だらだら仕事するよりも切り替えて、早く帰って勉強したり、最近のトレンドをキャッチアップしたり。もちろんリフレッシュしたりと、そのほうが全然良いと思っています。我々の職種は知識をアップデートしないといけないのでそこは意識しています。

――コスト最適化に向けた組織化の提案が、入社後半年で実現したという事例は面白いですね。

吉川: しっかりとした目的を持ってロジカルに提案すれば、きちんと受け止めてくれるというところはDeNAらしさなのかなと思います。

岩尾: そうですね。あとは提案していく中でも逆風みたいなものはなくて、そこはやはり皆ぼんやりとした課題感はあったと思います。

それを言語化できて論理的に説明できれば、部長やマネージャー陣も含め、むしろ全員でそのロジックを詰めていくみたいな流れが生まれて、意思決定も立ち上げもかなり早かったですね。

吉川: 課題の提案がすごく前向きだったところも大きな要因で、これはイケてないと思うんです……で止まる提案と、イケてない……だからこうしたい!という提案は全然違うなと感じました。岩尾さんは後者の提案だったので、もし提案を100%実現できなかったとしても組織として前進できる内容だったので、すごく良い提案をしてくれたなとうれしく思いました。

岩尾: 個人的に常に意識しているのは、ちょっとでも良いから成果を出して、これが完成したときのイメージの解像度を上げるという所。できるだけ不確実性を下げた状態で提案できるように意識しています。

――:データエンジニアリンググループは、コスト削減などの保守的な部分と、MLOpsのような改善の部分、攻守のバランスが絶妙だなと感じました。

岩尾: ゲーム中の用語に例えると、当初から「攻撃力」「防御力」という表現をしていて、その部分は意識しています。メンバーと関わる中でも、この人はこの領域をやるのが好きなんだなとか、それぞれの価値観というものがあって。コスト削減が得意な人もいれば、MLOpsのような新しい技術に触れたいという人もいるので、各メンバーがやりたいことも意識して、全体を組み立てるようにしています。

――:今後、データエンジニアリンググループではどんな人材を求めていくのでしょうか?

岩尾: 個人的には、アーキテクチャ設計ができる人が良いかなと思っています。ビジネス要件をどうやって技術に落とし込むかを噛み砕ける人といったところでしょうか。

もちろんビジネス要件自体も我々エンジニアは意識する必要はあると思いますが、それを技術に落とすとき世の中にはいろいろな選択肢があります。それらを広く知って比較して、チョイスしたものがどういう理由で最適なのか論理的に説明できる人が理想ですね。あと、できればゲームに興味があれば(笑)。

吉川: 今は立ち上げ期で、課題や新しい取り組みがたくさんあります。そこを一緒になって動いて埋めてくれるような、特に岩尾さんと並走できるシニアの方にはおもしろいと思います。

岩尾: そうですね。課題自体も、自分自身で発見して実装できるのが理想的。それから組織を立ち上げていきたいという野望を持っている方も適任なんじゃないかなと思います。DeNAは自分の力を伸び伸び発揮できる環境だと思っているので、自分の経験をもっと発揮したい人には向いている気がします。

★あわせて読みたい
【後編】DeNAゲーム事業におけるデータエンジニアの貢献〜客観性を担保したLTV予測やBigQuery運用におけるコスト最適化、そしてMLOpsへの挑戦〜

※本記事は2019年2月時点の情報です。
※本記事は、SocialGameinfoに掲載された内容を一部構成を変更して掲載しています。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【DeNA分析部特集Vol.2】目指すのは攻めのユーザーリサーチ。起動時アンケートや生体反応など新たなチャレンジでユーザーリサーチの向上、発展を目指す

DeNAが運営するゲームはプロデューサーやディレクター、プランナーなど様々な職種によって支えられていますが、分析の役割もゲームの開発・運営にとって重要な存在と言えます。

そこで「DeNA分析部特集」の第2弾として、DeNA分析部のユーザーリサーチの現場を紐解いていきます。お話を伺ったのは、DeNAの分析部に所属するユーザーリサーチグループの松本祥三と吉川正晃。

ユーザーリサーチグループがどのような活躍をしているのかを実際の事例を元に、取り組みの詳細と今後について語っていただきました。

新規ゲームのアプローチに対する推進力を持ち、
プロダクトとプレイヤーを繋ぐ

――まず始めにお二人の経歴をお聞かせください。

インタビューを受ける松本(写真左)と吉川(写真右)

松本祥三(以下、松本 以前は調査会社でリサーチの仕事をしていました。ひとつの案件にもっと深く関わりたいと思うようになり、縁あって2016年8月にDeNAに転職しました。

吉川正晃(以下、吉川 私は2012年に新卒入社し、今年で7年目です。最初の4年間はセキュリティ部の技術者として、全社のセキュリティを技術的な面からサポートする役割を担ってきました。

3年前にアナリストとして分析部に異動し、昨年アナリストグループのマネージャーになりました。その後、アナリストマネージャーと兼任という形でユーザーリサーチグループのマネージャーも務めています。

――DeNAのユーザーリサーチグループはどのような業務内容で、どのような役割を担っているのでしょうか?

松本: プレイヤーの満足度など、ログでは見られないユーザーの想いや考えを可視化していくのがミッションになります。例えば『逆転オセロニア』や『メギド72』などのタイトルをプレイヤーが楽しめているか、どう思われているのかを調査し、プロダクトとプレイヤーの架け橋になる大きな役割を担っています。

――実際に担当されているタイトルはあるんですか?

松本: リサーチメンバーは少人数ということもあり、1人で複数タイトルを見ているのが現状です。僕自身も自社で開発・運営しているゲームのリサーチの半分くらいは関わっています。

吉川: リサーチャーが主に活躍できる領域はアナリストと分けられている部分があり、アナリストはゲームのリリース後に、タイトルの課題をどのように改善していくかというところに重きを置いています。

一方でリサーチャーの場合は、新規タイトルがリリースされる前から関わって、理想のプレイヤー像を明らかにして、彼らにどうやってアプローチするかというところに取り組んでいます。

――リリース前の段階からゲーム開発チームとガッツリ関わっているのでしょうか?

松本: そういったケースを、まさに増やそうとしている段階です。

吉川:今までは、どちらかというと私達は横断部署としてなるべく数多くの案件をこなすことにフォーカスしていました。しかしそれでは1タイトルにコミットする力がどうしても弱くなってしまうという課題があったので、2018年から新規タイトルに関してリサーチャーが推進力をもってリードしていこう、という意思決定を行いました。

松本: リリースした後にそのゲームを改善していくために、行動データの解析をやっているんですが、リリース前からリサーチャーが関われた方が分析として提供できる価値が最大化されると思うことがありました。リリース後に直せる範囲には限界があり、開発段階から調整していかなければならない課題感が自分の中にあったんです。

吉川:アナリストもリリース直前から関わるようにしていますが、開発期間が2~3年のタイトルですと、チームでの共通認識のズレがどうしても起こってしまうんです。

ゲームとしての目指すべき姿や、それを届けたいプレイヤー像などのビジョンが、30~40人規模の大きなチームになると、メンバー1人1人の思い描いているイメージや、それぞれのアウトプットに微妙なズレが生じて、最終的な結論があまり良いものではなくなってしまうのではないかと思っています。

そこに対して、リサーチャーが入ることで、メンバーそれぞれがプレイヤーをどんな風に思い描いているかをまとめてリードできるところが、開発チームにとって強みになり、また会社として求められている役割なので、時間を使って注力していく動きになっています。

松本: そのため、常に開発タイトルがどういう方向に進みたいと思っているのか、どういうフェーズなのかを把握していないと提案ができないので、開発サイドの週次定例などで彼らの進捗や目指していることなどをヒアリングしながら、「それならこういう調査をしましょう!」と提案することを心がけています。

吉川:単純にハブとしてのリサーチの提供だけではなく、その前段の、そもそもゲームを作るということに関してもリサーチグループのメンバーが介入して、作り方や彼らの思想に関して、もう少しイメージを具体化させられるようインプットをしています。

――現状、リサーチグループの中で課題に感じていることはありますか?

松本: あまり大きくないチームなので、メンバーそれぞれの見ている方向を統一することはそこまで難しくはありません。ただ、やらなくてはいけないことや、やりたいことが多すぎて、人手が足りないことが課題です(笑)。

吉川:そうですね。今後は、リサーチグループのメンバーを増員し、なるべくタイトルに対する影響力や、メンバーの個の力を強くしていきたいです。そのために、よりシニアなメンバーも増やしていき、開発チームから求められる前に、私達からアプローチできるように組織力を強くしていきたいと考えています。

起動時アンケート、生体反応など
新しいアイデアへの挑戦

――これまでの事例として”起動時アンケート”を実施されているとのことですが、実装の目的や仕組みについて教えてください。

松本: 起動時アンケートは『歌マクロス スマホDeカルチャー』(以下、『歌マクロス』)や『メギド72』で実装しました。アンケートやインタビュー、βテストなども一つのリサーチ手法ですが、いわゆる一般的な施策はこれまでも数多く実施してきました。

ただ、通常のアンケートでは、おもしろさの度合いははわかるものの、プレイヤーが結局このゲームに何を求めて、どこを楽しみたいからプレイを始めて、その機能をちゃんと楽しんでもらえているか、などという判断が必要になったときに分かりにくいと感じていました。

そのようなプレイヤーが何を求めてどういう行動をしたいのか、という意識と実態の部分が、今までバラバラな認識になっていたので、そこをきちんと繋げることを目的として起動時アンケートが実装されました。

吉川:起動時に実装した理由は、もともとアンケートやインタビューでプレイヤーと接触するポイントは作ってはいましたが、一度ゲームから離脱してしまった方に対してのアプローチ方法というものがほぼなくて、その方たちの声を聞きたくても聞けません。

その状態でゲーム内アンケートを実施しても、そもそもゲームにログインされていないので、回答してくれることは100%ありませんよね。

そう考えたとき、アプリのインストール時にどれくらい期待値を持って、どんな機能が欲しくてプレイするのか、という質問を最初に全員に聞いてしまうなら起動時がベストなタイミングだと考えました。プレイヤーから見ても、ダウンロード中にアンケートに時間を使うことにそこまでの不利益は感じないのかな、と思っています。

――起動時アンケートの内容で意識したことは?

吉川:一般的な工夫としては、たとえばIPを扱ったタイトルであれば、その世界観を崩さないように、各キャラクターの個性を生かしたフレーズや言い回しにかなり注意しています。

松本: 原作ではフランクな話し方をするキャラクターが、アンケートでいきなり敬語だと違和感がありますし、世界観としても不自然になってしまいます。IPの世界観を守りつつも、間違ったバイアスのある設問は良くありません。

また、気軽にゲームを遊ぶつもりなのに、たくさんの質問をされると答えるだけで疲れてしまうため、質問数をいかに少なくして、かつ傾向を分析するにはどうすれば良いかを改めて考えることも大切です。

――では実装してみて成功した部分はありますか?

松本: 価値観の部分がきちんと可視化できたことです。『歌マクロス』で実施したときに、「音ゲー」が好きというプレイヤー層の離脱が早かったことがわかりました。

調査してみると、最初は実装できる曲数に限りがあり、プレイヤーが曲をクリアするペースが早かったことが判明しました。だからと言って、「曲の数が離脱の原因だから明日10曲追加する」といったように、急激に開発進捗を早めることはできません。

そこで、一旦そのプレイヤー層に向けた広告を止めるという事例はありました。しっかり曲数が増えて、これなら大丈夫というタイミングから、またその層に向けて広告を打ちましょうと。

『メギド72』の事例では、RPGのどの要素が好きかというところで区分けしているんですが、例えばキャラクターが好きな方は、そのキャラが欲しくて、ガチャを引いたり育成したりなどしてゲームに熱中していただいているのかなとイメージしていました。

この仮説をもとに実際に調査したところ、やはりキャラクター好きのプレイヤーのほうが、「〇〇で確実に好きなキャラが手に入る」「キャラクターの衣装がおまけでついてくる」という施策を好意的に受け入れてくださることが多い、ということが見えてきました。

このように、しっかりとプレイヤーの感情をイメージして出した仮説と、リサーチ結果を通してわかる実態をすり合わせることが、現在の取り込みの中ででき始めているのかなと考えています。

――今後、起動時アンケートをより良くするために何か考えていますか?

松本: 主に2点考えています。1つは最初のイメージができていないと、後工程でがんばっても良い方向に進まないので、開発スタート時からちゃんと関わることを大事にしています。

もう1つは、いま世の中にリリースされているもので、明らかに「アンケートです」といった表示方法でゲームに組み込まれていることを変えていくことです。『歌マクロス』ではリズムゲームをどのくらいプレイしているか、「マクロス」がどれくらい好きかという完全に質問形式になっています。

こうした質問形式のアンケートはタイトルによって相性の良し悪しがあります。例えばプレイヤー自身が物語の主人公になって進めていくタイプのゲームだと、アンケートチックなものは現実に引き戻されてしまう要素なのかなと危惧しています。

そう考えると、アンケートがゲームの邪魔をしてはいけないと思っています。『トリカゴ スクラップマーチ』という今後配信を予定している新規タイトルでは、日常で会話をしているようなイメージで、(画像と合わせるという観点で)キャラクターが「目標ってなんだ?」とか「こんなの見つけたけど、どれが欲しい?」などを聞いてきて、それに答えると実はその裏にはロジックがあってセグメントが分解されています。

そういった、ダウンロード中の暇つぶしコンテンツとしてキャラクターと会話していたら、いつの間にかプレイヤーのセグメントがこちらでわかるような工夫をしています。


※画像は開発中のものです

――その他、ユーザーリサーチとして新たにチャレンジしている取り組みなどはありますか?

松本: 現在、研究しているのが「生体反応」です。おもしろいって何?という質問に対する回答は千差万別ですよね。

例えば、複数のゲーム企画が立ち上がったとして、そのすべてがリリースされるわけではなく、いくつかの企画が通ってプロトタイプが作られ、またその中から残ったものが最終的にリリースされるのが基本的な流れだと思います。

でも、最終的に「この企画はおもしろい!」と事業判断したとしても、それが絶対に正解とは言えないと思うんです。おもしろいというのは人によって違いますし、ある人がおもしろいと思っても、別の人はおもしろいと感じないかもしれない。

そんな時に、”おもしろさ”を言語化したようなデータやグラフがあれば、例えば「わかりやすさの数値が極端に低いから、わかりやすくすればこのゲームはウケるかも?」という仮説ができて、みんな納得できるし、意思決定の判断材料にもなりますよね。

それを虹彩や脳波、脈拍、表情などで解析しておもしろさを「生体反応」で可視化できるんじゃないかというアイデアがあって、研究を進めています。実現できたらすごくおもしろいし、サービスとしてもやれるんじゃないかなと思います。

吉川:自分たちが実現させたいことはまさにそういった分野です。実際、いま世の中にあふれている分析の手法だけで解決できる問題に留まらず、自分たちが欲しい情報をどれだけ正確に、かつ定量的に可視化できるかというところを目指してやっていきたいと考えています。

定性意見をより定量的に判断できるようなつなぎ込みを、ユーザーリサーチグループはもちろん、分析部全体としても取り組んでいきたいと考えています。無理難題かもしれませんが、新しいチャレンジに取り組まない限り、分析部としての発展が頭打ちになってしまうので、挑戦し続けていきたいです。

松本: 開発者や事業判断者のおもしろい、つまらないという定性情報はすごく大事で貴重なのは明らかですが、一部の意見なのも事実です。

なので、会社として事業判断する場合、一部の人がおもしろいと言ったからGOする、ということはほとんどないと思います。そこで、会社として定量的に判断できるように、新しい分析の手法を実現させたいと思っています。

吉川:現場の声だけなら定性はすごく大事ですが、会社として意思決定するときにはどうしても数字化する必要があります。なので、よりデータを広く集められる仕組みを分析部が提供していくことも使命だと考えています。



――DeNAのユーザーリサーチグループは、生体反応を活かすなど、新しい技術や取り組みにチャレンジできる環境になっているわけですね。

松本: そうですね。他にも、おもしろさの追求の派生にはなりますが、わかりやすさの分析についても取り組もうと考えています。

チュートリアルでどれだけゲームを理解することができるのか、開発側が描く「最初はゲームをこうやって進めてほしい」という狙いと、プレイヤー側の進め方のズレをどうやって改善できるかという点を含めて、今後はデザイン部分も分析してみたいです。

吉川:恐らく分析とデザイナーが会話するゲーム会社って、なかなか珍しいと思います。

松本: そういう環境でもあるのでデザインの分析だったり、今はまだアイデアにはありませんが、AI技術を活かしたサービスなど、将来的にユーザーリサーチをさらに発展させるためのチャレンジを続けていきたいです。

求められるリサーチャー像

――ユーザーリサーチグループの立場から見て、DeNAはどのような会社でしょうか?

松本: 言いたいことが言えて、それをしっかり聞いてくれて、答えてくれる会社です。思いつきや、アイデアベースで話したことが本当に実現することもあります。そういう環境なので、密接なコミュニケーションを取ることは積極的にやっています。

案件をとにかく回したい!と思っているリサーチャーの方には向かないかもしれませんが、前職時代の私のように、「分析結果からの意思決定がしたい」「もっといろいろ挑戦したい」と思っている人には、すごく働きやすい環境です。

――DeNAのユーザーリサーチグループは単なる事業内の調査部門ではない領域でも活躍されている印象ですが、自社のリサーチャーにはどういう人が向いていると考えますか?

松本: さすがに数字を見ると頭が痛くなってしまう人は向いていないですが、一定の数字を分析して、施策の良し悪しやどうすることが最適なのか考えることが好きな人であれば、リサーチであれビッグデータの解析であれ、どちらも手段でしかないので手法を覚えればできると思います。

吉川:僕も同じような意見ですが、加えて「自分が関わっているサービスがプレイヤーにどう思われるのだろう」といったことが考えられる想像力が豊かな人は、アナリストやリサーチャーの素養はあると思います。さらに、課題に思えることや違和感を感じることに対して、事業側の立場に立って必要な提案だったり、課題解決方法を考えることができる人は、かなり向いているのかなと感じます。

やはり想像して仮説を立てないと、どうしても課題解決やリサーチを実行する行動に結びつかないので。なぜプレイヤーが自分たちの想定した動きをしてくれないのか、もっと楽しんでもらうためには何をすればいいのか、といった疑問から自分の中の想像力をどんどんかきたてて、仮説を立てていくことが大切です。

そして、その仮説を証明するために、分析としてリサーチをどう使えば良いかを考えて、いろいろなメンバーを巻き込みながら進めていくという人が理想的なリサーチャー像ではないでしょうか。

松本: 正直、スキルがなくても後から身に付ければいいですし、それよりもどこかに尖っていてほしいですね。生体反応について私にはまだまだわからない領域ですが、それなら生体反応に詳しい人を呼んで巻き込んでいけばいいと思っています。

吉川:ただし人を巻き込んで何かやるにしても、目的からは絶対にズレてはいけません。最終的な目的は何なのか立ち返り、事業を成功に導くためにできることはなんでもやる意欲が成功するための必要条件なのかな、と思います。

――今後、ユーザーリサーチグループに入ってくるメンバーにはそういったところを求めていると。

吉川:ユーザーリサーチグループはまだまだメンバーも少ないですし、これから組織を大きくしていく立ち上げ期なので、組織をリードして推進することにモチベーションを感じられる方に来てほしいです。

あとは、なにかひとつ尖った部分を持っていて、主体的になんでもできるような方にも来て欲しいですね。ユーザーリサーチグループとして色々やりたいことはありつつ、まだまだ発展していく組織なので、これからもっとおもしろくなると思います。

松本: そうですね、いま研究している生体反応は最初は思い付きでちょっとしたミーティングからスタートしたプロジェクトなので、チャンスはたくさん転がっています。DeNAの分析はこれからもっとおもしろいことをやっていくので、期待してください。

※本記事は2019年2月時点の情報です。
※本記事は、SocialGameinfoに掲載された内容を一部構成を変更して掲載しています。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【DeNA分析部特集Vol.1】『逆転オセロニア』を支え続けるDeNAゲーム分析の強さとアナリストに求められる役割とは?

DeNAが運営するゲームはプロデューサーやディレクター、プランナーなど様々な職種によって支えられていますが、分析の役割もゲームの開発・運営にとって重要な存在と言えます。

そこで今回、ゲーム事業部の分析部に所属するアナリストの松﨑友哉と、『逆転オセロニア』プロデューサーの香城卓(けいじぇい)を迎え、タイトル運営の実例をもとに、DeNAの分析部がどのような役割を果たしてきたのかインタビューを実施。『逆転オセロニア』でアナリストに求められることや、DeNA分析部ならではの取り組み、そして今後の展望についてお話を伺いました。

『逆転オセロニア』で求められるアナリストの役割やスタンス

――まずは自己紹介を兼ねてお二人の業務について教えてください。

香城卓(以下、けいじぇい僕は、2019年2月で3周年を迎えた『逆転オセロニア』(以下、オセロニア)のプロデューサーを担当しています。これまで運用してきた中で、昔から応援してくださる方もいれば、最近ゲームを始められた方もいます。そうしたすべてのプレイヤー(以下、オセロニアン)に向けてどういったことを発信していくのかをチェックする、門番のような立場です。

そのため、「オセロニア」はこういうものだよという価値観や意思決定の基準を提示したり、メディアへの露出やコラボ等に関してお取引先とお話して、どういう風に「オセロニア」で新しいことを生み出していくかというところに主に力を注いでいます。

松﨑友哉(以下、松﨑 僕はDeNA分析部のアナリストで、現在「オセロニア」分析チームのリーダーを任されています。タイトルの今後に関する意思決定をスピーディーかつ高い質で、そしてユーザーファーストという方針がブレないように行えるよう、定量面と定性面でサポートすることが「オセロニア」分析チームの主な役割になります。

「オセロニア」運営メンバーの一員として、ときには客観的な目線でインプットできる立場として、ゲームを改善するための提案なども行っています。イメージとしては、プロデューサーやディレクターの[su_highlight background=”#fbff99″]“参謀”[/su_highlight]といった感じでしょうか。

けいじぇい: サービスとして「こうありたい」という定性的な意思はプロデューサーやディレクターが決めるところだと思いますが、そこに対して、定量的なデータや多くのオセロニアンのみなさんの行動のログなどをもとに、根拠のある裏付けの示唆を出してくれるのが分析チームなので、まさに[su_highlight background=”#fbff99″]“参謀”[/su_highlight]と言えますね。

――3周年を迎える「オセロニア」ですが、直近の主なトピックを教えてください。

けいじぇい: 昨年末に「名探偵コナン」や日清ラ王、そして1月にマクドナルドとのコラボを実施しました。また、最新(2019年1月時点)のダウンロード数は2,300万を突破しています。

業界的にも年末年始は盛り上がる時期ですが、「オセロニア」は2月がアニバーサリーの月なので、僕たちはそこから息つく間もなく周年に突入します。

毎年12月~2月にかけてトピックを固めているので大変な面もありますが、日清ラ王やマクドナルドとのコラボレーションを実現し、「オセロニア」らしいチャレンジングな施策がこの年末年始もできたと思います。

松﨑: コラボに関して、例えば実施する前に「オセロニア」と相性が良いかを市場リサーチやプレイヤーアンケートを踏まえて考えるところも、分析チームのアナリストとしてのいまの役割のひとつです。

もちろんコラボ実施後も、期間内におけるオセロニアンのみなさんの行動ログをまとめた結果などを分析しています。実際にその施策がどう受け入れられていたか、どう長期運営にポジティブな影響を出しているかなど、振り返りを行うことで次の施策を練るときの示唆を残せるようにしています。

――アナリストとして実施前の施策にも関わっていると。「オセロニア」運営チームとの距離感はかなり近いんですか?

けいじぇい: DeNAでは、1タイトルの成功にコミットする一員としてアナリストもゲーム開発にどっぷり浸かっているので、別部署だというセクショナリズム(組織の壁)というものはありません。

松﨑: そうですね。僕は普通に運用チームのメンバーと並びの席に座っています。DeNAではこれは日常の光景なんです。

けいじぇい: もちろんアナリストとして、定量的な示唆を出してもらうことが一番期待しているミッションですが、松﨑さん自身がオセロニアンとしてもゲームをしっかりプレイしてくれていて、プレイヤー感覚での示唆出しもしてくれるんです。

プレイ経験がない人に受発注的に数字を出してもらう取り組みよりも、ゲームとしての「オセロニア」をプレイヤーとして理解している、という素地があった上でデータを出してくれるので、とても納得感があるし、信頼してやりとりしています。

これはどのセクションにも言えることですが、縦も横もなく全員が1つの役割を持って「オセロニア」をどう最大化させるかという方向に向かっていく姿勢は、アナリストに限らずチーム全体でもっています。

――まさにそれが「オセロニア」で求められるアナリストの役割ということでしょうか?

松﨑: そうですね。僕は分析部のアナリストですが、「オセロニア」運営メンバーの一員という意識もすごく強いんです。

アナリストとして求められる業務のセクションの部分において、数字から物事を話すというのが一般的なアナリストとしての観点ですが、定量・定性関係なくプランナーと議論するプレイヤーとしての意見も大事だと思います。

もちろんデータを見て意見することも大事です。でもそれは「オセロニアを良くするためにはどうするのが一番ベストなのか」を突き詰めるための手段の1つでしかないので、それよりも「オセロニア」を良くした上で、施策の効果を最大化させるために自分自身がどれだけ貢献できるかを考えています。

けいじぇい: あまり領域に閉じてほしくない、というところも求める事の1つです。松﨑さんはプランナーチームのレビューもしてくれるので、そういう意味ではアナリストの領域からは離れて働いていると言えますね。

実はDeNAのアナリストはそういった動き方が多くて、人によって得意不得意はありつつ、それぞれが尖った部分を持っています。一般的なアナリストのように、データを出して示唆だけ届けるという形ではなく、基本的に運用チームにガッツリ入り込んで、自分の得意な分野を把握してどこまでチームの中で価値を見出すか、を考えて動く人が多いです。

松﨑: それこそデータとしての裏付けが取れたら手段として使いますし、それがなくても「こうすれば良くなるはず!」というゲーム内の施策や組織的な課題など、結構何でも選ばずに協力して、「オセロニア」を良くするために何をするべきかを日頃から考えています。

――アナリストとしてゲームもプレイしている中で、客観的な見方と主観的な見方のバランスはどのようにとっているのでしょうか?

松﨑: 僕は他のゲームもいろいろ遊んでいますが、その上で「オセロニア」に対する自分のプレイ度合だったり、どれくらいヘビーな感覚を持ったプレイヤーなのかを常に意識して考えています。

あとは、普段あまりゲームをプレイしないライトな方たちや、自分よりヘビープレイヤーの方たちがどういう遊び方をしているか、という部分に関しては「オセロニア」や他のゲームの定量データを見ながら感覚として貯めておき、それを踏まえた上で自分の中で仮説を出すようにしています。
そして、仮説を得た理由をしっかり考えた上で、その仮説が汎用的なものなのか、それとも各セグメントに閉じたものなのかを常に一歩引いて考えるように心がけています。

アナリストとしての新技術導入やコミュニティ運営の取り組み

――「オセロニア」はデッキ編成や対戦などにAIを活用するなど新しい技術導入に積極的な印象ですが、技術面でのアナリストの取り組みや役割を教えてください。

松﨑: 「オセロニア」のデッキの構築に関しては、一部複雑な面もあり、初心者がつまずきやすい部分でもあります。この点について、チュートリアルを工夫すれば解決できるという単純なものではなく、ゲームの機能そのものから手を加えていく必要がありました。

ただ、DeNAの中にAI技術の専門チームがあったとしても、それを上手く活用するための良質な問いがなければ、100%フルに活かせないと思っています。その中でのアナリストの取り組みとして、運営チームにコミットしている中で認識しているゲーム内の問題や状況を伝えながら、いかに高い技術力をゲーム中に効率よく活かしていくかを考え、進めています。

そのような新技術に積極的に取り組みサービスに反映させるというブリッジのような役目も求められることだと思っています。

――ファンコミュニティを大切にしている「オセロニア」ですが、コミュニティマネジメントの部分でアナリストとしてどう関わっているんですか?

松﨑: 「オセロニア」は“オセロニアンの宴”や“オセロニアンの戦”といったリアルイベントなど、プレイヤー同士によるコミュニティが活発です。その中で、僕も日本各地に赴いてイベントに参加しています。

そこでは実際にプレイヤーがどんな表情でゲームを楽しんでいるのか、どんな関係性やコミュニティの輪が生まれているのか、その温度感を肌で感じるようにしています。定量的な分析は、ともすれば割と機械的になりがちで、データによっては難しい判断を迫られるときもあり得るとは思います。

ただ「オセロニア」で大事にしているコミュニティ、実は定量データを見ているだけではわからないところもあるので、イベントに参加して、その温度感をしっかり把握したうえで適切な意思決定をサポートできるように意識しています。

けいじぇい: 人間のコミュニケーションの集合体が、コミュニティです。成果がはっきりと数字で表せない部分も多いため、コミュニティづくりが上手くいったのか、改善点はどこかなどを明確にデータで見ることは、恐らく世界中のどこも明確な答えを持っていないのかもしれません。

その中で、この3年間「オセロニア」が実際に事業としてやってきた知見を活用して、コミュニティの形を開拓していくのも我々の使命なのかなと思っています。

松﨑: 単純にゲームの中のログをビックデータ解析する以外のところでの人のコミュニケーションや、何がきっかけでエンゲージメントが高まることに繋がるのかなど、人の心の動きをデータで見るのは難しい領域ですが、今の世の中の流れを含めてすごく重要な気がします。

――アナリストの領域を超えて「オセロニア」と向き合うアナリスト・松﨑さんはけいじぇいプロデューサーにとってどのような存在でしょうか。

けいじぇい: ゲームって色々な主観がありますし、おもしろいという基準も1つではなく、「ここはこうしたら良い」というみんなの色々な意見の中から生まれるものです。そういうところで、逆に主観を持たずビックデータに論拠した形で客観性を持ったアナリストもいて良いと思いますが、松﨑さんはやはりユーザー志向性がすごく高いアナリストだと感じています。

というより、「自分もこう思うから遊んでいるオセロニアンたちもこう思うはず!」という、ある種自分が持っている仮説を検証するために、数字を出している部分もあるかもしれません。

そういう意味では客観的に事実だけを提示するよりも、まず自分が本当はこうあるべきだというところを論拠を示して、そこに立ち返って示唆してくれる人ですね。もちろん数字にも強いのですが、ひとりのプレイヤーとしてゲームに向き合っているアナリストではないでしょうか。

『逆転オセロニア』がさらに進化するために今後目指していくこと

――改めて、アナリストとして一番大切にしていることは何ですか?

松﨑: 常に全体観をもって考え、動くことを意識しています。例えばデータを見ることでゲームを良くすることが最適な場合はそうしますが、それ以外にもいま組織の体制として大丈夫なのかとか、その場その場でゲームの状況やチームの状況を踏まえて何をすべきか、事業をもっと伸ばしていくためにはどういったことに取り組むべきかという上段から考え、課題を提起してシューティングしていくことを相当意識していますし、求められているところかなと思っています。

――「オセロニア」のように3周年と歴史を積み重ねていくタイトルに携わる中でアナリストとしての考え方に変化などはあったのでしょうか?

松﨑: 考え方の軸はあまり変わりませんが、アプローチが変わっていくところはあります。当然「オセロニア」は新規プレイヤーや、久々に遊んでくれるプレイヤーも楽しませたい。そのためにはどうするべきかは絶えず変化していきます。

さまざまな要因で、タイトルの状況が変わっていく中で、その場その場で向こう半年を見据えて、何をするのがベストなのかを考えながら動く。そしてできることは何でもやるというところが、僕のアナリストとして軸となる考え方です。

――アナリストとして今後「オセロニア」プロジェクト全体を見てこうしたいというビジョンはありますか?

松﨑: いま考えているのは、「オセロニア」のゲーム全体としてのユーザー体験をちゃんと整えていきたいなと思っています。

運用も4年目に入ってくるので、今後は新規プレイヤーだけでなく、久々に遊んでくれるプレイヤーも増えてくる状態になると思うんです。そうした中で、今までは新規プレイヤーがどうやって階段を上っていけばいいのかを考えることが多かったんですが、今後は復帰プレイヤーが戻ってきたときに今の「オセロニア」にスムーズに馴染んでくれる方法や、また夢中になってくれる方法を考えていく必要があると思います。

その両面が上手くできるような、ゲーム全体としての綺麗な流れをしっかり組み立てられたら、長期運営していくタイトルとして今後より強いゲームにできるんじゃないかなと思っています。

アナリストとして、それを助けられるような分析や示唆出し、あとはコミュニケーションをとっていきたいなと考えています。

――3周年を迎えた「オセロニア」は、4周年に向けてどのような進化を遂げるのでしょうか。

けいじぇい: 「オセロニア」は4年目に突入しますが、これまでもコミュニティと一緒にタイトルを育ててきましたので、この先もそのスタンスは変わりません。

ただ、3周年を迎えて少し風景が変わってきたなと感じています。この2年間くらいは僕たちが作ったコミュニティの場にオセロニアンのみなさんが集まって、そこでコミュニティが形成されていく図式でしたが、オセロニアンがオセロニアンのための場を作るという流れが徐々に生まれてきているんです。

4年目は、これまで僕たちがやってきたコミュニティの場を作ることをやりつつ、さらにオセロニアンのみなさんが作るコミュニティを支援していって、オセロニアンのみなさんを介して「オセロニア」が広がっていく、というところにシフトしていこうかなという気持ちです。

松﨑: 分析部としてやることのベースは変わらないと思いますが、けいじぇいさんのお話にあったようにコミュニティの作り方、考え方もどんどん変わってきているので、それに従ってコミュニティが「オセロニア」にどういった影響を及ぼしているのかを、どこまで定量的に見ることができるかチャレンジしたいですね。

また、AIについても、どれだけゲームに良い影響を及ぼしているのかというところを、難しい挑戦ですが取り組みとしてやっていき、何かしらの示唆を出すことでその先のゲーム運営をより改善することに貢献していきたいと考えています。

――最後に、松﨑さんが感じるDeNA分析部の強みや魅力について教えてください。

松﨑: DeNAは会社全体として数字を見る文化が根付いています。そういう意味で、しっかりとしたデータ解析を元に何かしらの論拠の示唆をして、ロジックを立てて説明できればちゃんと話を聞いてもらえます。

それは分析部に限らずどの職種でもそうですが、データをもとに聞いてくれるのでアナリストとしては動きやすい文化だと感じています。

それに、定性的に自分の勘でごりごりに物事を進めるというより、一度データを見て冷静になれる環境になっています。アナリストが質の良いお題を立ててそこに対するデータ分析をして、結果を出せればそれがちゃんと事業に受け入れてもらえる。

それがゲームだったりプロダクトに反映され、その結果を自分でちゃんと測ってどうだったか検証することができるので、上流から下流までワンセットで見ることができるのはやりがいを感じられると思います。

DeNAはデータをベースにしながら、人間的な、数字では見えない部分も大切にする、情熱的な人も多いです。また、AIなど会社としての技術力を武器として活かせたり、コミュニティマネジメントに力を入れていたりと、ゲーム会社の中でもなかなか事例のない取り組みをしていると思います。

ゲーム的にも分析的にも新たなアプローチが多いため、日々刺激を受けながら働くことができる良い環境だと思っています。

※本記事は2019年2月時点の情報です。
※本記事は、SocialGameinfoに掲載された内容を一部構成を変更して掲載しています。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【データサイエンスの競技者”Kaggler”が活躍する職場】社内での立ち回りやエンジニアやアナリストとの関わり方、今後のビジョンが語られた

2019年2月6日、渋谷ヒカリエにて技術者向けの大規模イベント「DeNA Technology Conference 2019」が開催されました。

本記事では、DeNAゲームサービス事業部の分析部に所属する山川要一も参加した、「パネルディスカッション:データサイエンスの競技者、Kagglerたちが活躍する職場とは」と題したセッションをレポートします。

※記事の最後にはセッション時に投影した資料を掲載していますので、そちらもご覧ください。

Kaggle、そしてDeNAのKagglerとは?

「データサイエンスの競技者、Kagglerたちが活躍する職場とは」と題した本パネルディスカッション。

登壇者は、データサイエンスグループのマネージャーとしてKaggler達を率いる原田慧、データサイエンス競技「Kaggle」のトッププレイヤーで構成されるAIシステム部のデータサイエンスグループでKagglerとして活躍する加納龍一と小野寺和樹。

さらに、システム本部AIシステム部のMLエンジニアとして鈴木翔太、ゲームエンターテインメント事業本部に属する分析部のメンバーとして山川要一が別の立場から、一緒に働くKagglerについて紹介するため本セッションに参加した。

左から原田、鈴木、加納、小野寺、山川
今回、ホワイトボードでパネルディスカッションの模様がリアルタイムで描かれていた

本題に入る前に、モデレーターを務める原田がKaggleの概要を紹介。Kaggleは機械学習モデルを構築するコンペティションのプラットフォームで、スポンサーが出したデータと問題に世界中のKagglerたちが挑み、提出した予測結果の良し悪しで順位付けされる。上位者には賞金が出たり、Kaggle上でメダルが付与され、メダルが貯まるとKaggleでのランクが上がり、MasterやGrandmasterといった称号が与えられるとのこと。

原田によれば、Grandmasterは世界でおよそ100名しかおらず、国内でも5人程度だという。また、Masterについては国内に約40名おり、その内の10名がアルバイトも含めるとDeNAに所属。原田自身もKaggleMasterだそうだ。

DeNAでも2018年4月からAI技術開発の横断部門であるAIシステム部のデータサイエンスグループにおいて、Kaggle社内ランク制度(データサイエンスチームのメンバーに対して、業務時間を使ったKaggleへの参加を認める)を導入していることにも触れ、同社のKaggleである小野寺と加納を含むチームが、昨年8月に行われた過去最大規模のKaggleコンペで第2位に入る実績を残した。

Kagglerの一人である加納は、次世代タクシー配車アプリ「MOV」の中の機械学習の応用をメイン業務としてアサインされながら、「残った業務時間をKaggleに費やしています」(加納)と、社内Kaggle制度の実例を紹介した。

DeNAのKagglerである加納(左)と小野寺(右)

また原田は「MOVやオートモーティブなどの大きな案件に関わることもあれば、Kagglerが中心となって案件を達成することもある」とし、先日発表されたDeNAと関西電力による石炭火力発電所のスケジューリングを効率化するというプロジェクトでも、中心となったKagglerが3名いることを明かした。

実際、Kaggle上でこれら案件のような問題が出ることはないそうだが、Kaggleの中で日々勉強をしているため、その応用として変わった仕事であっても対応は可能だという。

このようにKagglerにより回っていくプロジェクトもあれば、「DeNAはAIを使って色々な事業を立ち上げていこうという会社」と原田。全社的にAI技術を使ってサービスを良くしていくことが根幹にあるとし、その中でKagglerに期待される役割について説明した。

Kagglerは、システム本部AIシステム部内の、AI研究開発エンジニア、MLエンジニア、データサイエンティストという3タイプのメンバーの中の、データサイエンティストに分類される。データサイエンティストは、Kaggleで様々な事をやっているので引き出しが豊富で、色々な経験も持っておりスピードが速い。

これはサービスや事業、使う技術に強いこだわりがあるわけではなく、データがあって課題があれば何でもやろうというスタンスとのこと。

データサイエンティスト協会の”データサイエンティストに求められるスキルセット”の図を例に、Kagglerはデータサイエンス領域の中のさらに特殊なところに属すると原田

Kagglerはどのように仕事をしているのか?

ここから本題のパネルディスカッションがスタート。DeNAには様々な職種のメンバーが仕事をしているが、実際どのようにKagglerと仕事をしているのか?

「基本的にはアナリストと事業部とKagglerは三者三様の形で働いています」とは山川。アナリストの立場としては、Kagglerはデータサイエンスに特化しており、一方で事業部は常にビジネス課題で頭を悩ませている。

どうすればビジネス課題を、データサイエンスの問題に落とし込めるかというところでアナリストが間に入ってデスカッションして、問題設定をしているという。

事業部とアナリストで”こういう課題を解いていきたい”という戦略を固めつつ、「どうやって解いていくかをアナリストがKagglerでディスカッションし、モデルを作って製品として出すこともあれば運用に必要な基盤みたいなものを作ってもらうことがある」(山川)そうだ。

その意見を聞いて、「すごく難しいことがある」と原田。事業が抱える課題をどんなデータサイエンスの問題に落とし込むかは簡単ではないという。データサイエンスの問題の形、それこそKaggleで出題されるような問題の形で事業部が用意することはあまり期待できないという。

その問題に対して山川は「そもそも何がしたいのか、常に自分が事業責任者だという気持ちで実際の事業責任者やプロデューサーとディスカッションをして問題を作る」などの工夫をしているそうで「最初にこういう問題を解きたい、これくらいの精度の向上、利益率の向上を目指しているといった指標を事前にすり合わせて進めるようにしている」とした。

逆にKagglerから見て、実際に事業部の抱える問題がKaggleの問題と同じようにおもしろいかという問いに「Kaggleの問題の方がおもしろい」と小野寺。

補足する形で原田も「もちろん例えばKaggleって3ヵ月間でがんばって結果を出すということがあるんですが、Kaggleの上位層が競っているのは0.000いくつの世界の話で、そこまで事業部の方が興味があるのかというとそうではなく、大抵の場合当たり前のこと」と説明。

「もちろん我々としては大きな予算が動いている中で、ちょっとでも効率化して売上に貢献できるような仕事もやりたいですが、小さい分析となるとどうしても事業にあったものをKagglerがパッと作る形で力を発揮することがあります」(原田)と続けた。

また、最近ではKaggleのクローンを作成し、Kaggleの問題を解いているかのように仕事ができる地盤を整えているという。

山川も「アナリストもKagglerと同じレベル、とまではいかないまでも、自分でもある程度実装してこれくらいのベースラインのモデルになるだろうとか、どれくらいの精度だったら見込めるだろうという肌感を知っておきたい」とし、事業部で設定した問題を触れる環境として、自身でベンチマークモデルを作って検証するなどしているそうだ。

一方、鈴木はエンジニアとしてどのようにKagglerと仕事しているのか。現状は、「Kaggler数名と一緒にオートモーティブ系のプロジェクトに入り、彼らの実験や学習をする環境作りや必要なデータの収集、Kagglerが作ったモデルを本番にどう組み込んで配信するか」(鈴木)など、モデル作り以外の様々なところのエンジニアリングを幅広くやっているという。

また、Kagglerと仕事する上で苦労することはないのかとの原田に問いに鈴木は、「エンジニアスキルが人によってまちまちなところがあり、エンジニアなら普段から使っているであろうものでも教えてあげたりサポートする必要がある」と語った。

逆に、Kaggler陣は、アナリストやエンジニアとどう接しているのか?

「普段はアナリストやMLエンジニアと仕事する」と加納。半年前にDeNAに転職してきたという自身の経歴に触れ、「それまではずっと研究していましたが、会社に入って周りの方々が色々教えてくれます。それがなければやっていけなかったと思います。MLエンジニアリングやアナリティクスなど、その強い専門性を持った方々が周りにいるので、自分たちも吸収できるし、Kagglerとして今までない環境、良い職場だなと感じています」と話した。

また、「結構1人で完結する仕事が多い」という小野寺のような働き方もあるようで、「1人でということであればそういうパターンもあります。加納さんが色々な方と仕事できると言っていましたが、これはDeNAの仕事の仕方の1つの魅力」と原田。

1人で何でもできることもすばらしいが、これなら世界の誰にも負けないという気概を持ったメンバーが集まっているのがデータサイエンスグループであり、「DeNAが全社的にサービス実現に向け全員で一丸となって取り組むという考え方の元、色々なメンバーが色々な苦労をしながら成り立っている」(原田)とした。

Kagglerの存在によってDeNAはどう変わったのか?

DeNAでKaggler枠が正式に組織されたのは2018年2月。そこからこの1年で多くのKagglerがやってきたが、これによってDeNAとしてどのような変化が生まれたのか?

「今まではデータはあってもどうやって使えばいいかとか、こういうことできたらもっと意思決定に役立つのに、というビジネス側で議論することがありました。それがKagglerの技術的なサポートを受けることで、より高度な問題解決ができるようになり、より効率的に運営に負担をかけない運用方法や、ここは気を付けようという発見がノウハウとして貯まってきた」と、山川はできることが広がったという印象のようだ。

それを聞いた原田から、「Kagglerはモデルの精度を高めるのが本職。簡単なモデルを作るだけなら山川さんでもできると思います。その状況の中で、最低限の分析をする上で間に合っていた中で、Kagglerがやってきたことでの価値」という質問が。

山川は「プレイヤーにどれくらい継続的にプレイしてもらえるのかを予測するのは、ゲームを運用する上でとても大事なこと。小野寺さんに作っていただいた予測モデルで、この精度がかなりあがりました。それが会社としても、意思決定する上で定量的にわかるようになったのは大きな意味があります」とし、そういう部分でKagglerのバリューがとくに大きかったとコメントした。

一方の鈴木は、一度辞めて1年前に再びDeNAに戻ってきたという経歴を持つ。その立場から「昔はデータサイエンスに尖った人材って、社内では少なかったイメージでした。でも戻ってきたらたくさんいた」との印象を述べた。

また、「山川さんと意見が近いですが」と前置きし、「できる仕事の範囲、幅が広がりました。関西電力との案件も、以前はDeNAがやれるとは個人的に思っていなかったので、そういったところでデータサイエンスがアプローチして、色々できるようになったところがおもしろい」(鈴木)と語った。

それに対し、原田は「僕らからすると、おもしろそうな案件があるからやってやろうと思っているだけなので、楽しく過ごしている」とKaggler側の意見を述べた。

では、Kagglerは転職してきたDeNAに対してどういう印象を持っているのか?

昨年6月に転職した加納は、「原田さんは数学、小野寺さんは経済学、僕は天文学と、みんなバックグラウンドが違ってすごく個性的でユニークだと思う」とのこと。また「Kaggleって画像系や言語処理だったり色々やるけど、1人1人得意な手法が全然違って、幅広い能力を持ったメンバーたちが集まっている。みんなが持っている強みを少しずつ幅広く吸収できる」ところがデータサイエンスグループ、そしてDeNAのおもしろさであり魅力と語った。

「私はチームのマネジメントをしていますが、多様なメンバーがいるから大変そうに見えてある意味楽なんです」とは原田。つまり「みんなKagle好きという価値観の元、考え方が全く違うということがない。もちろんどんなスキルがあって、どんな事業が好きという細かい部分の違いはあるけど、我々がチームとしてどうありたいかということに関しては、みんなの意見がブレることはあまりなく、一体感がある」とのこと。

そして小野寺はDeNAについて、「色々な会社を転職してきたが、DeNAは働き方が良い意味で自由」という印象を持っているという。

これについて原田は「裁量労働制がほとんどの社員に適用されていて、10時半には出社しようというルールはあります」と補足。ただし、メンバーの働き方に関しては小野寺に言うようにかなりの自由度を与えているとし、「管理しても仕方がないし、管理コストの問題もあります。各メンバーの専門性だったりプロ意識への信頼」(原田)がDeNAの自由な職場環境に表れていると説明した。

また、Kagglerを束ねる原田は、自身が昨年2月にDeNAに転職した動機について大きく2点あると切り出した。1つは「Kaggler枠という制度におもしろさを感じ、DeNAのKaggleに対する本気度を感じた」(原田)こと。

もう1つは、それまでゲーム会社だと思っていたDeNAが「いざ話を詳しく聞いてみると、色々な事業をやっている。色々な事業をやるという部分が、色々な会社の色々な問題を解決していくKaggleに近いものがあった」(原田)と、同社の多様さに魅力を感じたことが転職の決め手だったと話した。

今後Kagglerはどうなっていくべきか?

DeNAにKaggler達が集い始めてから、ちょうど1年が経ったが、今後Kaggler達はどうなっていくべきか? これが本パネルディスカッションの最後のテーマとなった。

まずKaggler側の意見として、「自分たちは仕事の時間を割いてKaggleをやっていますが、遊びではないという前提の元で、今後もKaggleにチャレンジし続けるということをまず1つ突き詰めていきたい」と加納。Kaggleの勉強をしながらその上で得られるスキルなどを蓄え、自分自身の幅を広げて間接的に会社に貢献することで実績を出していきたいとした。

過去3度、Kaggleのコンペで世界2位に輝いた小野寺は、「Kaggleのコンペで一回くらいは優勝したい。今まで準優勝しかないので世界一になりたい」とその目標を語った。

対して、エンジニアやアナリストがKagglerに今後期待するのはどのようなところなのか?

まず鈴木。「社内でエンジニアとして機械学習に興味を持っているメンバーがたくさんいるので、そういった人たちに教えてもらったり、何らかの機会で社内全体のデータサイエンス力の基礎力を上げる取り組みをしてくれるといいなと思います」と今後のKagglerに期待を寄せた。

また「エンジニア側として取り組んでいきたいこともあります」と鈴木。

「チームで成果を出すというところを意識しているので、Kagglerがもっと高速に分析、実験を行える環境を用意したい。もっと色々なところでモデルがデプロイされて動いていくと思うので、デプロイの仕組みをより効率化して、MLOpsもしっかりやっていきたいと思っています。あと最近の分析環境は大体AWSなどに構築することが多いので、その辺にしっかりキャッチアップして、Kagglerに提示してあげたい」(鈴木)と、自身の今後についても触れた。

山川は「今は全社的にAIが使われていますが、Kagglerがメインで関わっているのはオートモーティブ事業。一方でゲームエンターテインメント事業も解ける問題、解きたい問題がたくさんありますし、ヘルスケアなどその以外の事業もある」と、今後Kagglerにそれらの領域にもどんどん出て行ってほしいとコメント。

そして自身の今後については、「サービスからの課題に対する要求水準がどんどん上がっていく中で、アナリストとして事業部とデータサイエンスグループの間に入り、自分でも事業者視点で問題設定ができて、なおかつどうしたら問題として最適にデータサイエンティストと一緒にやれるかというところを考えられるよう、アナリストとしてもう少し力をつけていきたい」と語った。

最後に原田は、「Kagglerは結局のところ専門性を持った集団。それがどうやったら上手く活きて、どうすれば全社の役に立つのか? 色々な方にお世話になりながら今後も進んでいくのかなと思っています」と本セッションをまとめた。

セッション中、描かれ続けたパネルディスカッションの流れをまとめたパネルも完成した

セッション時の投影資料はこちら

※本記事は2019年2月時点の情報です。
※本記事は、SocialGameinfoに掲載された内容を一部構成を変更して掲載しています。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【後編】DeNAゲーム事業におけるデータエンジニアの貢献〜客観性を担保したLTV予測やBigQuery運用におけるコスト最適化、そしてMLOpsへの挑戦〜

2019年2月6日、渋谷ヒカリエにて、技術者向けの大規模イベント「DeNA Technology Conference 2019」が開催されました。

本記事では、DeNAゲームサービス事業部の分析部に所属する岩尾と石川による「DeNAゲーム事業におけるデータエンジニアの貢献」と題したセッションの後編をレポートします。

前編はコチラをご覧ください。
※記事の最後にはセッション時に投影した資料を掲載していますので、そちらもご覧ください。

BigQuery運用のコスト最適化、その事例に迫る

第2部”システム運用の改善”は、分析部の3つの役割の中の改善系がテーマ。BigQueryの運用におけるコスト最適化やMLOpsへの挑戦といった裏で動いているシステム、特に運用周りにおける課題とその解決策について、岩尾が解説していった。

分析部データエンジニアリンググループ グループリーダー:岩尾一優

昨年7月にDeNAにジョインした岩尾は、「入社以来、ずっとBigQuery周りのコストの事が気になっていた」と、ただ規模が大きいだけでなく秩序が乱れているように感じたそうで、現在”BQ警察”としてコスト最適化に注力している。

始めに岩尾は、DeNAゲーム事業でどれくらいの規模のデータを扱っているか数値で示し、BigQueryのストレージ容量が2PB以上、BigQueryのコスト(2018年9月時点)が月680万円かかっていると説明。「これはかなり大きい部類のデータとコスト」(岩尾)だが、それが12月の時点で420万円になったという。

その3ヵ月間でコストを削減した過程で何を行ったのか? 岩尾は大きく分けて3つあるとし、その1つが現状の可視化。請求データを使って全体を見た後に、BigQueryのメタデータを見て何にどれくらいかかっているのかを可視化したそうだ。

可視化によって攻め所がわかってきたので、次にシステム的な改善に着手。ここで岩尾は、「BigQueryはスキャンしたデータ量によって従量課金である」という特徴を紹介し、この点が重要なトピックスとした。

3点目は運用の改善。そもそも巨大なクエリを投げてしまったときに気づく仕組みがこれまでなかったという背景があり、そこを気付ける仕組みを導入し、気づきの後にメンバー間で改善するマインド醸成に取り組んだという。

採用した主な技術を紹介

現状の可視化(請求データ)について、2018年1月~9月の期間、どのようにコストが推移しているのか現したグラフが提示され、「ストレージもクエリ検索もコスト増加傾向で、3ヵ月ごとに月額で100万円ほど伸びている」と解説した岩尾。

その詳細を確認するために利用されたのが、Stackdriver Monitoring。これは専門的な知識がなくても簡単な操作でGCPやAWSのリソースと連携してメタデータを可視化できるという。「我々の使い方では、BigQueryのメタデータ(ストレージ容量やクエリ検索量)の見える化に利用している」(岩尾)とのこと。

ストレージ容量の内訳を確認する際、あるゲームでは特定のデータセットがストレージの大半を占めていることなどがわかるという。その部分を削減することができれば「ストレージ容量が大幅に削減できそうだなというあたりを付けることができる」と岩尾は語った。

そしてクエリについては、ゲームごとのクエリ検索量を色分けして明確化した。これで、ある部分が全体の大部分を占めていることがわかる。

「ゲーム自体は十数タイトル管理しているが、その中でもいくつかのタイトルだけに集中していることが見てとれます。もちろんデータの保存量自体バラつきはあり、これで一概に良い悪いは言えません。利用者によるスキルのバラつきや、そもそも検索対象となっている中間テーブルの設計に問題があるのかも」という部分にも踏み込んだと岩尾は語った。

また、別の切り口として、ある日、クエリが1日に50TBくらい投げられた事件が発生した事例を紹介。これも可視化することにより、担当者が意図していたクエリかどうか、その原因を調べることができるなど対策の検討がしやすいという。

ここまでが現状の可視化について。次に岩尾は5つの改善事例を紹介。

1つ目は、データライフサイクルの定義することでストレージ容量を削減した改善事例。データ分析は本来1日だけ保存しておけばいい場合や、ずっと残しておきたいなど、必要な保存期間が異なる。ただ、「リリース時にそれが確実にわかるかと言えばいえばそうではない」と岩尾。

そこで重要なのが定期的な棚卸。「我々はデータアナリストと同じ部内にいるので、連携しながらこれは消していいのかどうか棚卸しながら設計しました」(岩尾)とし、必要な保存期間に応じてローテーションさせる仕組みを導入した。

そして設定ファイル上で、どのプロジェクト、どのデータセットでどのテーブルを何日間保存したいのかを一元管理した。一つのプロジェクトだけではなく、全体でどんな感じで設定されているか一元管理することで、検討漏れがなくなる。あるゲームタイトルでは約60%のストレージ容量を削減できたそうだ。

※一部AWSを利用しているのはシステム移行中のため

2点目の改善策は、Clusterd Tables(β版)を導入したクエリ検索量の削減。これまでBigQueryは分割テーブルを使って検索量を抑えていたがそうだが、一方で日付レベルよりさらに絞り込む方法はなかったという。

そこで、「他のカラムについてもインデックス付与することにより、ある程度検索範囲を絞れる機能を導入した」と岩尾。実際にこれまで1回で2TB検索しなければいけなかったものが、2GBまで抑えられたという例もあったそうだ。

また、移行については新規テーブルを作成し、既存テーブルからレコードをコピーするので面倒ながらも、「そこさえ乗り越えればかなりの恩恵がある」(岩尾)とのこと。

3点目はjsonペイロードのparseによるクエリ検索量削減。ユーザーが保持しているアイテムの1~100から1だけを抜き出したい場合でも、これまではjsonペイロード全体を検索してしまい、クエリ検索量の増加につながってしまっていた。そこで、よく使うデータはparseして別のカラムとして保持して検索するのがクエリ検索量削減になるそうだ。

4点目は、BIツールの不要な定期実行機能を停止することでのクエリ検索量の削減。岩尾は「我々は、使っているBIツールをcron形式で行っていたので、それに慣れていないデータアナリストであれば、不用意に週末だったり夜間を実行してしまうことがあった」と説明し、その点も改善した。

最後の改善事例は、巨大クエリ実行時にSlack通知をする仕組みを作ったこと。

岩尾によると、システム的にガードをかけることも可能だそうだが、「本当に必要なクエリをたたくときにエラーが返ってきたら、イラっとすると思う。システム的ガードではなく敢えてメンバーを信頼し、巨大クエリを投げてしまっても通知を見て皆でどうすれば良かったか話し合える文化をつくりたかった」とのこと。

そして岩尾は、紹介した改善事例にって、結果的に月260万円のコストを削減し、ストレージは40%、クエリ検索は41%改善したことを明かした。

MLOpsへの挑戦、今後のデータエンジニアリンググループの展望

最後にMLOpsへの取り組みについて紹介した岩尾。

伝えたいこととして、「初心者にとってMLモデルの実行はハードルが高いです。部内のデータサイエンティストがJupyter Notebookで作成したMLモデルをgithubなどで経由してやり取りしていたが、それだと自分の環境だけ動かないみたいなことも発生してします。環境構築ほどイライラする作業はないと思っている」とそれを解決したいと考えたのが取り組みへのキッカケだそうだ。

従来のシステムは、VM上にMLモデルの設置、実行をしていたが、この構成だと環境構築が面倒で、今後の移行も困難だという。そこでBigQuery、Dockerに加え、ContainerRegistryという主な技術を活かし、「dockerコンテナで起動するよう変更した」(岩尾)という。

それによる新しいシステム構成では、EC2上でdockerコンテナを起動する方式を採用。Container Registryから必要なDockerイメージをpullして使うだけで環境構築が簡単で、GCP移行時もGCEでdocker runするだけの容易さがメリットのようだ。

※一部AWSを利用しているのはシステム移行中のため

岩尾は、「これまでデータ分析におけるMLの導入は環境構築や移行の手間に悩まされてきたが、MLモデルをdockerコンテナを入れたことで解決に向かっている」とML Opsの現状に触れたが、「まだまだ未解決な部分もある」とし、今後の展開として、現在ローカルで行っているDockerイメージのビルドを自動化したり、もしくは学習・推論でモジュールを分割すること、モデルのバージョン管理、ロギングについて、「現在対応をしている最中」とコメントした。

そして最後に、「データエンジニアリンググループは2月から出来たばかりの組織です。本日お話した内容以外にも色々行っています。現在立ち上げ期ですので、我こそはというデータエンジニアの方はジョインして一緒に盛り上げていきましょう」とメッセージを送った。

前編を読む
【前編】DeNAゲーム事業におけるデータエンジニアの貢献……客観性を担保したLTV予測やBigQuery運用におけるコスト最適化、そしてMLOpsへの挑戦

セッション時の投影資料はこちら

※本記事は2019年2月時点の情報です。
※本記事は、SocialGameinfoに掲載された内容を一部構成を変更して掲載しています。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]