【CEDEC2019】「ゲームと機械学習の最前線~現状と未来を正しく捉えるために~」パネルディスカッションレポート

2019年9月4日~6日の期間、パシフィコ横浜において、ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2019」が開催されました。

本記事では、9月6日に行われた「ゲームと機械学習の最前線~現状と未来を正しく捉えるために~」パネルディスカッションの内容を、一部抜粋してレポートします。

※本文は登壇者の発言をもとに対談形式で記載してあります。

ゲームと機械学習の最前線

奥村:今回のセッションは「ゲームと機械学習の最前線」というテーマでお送りします。AIに関しては、昨年頃からハイプ・サイクルでは、いわゆる幻滅期に差し掛かっていると言われていますが、それでもなお、AI技術の進展や産業への応用は増え続けています。

今回は2名の著名なゲームAI開発者をお招きし、そもそもどのような領域にAIが使われていくのか、AIはどれぐらい使えるのか、などディスカッションをしていきたいと思っています。

本パネルセッションは「CEDEC2018」で実施した「次世代QAとAI」の議論の続編に近い立ち位置になっています。当時は急速に増えて行くゲームへのAI活動の流れを感じながら、特にQA(品質保証)という領域に絞って、現状と今後について議論を行っています。

奥村:このQAに関しては、ゲームのコア部分の体系を作り込む作業とは、少し分離するようなコンポーネントであるため、会社や産学の枠を超えて連携していけるのではないか、というメッセージを発信させてもらいました。

セッションの開催背景

奥村:この1年を振り返ってみると、当時とは比べ物にならないほど多彩な変化があったと思っています。

ひとつの大きな変化としては、AI技術が進歩し続けていることです。連日のように最新のモデルが提案され、応用の幅も広がってきています。その流れはゲーム業界も例外ではなく、1〜2年ほど前まではとりあえずAIを活用してみようといった、導入検証に関する話題が多かった印象ですが、ここ1年ほどは実際にプロダクトに導入され、事業価値を生み出している事例も増加してきています。

そのような状況の中、技術に対する期待感も成熟しつつあり、「ゲーム×AI」に関する議論は、より実践的な話にシフトしてきたと考えられます。また、実際にどのくらい売上貢献可能なのか、AI導入を見据えた開発プロセスや体制の模索も続いています。また、そうした知見は広く世間に公開されており、横断したつながりも増えている印象も感じています。

セッションのモチベーション

奥村:本セッションでは、次に挙げる3つのモチベーションをもとに、ディスカッションを進めて行きたいと考えています。

まず1点目ですが、なるべく多くの実用事業を俯瞰したいということ、2点目はそれらの事例を元にして現時点でAIはどの程度使えるのか、導入の障害について議論していきたいと考えています。

パネリスト紹介

奥村:それではパネリストを紹介したいと思います。まずは株式会社スクウェア・エニックスの三宅陽一郎さんです。

三宅:スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部でリードAIリサーチャーとして、10名ほどのAIチームを率いています。過去にはロボットゲームや『ファイナルファンタジー』シリーズのAIの設計などに携わりました。

自分はこれまで、どちらかと言えば記号主義型、シンボルを使った人工知能について担当してきましたが、これからは機械学習の方に徐々にシフトすると考えており、研究を進めています。

奥村:ありがとうございます。続いて株式会社バンダイナムコスタジオの長谷洋平さんです。

長谷:バンダイナムコスタジオで現在開発中のオンラインゲームタイトル『BLUE PROTOCOL』にて、リードAIエンジニアをしています。実際のゲームタイトル内部のAIの開発をしつつ、並行してAI関連の最先端の技術のリサーチや、技術研究を担当しています。

この技術研究の中にはディープラーニングも含まれますし、それとは別に、ゲームに関連しない汎用的に使用可能なゲームAIのエンジンも開発しています。また、キャラクターのアーキテクチャを中心に、汎用的な開発研究にも携わっています。

奥村:そして最後に私はDeNAのAI本部で、主にゲームAIや強化学習といった技術を使った案件のマネジメントを手がけております。個人的な興味領域は、どのようにAIを事業価値につなげるかを考えており、AIエンジニアとプロダクト間を横断する活動をしています。

AIにまつわる用語の整理

奥村:まず本題に入る前に、セッションで使用する用語について簡単に整理します。

一般的にAIとは、人間と同等もしくはそれ以上の処理を行うためのテクノロジー全般を指します。中でも、判断や予測する能力をデータから機械的に学習するものを「機械学習」、さらにその一種で深いニューラルネットワークを用いたものを「深層学習」、いわゆるディープラーニングと呼んでいます。また、ゲーム業界で厄介な事例として、ゲームAIという別の言葉が存在します。

こちらは、学術領域で使われているAIとは全く別の文脈で進歩した概念です。そちらは区別をして使用したいと思っています。本セッションでは、AIという言葉はあくまでも機械学習全般を指すものとして定義します。

AIが推論をする際は、まず信号を数値変換して入力し、機械学習のモデルに組み込みます。ここで行列演算が実行され、結果が出力されます。たとえば異常検知に関しては、この入力が異常である確率が出力されます。

ネコとイヌを分類するAIを作る際の例として、ネコの画像を3色のRGB値に変換してモデルに組み込みます。するとこのモデルはディープラーニングを想定し、ニューラルネットワークを使って行列演算をして、ネコかイヌかの確率を推論します。

奥村:さらに教師データを用いて、なるべくこの確率ループがネコに近づくように、再度トレーニングし、モデルをアップデートする指示、さらに学習を繰り返すことによって、ネコの認知精度がより上がる仕組みになっています。

強化学習は、動物に芸を教え込むような行動に似ており、AIエージェントに対して、ある状況で行動を取る際に報酬をもらえると仮定し、そのフィードバックを蓄積していきます。それを反復することにより、好ましい行動を取るように訓練されていきます。

AI活用の現在

意思決定

奥村:意思決定に関連して、囲碁や将棋の分野において、人間と同等かそれ以上の賢いゲームエージェントが登場しています。

最近では、AlphaGo(アルファ碁)などは、かなり有名になっていますし、特に今年に入ってからのトピックとしては不完全情報原理が話題に上がっています。

例えば『StarCraft』や『Dota』などのゲームタイトルに代表される、長期戦略を扱うタスクでも、人間を超えるパフォーマンスを出すことが可能になっています。

そのような賢いエージェントが存在するデファクトした世界で、どのようにゲーム開発が変わっていくのか、事例を基にした方向性を紹介します。

奥村:1つ目はコンテンツ応用として「Human vs. AII」になります。eスポーツも同様に、ゲーム外の思考性として、人間とAIを戦わせること自体がコンテンツとなる世界が存在すると考えられます。

またゲーム内の思考性として、プレイヤー補助のためにエージェントを使用することも考えられます。初心者の対戦相手としてバランスの良いAIを使うような、ゲーム内コンテンツとしての応用です。

2つ目にQA文脈での応用については、ゲーム内を賢く回遊できるエージェントがあれば、テストも同時に実行してほしい、という発想から生まれています。

DeNA 奥村純

奥村:ゲームの内部が正しく動作しているかを確認するために、エージェントはゲームの中をひたすら動きまわり、自動プレイのテスト環境を作るQAオートメーションを実装しています。

また、ゲームバランスの担保、そもそも「ゲームが面白いことをエージェントに評価させる」動きも生まれ始めています。

実際の事例として「Human vs. AII」のコンテンツとして、『StarCraft』や『Dota』はもちろん、『ブレイドアンドソウル』『Arena of Valor』などのゲームタイトルでも、実際に人間のトッププロを打ち負かすような成績を記録しています。

奥村:プレイヤー補助に関して『逆転オセロニア』では、初心者から上級者までさまざまな強さをパラメーターで調整しており、それをユーザーに合わせたレベル版のAIを用いた練習コンテンツを提供しています。

また、対戦格闘ゲームタイトル『サムライスピリッツ』では、エージェントをミラーリングして他プレイヤーのように振る舞うAIと、実際に対戦可能なシャドーイングのコンテンツも提供されています。

奥村:一方でQAについては『北斗が如く』では、実際にそのゲーム内をエージェントに回遊させてVRAM使用率を可視化し、コリジョン抜け検知をするエージェントを作っています。

奥村:また、GDCなどでも『Battlefield V』や『The Division』などのゲームタイトルにおいて、実際にクラッシュ検知などで役立つトピックスを紹介するセッションが、注目を浴びていました。

ゲームバランスの担保に関しては『Candy Crush Saga』に採用された、実際に人間のようにプレイ可能なエージェントを、ディープラーニングでトレーニングすることにより、これまで新マップを追加するために、人力でのテストプレイが1週間ほど必要だった工数が、およそ数分に圧縮した例が紹介されています。

さらにCEDEC2018では、『D×2 真・女神転生 リベレーション』『コトダマン』などのゲームタイトルについて、さまざまな強化学習の遺伝的アルゴリズムを使った、ゲームバランスの調整をした事例も公開されています。

奥村:このような強化学習や強いエージェントが生まれることは、もちろん素晴らしいことなのですが、ゲームごとに特徴量のアーキテクチャを設計する必要があります。それをタイトルがリリースされる度に作業が必要となることが問題でもあり、スケールしづらい要因にもなると考えています。

株式会社スクウェア・エニックス 三宅陽一郎氏

三宅:現在、採用されているフレームはエージェントアーキテクチャです。「センサー」「認識」「思考」「行動」「エフェクター」という形ですね。いわゆるロボティクスから借りてきたアーキテクチャにそれぞれのゲームの知識表現を作り、ゲームに対応します。しかし、それはやはりゲーム依存なんです。

ニューラルネットの特徴は、そのような表現の規定が不要なところにありますが、それでもインプットするパラメーターを決める必要があります。

さらに、ニューラルネットワークの形を決めるノードの組み方の問題も存在します。組み方には特に規則性がないため、現在では適当に決めています。特に最初から最後まで、すべてE2Eで組んでしまおう、という方向がこれまでは強かったですね。

ゲームをプレイする人工知能を、すべてニューラルネットで実現することに関しては、アルファ碁やアタリのゲームレベルにおいて成功したところから、若干夢を見た部分がありましたね。大型ゲームにおいてニューラルネットだけでAIを実現しようとしても、思ったとおりに実現できないことが分かりました。

昨今の複雑なコンテキストを持つゲームは、ある程度古典的なアーキテクチャが存在し、その1個のモジュールをニューラルネットで実行する方法に、今後の未来があると感じています。

特に、階層型タスクネットーク(HTN:Hierarchical Task Network)など、問題をタスクに分けた上で、各タスクをニューラルネットワークの学習に任せる、という方向が有望かと思います。

そう考えると、ゲームシステム内のターゲッティングや魔法選択、アイテム選択などの技術はむしろ再利用できるようになるのでは、と判断しています。

奥村:ちなみに長谷さんのチーム内では、BehaviorTreeやBAのアーキテクチャについて、さまざまなタイトルで展開できる標準化がされていると思いますが、その観点でお話しいただけますでしょうか。

長谷:私も三宅さんの意見と同様に、E2Eで機械学習させようとすると、問題が複雑すぎてうまく動作しないことが多い印象です。そのため、BehaviorTreeのノウハウで、機械学習で選択するような仕組みを作るほうが、問題が限定でき、機械学習でも実行しやすくなる部分と、実際サーバがコントロールしなくて良い部分、機械学習に任せて良い部分に分類できるので、最適だと考えています。

機械学習をゲームで応用する方法については、そのゲームのキャラクターの動きに関して、重厚なイメージで動く場面、もっと爽快感を打ち出したい場面など、ゲーム制作の方向性によって求めている内容が違うため、共通化に関してはやや疑問に思っています。

株式会社バンダイナムコスタジオ 長谷洋平氏

奥村:実際に『逆転オセロニア』でもディープラーニングでエージェントを組みましたが、ゼロベースでチューニングしなければならず、大変でした。最近ではオープンAIファイルというエージェントを公開しましたが、そのアーキテクチャを見ていると、結構似通っていると感じますね。

そのような理由で、しばらくはゲームが新しく作られるごとに、ゼロベースでアーキテクチャなどをチューニングする必要があるのですが、ゲームジャンルに合わせて、ある程度アーキテクチャの指針は平準化して、共通のナレッジとして蓄積できる気がしています。

ただ、お二人がこれまで述べたように、やはりE2Eではないことはその通りだと思います。今後ディープラーニングなどが生き残っていく余地は、十分残されている気はしていますね。

続いて、先ほど長谷さんが述べていた「コントロールできる余地がない」話題について、もちろんスーパーヒューマンのエージェントが誕生すること自体素晴らしいのですが、そのテクノロジーを実際にゲームに適用すると考えたとき、コントロール不能だと怖いですよね。

プランナーからは「ここで必殺技を出したい」「変な挙動は絶対やめてほしい」など要望が出ますが、AIはブラックボックスになりがちなので、出力コントロールできないことは多々あると思っています。

その場合、どれぐらいコントロールすべきだと思っているのか、完全にディープラーニングのようなAI化ができるのか、それとも人間側でのコントロールする余地は必要でしょうか?

長谷:やはりその部分もゲーム内容で違い、デザイナーが決めた通りに動いてほしい場合もありますし、最近の複雑なゲームでは、チュートリアルやルール説明では完全に網羅できない部分が増えてきているため、一部機械学習を導入する必要があると考えています。

また、ゲームにどのような遊びを組み込むかによって、どの程度の機械学習を利用するかの判断は、ゲームそれぞれで、きちんと検討しなければいけない部分ではありますね。

特にアクションゲームや格闘ゲームのCPUキャラクターは、ルールベースで書かれている部分が多く、CPU戦でいくら戦っても、対人戦ではうまく動作しないことも多いんです。

さらに、最近活発になっているeスポーツの人気を上げるために、CPU戦をもっと人間らしく動かし、対人戦スキルアップの練習場所として提供できれば、その分野では、より機械学習を活用してAIを組み込む流れが生まれるのではと考えています。

三宅:ゲームAIの活用には3つ条件があって、まずその技術で多様性があること、そして拡張性とカスタマイズ性があることだと考えています。

昨今のゲームは大規模化しているので、細かい部分まで追いきれなくなっていますが、現段階での人工知能は、フレーム問題が解決しないと学習できないため、その問題を切り分けるコンテキストスイッチみたいな上層は、従来通りのステートマシンで大丈夫だと思っています。

例えば、モンスターと戦う、宿屋に泊まる、宝物を入手する、といった単純な作業はニューラルネットで処理し、ゲーム内での変更部分があればWrapする形で、ある条件が来たら逃がすような対応が良いと考えます。

メインはニューラルネットですが、周囲はルールベースで支えるような使用方法が現実的だと考えており、コンテキストスイッチと細かいタスク学習を同時に実行するのは、少し難易度が高いと思いますね。

奥村:結局ルールベースとディープラーニング、機械学習のハイブリッドに進化していくんですかね。

また、ディープラーニングは特徴抽出が得意な部分も含めて、自動的に処理してくれるのが強みなので、どうしてもE2Eで問題を閉じたがる部分はありますが、その観点ではゲームなら存在するイメージではありますね。

さらに似たような観点で、実際にAIのエージェントを作成した際、その挙動を誰がどのようにチェックするか、QAの分野にも関わりますし、トレーニングしたデータを、そのまま野放しにプロファクションに導入していいのか、不確実なデータを出すのは怖い、といった意見があると思います。

三宅:新しいAI技術はデバッグできないことが課題になっていますね。例えば自分が15年前にパス検索を提案した際も同様の状況でした。

ある条件下で、問題のあるアウトプットが出た際には、Wrapして外部、もしくは禁止して逃がす処理が必要です。現時点では、ニューラルネットを完璧に仕上げることは、誰にも不可能であり、保証するアルゴリズムも知られていません。

品質保証については、ある程度は可能ですが、補助策を設置した方が開発工程としては現実的だと考えます。納期があと1週間ほどの時期に、ニューラルネットを再度学習させて、再発注させることは回避したいですよね。

長谷:どうしても守りたい部分だけ、セーフティネットで禁止することは必要ですね。昨今のゲームはAIに限らず、(人力では)デバッグしきれない状態になっているため、すべての不具合を取り除いてリリースすることは、ほぼ不可能だと考えられます。

また、AIや機械学習、現在使用されている技術が100%完成しているわけではないので、禁止したい行動の部分だけコントロールすることが可能なら、それほど完成形を重視することはないと考えています。

QA・デバッグ

奥村:続いてのテーマはQAデバッグについてとなります。

三宅:最近のゲーム開発では、複雑化や大規模化がキーワードになっています。特にAAAタイトルのオープンワールド化が著しく、現在では50キロ四方を超えるような、巨大なスケールのゲームフィールドに対して、人間の手ではデバッグできない規模まで来ていると考えられます。

三宅:そこで、人間の代替役という意味を含め、AIと共に人間がデバッグしていかなければ、もはやコストや時間の意味でも、現実的な世界で普及がストップしてしまいます。その品質管理の部分を自動化するフェーズに、AIの自動プレイや自動バランス調整の案件も絡んでくると考えます。

三宅:ゲームAIの歴史は、大きく分けるとゲーム内外のAIが存在し、キャラクターAI・ナビゲーションAI・ベターAIなど、おおよそ3つに分類されます。

開発工程でのAIは、ゲーム外部のAIのことを指し、さまざまな技術、勝利方法など、その中で一番の重要項目としてQAのAIが存在し、2015年頃からQAのAIについて機械学習を用いることが、GDCでの発表以降、現在ではホットトピックとなっています。

例えば『Battlefield V』の機械学習に関して、現在は実際にあまり応用はされておらず、プレイヤーのインターフェースを発揮する形で、AIがキャラクターを動作することで自動にBotを操作して、デバッグをしています。

三宅:また、Frostbite engineのスクリプト、ビジュアルスクリプトでFrostbite schematicが存在しますが、これは機械学習ではなく、スクリプトを活用してBotを動かし、できるだけcoverageを上げる形で全領域のナビゲーションを使用、多数のキャラクターを出現させて、負荷や衝突のデバッグをしています。

なお『The Division』では、ダウンロードコンテンツで自動生成することが特徴になっています。ナビゲーションの意志や既存のAIシステムを活用し、機械学習ではなく、スクリプティングやBehaviorTreeを使った形でデバッグをしている事例もあります。

三宅:さらに『The Division』では、プレイヤーのインプットを上手く活用する形で、プレイヤーをフォローイングするログデータを使用し、ログサイクルを回しながらデバッグをしています。

もちろん最初のテストプレイは人間が担当しますが、さまざまな場所でジャンプ動作をするような、特殊な操作についても、プレイヤーのインプットから記憶させてトレースしています。それにより、AIに統計的に学習させる仕組みです。

プレイヤーのアクションシステムでは、どの場所でインプットが活用できるのかをレコードし、デバッグを実行しています。

三宅:『Battlefield 1』のオンラインモードでは、16体のキャラクターを導入して、大規模戦闘のデバッグ時に、EA SEEDという研究所で、イミテーションラーニングなど機械学習のテクニックを使用しています。

『Battlefield 1』のテストマップでは、さまざまな行動パターンをキャラクターにビジュアルカメラを付け、カメラインプット、行動アウトプットの形で機械学習をさせています。また、マップ上で自動的に動くようなBotを使用し、多数のキャラクターを登場させて、オンラインの負荷をデバッグ、QAしています。

奥村:最近では、事例が増えてきており、網羅しきれない物量になってきていますよね。

三宅:恐らく現世代が、人間の手でデバックできるギリギリの物量だと思っています。要するに次のコンシューマーや次世代のゲーム機対応タイトルでは、AI抜きでは成立しないという方向に、どこの企業も同じ見解を示しています。

そのための予防策として、コストはゼロにならなくても、QAコストを維持するぐらいでのレベルで機械学習を導入するなど、研究開発として進めつつ、現実的に違ったスクリプティングやナビゲーションを使用したQAを実行、あるいはログデータを使用したQAを実施することも考えています。

奥村:単純にバグ検知などで、エージェントに回遊させてバグを発見することが、自然に導入されていくことも考えられますね。

一方で事例にもありますが、面白さのQAの話題は絶対に発生します。ゲームの面白さをどのように担保するのか、実際にQAは機械化できるのか、といった質問を受けることが増えてきましたね。

三宅:面白さのデバッグは、できないと考えます。ただ可能なのは、そのゲームが「面白くないこと」を検知することだと思いますね。

単純な問題点は、プレイ時間がかなり長いことが挙げられ、戦闘時間が長い、アイテムを上手に使えていない、などの要素も該当します。そのように面白くないパターン、あるいは問題がある部分は検出できるのではないでしょうか。さらにその部分を1つずつ潰していくのが、現実的な活用範囲ではないかと考えています。

奥村:確かにそうかもしれないですね。カードゲームなどで、追加カードのバリエーションが増えると、組み合わせばかりを推奨してしまいがちです。

そもそも、プランナーの認知限界を超えるような量の面白さを担保しないといけない時代に、突入しているのかも知れませんね。

その状況では、何かしら機械化を進めないと大変ですね。実際に長谷さんが人工知能アプリに携わって、面白さを緊張度のようなデータを、線形回帰で実施している資料を拝見したんですが、面白さはマトリクス化できるのでしょうか?

長谷:自分は過去に、ゲーム内の敵の生成や多彩な要素をAI側で整備する、メタAIの分野を担当していました。その中でプレイヤーの緊張度をコントロールする部分で、緊張度が現在どの程度なのかを推定するために、プレイヤーのプレイログから、線形回帰でプランニングからパラメータを抽出して、モデルを作成していました。

現在は、緊張度のデータが正確なのか、細部まで確認ができていないのが現状です。面白さのような、より抽象度の高い項目に関して、何かしらデータから導き出すのは難易度が高いと思っています。

奥村:その部分は本当に同意見で、どちらかと言えばAIの使いどころは、面白くない部分をどのくらい減らせるかといった「検知」に繋がることが、今後重要になっていくと考えています。

最後のトピックスは、ゲーム開発が普通のWEBサービスなどと若干異なる部分になります。ゲームでは面白さが大前提にあり、その仕様が直前に変更されることが多々あります。

例えば、当初の企画では、プレイヤーが1メートルしかジャンプしない設定だったところ、やはり1.5メートルジャンプした方が面白いのではないか、と直前に仕様が変わることが良くあるということです。

そのような開発フローは現在の現場でも続いていると思いますが、(その部分に関して)実は機械学習の導入が相性良くないのではないかと考えています。

要望通り、プレイヤーが高くジャンプできるように作り直したあと、その仕様に合わせて、もう1度ディープラーニングの学習を走らせてエージェントを作ってQA、というフローを毎回繰り返さないといけない部分もかなり多いと思うのですが、そのあたりはどう考えていますか?

三宅:QAの方にヒアリングすると、最初のデバッグは自分たちで作業したい、といった声が多く挙がっています。最初の通しプレイヤーとして、まずはどんなゲームか理解していないため、いきなりAIにデバッグをやらせるわけにいかない、という理由です。

ただ同じ検証を続けるなら、2~3回目ぐらいからはAIに任せたいという声も挙がっています。もちろん人間としても、繰り返し作業はしたくないですし、そちらをAIに作業してほしいと考えています。

ゲームは一種のアートでもあるので、プレイヤーは面白くないことがわかると絶対離脱してしまうんですよね。また、ジャンプの高さをちょっと変えたら、ナビゲーションは全部やり直しになってしまいます。

企画段階から、変更可能なサイクルを見越して体制を作っておかないと、機械学習がきちんと機能して終わりというわけにはいきません。再学習のコストも含め、作業がどれぐらいの速度で終息するのかを推測しておくことも必要ですね。

奥村:リスクマネージャーのような、ゲーム開発においてどこまで仕様の変更を許容するか、ハンドリングするポジションの人間が、どうしても開発には必要です。そこに機械学習が導入されると、再トレーニングやデータ収集プロセスも含めて、AIを活用するには、これまでの仕様を変えていく必要が出てきますね。

三宅:そうですね、海外ではゲーム開発の外部にコントロールする人間がいるんですが、日本はゲームデザインに関しては作家性を重んじる文化がありますので、ゲームデザイナーが変えると言えば、変えてしまう文化が残っており、仕組みとして止めるシステムがないのが、現実です。その部分は、日本特有の問題として今後残るかもしれないですね。

奥村:作家性と機械化の衝突みたいなのがありそうな気配がしますね。長谷さんはその部分で何か感じていますか?

長谷:現在自分が関わっているのはオンラインアクションゲームで、コンテンツや要素も多くてゲームシステム自体も複雑なんですが、複雑なゲームになればなるほど、多少の変更が多岐の要素に密接に関わるので、最初にレギュレーションを決めて、それに沿って開発をするように動いています。

もちろん面白くない部分があれば、組織全体を変更することもありますが、多少のことであればレギュレーションの範囲内で面白くするために工夫したり、現状を許容できるのであれば、AIを使ったテスティングの再学習をします。

それをしてでも、仕様変更をするべきものなのか、問題は大きくないから、この仕様は機械学習のエージェントを、再学習をする必要がないレベルで止めよう、といった判断が重要だと考えています。

異常探知

奥村:続いて最近増えている異常検知について、1つはチート対策が存在すると考えます。ゲーム内でチートしているプレイヤーを検知するものと、ゲーム開発においては、デバッグやバグ検知をなるべく上手く使い分けていきたいですね。

特に最近問題になっているのは、チート検知の部分です。多人数とマッチングする対戦プレイ可能なタイトルが増えてきており、その中のマルチ対戦のゲームでは、少数のチーターの存在が、ゲームの有益数を大きく毀損することが課題になっています。

奥村:例えば、ゲーム内に2%のチーターがいることにより、ダーティーマッチと呼ばれるチーターに巻き込まれる、本当に意味のない試合が約20%ぐらい生まれると言われています。やはりこれは無視できない数字ですよね。

少数のチーターも許せませんが、現在のプロセスではチェックしきれないほどユーザー数も多く、チートの技術も高度化しており、対処しきれないのが現状です。

その状況下で上手な対応として『Sudden Attack』の事例で、FPSでウォールハックと呼ばれる壁を透視する、敵がどこにいるかすべての情報を見れるチートがありますが、AIが判断した根拠が、注目度マップのように表示され、それをCSの人間がチェックしてチートだと判断、BANしやすくなっているシステムがあります。

奥村:このシステムによって、BANまでにかかる時間が24時間から数分に抑えられたという話題があり、結構面白いと思っています。

他には『Counter-Strike』などでも良く使用される、エイミングアシスタンスと呼ばれる必ずヘッドショットになる、銃のエイムを自動的に実行してくれるチートも存在しています。

また、ディープラーニングベースで『Overwatch』を使用して学習をしてみると、人間が報告すると精度が15%ぐらいしか出せないところ、AIを使うと80%ぐらいがチーターと判断されてしまう話もあります。このようにチートに関する部分にも、次々と導入が進んでいくと考えられます。

奥村:また、Kingではインシデント予測と呼ばれる、さまざまなメトリクスを監視して、異常らしき動きを検知すると、すぐにアラートを上げるような事例も公開されています。

異常検知については、結局人間の目検プロセスが不要になることはない、という話もありますが、どこまで自動化するのか、どこまで人間の解明が必要なのか、といった責任分界点に関係する話に関わって来ると思います。

三宅:各社の取り組みは、最終的なBANについては人間が絶対実行する方針ですね。リコメンドはAIが担当しますが、最後は人間が責任を持ってBANするシステムになっており、BANしたデータをまた機械学習に回すことで、AIがリコメンドの精度を上げて行く戦略が必要だと思います。

また、なぜそこまでコストを切るかというと、eスポーツの発展が関係しています。eスポーツの予選はオンラインで実施するため、そこで不正を検知できなければ、eスポーツそのもののビジネスが成り立たなくなります。

その問題も含め、各社コストをかけやすくなっているんじゃないかなと考えています。人間がチートするにしても、リスクとテーマはどんどん高くなるため、導入により一定の効果を発揮していると思われます。

長谷:現在開発しているゲームに関して、チート対策については、かなり話題に上がっていますね。

奥村:特にハッキングの部分ですかね。ゲームごとにチート検知の依存性ってどれぐらいあるのか話題になっていますね。

最近はクラウドゲーミングが登場して、ミドルAIも発達し、そのような機能がAPIとして提供されていくのはスゴイことですし、自社開発しなくても大丈夫なのではとも思います。異常検知に関する研究はこれからも続いていくと思いますが、今後の進め方は多岐に渡る気がしますね。

コンテンツ生成

奥村:コンテンツ生成技術に関しては、自然画像や人間の顔、食べ物や動物など、かなりフォトリアルな画像をAIが自動で生成可能になってきています。

超解像度やdenoisingの研究も大きく成長していますし、それが本物の写真なのか、AIが作った画像なのか、区別が難しい時代が訪れていますが、これからは、その技術をゲームにどうやって組み込むのか、が課題になってきます。

奥村:特にGAN(Generative Adversarial Network)などの技術は、人間の全身のように複雑な構造の生成はまだ困難なので、どうしても対象が限定されてしまうことが課題となっています。

DeNAで進めているプロジェクトでは、二次元の画像から構造などを踏まえて学習をして、後ろ向きに構造を変えてみたり、構造とセットで学習するトライアルをしています。

奥村:また、指定された構造やラフから生成する、あるいはコントローラブルな技術でGANを扱う案件は増えると考えています。

この技術を用いると、「このあたりを海や空にしたい」「この部分に木を置きたい」というざっくりとした要望を入力すると、それらしいフォトリアルな画像が生成できます。アニメ調のイラストも同様に生成が可能です。

最初に簡単なラフを作って、まず完成度70%ほどの画像を生成し、その後にアーティストが修正するみたいなプロセスの導入が進んでいくと思われますね。

奥村:それ以外にも、カメラのライティングやスタイルを変換する技術では、少ないアセットから夜や夕方のシーンを作れたり、季節の秋を冬に変えるなどの技術など、今度は可能になると考えています。

奥村:さらに、一枚の写真画像からメッシュやテクスチャを生成する技術もかなり進んできているので、3Dモデルが作りやすくなる時代も来るはずですね。普及の背景としては、学術研究はもちろん当然ですが、それ以上にゲーム業界でのニーズが高まっていることが要因と考えられます。

例えば『Assassin’s Creed Odyssey』などでは、シネマティックカットと呼ばれるストーリー上で重要なシーンの工数が、数時間から30時間に増えていますが、よりスマートにコンテンツを作るために、約20%を完全プロシージャル化しています。

つまり、あまり重要ではないシーンは、完全AI化してプロシージャル化し、草や木の位置など影響が少ない描写をAIに任せています。

ただし、重要な人間の表情や、ここはしっかりと演出したいというプランナーの思いが介在する部分については、人間がモーションキャプチャーを用いて、従来どおり細かく作り込んで演出する、というようにレベル分けをして作業しています。このような分業型の導入が今後は進んでいくと思います。

また、ラフスケッチからの生成に関して、地形などもラフのような画像からでもフォトリアルな画像が生成できるようになってきています。

長谷:最近のスマートフォン対応ゲームでは、画像が高精細になってきており、それに伴ってダウンロード時間などの課題も発生しており、それを解決するために小さい画像から超解像の技術を使って、高クオリティな画像を作れないかといった研究開発を続けています。

奥村:『Fantasy Raiders』というゲームでは、レベルに応じて自動生成するシステムを導入しており、単純に画像が生成できるだけじゃなく、マップのオブジェクトの配置や、そのユーザーの成熟度やキャラクターの疲労度などに応じて自動で生成してくれます。

キャラクターのHPの少なさなどに応じて、疲れている時はなるべく簡単なマップのオブジェクト配置にしたり、元気な時は難易度の高いマップを作ったりなど、普通はレベルデザイナーが頑張ってハンドメイドで調整している部分を、ある程度オートメーション化する未来はかなり近づいていると思われますね。

奥村:ですが、やはりコンテンツ生成のQAに関して気になるのは、場合によっては求める世界観に好ましくない画像の生成がされてしまうことです。

例えば、十字架が生成された場合、宗教のモチーフだからNGなど、倫理的に人間が見れば判断できる事象でも、AIには判断しにくいものを生成することもあります。その部分は実際どうなっていくのでしょうか?

三宅:以前、弊社のタイトルではありませんが、海外で開発ゲームタイトルで、あまり好ましくないオブジェクトが多く生成されてしまい、動画サイトにアップされ、ネガティブな意見が増えた事例がありました。QAの意味では、作った後にもう1度解析することも必要だと思われますね。

GANに関しては、あまりデザイナーの反応は良くなかったですね。3Dのオブジェクトを生成できたら使えると話していますが、現在の3DのGANについては、研究レベルでも論文が数本あるぐらいで、まだ完成は遠いと思われます。業界的には3DGANが完成してからは、かなり実用化が進むのではないでしょうか。

奥村:そうですね、実際どれぐらい機械化できるのか、完成までに何十年も必要な技術もありますしね。

アニメーションとメタAI

奥村:最後は、アニメーションとメタAIについて。アニメーションというのは主にモーションキャプチャーのような技術を想定しており、モーションキャプチャーで撮った画像を、3Dモデルに移行するときに点の位置がズレることがあります。それを人間が手動でチューニングするのではなくて、Solvingをディープラーニングで高精度化することが実施されています。

また、言語に合わせて唇の動きを変えるリップシンキングが、他の地域のローカライジングに役立っている話もあり、実際に実用化されています。

三宅:メタAIでは、ゲーム全体を俯瞰してコントロールをするAIですが、緊張度を取得して、全体をコントロールする傾向があります。

ゲーム全体の流れを作るAIにおいて、メタAIが構築するのではなく、ユーザーの心理状態をいかに把握するか、そこに機械学習を用いて、ある自動生成した時にユーザーの反応の良し悪しなど、統計から学習データを、ゲームデザイナーのノウハウを吸収していくような形の学習を考えています。

取材・文・撮影:細谷亮介

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterアカウントやにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【CEDEC2019】「『逆転オセロニア』における、機械学習モデルを用いたデッキのアーキタイプ抽出とゲーム運用への活用」セッションレポート

2019年9月4日~6日の期間、パシフィコ横浜において、ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2019」が開催されました。

本記事では9月5日に実施された、『逆転オセロニア』における、機械学習モデル (トピックモデル) を用いた、大規模データからのデッキアーキタイプの抽出、関連するKPIの可視化などについて紹介されたセッションの内容を一部抜粋してレポートします。

セッションの冒頭では、分析部 アナリストの安達涼より、登壇者の簡単な自己紹介のあと、DeNAゲーム事業部分析部について、現在では各ゲームタイトルに専属アナリストをアサインする体制があること、行動ログ分析、ユーザー調査など、さまざま分析手法を利用して分析に取り組んでいることが説明されました。

また、新しい分析手法や機械学習などの高度な技術を活用したR&Dにも挑戦しており、本セッションでの発表は、その実践例の一部を抜粋して紹介するとのことです。

『逆転オセロニア』では、これまで積極的にAIや機械学習の活用を実施しており、特に深層学習を用いた「対戦AI」、アソシエーション分析を用いた「デッキのオススメ編成」などをゲーム内に実装するなど、プレイヤー体験を向上させる施策を実施してきました。

最近では、ゲーム外(運営側)でも、AIや機械学習の手法を用いて、作業の効率化やプレイヤー体験の向上のために、さまざまな検証を行っていると、安達は述べました。

DeNA 安達 涼

『逆転オセロニア』とデッキアーキタイプ

『逆転オセロニア』は、オセロのルールに基づいた対戦型スマートフォンゲームアプリで、駒のスキルやコンボを組み合わせて戦う高い戦略性と、劣勢からでもドラマチックに逆転できることが特徴となっています。

ゲームプレイコンテンツとしては、キャラクター(駒)の中からプレイヤーが自由に構築したデッキでの対戦が中心で、PvPがメインで遊ばれています。

なお、PvPコンテンツ内ではプレイヤー同士でポイントを奪い合い、月間の到達クラスを競うリアルタイム対戦「クラスマッチ」が最も遊ばれていることが分かるデータも紹介されました。

『逆転オセロニア』のキャラクター(駒)には「神・魔・竜」の3種類の属性が設定されていますが、これらの属性に属性間の相克や優劣などはありません。

また、クラスマッチには「属性補正」が設定されており、「神・魔・竜」それぞれの属性のキャラクター(駒)のHP/ATKなどに対して、ステータス補正が設定され、属性補正によって毎日環境が変化するため、その日の相性の良いデッキを選ぶことで、飽きを防ぐ仕組みになっているとのことです。

プレイヤーは約3,500種類以上存在する駒の中で、自分が保有している駒から16個を選んでデッキを構築し、そのうち1つをリーダーの駒に指定します。

それぞれの駒には固有のスキルやステータスが存在するため、盤上に駒を置いた際、相手の駒を自分の駒で挟んだ場合に特定条件下で発動する「コンボスキル」を決めて勝利するには、駒同士のシナジーを考えてデッキを組むことが重要なようです。

このデッキ構築に関して、戦い方を考慮したおおまかなデッキ構成に「アーキタイプ」という概念が存在します。

『逆転オセロニア』には、現在20種類前後のアーキタイプが存在しており、アーキタイプは属性を統一することで効果を発揮するものなどもありますが、リーダー駒とアーキタイプは必ずしも紐づいていないとのことです。

デッキアーキタイプの例として、竜属性の駒のみで構成され、高い攻撃力と強力なコンボスキルで早い決着を狙える「貫通速攻」と、3属性の駒で構成され、バランス良く戦える「混合」のアーキタイプが安達より紹介されました。

アーキタイプの相互関係は、対戦環境に大きな影響を及ぼすため、バランスが崩れると「特定のアーキタイプが強すぎてつまらない」など、中長期の継続率に大きな影響を及ぼします。

特に『逆転オセロニア』のようなPvPが主体のゲームでは、プレイヤー数は非常に大切なため、バランスの把握やメンテナンスが重要になります。

運用上の問題点と、既存手法の限界

これまでの運用上の問題点として、「特定のアーキタイプが強すぎる」「アーキタイプの優劣が固定化されている」ことが挙げられ、対戦環境を平均化かつダイナミックにして、プレイヤー体験を向上させることが必要となってきたとのこと。

強い駒を単純に禁止や制限する運用もありますが、『逆転オセロニア』では、駒の追加と属性の追加がプランニングの主なアクションになるようです。

運用チームでは対戦環境の改善のためにプランニングを実施する際、これまではプランナーがクラスマッチを徹底的にプレイすること、プレイヤーの声をもとに人力で対戦環境を把握し、その定性情報を用いてプランニングをしていたと語られました。

この方法での問題点は3つあり、まず1つは、さまざまなデッキを使って、何ヶ月も膨大なバトル数を消費するため「プレイング習熟まで時間が必要となる」こと。

2つ目はプレイヤーの声や人間の主観的な見解は、ネガティブな要素に引っ張られる傾向など、心理的なバイアスにも影響を受ける恐れがあることです。

3つ目は、増え続けるアーキタイプ数への対応が難しいこと。アーキタイプが少ない時期は、徹底的にプレイすることにより、異なるアーキタイプ間の対戦を網羅的に十分なサンプル数を取得できますが、現状20種類ほどのアーキタイプがある中で、人的リソースの観点からも、人力で対応するには現実的ではなくなっているようです。

これら述べてきた理由で、定量的に対戦環境を把握することが、必要不可欠と言えるでしょう。

そこで、ログデータを参照し、リーダー駒の編成率や勝率を分析してみると、デッキアーキタイプという抽象度でデータを解釈するのが難しく、リーダー駒レベルの情報でプランニングをすると、意図せずに対戦環境のバランスを崩す可能性があることが説明されました。

例えば、勝率35%のリーダーaのデッキ、勝率50%のリーダーbのデッキがあった場合、対戦環境を整えるためにリーダーaのデッキに駒を追加すると勝率が50%に上がりますが、なぜかリーダーbの勝率が65%に上がってしまいました。

このプランニングの失敗の理由は、どちらのデッキもアーキタイプAに属しており、追加した駒はどちらのデッキにも組み込まれてしまったため、バランスが崩れてしまったことにあります

アーキタイプレベルでプランニングをすれば、デッキのコンセプト自体が異なるため、勝率を上げることを狙ったアーキタイプには効果的で、他のアーキタイプでは使用されないような駒をピンポイントに考えられ、このような事故を防ぐことができます。

アーキタイプの抽出方法について、ルールベース(定義に基づいた分類)で対応できないのは、3,500種類以上の駒が存在し、同じリーダーでも異なるアーキタイプに所属することもあるため、ルールを構築することが不可能になっているようです。

また、プランナーが抽出したいアーキタイプに含まれる駒を事前に指定しなければならず、プレイヤーが編み出した、プランナーが想定しない新しいアーキタイプは抽出できなかったとのこと。これらの問題点をふまえてチーム全体で「機械学習によるデッキのアーキタイプ抽出してみよう」という動きになったと、安達は述べています。

機械学習モデルの概要

機械学習のデータについて、プレイヤーのリテラシーが高く、デッキのアーキタイプが成立している、クラスマッチのダイヤモンドクラスデッキデータを使用しています。

このデータを用いて、数十万のデッキでアーキタイプを抽出する週次データと、月次データで属性補正ごと、2種類の粒度で分析を行っているとのことです。

概要として、トピックモデルと呼ばれる手法、その中でも良く使われるLDA(Latent Dirichlet Allocation)のアルゴリズムを用いて、アーキタイプ抽出を行っています。

このモデルに大量のデッキデータ、パラメータとして抽出するアーキタイプ数を入力すると、2つの結果を出力し、1つは自動的に抽出されたアーキタイプそれぞれの組成になります。

各アーキタイプはデッキに存在した、すべての駒上の確率分布として表現されます、つまりそれぞれのアーキタイプのデッキで各駒がどのくらい採用されやすいのか、ということが表現されているとのこと。

アーキタイプAは駒1と駒99の確率が高く、これらの駒が良く採用されているアーキタイプだと解釈することができます。

このキャラクター組成の情報をもとに、それぞれがどんなアーキタイプなのか、という解釈をプランナーが実行します。

今回のデータでは『逆転オセロニア』をある程度遊んでいるプレイヤーなら、この組成を見れば何のアーキタイプなのか、紐付けられるレベルの抽出ができていると考えられています。

これは使用データをダイヤモンドクラスに絞っていることで、成立しているデッキタイプが多く、ノイズが少ないことが考えられます。

2つ目は、1~100,000番目までのデッキがそれぞれどのアーキタイプに属するのか、という情報が出力されます。

それぞれのデッキはアーキタイプ上の確率分布として表現され、デッキ1だとアーキタイプBに属する可能性が高く、デッキ100,000だと、アーキタイプGに属する可能性が高いと言えます。

LDAというアルゴリズムは、大量のドキュメントをその中の単語の分布をもとに、トピック別に分類する用途で開発されたことも明かされました。

本モデルでは、各トピックはドキュメントに出てくるすべての単語上の確率分布、各ドキュメントはトピック上の確率分布として表現されます。

ドキュメント内の各単語に対し、そのドキュメントに紐付いたトピックの確率分布を参照し、その単語が何のトピックから生成されているのかを決めます。

次に、選ばれたトピックに対応する確率分布を参照し、その単語が生成される確率を求めます。この作業をドキュメント内のすべての単語について実行し、ドキュメントが生成されます。

続いて、トピックに紐付いた確率分布と、ドキュメントに紐付いた確率分布の事前分布に、Dirichlet分布を仮定し、サンプリング手法によってこれらの事後分布を求めます。

次にトピックモデルを用いたデッキアーキタイプ抽出に活用するために、ドキュメント内の単語を「デッキ内の駒」、ドキュメントを「デッキ」、トピックを「アーキタイプ」に置き換えます。

先述のモデル推定を実行することで、ここではアーキタイプが駒上において、各ドキュメントがトピック上の確率分布でしたが、ここでは各デッキがアーキタイプ上の確率分布として求められます。

トピックモデルの利点は、実装が簡単で、新しいアーキタイプを抽出可能、時系列でのアーキタイプの紐付けが容易、パフォーマンスも良いことが挙げられました。

デッキアーキタイプの抽出フローは、まずBigQueryからRaw対戦ログ(デッキ情報、勝敗など)を取り出し、その中からタスクキルなどの使用しないデータを取り除いたり、デッキ情報をモデルが使える形に変換したりと前処理をします。

次にルールベースで抽出できるアーキタイプを抽出します。LDAだけでもきちんと抽出できますが、ルールベースで抽出されるアーキタイプ、機械学習で抽出するアーキタイプの両方にとってノイズが減ることが判明しているとのことです。

実際の運用では、プランナーに依頼し、Googleスプレッドシートにルールベースで抽出するアーキタイプ名と駒に関するルールを書いてもらい、アルゴリズムがそのシートを読み込み、指定されたものを抽出しています。

その後、デッキデータに関してLDAアルゴリズムを適用し、指定した数だけアーキタイプを抽出します。最後にそれぞれアーキタイプに関して、過去に抽出されたアーキタイプと比較して紐付けをします。

アーキタイプは駒上の確率分布なので、分布間の距離を用いて紐付けを行います。これを抽出したすべてのアーキタイプについて繰り返し実行し、どのアーキタイプとも紐付かない場合は、新しいアーキタイプとして検出します。

可視化ツールの紹介

対戦環境の改善により、プレイヤー体験向上を実現するという目標を考えたとき、2つのポイントが重要だと、安達は述べています。

1つ目は「現状把握と運営のアクションの効果確認が容易にできる」こと。ここでは使用率や勝率などアーキタイプに関連する統計量がひと目で分かり、かつ時系列で比較できる必要があります。既存の内製BIツールでは自由度が低く、実現できなかったとのこと。

2つ目は「運営チームの誰もが対戦環境を意識できる状況を作り出す」ことです。今回の分析手法により対戦環境が誰にでもわかるようになったため、ゲームプランナーだけでなく、運営チームの他のメンバーにもプレイヤー体験向上のためにできることのアイデアを出して欲しいとの思いがあったことも語られました。

これを実現するためには、ローカルPCで結果を表示してスライドに貼って共有する方法では不十分と考えたようです。

この要件を実現するために、「Dash」と呼ばれるPython製のWebアプリケーションのフレームワークを採用しました。これを利用することでベーシックなレポート、インタラクティブなダッシュボードなどを作成することができます。

さらにDashはオープンソースであり、無料で使用できる上、開発もアクティブに実施されています。JavaScriptの知識がなくてもPythonのみですぐにダッシュボードを作ることが可能だとのこと。

高い自由度も魅力で、レイアウトも簡単に変更でき、公式ページには40を超えるダッシュボード例とソースコードが公開されています。

また、誰でも簡単に対戦環境を確認できる点に関しては、ダッシュボードをGCP(Google Cloud Platform)インスタンス上でデプロイすることで解決しています。運営チームのメンバーは、Webブラウザからダッシュボードにアクセスすることで、いつでも対戦環境を確認することが可能になったとのことです。

また、週次と月次の2種類のデータを使用してアーキタイプ抽出を行っていますが、可視化ツールも用途に応じてそれぞれに対応するものを作っています。

週次の可視化ツールは、月~日まで一週間のデータを用いてアーキタイプを抽出し、月曜日にツールを更新しています。ここでは、新しい駒の追加で対戦環境が崩れていないかなど、最新の対戦環境の把握のために使用しています。

このツールで「このアーキタイプにはどんなデッキが含まれるのか」「どの駒がどのくらいの確率で採用されているのか」「使用しているプレイヤー数や勝率」「自分が先行/後攻の場合の変化」「決着までの平均ターン数」などを簡単に確認できます。

対戦分布では、対戦表で抽出された各アーキタイプの勝率や、アーキタイプ間の勝率を確認可能で、プレイヤー分布ではそれぞれのアーキタイプを使用しているプレイヤー数を表示しています。

月次データを使ったツールでは、属性補正ごとにアーキタイプを抽出した結果を表示しています。月次のクラスマッチの補正ごとの抽出結果を表示、より詳細な対戦環境情報の把握やプランニングのPDCAサイクルに活用しているとのことです。

ゲーム運用への活用

ここからはDevelop統括部 企画部 プランナーの岩城にバトンタッチし、実際の運用現場でこの分析ツールがどのように活用されているのか、いくつかの具体例と共に説明されました。

DeNA 岩城 惇

『逆転オセロニア』の運用課題について、分析ツール導入前は「アーキタイプの優劣が固定化」「特定のアーキタイプが強すぎる」という2点の問題点を挙げました。

これまではプレイングを習熟したプランナーの意見および、プレイヤーからの定性意見を中心に、一部ですがルールベースの定量分析を加えつつ、改善とプランニングを実施してきたとのこと。

ですが、「客観的に判断をする難易度が高い」「プレイング習熟まで時間が必要」「増え続けるアーキタイプ数の対応が難しい」「新しいアーキタイプを検知しづらい」といった課題で、正確で網羅的な現状把握が難しく、改善結果が正確に評価しづらくなっていました。

分析ツールの導入後は、運用チームなら誰でもアクセスできるツールを採用したことで、運用上の問題点は変わりませんが、定性意見とツールによる定量評価を併用することにより、チームに非常に良いインパクトをもたらしたようです。

客観性に関しては「実際に数値として環境の情報が確認できるので、客観的な判断がしやすくなり、さらにトッププレイヤー傾向を分析しやすくなったことで、プレイング習熟の時間が短縮され、プランナーの属人化が大きく改善しました」と岩城は語っています。

また、アーキタイプが増えても相性があるため、相関関係をひと目で確認でき、新しいアーキタイプの検知についても、ツールが自動で検知するためスムーズに対応できるようになったようです。

その結果、正確に網羅的な現状把握を継続的に行い、改善アクションがスムーズになりました。その中でも個人的にインパクトがあったのは、ツールのデータをWebブラウザ上でいつでも手軽に確認できることによって、誰でも客観的に確認できる点だと、岩城は述べました。

プランニングの前段階の問題が改善されたことで、課題点に確信が持てなくて日々悩んでいたプランナーにとって、改善のプランニングに集中でき、今までに比べて業務効率が何倍にも向上した印象がありました。

続いては、実際に活用された改善プランニング具体例が紹介されました。

改善アクション1「対戦環境のバランス平均化」

運用チームでは対戦環境のひとつの理想状態として、アーキタイプ同士の相性が拮抗していて、プレイヤーの選択肢が多様に存在する状態を考えているようです。

その多様性が失われることがしばしばあり、一部のアーキタイプが駒追加が続いたり、属性補正に相性が良かったり、いくつかの要因によって相性の弱点がなくなり、一強状態になる状態が実際に発生しました。

一強状態が続くと、他のアーキタイプが淘汰されてしまい、代わり映えのしない対戦が続き、中長期の継続率に大きな影響を及ぼします。

分析ツールで抽出した勝率のグラフでは突出しているようには見えませんが、対戦表を見ると、他のアーキタイプにほとんど勝ち越していることから、一強になる可能性をはらんでいると判断できます。

このように実際にグラフとして可視化されることで、明確に課題が検出できると同時に、一強状態を改善し、多様性を維持するために何らかの対策が必要だと感じたとのことです。

そこで実施したアクションが「適切な抑止力の選定と対戦環境への配慮」になります。

簡単に既存のアーキタイプの弱体化を行えない制約を考慮しつつ、一強になりそうなアーキタイプを平均化しようというアクションです。平均化の実現のために、対戦表の相性比較から「すくみ」が生まれるように、抑止力となるアーキタイプを複数選出しました。

そして一強の抑止力となるアーキタイプを強化することで、相対的に一強状態を解消することを狙いました。

ここで大事なのが環境への配慮で、単純に抑止力を選定するとどちらかのバランスが崩れやすいため、必ず複数を強化することでアーキタイプの勝率バランスを平均化することを心がけた、とのことです。

そのため属性補正に関しても、複数のアーキタイプの勝率が拮抗するものを採用したり、使用率の低いアーキタイプに駒を追加して、強化と普及を促しました。

このアクションの結果、突出しかけていたアーキタイプのバランスを、対戦環境に配慮しながら抑えることができ、適切な属性補正を特定し、スムーズに調整ができた上、抑止力となるアーキタイプの選定がピンポイントに実施できたとのことです。

改善アクション2「勝てるアーキタイプの選択肢を増やす」

このアクションでは、アーキタイプ間の優劣が固定化しているという課題に対応しています。

一定のアーキタイプの勝率が相対的に他のアーキタイプより高いことから、プレイヤーの使用が偏り、他のアーキタイプが徐々に淘汰され、結果的にプレイヤーの選択肢が少なくなってしまう状況になります。

アーキタイプ間の優劣が固定化してしまうと、プレイヤーの選択肢が少なくなり、それにより「飽き」につながり、中長期的の継続率に影響が出てしまいます。

ある月の同じ属性補正で、3ヶ月後の勝率を比較すると、いくつかのアーキタイプの順位は多少上下しましたが、上位の序列に変化がないことがわかりました。

この課題に対する改善アクションは「既存のアーキタイプを強化することで、固定化した環境を変化させることを目指してプランニングしています」と岩城は話しました。

つまり固定化したグラフに割って入るように、アーキタイプを強化しました。参照したのは勝率の比較とアーキタイプの使用率の比較データになります。

まずは勝率の比較によって、勝率は悪くなく、かつ使用率の低いといった条件を満たすアーキタイプを探します。

その理由は、キーとなる駒が足りない、プレイヤーにあまり普及していないといったアーキタイプそのものの強さに比較的ネガティブな要素が少なく、強化および普及が容易だと考えられたためです。

具体的な改善アクションは、選出したアーキタイプに対戦環境をもとに、その勝率が高くなる属性補正を追加、デッキの核となる駒の追加、アーキタイプに必要な駒を普及させるために定期的に開催されるガチャを実装しました。

結果として、アーキタイプの選択肢を増やすことに成功し、キャラクターの設計方針がスムーズにでき、アーキタイプそのものを追加する場合に比べて、少ないコストで環境を変化させることができました。

改善アクション3「新しいアーキタイプの検知と使用率向上」

アーキタイプは運用から提供するもの以外でも、プレイヤー間で日々生み出されているそうです。想定外のアーキタイプは『逆転オセロニア』でも検知されており、毎月新たなアーキタイプを見つけることができます。

この事象は、アーキタイプの優劣が固定化していることに対して、新しい選択肢を広げるという意味で、良い影響を与えることが可能です。

新しいアーキタイプについては、ツール上で「NEW」と表示され、それらの勝率や使用率を参照可能になっているとのことです

検知したアーキタイプについて運用側では、対戦環境に悪影響はないのか、どうやったら強化できるかを調べる必要があると、岩城は話しました。

ここでツールを用いて対戦成績と使用率を比較して、検出したアーキタイプを分析します。まず新しいアーキタイプと既存のアーキタイプの使用率を差分比較します。一見新しいアーキタイプに見えても、広義では他のアーキタイプに含まれる可能性もあるからです。

この時点で新しいアーキタイプであると判断された場合、次に対戦成績を比較し、勝率が高くなる補正は何か、逆に勝率が突出してしまう補正はないか、について検討しています。

そこで問題ない場合、この属性補正について新しいパターンとして蓄積し、新しいアーキタイプの使用率の向上を図りたい場合、適切に使用できる体制を整えました。

このアクションの結果、新しいアーキタイプの使用率が向上するシーンを生み出すことができました。

検知に関しては、ツールがない場合は、非常に難易度が高く、明確に新しいアーキタイプを検知できたことは大きな価値になっています。

また、新しい場合でも対戦表や相性を確認できるので、対戦環境の傾向をつかむことで、もし将来的に新しいアーキタイプを強化したい、再検知したときに強化したいときでも速やかに対応できるナレッジを蓄積できたことも、大きなメリットだと岩城は述べています。

まとめと展望

最後に安達から、今回のセッションの簡単なまとめと、今後取り組みたいこととして、現在『逆転オセロニア』に実装されている駒の属性レベルでのレコメンデーションに、アーキタイプレベルでのデッキレコメンデーションを追加すること、対戦環境のダイナミックさを担保する「属性補正の最適化」「プランニングプロセスの自動化」や、対戦環境変化の予測などにも注力していきたいと、本セッションを締め括りました。

取材・文・撮影:細谷亮介

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterアカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【CEDEC2019】「組織的にGame x AIを推進していくための方法論~『逆転オセロニア』のAIの一歩先へ~」セッションレポート

2019年9月4日~6日の期間、パシフィコ横浜において、ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2019」が開催されました。

本記事では、9月4日に行われた「組織的にGame x AIを推進していくための方法論~『逆転オセロニア』 のAIの一歩先へ~」について、ディー・エヌ・エー AI本部 データサイエンティストの田中 一樹とMLエンジニアである岡田 健によるAI開発のあるべき姿や、具体的な設計方法などが語られたセッションの内容を一部抜粋してレポートします。

DeNAにおけるAI開発の歴史

まず序盤では田中 一樹より、DeNAにおけるAIの開発の歴史から、上手くAIを使いこなすための手法が解説されました。

DeNA 田中一樹

DeNAでは、2016年頃から本格的にゲームAI開発に本腰を入れており、重要な分岐点となりました。特に古典的なゲームAIだけでなく、機械学習、ディープラーニングといった最新技術まで視野を広げて新しい領域を切り開いていきたいと田中は語っています。

2016年は「ゲームアプリ運用の課題解決にAIを活用できないか?」と考えた時期でもあり、未知の事象が多く、AIでできることの可能性を模索していたフェーズです。

その後に得られたAIの可能性に関する知見や経験をもとに、2017年に『逆転オセロニア』において強化学習を使ったバランス調整をするため、強いAIをつくることから始めて、最終的に複数のAI機能をリリースすることができました。

そして現在のフェーズは、見えてきた課題の解決を目指して今までの知見や技術をスケールさせ、さらに応用の範囲を拡大するために、組織的に注力しています。

AI利用の模索

続いて、目指している世界に確度高く近づくために、どのようなことを考えて実行しているのか、詳細が説明されました。

2016~2017年に取り組んだのが「AIにおけるゲームアプリ運用の課題解決へのアプローチ」です。

この取り組みの背景にあった課題は「ステージ設計の難易度調整が大きい」ことが挙げられました。具体的には、パラメータを設計し入力した後、意図通りの難易度になっているかをテストプレイする、という作業を繰り返すことで、理想的なステージの難易度調整をしていました。

このフローをAIで実装するために、ユースケースとして「強いAI」を作り、自動でテストプレイをして、その結果をもとにステージの難易度調整を適切、かつ効率的に実行することを目指していました。ちなみにここでの「強いAI」とは、「人間らしくて強いAI」とも呼べると田中は話しています。

手段としては、古典的なMCTS、強化学習、ニューラルネット、遺伝的アルゴリズムなども検証しており、社内ではほとんど研究されていない領域だったとのことです。

振り返りと学んだことに関しては、AIを学習してつくる部分については一定成功し、特定の条件下では強いAIを作成でき、さらにAIのプレイ結果を可視化することで、AIの可能性を垣間見ることができたのは、大きな収穫だったようです。

課題については、最終的に導入するまでに至らず、シミュレータ制作にも苦戦しましたが、さまざまな学びと自信を得たことは事実なようです。良かった点は、2016年の発想からAIが持つ高い可能性を見つけたことで、それはすなわち今後本格的にゲームでAIに取り組むきっかけとなる「テーマを発掘」したことになります。

『逆転オセロニア』へのゲームAI導入

スマートフォン向けゲームアプリ『逆転オセロニア』について、2つのAI機能「オセロニア道場」「オススメ編成」を開発しました。

「オセロニア道場」開発の背景は、手強いAIと戦える気軽な場所がなく、アーキタイプの特性を学ぶ場所もなかったためで、ディープラーニングなどを駆使しています。

所持駒からデッキをレコメンドしてくれる「オススメ編成」については、初心者プレイヤーがデッキの組み方で迷うことが課題であったため開発したもので、技術はアソシエーション分析、レコメンド技術を主に応用していますが、ゲーム特有のドメイン知識も活用しています。

この機能を開発するにあたり、一番の成果は実際にリリースして運用できたことであり、意味のあるAIを作れたこと。事業価値的にもAIのポテンシャルを実証できたことは大きな収穫だったとのことです。

しかし、苦労する点も多く、企画からユースケースへの落とし込み、技術への結び付けなどは試行錯誤を繰り返し、かなりの時間が必要となりました。事業貢献の観点では、AIを使うとプロダクトやプレイヤーにどのような価値を還元できるのか、議論を重ねたとのことです。

振り返りとして、AIはゲームに新たな価値をもたらすことは、この段階から確信に変わり、その確信を効率的に活かすには、組織的にAIの活用をスケールさせることを意識するようになりました。

また、PoCではなく「使えるAI」を企画から開発まで作りきり、リリースできたこと、プレイヤーから定性意見やKPIなどへのフィードバックを受けることができたことは、現在のDeNAのゲームにおけるAI開発に大きな影響を与えています。

どうすればもっと上手くAIを使いこなせるのか?

DeNAのゲーム開発におけるAI活用をどうすれば加速させられるかを考えたときに、今まで得た経験を無駄にせずスケールさせていくことが最も重要だと、田中は語っています。

『逆転オセロニア』だけでなく、さまざまなゲームタイトルでAIをうまく活用することができれば、DeNAはより強い組織に成長することができると考えているようです。

ここでのキーワードは、現場レベルで課題を探索する取り組み「Bottom Up」とAIを計画的にスケールさせる取り組み「Top Down」の2つになります。

「Bottom Up」は、まだ誰も気付いていない、埋もれているユースケースを探索する意味を持ち、「Top Down」はできそうなことがある程度分かっていて、価値も大きそうなユースケースを計画的に推進していく意味を持ちます。

「Bottom Up(AIでできることの探索)」

「Bottom Up」の目的は、ゲーム領域で目の前にある事業課題を、データおよびAIの力で解決することであり、サービス・データに触れている各メンバーが双方向で協力して、目的達成のために動くことが重要です。

特定のゲームタイトルだけでなく、マーケティングやCS(カスタマーサポート)など広範囲の事業と連携すること、新技術やユースケースの発掘の中で潰れてしまう取り組みも一定許容するなど、重要なことも多数明かされました。

また、明確な戦略もなく、課題や案件の探索を行うと、それぞれのメンバーの責任分界点が非常に不明瞭になり、案件を進めづらくなるため、しっかりとあるべき姿や適切な役割分担を定義して、関係者の認識を揃えることで、効率化を図ります。

成功や失敗にこだわらず、しっかり振り返って次に繋げることができる体制をつくるために、AIや機械学習、データサイエンスの案件を、円滑にすすめるための推進フローも社内で策定しています。

これにより、取り組む価値が不明確であったり、明らかにAIでは不可能な無理難題な案件が進んでしまうことを、回避できるようになっています。このような地道な地盤作りを行うことで、簡単ではないAI開発を持続可能な状態にすることが可能になりました。

この取り組みを進める中で得られた価値として、今まで見えてこなかった課題を幅広く発見することができ、組織としてAIの活用の幅を広げることができたことが挙げられます。

また、さまざまな関係者を巻き込んで議論を重ねたため、組織レベルでリテラシーが向上し、タイトル側から「こういうことを実現したい」と相談がきた場合にも、必要十分なAIリテラシーがあるため議論もしやすくスムーズに開発が進みます。

共通の推進フローを整備したため、導入プロセスが確立し、スムーズな導入の実現が可能になってきたとのことです。

「Top Down(計画的にAIを推進)」

ここからはMLエンジニア岡田 健にバトンタッチし、「Top Down(計画的にAIを推進)」についての発表がなされました。

DeNA 岡田健

「Top Down(計画的にAIを推進)」とは、前述された「Bottom Up(AIでできることの探索)」とは対照的に、事業インパクトが出せそうな領域で計画的にAI活用をスケールさせる動きのことです。

組織的な動きをするために、DeNAではAI推進チームを発足しました。ゲームの分野でAIの応用を加速させていくチームになります。

計画的にスケールさせるためには、まず過去の歴史を学ぶことが重要です。推進チームでは社内外問わず、CEDECやGDCなどの過去の事例を蓄積しています。ユースケースは課題に対して何らかの技術をもって結果に導くものであり、他社が抱える課題やその解法などを調べた上で、組織に還元する動きを大事にしています。

課題を抱える各プロジェクトの開発現場にヒアリングし、過去の事例をどうやって適用するか、工夫するか、などの提案をして、その後適切な専門家とつなぎます。

また、DeNAにはAIシステム部というAI専門家集団を擁しており、Kagglerやコンピュータビジョンの専門家なども所属しています。自動化を推進している部署ではさまざまな専門家と、ゲームの開発をつなぐ架け橋となることを意識しています。

過去の『逆転オセロニア』チームには、タイトル側と専門家しか存在しませんでしたが、現在はAI推進チームが橋渡しの役割を担い、Kagglerが問題を解決しやすいようにセッティングしたり、シミュレータを制作してサポートします。

このチームでは、機械学習の勘所、ゲームのドメイン知識やゲームの開発経験だけでなく、エンジニアリング力も必要となります。

具体的には、最も重要なのはゲーム事業を把握して、力を蓄積して何ができるかを判断することです。

Simulator

続いては、「Top Down」の動きの中でも、技術的に中心となる「Simulator(シミュレータ)」について語られました。

ゲームに機械学習を応用させる中でSimulatorはひとつの大きな役割を担っています。AIを絡めた取り組みで必要なのは「課題とユースケースの設定」で、Simulatorはそれを解決する手段であり、技術となります。

Simulatorについて「初期段階からちゃんとつくる」「ビューとロジックを分離した作りにする」ことは当たり前で、ユースケースありきで考えると「ゲーム本体とAIの境界」「要件定義が大事」と考えられます。

そこで「Simulator=境界」とは何なのか、『逆転オセロニア』で運用中のオセロニア道場では、インバトルで強いAIを教師あり学習で作ることが目的でした。

具体的なユースケースは、強いAIと自由に対戦可能な環境を作るために、プレイヤーの棋譜ログを使用して教師あり学習で強いAIを作ることです。

『逆転オセロニア』では、キャラクターやスキルが定期的に追加されます。これに対して常にAIの最新化をしたいとき、その設定で境界には何が必要になるでしょうか?

まず「内部構造」について。オセロニア道場はGCPを利用して作られており、ゲームの端末から棋譜を推論APIへ、そこから特徴量抽出APIで特徴量に変換し、AIモデルにより推論して出た打ち手の結果をクライアントに返送します。

そのフローの中で「推論API」「特徴量抽出API」はゲームとAIの境界となります。『逆転オセロニア』では、特徴量抽出は今の盤面を再現して、そこから情報を抜き出します。

情報には「どのマスに黒い駒が置かれているか」「手札にどんなキャラクターがいるのか」を数字の配列で表し、それをもとにディープラーニングの行列計算をします。

棋譜には盤面やデッキの情報などが記載されており、特に重要なのが「各ターンに何が起こったか」という事象です。1ターン目にどの駒を置いたのか、どれくらいのダメージが出たのか、などバトル開始時から順を追って、現在の盤面の状態を復元します。

この仕組みはPythonで開発していますが、もし仮に最初から作り直すとした場合、棋譜ログをあるべき設定にすること、バトルロジックの二重管理をやめることを実現したいと岡田は話しました。

このような課題をハンドリングするためのキーワードは「リプレイ可能であること」。課題解決のため、棋譜はバイナリ形式で、特徴量抽出はゲームのバトルロジックをリプレイ可能にしておき、それを使って棋譜をビューなしでバトルリプレイして特徴量を抽出します。

バトルロジックは入力を出力に変換する機械と呼べるもので、直接のインタラクトはしません。

『逆転オセロニア』を例にすると、まずプレイヤーからの「どこに何の駒を置いたのか」という入力コマンド情報をバトルロジックが現在の盤面に置き、ダメージ計算をして内部状態を変化させます。

その結果、どういった描画をするのかを「描画ロジック」に指示します。シミュレータ側では入力コマンドは棋譜ログとして保存、学習段階では棋譜ログをバトルロジックに流し込み、同じコマンドを入力して特徴量を抽出します。

バトルロジックをリプレイ可能な仕組みに作っておけば、同じ入力なら内部状態や後段の出力も同じになるはずで、これが「リプレイ可能」な機能が必要で、重要な理由になります。

作業フローに関して重要なのはAIの学習だけではないということ。AIモデルに対してもAIの専門家が品質保証をしなければなりません。

まずAIの学習については、バトルロジックをwrap(ラップ)した「特徴量抽出リプレイヤー」を使用します。ここでは複数のマシンを並べての高速化が可能です。ここでのアウトプットは「学習したAIモデル」になります。

勝率評価に関しては、AIの学習でアウトプットされたAIモデルを、NPCや既存の他のモデルと対戦させるという「ふるい」にかけ、この時点で弱いモデルは捨てられます。ここでの境界は「対戦サーバー」になります。

勝率評価で得た対戦ログは打ち手の評価に使用されます。打ち手の評価とは、AIが打った手を人間が実際に目で見て確認し評価することです。その段階でなぜ勝率が上がらないのか、どんな状況のときにどんなパターンで負けるのか、などを分析します。

このイテレーションをできるだけ短く実行するために、ゲームデバッグ機能のひとつとしてバトルのリプレイ&観戦機能が必要です。ここまで勝ち残ったモデルは、試し打ち(人間 vs AI)を経て、AIコンテンツにデプロイします。

以上のように、ひとつのユースケースにおいても、ゲームとAIの境界は多数存在します。それらをすべて機能させる必要があり、そのために(シミュレータで)重要なのがリプレイ可能であることです。

最後に岡田は「AI-native」なゲーム開発は面白いが、ゲーム開発者の設計や実装による協力が不可欠であり、密に連携して開発を続けていきたいとの言葉で、セッションを締めました。

取材・文・撮影:細谷亮介

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterアカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

プロデューサーや専門家らと共に、UX向上を目指す。“ゲーム✕AI”を推進する「ハブ役」の正体とは?

「インターネットやAIを活用し、永久ベンチャーとして世の中にデライトを届ける」をビジョンに掲げるDeNAでは、AIをゲームに積極的に導入・活用していくため[su_highlight background=”#fcff99″]ゲーム事業部内に「AI推進部」が新設[/su_highlight]されました。

これまでもDeNAの運営タイトルにはAIが活用されてきたケースがありますが、AI推進部の誕生によって今までと何が異なるのでしょうか? 今回、AI推進部の部長である小東祥、そして所属メンバーの佐藤勝彦と河合安甲子に、部のビジョンや目指す姿などを聞いてみました。

“ゲーム✕AI”を推進する専門部署

――まずはAI推進部の取り組みについて教えてください。

小東祥(以下、小東:AI推進部はその名の通り、AIを活用したゲーム開発を推進するために発足した部署でして、[su_highlight background=”#fcff99″]「AIを活用して構造的強みを構築する」[/su_highlight]というビジョンを掲げています。

社内では2017年頃からIPタイトルにおけるAI活用をきっかけにし、これまで『逆転オセロニア』で多くの事例を生み出してきました。

ただ、これまでのAIに関する取り組みは、「AIを活用したい」という意思を持ったメンバーが個々でAI本部に所属するリサーチャーなどに相談し、独力でAI活用を模索してきた背景があります。

ただその場合ですと、以下のようなさまざまなデメリットが発生するケースもありました。

・最後までやりきる事自体が非常に難しい
・成果が出るまでに時間が必要になる
・役割分担がうまくできない
・ゲーム開発における優先順位が下がりがち(ボトムアップの取り組みになるため)

そこで今回、ゲーム事業部内に専門部署を立ち上げることで、[su_highlight background=”#fcff99″]ゲームにおけるAI導入のスピードアップ[/su_highlight]や、[su_highlight background=”#fcff99″]AIの有効活用によるUX(ユーザー体験)向上[/su_highlight]を目指していきたいと考えています。

小東 祥 | AI推進部 部長
2012年新卒でDeNA入社。入社以来一貫してゲーム事業領域でのプラットフォーム/ゲームタイトル分析を担当。 分析部の部長、『逆転オセロニア』や『メギド72』など自社オリジナルゲームの運営部門の部長を経て、2019年4月よりAI推進部の部長に就任。ユーザーインテリジェンス部の部長と兼務。

社内のAI専門家を繋ぐハブとなる

――AI推進部の役割や、部内の体制など詳しく教えてください。

小東:AI推進部は[su_highlight background=”#fcff99″]部署間の「ハブ」になる役割[/su_highlight]を持っています。

そのため下図のように、社内のAI専門家(Kagglerやリサーチャーなど)と、タイトル開発チームのサポート役として、要件定義や計画立案、導入サポートなどを橋渡ししていくイメージです。

AIに関する情報を集約し、AI機能の企画から実装まで、社内各部署との架け渡しを担っている

小東:この体制を実現するためには、AI推進部内にさまざまな経験を持ったメンバーが必要となります。単純に機械学習に得意な人だけではうまくハブになることもできませんし、ビジネスだけだと、ソリューションが十分に理解できないなどの懸念が出てきます。

そのような不足点を補完するために[su_highlight background=”#fcff99″]職種混合チーム[/su_highlight]を作り、課題解決に向けてチームとして柔軟に推進していくことが大事です。タイトル開発チーム単体ではAI施策の推進がやりきれない時には、チーム外から我々というリソースを補強し、AI施策を迅速に推進できると理想ですね。

他にも、部全体の役割として、ゲームに限らずAI領域にはどのような最新技術があり、どんなユースケースがあるのかなど、幅広く知見を収集する役割も担っています。

最新知見を蓄積し、現状の各開発チームの課題に対する解決策(=技術)が判明してきたら、それを実現するための要件定義や推進をしていくのも我々の役目です。決して受け身にならず、[su_highlight background=”#fcff99″]AI推進部が起点となって、各部署と一緒に“ゲーム✕AI”の理想形を追求[/su_highlight]できればと考えています。

――ハブになるだけでなく、AIのプロフェッショナル集団でもなければいけないと?

小東:そうですね。社内のAI専門家を適切に巻き込むことが必要なので、彼らが何を得意としているのか、技術がどの分野で役立つのかを見極めるためには、我々もある一定の専門性を持たねばなりません。

ただ、AIの学術的な知見などは専門家に任せつつ、我々は対象となる技術が[su_highlight background=”#fcff99″]どのように事業価値を生み出せるのかを考え、実現に向けて推進していくことが大切[/su_highlight]だと考えています。

――各関係者をつなぐには、AI推進部のメンバーもゲームのドメイン知識など、一定の広い知識が必要になりそうですね。

小東:そうですね。取り組む領域によっても変わりますが、例えばQAの効率化ならQAの実作業、デザインのアセットをAIで動かすにはデザイナー、ゲームAIを作るならクライアントサイドの作り方を、それぞれ知らなければなりません。

すべての知識や技術をひとりでカバーするのはとても難しいので、メンバー同士で得意・不得意を補い合い、チームとして機能するようにバランス調整をしていく予定です。

――現在、開発中のプロジェクトとも連携はしているのでしょうか?

小東:はい、詳しくはお話できませんが、すでに動き始めています。DeNAでは[su_highlight background=”#fcff99″]今後も新規タイトルの開発を進めていきます[/su_highlight]ので、AI推進部の存在感をさらに発揮していきたいと考えています。

――新規タイトル開発の際には、プロデューサー陣とはどのように連携していくのでしょうか?

小東:初期の企画段階からプロデューサーとは密に連携していきます。

プロデューサーは事業責任者であり、AIを含めた施策が実現したときに、それが本当に費用対効果に見合うのか、そして望む価値が競争力につながるのかなど、さまざまな視点で状況を把握していきます。我々はそのような[su_highlight background=”#fcff99″]プロデューサーの一助になるべく、AIを軸にサポート[/su_highlight]できればと思います。

もちろん新規タイトル・運用中タイトル問わず、「面白いからやってみよう!」というスピード感のある取り組みも存在しますが、AI導入時は費用やリソース、開発期間も大幅に必要になるため、事前にプロデューサーと期待値を含めて入念にすり合わせをしています。

その後、マーケターやディレクター、プランナー、デザイナー、エンジニアなど、開発フェーズに応じて、各職種との連携も進めていきます。特にゲーム内にAI機能を組み込む場合には、プレイヤーへの伝わり方などについて、プロデューサーをはじめとした開発メンバーとも密に連携します。

武器商人のような支援部門に

――同じく新設された「ユーザーインテリジェンス部」と目的が似ている部分も多い印象ですね。

小東:そうですね。開発チームに対して、足りない視点を補ったり、蓄積している知見を横展開する、という側面は似ていると思いますね。

AI関連の技術を扱うのがAI推進部で、マーケティングリサーチなどで分析する強みを持つのが、ユーザーインテリジェンス部です。お互い持つ武器が違うだけで、目的とするミッションはほとんど変わらないと思っています。

ヒットの確率を1%でも高く!ゲームの“面白さ”を科学する、DeNAの新たな挑戦【ユーザーインテリジェンス部 小東祥】

――プロデューサー陣にとっては、心強い武器になっていきそうですね。

小東:そうなってくれたら、嬉しいですね。RPGで例えると、僕らは勇者に強い武器を与える「武器職人」のような役割だと思っています。ドラゴンに勝つにはこの武器がオススメ!みたいな(笑)。

――ちなみに内製や協業など、開発体制の違いによって動き方はどう変わるんでしょうか?

小東:意思決定や推進においては、関連する人間が多ければ多いほど複雑になります。特に協業や複数のパートナー会社様と開発を進める場合は、お互いの担当範囲などもあるので、推進していく難易度は上がると思われます。

ただ、最終的な目的は変わらないはずですので、そこはうまく[su_highlight background=”#fcff99″]AI推進部がリード[/su_highlight]できればと考えています。

――知見やユースケースを蓄積していけば、新規IPの獲得もできるかもしれませんね。

小東:我々がAIによって構造的な強みを作り、それが業界における優位性となる。その結果として[su_highlight background=”#fcff99″]新規IP獲得に繋がる、という流れは理想[/su_highlight]ですね。

DeNAという会社自体では「AI」に強みがあると認知いただけている方も多いと思いますが、“ゲーム✕AI”も世間にもっと認知されていけば、他のIPホルダー様もDeNAを魅力あるパートナーとして注目してくれるかもしれません。

【データサイエンスの競技者”Kaggler”が活躍する職場】社内での立ち回りやエンジニアやアナリストとの関わり方、今後のビジョンが語られた

そして結果的に我々が目指す「AIを活用して構造的強みを構築する」の実現(パブリッシャー戦略への貢献)にもつながると思っています。

――他社でAI推進部のような機能を持つ部門はあるのでしょうか?

佐藤勝彦(以下、佐藤:ゲーム業界の国内企業ではほとんど聞かないですね。

AI研究が活発な会社は数社あると個人的に認識していますが、R&Dとタイトルの内部をつないで有機的に推進する部署というのは、[su_highlight background=”#fcff99″]おそらくDeNAがはじめて[/su_highlight]だと思います。

小東:AIリサーチ部門に関しては各社でも展開していますが、それをきちんと事業に落とし込むには、推進部のような部署が必要だと思います。他社ではちょうど着手しはじめたくらいかもしれませんね。

佐藤 勝彦
フロムソフトウェア、CygamesResearch、ドリコムを経て、2019年7月にDeNAに入社。ゲームxAIを軸足に、タイトルの開発運用と技術研究に従事。エンジニア・リサーチャー・企画・ディレクターと職域を広げながら、知見共有や、タイトル・R&D部署間のシナジーの向上に注力。

<講演歴>
『ShadowverseのゲームデザインにおけるAIの活用事例、 及び、モバイルTCGのための高速柔軟な思考エンジンについて』(CEDEC2016)

十人十色の強み

――AI推進部にはどんな経歴・スキルをもったメンバーがいるのでしょうか?

佐藤:私は今年7月に入社したばかりですが、[su_highlight background=”#fcff99″]何らかの専門性を持った方がすごく多い印象[/su_highlight]があります。河合さんもそうですが、横断組織として、タイトルや各部署に寄り添ってシナジーを高められるよう、豊富な経験を持ったメンバーが集まっていると感じています。

――河合さんは、部発足時のメンバーだと事前に聞いていますが。

河合安甲子(以下、河合:そうですね。私はもともと社内の開発基盤部に所属していたのですが、個人的にAIに興味があって、AIに関するセミナーに足を運んだりなど、独学で勉強していました。

当時の上長に「AI研究者がゲーム開発チームと直接連携するのは大変なので、その橋渡しをできる人が必要かもしれません」と話したタイミングで、AI推進部を立ち上げることを聞かされました。

河合 安甲子
コンシューマ向けゲーム開発/ゲームエンジン開発に携わり、2017年にDeNAに入社。ゲーム基盤部に配属された後、AI推進部に異動。

小東:あの時はかなりタイムリーでしたね(笑)。

――河合さんはすでに、このような機能を持つ部署は必要だと感じていたのですか?

河合:はい。当時は関係者ではなかったため、遠目でしか見ていなかったのですが、現場の大変さは感じていました。(設立について)急いで小東さんに話を聞きに行きましたよ。

小東:河合さんがAI推進部の一番最初のメンバーなんです。

河合:小東さんと2人からのスタートでしたね。今はメンバーは増えていますが(笑)。

小東:河合さんは、ゲーム開発におけるスキルや知識などを持っていることが強みなんです。ゲーム開発にAIを組み込んでいくことが、AI推進部のコアな目的ですので、[su_highlight background=”#fcff99″]ゲーム開発のことを理解していることは重要[/su_highlight]ですからね。

さらに、今まで自分が経験したことがない領域にも、積極的にキャッチアップしてくれますし、開発チームのエンジニアと連携して、着実に実装へと進めてくれるので本当に助かっています。

――ちなみに佐藤さんは2019年7月に入社されましたが、どのような経緯でAI推進部にジョインしたのでしょうか?

佐藤:私はもともとコンシューマゲームの開発会社で、ゲームエンジンの開発や技術研究、タイトルのAI実装などを手がけるエンジニアからキャリアをスタートしました。その後も、研究部署とタイトル開発の双方をまたいだ「ゲームAIのリサーチャー」として活動する中で、いろいろな課題を目の当たりにしてきたんです。

――いろいろな課題とは?

佐藤:冒頭で小東さんが話していたような、立場や目線の食い違いによるトラブルや、場合によってはプロジェクトが途中で消えてしまうなどの課題を見てきました。そこで[su_highlight background=”#fcff99″]「横断的な目線でゲームとAIに触れる人材がいれば、プロジェクトは進みやすくなるのでは?」[/su_highlight]と感じていました。

それからは、企画やディレクターとしてゲーム業界で職域を広げながら、橋渡しになれるような役割を模索していたときに、小東さんからDeNAでAIの横断推進に注力することを聞いて、「これは乗るっきゃない!」と共感して入社を決めました。

小東:佐藤さんのスゴいところは、経験に裏付けされた「引き出しの多さ」です。さらに引き出したものをうまくデリバリーする気遣いも細かいですね。

彼はエンジニアからキャリアスタートして企画やAI推進、PM的な動きもしてきました。業務を多角的に見てきているからこそ、AIの活用方法や、AI導入時にトラブルが発生しやすい箇所などを嗅ぎ分ける能力も持っていると感じたので、私が熱烈に口説いて入社してもらいました。

それに一般的に分析者って、比較的堅苦しかったり、データばかり見ていて話しかけづらいイメージがあると思うのですが、佐藤さんは物腰柔らかで、しっかり物事を前に進めるコミュニケーションができる人ですね。


AI推進部の人員体制。多彩な知見を持つメンバーで構成されている。

(社内資料より抜粋)

――そのような経緯があったんですね。ちなみに佐藤さん、河合さんは入社前にDeNAという会社を外から見てどんな印象でしたか?

佐藤:最近ではゲーム業界を含めて、「CEDEC2019」の公開セッションを見てもわかるように、AIに関して実際のデリバリーを意識した取り組みが、各社で増え続けています。

【CEDEC2019】DeNAゲーム事業部関連のセッション内容をチェック

その中でもDeNAは特にモバイルの領域において0→1の先行事例をいち早く発表しています。課題解決の苦労を経験した上で、[su_highlight background=”#fcff99″]1→100にスケーリングするためにはどうしたら良いか[/su_highlight]という目線での取り組みを推進されていて、良い意味で異色な会社だと感じました。

河合:私も丁寧にゲーム運営している部分は、外部から見ても感じていましたね。

佐藤:分析に真摯に向かい合っている姿勢もすごく感じていました。

分析の本質は、数字とにらめっこすることにあるわけではなく、サービスに関わる方々やプレイヤーにとって価値ある時間をより高めていくにはどうすればいいか、[su_highlight background=”#fcff99″]割と生々しい部分に真剣に向き合う必要がある[/su_highlight]と思っています。

『逆転オセロニア』や『メギド72』の立ち上がり時から改善を重ねて、どんどん愛されるサービスに変わっていった過程を、外から見ていても非常に感銘を受けましたし、分析に強みを持った会社だからこそ、再現性やスケーリングが実現できているのかな、と感じていました。

【DeNA分析部特集Vol.1】『逆転オセロニア』を支え続けるDeNAゲーム分析の強さとアナリストに求められる役割とは?

【DeNA分析部特集Vol.5(前編)】未来を予測し、最適解を導き出し続ける組織 〜分析の高度化に向けた次のチャレンジとは〜

――プロジェクトに寄り添うことで、提案をし合ったり、他の部署と横断して施策を考えることもできますよね。

佐藤:部署・職種を問わず皆さん本当に多くの知見を持っているので、仲立ちを通じて、色んなアイディアに触れられるのは非常に刺激的ですね。

相談にも真摯にも乗っていただけますし、「このようなユースケースで技術を使えないか?」「この部分を改善できるともっと開発が楽になる、 サービスの改善・開拓に繋がるのでは?」といった提案も数多くいただけます。

佐藤:それにDeNAの特徴的なところは、ゴールベースで話をする、[su_highlight background=”#fcff99″]コトに向かう目線[/su_highlight]があります。目線が揃っているので部署の壁も感じませんし、相談もしやすいですね。

実際にサーベイするときに分析部のメンバーと一緒に取り組めたり、アイデアが上がってから検討が始まるまでもタイムラグが本当に少ないです。小東さんに相談すると「すぐ検討しちゃってください!」って快諾してくれます(笑)。

河合:NOと言われたことはほとんどないです!とても動きやすいですね。

小東:褒められると、ちょっと照れますね……(笑)。

個のチカラを活かした推進力

――少し話は逸れますが、佐藤さんと河合さんのお互いの印象などを教えてください。

小東:おっ、それは聞いたことないかも……(笑)。

河合:私はもともと開発基盤部に所属していました。前職もゲームエンジンを手がける部署でしたので、AIについては正直まだまだ勉強中の身です。

AIに関しての一般的なセオリーについては、この部署で佐藤さんに教えてもらうことが多いですし、目指すべきプロセスが明確に可視化された気がします。

もちろんみんな実現したいことは描けるんですが、AI導入のメリットや意図、手順を開発側に伝えたり、地道に布教していくことを教えてくれたのも佐藤さんです。自分の作業も含めて、進む方向がすごくクリアになった感じです。

佐藤:ありがとうございます……(照)。河合さんは、エンジニアとして並外れた実力を持っているのは当然なんですが、それ以上に話しやすく、いろんな人をコミュニケーションで結ぶ「足」がめちゃくちゃ速いと感じています。巻き込みたい人に対して、次の日にはランチの予定が組まれているのは驚きです(笑)。

また、人柄が柔らかく、相手の目線に寄り添って話をするので、ミーティングでも全体の雰囲気が和やかになりやすいんです。しかもエンジニアとして課題感の理解も早く、タイトルの経験も多いので、河合さんがいるととにかく話が早くなります。

河合:そんな風に言っていただけるなんて……ありがとうございます。もっと頑張ります……!

“ゲーム✕AI”とQAのさらなる可能性

――それでは最後に、AI推進部の今後の取り組みなどについて教えてください。

小東:『逆転オセロニア』のように直接ゲーム内のAIがプレイヤーに触れられて、UX(ユーザー体験)を向上させていくような機能を作っていくのが、ゲーム開発において一番コアな部分です。AI推進部としても、このような事例を数多く生み出していけるように注力していきたいですね。

もうひとつは[su_highlight background=”#fcff99″]QA(品質保証)[/su_highlight]です。

世の中のAI活用はコストカット目的の側面が強く、QAはそれを担うイメージが強いですが、開発メンバーが膨大な時間を費やしているバグチェックや修正などをAIが肩代わりできれば、空いた工数をゲームの面白さを考える時間に当てられると思っています。

それが実現すれば、UX(ユーザー体験)もよりリッチになっていく可能性があるので、QAに関しても今後は注力していきたいですね。

課題点については、まだメンバーが少ないので、同じように動けるメンバーが増えてくれると嬉しいですね。その中でもデリバリーを担う、クライアントエンジニアが増えてくれると助かります。

特にエンジニアリングの部分は、ゲームタイトルごとの開発環境や使用ツールなどを把握して推進するのはとても大変ですし、施策を増やす上でボトルネックになる部分だと感じています。

――9月に開催された「Unite Tokyo 2019」にてシステム本部のSWET(Software Engineer in Test)グループとも連携するセッションが公開されていましたが?

小東:そうなんです。あの施策はAI推進部が旗振りをしており、QAの領域に注力していく中で、SWETのような専門家やタイトルの開発メンバーを巻き込んで進んでいったひとつの事例になります。今後はあのような取り組みをどんどん増やしていこうと思っています。

【Unite Tokyo 2019】「Unity Test Runnerを活用して内部品質を向上しよう」セッションレポート

――ありがとうございました。

インタビュー・執筆:細谷亮介
編集:佐藤剛史
撮影:齋藤暁経

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。

【CEDEC2019】DeNAゲーム事業部関連のセッション内容をチェック

CEDEC2019

2019年9月4日(水)~9月6日(金)の3日間で開催された「CEDEC2019」では、DeNAゲーム事業に関する7つのセッションが行われました。編集部では、今回はその7セッションをピックアップしましたのでぜひご確認ください!

登壇情報(9月4日)

ゲーム開発者とゲームメディアの理想の関係とは?

■セッション内容
リアルイベントやコミュニティの醸成、企業が独自のオウンドメディアを展開するなど、ゲーム開発者がSNSなどで自ら発信することも増えてきた昨今、ゲーム開発者とゲームメディアの理想の関係とは何か? DeNAのゲーム事業部を率いる佐々木悠と、2019年7月より、まったく新しいメディアの形を模索して完全独立系のメディアとして再スタートをした電ファミニコゲーマー編集長のTAITAIこと平信一によるディスカッションです。(開始時間/14:50〜)

■登壇者
佐々木 悠(株式会社ディー・エヌ・エー)
平 信一(株式会社マレ)

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”2″]
[su_row][su_column size=”1/6″ center=”no” class=””]
[/su_column] [su_column size=”5/6″ center=”no” class=””]
■DeNA登壇者プロフィール

佐々木 悠
執行役員 ゲーム・エンターテインメント事業本部 ゲーム事業部長

慶應義塾大学卒、2009年DeNA新卒入社。入社後はモバイルオークションのサイト運営、広告営業の経験を経て、2010年にゲーム事業に異動。住み着き妖精セトルリンの運営、有名IPゲームの立ち上げを行いつつ、組織マネジメントに従事。アプリ開発部署の部長として『三国志ロワイヤル』、『FINAL FANTASY Record Keeper』の立ち上げ後、職能組織長として部署の立ち上げとマネジメントを実施。その後、専門役員として協業案件に従事して新規ゲームの立ち上げに尽力。2019年4月からゲーム・エンターテインメント事業本部ゲーム事業部長に就任。

■受講者へのメッセージ

新しいメディアの形を模索し続ける電ファミニコゲーマー様と、ゲームの文化を伝えていくために開発者とメディアがどう向き合い語り合うのがよいか?情報発信の選択肢が多様化している今だからこそ改めて検討していければと思います。

【CEDEC2019】「ゲーム開発者とゲームメディアの理想の関係とは?」セッションレポート

[/su_column][/su_row][/su_note]


組織的に Game x AI を推進していくための方法論
〜『逆転オセロニア』 の一歩先へ〜

■セッション内容
私たちは運用中のモバイルゲーム『逆転オセロニア』においてデッキ編成をする AI、人間のような戦いをする AI をリリースしました。まず今回は、AI をうまく活用することができた開発プロセスなどを整理し、リリースまでの軌跡を振り返ってみます。

その中で技術検証からリリースまで一貫して行った経験から、AI 活用を成功させるために重要な要素がいくつか見えてきました。過去事例の収集、自社の個別ゲームタイトルの要望の把握、投資領域の選定、課題設定への落とし込み、AI開発をスムーズにするような周辺ツールやデータの整備、そしてそれを可能にするための部署横断での体制の整備……。

本セッションでは、これらの「AI 開発のあるべき」を検討します。その中でも技術的に重要になってくるシミュレータについては具体的な設計を交えてお話しします。(開始時間/17:50〜)

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”2″]
[su_row][su_column size=”1/6″ center=”no” class=””]

[/su_column] [su_column size=”5/6″ center=”no” class=””]
■登壇者プロフィール

田中 一樹
AI本部 AIシステム部 データサイエンス第一グループ
データサイエンティスト

2017年に DeNA 入社後、データサイエンティストとしてアプリゲーム『逆転オセロニア』に関する AI 機能の開発に従事し、機械学習、強化学習、データサイエンス技術の研究開発 / 設計から実応用に携わる。現在は、多様な事業へのデータサイエンス活用を目指した研究開発や課題発掘に従事。大学時代は電力系統に関する数理計画や統計的機械学習の工学的応用を研究。『速習 強化学習 −基礎理論とアルゴリズム−』(共著)を執筆。データ分析の大会に没頭し複数大会で入賞。Kaggle Master。

■受講者へのメッセージ

AIをモバイルゲームに活用するのはとても面白くもありますが、大変な面もあります。特に、AIの不確実性や、どんなAI機能がプレイヤーさんに価値を提供できるのか、真摯に向き合って考えなければいけないことは多くあります。

本セッションでは、現在AI機能を開発しているまたは将来に開発をしたいと考えている皆様のお役に立つ情報を発信できればと思います。[/su_column][/su_row][/su_note]

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”2″]
[su_row][su_column size=”1/6″ center=”no” class=””]

[/su_column] [su_column size=”5/6″ center=”no” class=””]
■登壇者プロフィール

岡田 健
AI本部 AIシステム部 MLエンジニアリンググループ
MLエンジニア

DeNA所属のエンジニア。元数学徒。ゲーム『FINAL FANTASY Record Keeper』を開発 / 運用していたが、2018 年からはその経験を生かして AI によってゲームのおもしろさの軸を増やしたり、ゲーム作りの方法を変革する側に。『逆転オセロニア』への AI 導入では学習高速化、学習管理の仕組み作り、実サービスのためのアーキテクチャ設計と実装などを担当。

■受講者へのメッセージ

AI は、言うなれば魔法です。便利な半面、それなりにコストがかかりますし、専門家が必要なことが多いです。準備が不完全であれば、不発になるときだってあります。敵の弱点を突けなければ、費用対効果に合わないこともあります。

魔法使いを上手く既存のパーティーに組み込んで、より難易度の高いことをなしたり、今まで行けなかったところに行くためにはどうするべきか? 我々のケースを通じてお伝えできればと思います。

【CEDEC2019】「組織的にGame x AIを推進していくための方法論~『逆転オセロニア』のAIの一歩先へ~」セッションレポート

[/su_column][/su_row][/su_note]

登壇情報(9月5日)

自由に移動できるVRゲームにおけるプレイヤーの誘導、こうやってみました

■セッション内容
このセッションでは、VR空間内を自由に移動できるタイプのゲームにおいて、いかにプレイヤーの行動を制御しゴールまで導くかという課題をどのように解決したか、実例をもとに説明します。加えて、VRゲームに没入するために必要な『没入感』や『納得感』を上げるために行った、世界観を含めた演出についても取り上げます。

カテゴリはAC分野としていますが、ゲームデザインやサウンドまで幅広く演出のお話をする予定です。今回はDeNAが研究開発しTGS2018やLAVAL VIRTUAL 2018にも出展した謎解きアドベンチャーVRゲーム『VoxEl(ボクセル)』を実例としてご紹介します。(開始時間/14:50〜)

■登壇者
永田 峰弘(株式会社ディー・エヌ・エー)
高橋 宏典(あまた株式会社)

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”2″]
[su_row][su_column size=”1/6″ center=”no” class=””]

[/su_column] [su_column size=”5/6″ center=”no” class=””]
■DeNA登壇者プロフィール

永田 峰弘
ゲーム事業部Publish統括部第四プロデュース部
ゲームデザイナー

サウンドクリエイターを経てゲーム業界にプランナーとして入り、2011年にDeNAに入社。モバイル、スマートフォン向けタイトルを中心に企画、ディレクションを担当。

複数タイトルの企画面を横断でサポートしつつVRの研究開発に着手。2018年にハイエンド向けVRゲーム『VoxEl』を開発、TGS018やLAVAL VIRTUAL 2018に参考出展。本タイトルではプロデューサー、企画、シナリオ、サウンドを担当。酒粕から作った甘酒がすきです。

■受講者へのメッセージ

『VoxEl』開発中に試行錯誤したこと、またTGS2018などで試遊していただいた際に得られた知見を元に、VR開発の初歩的な注意点から、VR空間内でのプレイヤー誘導、また納得感や没入感を高めるために実装した内容をご紹介します。
受講していただく皆様にとって、より楽しいVR体験を作るための手助けになればと思います。

【CEDEC2019】「自由に移動できるVRゲームにおけるプレイヤーの誘導、こうやってみました」セッションレポート

[/su_column][/su_row][/su_note]


『逆転オセロニア』における、機械学習モデルを用いたデッキのアーキタイプ抽出とゲーム運用への活用

■セッション内容
プレイヤーが構築したデッキを用いて対戦する PvP ゲームにおいて、代表的なデッキ構築パターン (アーキタイプ)、そして各アーキタイプの使用頻度、 総合勝率、 対戦成績などの KPI を継続して観測することは、 現状のゲームバランスを把握し、 プレイヤーのゲーム体験を向上させる上で有用である。

本講演では、 『逆転オセロニア』における、 機械学習モデル (トピックモデル) を用いた、 大規模データからのデッキアーキタイプの抽出、 アーキタイプに関連する KPI の可視化、 これらを用いたゲーム運用への活用について紹介する。(開始時間/16:30〜)

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”2″]
[su_row][su_column size=”1/6″ center=”no” class=””]

[/su_column] [su_column size=”5/6″ center=”no” class=””]
■登壇者プロフィール

安達 涼
ゲーム事業部Publish統括部分析部
アナリスト

人間の意思決定プロセスの数理モデル化と、その神経基盤を解明する研究に従事し、カリフォルニア工科大学PhD(計算論的神経科学)を取得。2018年3月にデータアナリストとしてDeNA入社。機械学習の手法のみならず、行動経済学の知見などを用い、人間のゲーム内外での行動データを包括的に理解することで、ゲームタイトルの運営力・UX向上を目指している。

■受講者へのメッセージ

モデル構築から実運用まで幅広い内容をカバーしますので、みなさまお気軽にお越しください。

[/su_column][/su_row][/su_note]

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”2″]
[su_row][su_column size=”1/6″ center=”no” class=””][/su_column] [su_column size=”5/6″ center=”no” class=””]
■登壇者プロフィール

岩城 惇
ゲーム事業部Develop統括部企画部
プランナー

大学卒業後、ゲーム制作の道へ。アクションゲームやRPGの開発に携わる。『逆転オセロニア』では運用プランナーとして機械学習を用いたキャラクターのレベルデザインに携わっている。

■受講者へのメッセージ

機械学習が実際に運用の現場で活用されている「生」の様子をお伝えできればと考えております。

【CEDEC2019】「『逆転オセロニア』における、機械学習モデルを用いたデッキのアーキタイプ抽出とゲーム運用への活用」セッションレポート

[/su_column][/su_row][/su_note]

登壇情報(9月6日)

ゲームと機械学習の最前線
〜現状と未来を正しく捉えるために〜

■セッション内容
近年の機械学習研究の進捗は目覚ましく、ゲーム産業でも様々な活用事例が報告されてきています。一方で、これらの技術に対する加熱した期待値も成熟を迎え、「ゲーム開発・体験にどの程度インパクトを与えるか」「どのように戦略的な活用を目指していくべきか」といった論点に注目が集まっています。

本セッションでは、ゲームと「機械学習」の関わりについて認識を深めていきます。パネリストとしては、機械学習導入を実際に成功させ、ゲーム開発やUXへの影響について見通しを持つメンバーを集めました。国内外で発表されている多くの事例を整理し、2019年時点で出来ること・不足している要素、中長期的な戦略について、現実的な目線で議論を展開します。(開始時間/11:20〜)

■登壇者
奥村 純(株式会社ディー・エヌ・エー)
三宅陽一郎(株式会社スクウェア・エニックス)
長谷 洋平(株式会社バンダイナムコスタジオ)

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”2″]
[su_row][su_column size=”1/6″ center=”no” class=””]

[/su_column] [su_column size=”5/6″ center=”no” class=””]
■DeNA登壇者プロフィール

奥村 純
AIシステム部 AI研究開発グループ
AI研究開発エンジニア

国内外の研究機関で観測的宇宙論の研究に従事し、京都大学理学研究科宇宙物理学専攻にて博士号取得。DeNAではデータアナリストとしてユーザー体験や事業推進をデータからサポートすることを目指し、主にゲーム領域のデータ分析・パラメータ設計の経験を積む。2017年よりAI研究開発エンジニアに転身しゲームAIの研究開発を推進、 複数のAI施策をリリース。機械学習の実ビジネス適用や、UXデザインに興味を持っている。

著書:
『データサイエンティスト養成読本 ビジネス活用編』
講演:
『次世代QAとAI 』(CEDEC2018)
『一周年で爆発した「逆転オセロニア」における、ゲーム分析の貢献事例』(CEDEC2017)

■受講者へのメッセージ

昨年は『次世代QAとAI』というテーマで、QA文脈にフォーカスして機械学習の活用方法や見通しを議論しました。その後も技術は様々な形で進展しており、ゲーム開発の多くの領域で機械学習導入のトライアルが行われたり、学術業界によるゲームAI研究も進んだりしています。

本セッションではより広い観点から「ゲーム」と「機械学習」の関係を考えます。国内外の最新事例の紹介から現在の状況を俯瞰し、現実的な目線で今後の見通しについて議論を広げていけたら嬉しいです。

【CEDEC2019】「ゲームと機械学習の最前線~現状と未来を正しく捉えるために~」パネルディスカッションレポート

[/su_column][/su_row][/su_note]


サービス終了寸前だったタイトルが、CMを使わずにDAUを増やして九死に一生を得たSNSプロモーション術

■セッション内容
本セッションでは、SNSでの情報の伝播を戦略的に盛り込んだコミュニケーションの手法を紹介します。
主にtwitterを通してゲームの情報が伝わったり、SNSでの盛り上がりによって「いまこのゲームがアツい」といった雰囲気を作り出すことで、新規のプレイヤーを呼び込んだり、ゲームから離れていたプレイヤーに復帰していただいたりすることが可能です。

ゲームリリース1周年のタイミングを機にプロモーション戦略の柱の1つに「SNSでの盛り上がり」を設定し、サービス終了の危機を脱することができた「天華百剣 -斬-」の事例と共にその手法を紹介します。(開始時間/13:30〜)

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”2″]
[su_row][su_column size=”1/6″ center=”no” class=””]

[/su_column] [su_column size=”5/6″ center=”no” class=””]
■登壇者プロフィール

ナカムラ ケンタロウ
ゲーム事業部Publish統括部第四プロデュース部
「天華百剣 -斬-」プロデューサー

2013年に株式会社DeNA Games Osakaに入社。
プランナーとして社内の運用タイトル、新規タイトルを担当。
2014年の夏頃より金髪になる。
2017年11月より「天華百剣 -斬-」にディレクターとして参加。
2018年1月に株式会社ディー・エヌ・エーに転籍。
2018年4月「天華百剣 -斬-」の1周年のタイミングでプロデューサーに就任。

■受講者へのメッセージ

リリース1周年のタイミングで多くの方から応援をいただけたこと。自分自身がオタク、サブカル厨であることと前職の広告業界で制作をやっていた知見が上手く融合したこと。それらが上手く合わさった結果、1つのゲームが生き長らえることができました。

その時に得られたあれやこれやがみなさんの何かのお役に立てば幸いです。

【CEDEC2019】「サービス終了寸前だったタイトルが、CMを使わずにDAUを増やして九死に一生を得たSNSプロモーション術」セッションレポート

[/su_column][/su_row][/su_note]


大規模モバイルゲーム運用におけるマスタデータ管理事例

■セッション内容
DeNA はこれまで様々なゲームをリリース・運用してきました。その中には100名を超えるメンバーで運用しているタイトルもあれば、運用10周年を迎えるタイトルもあります。

本セッションでは、モバイルゲーム運用におけるマスタデータの管理で、特に大規模なチーム人数や、長期運用で発生してきた課題や失敗事例をご紹介します。その上で、それらの課題解決のために開発した共通マスタデータ管理システムの概要と、その機能や運用ワークフローを説明します。

そして実際のゲームの開発・運用にそのシステムを導入してみて、どのような効果があったかをお話します。(開始時間/16:30〜)

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”2″]
[su_row][su_column size=”1/6″ center=”no” class=””]

[/su_column] [su_column size=”5/6″ center=”no” class=””]
■登壇者プロフィール

人西 聖樹
ゲーム事業部Publish統括部共通基盤部
ゲームデベロッパーライブラリグループ エンジニアリングリード

DeNAの大規模mobageタイトルの開発・運用のリードエンジニアを経て、現在はゲーム横断の開発基盤の部署にて、マスタデータ管理システムの開発リーダーを担当。

■受講者へのメッセージ

モバイルゲーム特有のマスタデータの運用周りの苦労や、それに対してどのようなアプローチをしていったかをお伝えできればいいなと思っております。

【CEDEC2019】「大規模モバイルゲーム運用におけるマスタデータ管理事例」セッションレポート

[/su_column][/su_row][/su_note]

 

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]
GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitterアカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

引用:「CEDEC2019」公式サイト

※掲載内容は、公開日時点の情報です。セッション内容等は当日変更になる可能性もありますので、ご了承ください。

【GDMイベントレポ】ゲーム要素のコントロールと感情の対応関係とは?「2次元感情マップに基づくメタAI:里井大輝氏」

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年5月17日に開催された「GDM Vol.32 エンジニア向け勉強会:ゲーム産業におけるゲームAI研究・開発の最前線~会話AI、メタAI、ユーザ感情推定~」では、スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部のメンバーをお招きして、GDC2019で発表した内容を中心に、最新の研究成果を紹介していただきました。

本記事では、スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIリサーチャー「里井 大輝」氏より発表された「2次元感情マップに基づくメタAI」について、セッション内容をレポートします。

2次元感情マップに基づくメタAI

里井氏は冒頭で、自分の作っているゲームにメタAIをどのように適応させればいいか、イメージすることがなかなか難しい理由を語りました。

キャラクターAIなら賢そうに動く、ナビゲーションAIなら上手に経路探索してくれる、と役割がわかりやすいですが、メタAIはゲームを面白くするのにどうしたらいいかを判断するという、人間でもなかなか答えを判断できない難しいことをAIに任せているのが現実だと話しました。

例えば、ゲームのバトル部分について、プレイヤーキャラ・味方NPC・敵NPCが配置されているフィールドがあるとします。

このバトルを「面白くしてください」と言われたときに、何をどこまで改修するかを考えたときに、「プレイヤーが使える装備は大量にある(かも)」「各敵NPCは大量のパラメータを持っている(かも)」「このゲームには大量のレベルがある(かも)」などなど、想像できる要素が多く、バトルを面白くするのは容易ではありません。

このような場合、メタAIを使えば、ゲーム全体をまとめてコントロールすることが可能ですが、どの要素をどのようにコントロールすれば面白くなるのかを判断するのが、難しいポイントです。

ゲーム要素のコントロールの項目には「仲間NPCにプレイヤーを回復させる?」「敵NPCにもっとうまく回復させる?」「敵NPCにもっと強力な攻撃を使わせる?」など考えられることは無数にあります。

ここで達成したいことは「プレイヤーの感情を知り、それを特定の方向に動かす」ということです。例えば「ナーバスな気持ちのときは警戒させたい」など、企画している人はこのようなことを考えてシステムに落とし込んでいるはずです。

そこで、ゲーム要素のコントロールと、感情の動かし方との対応関係について考えます。

先行事例では、『Left 4 Dead』や『Warframe』のメタAIについて、GDC2009で発表された緊張度(intensity)に基づくメタAI(AI Director)について提案されています。

これは、ゲームのプレイログから計算したプレイヤーの緊張度が、周期的に上昇と下降を繰り返すようにコントロールすることで、プレイの流れに緩急をつける(ペーシング)ことができます。新規にスポーンする敵NPCの数や位置を変動させて、緊張度をコントロールしています。

このAI Directorの問題点は、多くのゲームでNPC数をメタAIの判断で変えることができないことです。シューターや格闘ゲーム、カードゲームなど、キャラクターやオブジェクトの数が固定されているゲームは実装が難しいと思われます。もし固定されていなくても、ゲームデザインやレベルの制約によって、メタAIが望んだタイミングや位置にNPCをスポーンさせることが難しいです。

もうひとつの問題点は、扱える感情の種類が少ないことです。これを解決するためキーアイディアが「2次元感情マップ」になります。

これは、プレイヤーの感情を横軸「勝利への期待感(H:Hope of Winning)と縦軸「敗北への不安感(F:Fear of Losing)を軸として、2次元平面上のベクトル(EP:Emotion Point)で表示します。このマップは認知心理学での感情分類モデルを参考にしています。

2次元感情マップが便利な理由は、さまざまなプレイヤーの感情とゲーム状況を紐付けて表現できることです。ここでは格闘ゲームを例として4つのケースを紹介します。

Case1:敵がプレイヤーを圧倒

勝てそうではなく、負けそうだと思っているため「ナーバス・ストレス」になります。

Case2:プレイヤーが敵を圧倒

勝てそうだと思い、負けないと思っているため「穏やか・リラックス」になります。

Case3:激戦

同じくらいの力量で殴り合っている状態は「勝てそうだけど負けるかも?」と言う気持ちで「興奮・うれしい」になります。

Case4:膠着状態

どちらも何もできず、動きが少ない膠着状態では、勝てそうではないけど負けそうでもない気持ちになり「落ち込んだ・退屈」となります。

このように直感的に感情のイメージと、HopeとFearの高低の対応ができていることがわかり、ゲームの状況を複雑に表現できます。

また、このマップを使うと、ゲーム要素と感情変化の対応付けを設計しやすくなるメリットがあります。

この手法の概要として、まずSensorsがゲームプレイデータを収集、メタAIで判断し、Effectorsでゲームワールドを操作します。本セッションでは2次元感情マップに基づくメタAIの内部機能「World Analyzer」「Game Maker」について詳細を公開します。

「World Analyzer」では、Current EPがプレイヤーの現在の感情を2次元座標でまず表示します。それを元に、数秒後にプレイヤーの感情が向かって欲しいポイント「Goal EP」を決め、続いて次にプレイヤーの感情を持っていく場所「Next EP」を更新します。

つまり、具体的なゲーム環境への操作は「Next EP」をベースにして決めていくということです。

格闘ゲームを例にすると、プレイヤーキャラと敵NPCがそれぞれHPと攻撃ヒット率を持っています。それぞれがHPは満タン、ヒット率50%の状態では、プレイヤーのヒット率が高ければ高いほどHope値は上がり、敵NPCのHPは低いほどHopeが高くなります。

逆に、プレイヤーのHPが低ければFear値が上がり、敵のHPが高ければFear値が上がります。

Current Hopeの計算方法の例として、攻撃ヒット率やHPの残量によって、変動するカーブ値を用意し、それぞれの評価値を足して判断します。

また、ゲームの状況が変わり、プレイヤーの攻撃ヒット率が60%に上がり、敵のHPが下がった場合は、Hopeの値が少し上がり、Current EPの数字が右にズレます。

Goal EPのプランニングについて、決め方はゲームデザインに大きく依存します。あるプロジェクトでは5秒ごとにCurrent EPの反対側に設定し、メタAIがプレイヤーの感情を常に揺さぶろうと試みました。

また、便利機能としてGoal EPにバイアスをかけることができ、あるプロジェクトではGoal EPの移動可能範囲を、バトルに進行度に応じて狭める処理をしており、終盤に向けて興奮もしくは幸せの感情になっていくと思われます。

この仕組みの良い点は、ゲームデザイナーがプレイヤーがどのように感じてほしいか、平面上で直接視覚的に設定できることです。

続いて、Next EPの更新にて、どうやってゲームをコントロールするのかを説明しましょう。

格闘ゲームを例にすると、Hope値は敵がプレイヤーに対してどれくらい攻撃しやすいか、という要素と結びつきます。危険な攻撃の使用頻度や、攻撃の開始距離(避けにくさ)に影響します。

Fear値は、プレイヤーが敵に対してどれくらい攻撃しやすいかという要素に結びついており、スキを見せる行動の使用頻度や使用距離、プレイヤーの攻撃に対する反応速度などに影響します。

これをまとめると、ゲームジャンルに対して「Current EPに影響を与えるもの」「Next EPから影響を受けるもの」という要素があることが考えられます。

単純な1on1バトルを用いたデモで、プレイヤーと敵NPCモデルと、2D感情マップのデバッグ表示が公開され、Next Fearが高い状態だと敵は避けにくい攻撃を使用する様子が、モデルの動きとともに確認することが可能です。

反対にNext Fearが低い場合(プレイヤーのHPが瀕死状態)は、敵は避けやすい攻撃を使うことが分かります。メリットとして、AIに「敵を攻撃しなさい」という指示を与えれば、内部でどの攻撃アクションを選択するのか、Next EPを見て攻撃種の区別をしてくれることです。

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIリサーチャー「里井 大輝」氏

この仕組みを実際にゲームで利用するには、大量のデータ収集が必要になるため、ブラウザベースの「ゲームプレイ分析ツール」を導入しました。このツールでは、2次元感情マップ上でのEPの軌跡を表示できます。

感情の強さのタイムライン表示では、8つの感情がそれぞれがどの時点でどう強かったかを可視化しています。この感情の強さの計算は、いろいろな感情が少しづつ混ざった類似度を計算しています。

また、企画側からの要望で、HPやMPのようなステータス情報や「プレイヤーの攻撃がヒット」のようなイベント時の感情の強さを並べて表示し、感情が動いた理由を分析しやすくしています。

この仕組みのテストプレイ時フィードバックでは、ほぼ狙い通りの結果が出ており、ゲームデザイナー側からは、プレイ中の様子を録画しながらメタAI側のパラメータを調整することで、今までのワークフローに比べて改善したとの声が上がっています。

最後に里井氏は、今後の展望として、最近プレイヤーが経験した感情に次は向かないようにする「ヒートマップ」や、Goal EPのプランニングに位置検索システムを導入する、などさまざまな可能性があることを語りました。

取材・文・撮影:細谷亮介

▼関連レポート記事はこちらから

■イントロダクション ゲームAI研究・開発の全容:三宅 陽一郎氏

■キャラクターとのインタラクション:Gautier BOEDA(ボエダ ゴティエ)氏

■メタAIの基本モデルとゲームデザイナーの役割:水野 勇太氏

※本記事は2019年5月時点の情報です。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【GDMイベントレポ】実際にメタAIをデザインするには?「メタAIの汎用モデルとゲームデザイナー&エンジニアの役割:水野勇太氏」

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年5月17日に開催された「GDM Vol.32 エンジニア向け勉強会:ゲーム産業におけるゲームAI研究・開発の最前線~会話AI、メタAI、ユーザ感情推定~」では、スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部のメンバーをお招きして、GDC2019で発表した内容を中心に、最新の研究成果を紹介していただきました。

本記事では、スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIユニット AIテクニカルゲームデザイナー「水野 勇太」氏より、「GDC 2019」で発表した資料をもとに発表された「メタAIの汎用モデルとゲームデザイナー&エンジニアの役割」について、セッション内容をレポートします。

メタAIの汎用モデルと
ゲームデザイナー&エンジニアの役割

水野氏は今回のアジェンダとして「ゲームデザイナーとエンジニアを一つにする」「メタAIを道具として活用する」「状況分析(課題と解決案→メタAI設計)の順で考える」「妄想力を鍛える」の4つを掲げました。

ゲームのAIは主に3つ

キャラクターAI

キャラクターの知能のことで、『パックマン』に使用されたAIが始まりとも言われています。当初はフィールドとAIが合体した「お化け屋敷AI」のような状態でした。現在ではナビゲーションAIの発展とともに知的な行動が求められています。

ナビゲーションAI

FPSゲーム『カウンターストライク』において、ナビゲーションメッシュと呼ばれる地形情報を活用するナビゲーションAIが実装され、キャラクターが固定の位置やルートから解き放たれて自由に移動できるようになりました。それにより事前に仕込めないほど多様な位置での判断が必要となり、キャラクターAIが改めて発展していきました。

メタAI

ゲーム世界のすべての要素を、ゲームマスターのように神の視点から操るAIです。海外ではメタAIの一種であるAIディレクターが、『Left 4 Dead』の開発時に発展していった経緯があります。メタAIはゲームにおける環境を広く認識、問題を検知して、解決プランを立案することができます。

また、メタAIの汎用的な設計が水野氏から紹介されました。それは内部の「World Analyzer」で世界を分析、「Game Maker」でゲームをどう変えるかのプランを立案、それに基づいて「Parameter Generator」がどのようなパラメータで変化させるかを具体化して、Effectorでゲームの世界に通知されます。

敵マネージャーやアイテムのスポナーなど、ゲーム側の「Interaction Space」が変わることで、ゲーム世界に変化が生じ、プレイヤーの体感が変わっていく仕組みです。

ルイージ主義

メタAIは、かなり柔軟なコントロールが可能なため、メタAIに何をコントロールさせるべきなのかを決めることが重要になります。

そこで、ゲームクリエイターの米光一成氏が2006年に論文を発表した「ルイージ主義(RuIDi-ism)」を活用することを提案しました。

「ルイージ主義(RuIDi-ism)」とは、Rule・Interaction・Dilemmaの頭文字を取った考え方で、それぞれの要素に基づいて、ゲームのパラメータを抽出し、それをメタAIで変えていく仕組みになっています。特に面白いと評価されているゲームには、この主義が組み込まれているとのことです。

メタAIとゲームデザイナーとエンジニア

「GDC2019」では、実はあまり強烈に新しい理論は発表されませんでした。その中でプロシージャル技術の言い換えとも言える「Limited Situatuion Generator」は、プレイヤーそれぞれの固有のシチュエーションを生成する技術で、メタAIと親和性も高いと考えられます。

メタAIは、ゲームの状況をその場で分析・検知できるので、最初から仕込んでおく必要がないんですね。もし、その場で作られた事前に準備できないシチュエーションがあったとしても、メタAIが分析すれば最適なゲーム状態をメタAIが作り出すことが可能です。

これまでのゲーム開発のように、すべてを仕込んでおいて、状況に応じて対応させるという作業をした場合には、どうしても事前に仕込むパターンには限界があり、諦める部分も発生します。

例えば、A・B・Cの3つのパターンでそれぞれに違ったシチュエーションを作ったとしても、その3パターンのみになるため、パーソナルで完全に人ぞれぞれの固有な体験にすることはできません。

ですがその部分にメタAIを導入すると、まず作られた環境をメタAIが分析し、その環境において最適なゲーム体験を提供するため、固有の環境に対して固有のゲームを作ることができます。これがメタAIの特長を活かした最大の方法と言えるでしょう。

「GDC2019」では『Marvel’s Spider-Man』『GOD OF WAR』などのタイトルで、キャラクターの行動制御(移動の制御や画面外からの攻撃制御など)をしていると発表がありましたが、開発者はそれをシステム的に利用したり、マネージャーのように運用していただけで、メタAI的な視点ではなかったんです。

現時点では、我々が最先端に近い位置にいる状況であり、まだメタAIに取り組まれていない人も、この分野を今からスタートすれば、世界最先端のゲーム開発が実現できると思っています。

また、GDCでは、多くのエンジニアがゲームデザインについて語っており、『Marvel’s Spider-Man』のPostmortemのセッションを担当したエンジニアも、ゲームの面白さを熱く語っていました。

現在では、エンジニアがゲームメカニクスを語る時代になっていますし、ゲームデザイナーが実際にゲームエンジンを活用して、ゲームを制作する時代になっています。

自分が小島プロダクションに所属していた際に、プログラムマネージャーに言われていたのが「最後にゲームの面白さを担保するのはプログラマー」という言葉です。『MGS4』を開発している頃、プログラマーでありながら、常にゲームデザインを考えてゲームを作っていたことを覚えています。

そのような考え方や環境でゲーム開発に携われたため、世界で評価されるような面白いゲームを作ることができたと自負していますし、最近ではゲームデザイナーとエンジニアがひとつになる時代が、すぐそこに来ているのかな、と感じています。

ゲームデザイナーはテクノロジーを学ぶべきだし、エンジニアはゲームデザインを学ぶべきだと思います。どちらの要素も兼ね備えた「テクニカルゲームデザイナー」が最近の現場には求められていると感じます。

テクニカルゲームデザイナーという職種をいきなり設けるのは難しいかもしれませんが、ゲームデザイナーとエンジニアが互いに価値を提案しあい、お互いの領域に関係なく、面白さについて議論することが必要です。エンジニアは仕組みから、ゲームデザイナーは仕様から「メタAIって、こんなことができる!」という価値提案を目指すことがよりよいメタAIの実現には重要です。

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIユニット AIテクニカルゲームデザイナー「水野 勇太」氏

実際にメタAIをデザインするには

メタAIは魔法ではなく、道具です。「面白くないゲームだから面白くしたい」「ストレスを感じる挙動を直したい」という要求に対して、単純にメタAIを導入すれば解決できる、というわけではありません。

そんな状況において「なぜその現象が発生しているのか?」といった原因を見つけるのが人間の仕事ですし、判断するのも人間です。メタAIを入れればどうにかなる、という考え方は間違いだと考えています。

まずは、担当者が周辺技術を調査して、メタAIで応用させることが必要になります。メタAI設計の流れについては、「状況分析→課題と解決案を出す→メタAI設計」というフローをおすすめしています。

それでは、事例をもとに説明しましょう。

状況分析の部分において「ラスボス戦なのでプレイヤー全員にくじけて欲しくない、でも手応えが欲しい」と考えました。

その課題と解決案として、難度の設定に柔軟性がなく、感情を揺さぶることで刺激的なゲーム体験ができるのではと仮定しました。そして、ユーザーの状況から感情の推定をして、その感情に基づいて敵の行動を変えることができれば、誰でもくじけずに最後まで楽しく感情を揺さぶられるのではないか、と考えました。

そして、プレイヤーの感情をゲーム内の状況を収集してメタAIが推定する、という仕組みを作りました。その推定した感情に応じて行動を変えるように、メタAIが敵AIに指示をする仕組みが実際に動いています。この部分の仕組みについては、この後登壇する里井が担当しています。

現在のゲーム市場を見ても、モバイル対応ゲームの開発者が増えているのは明らかです。過去には「モバイルゲームにAIは必要ない」といった考えもありましたが、モバイルアプリにもメタAIの導入は可能です。

もしモバイルアプリにメタAIを導入するなら…として、仮想メタAIの例が紹介されました。パズルゲームでドロップの出現内容に難度が大きく左右されるのであれば、課題はドロップの内容がプレイヤーの腕前を考慮していないと考えられるので、プレイヤーの腕前を判定した上で、ドロップ内容を調整すれば、初心者でも最初からくじけないようなゲームにできるはずです。

ですが反対にメタAIが必要ない状況もあります。例えばテニスゲームにおいて上級者にラリーを1分間に120回続けさせたいという要求に対してなどが考えられます。

ラリーの回数には、球のスピードが最も強く関係しており、変な場所に打ち返しても上級者だから打ち返してくれる、といった状況では、もはやプレイヤーのクセや特徴の分析というよりも動作の精度を高めるという議論になってしまうので、わざわざメタAIを使わなくても良いと考えられます。本当にメタAIが必要なのか、メタAIでなくてもできることを、しっかり判断することが大切です。

そして、メタAIによる価値の提案も大切だといいます。課題の解決はマイナスをゼロもしくはプラスにするという行為ですが、導入すればプラスアルファになる価値の提案も可能だといいます。

例えばゲーム内に「直線で貫通するスキル」があることに気づけば、敵が一直線に並んでいたほうがプレイヤーは気持ち良い攻撃ができると考えられます。メタAIはそれに対応して、より爽快な手応えをプレイヤーに提供するために敵AIに指示をすることが可能です。

これは「仕様に対して妄想すること」で生まれるアイデアなので、ゲームデザイナーは自分の頭の中で自分の作るゲームを何度も何度もプレイし、「小学生」「女子高校生」「休日のパパ」「リタイアしたおじさん」など実際のプレイヤー像を想像して、妄想プレイで見つけたシチュエーションをメタAIでより面白くするのが、テクニカルゲームデザイナーの得意分野になると考えています。

取材・文・撮影:細谷亮介

▼関連レポート記事はこちらから

■イントロダクション ゲームAI研究・開発の全容:三宅 陽一郎氏

■キャラクターとのインタラクション:Gautier BOEDA(ボエダ ゴティエ)氏

■二次元感情モデルに基づくメタAI:里井 大輝氏

※本記事は2019年5月時点の情報です。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【GDMイベントレポ】表現豊かなNPCを実装したデモ映像公開!「キャラクターとのインタラクション:ボエダ ゴティエ氏」

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年5月17日に開催された「GDM Vol.32 エンジニア向け勉強会:ゲーム産業におけるゲームAI研究・開発の最前線~会話AI、メタAI、ユーザ感情推定~」では、スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部のメンバーをお招きして、GDC2019で発表した内容を中心に、最新の研究成果を紹介していただきました。

本記事では、スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIエンジニア Gautier BOEDA(ボエダ ゴティエ)氏より発表された「キャラクターとのインタラクション」について、セッション内容をレポートします。

キャラクターとのインタラクション

ゴティエ氏は以前、NPCが配置されたリアルなゲーム空間で、NPCの気配に似たものを感じたことに驚き、そのヴァーチャル空間の中には自分が存在したように感じたと話しました。

しかし、ゲーム内でのNPCとのインタラクションについては、ボタンを押すなど比較的古典的な方法に限られており、(NPCと)視線が合ったり、自身がどんな行動をしてもNPCは何も反応してくれなかったことが悲しかったと明かしています。

そこで今回のプロジェクトでは、音声や身振りなど自然なインタラクションを開発し、プレイヤーにとって適切な反応や表現ができるような、生き生きとしたNPCを実装したとのことです。

ここからはデモ映像を使用しながら説明されました。

デモではまず、KOBUNと名付けられたNPC(※以下、一部エージェントと表記)や宇宙船、多彩なオブジェクトが配置されている惑星を舞台にして、音声認識を中心に指示を出していきます。

指示側は「あのドアを開けて」「オレンジのクリップを持って」「白いタンクに取り付けて」などKOBUNに音声で指示をしていきます。

しかし、指示通りにうまく動けなかったり、感電してしまうと、KOBUNが悲しい感情を持つことがわかります。

続いて、このシステムの実装の詳細について説明されました。

まず音声認識エンジンが入力を受け取ると、言葉と品詞のリストに変換。ゲーム側の文法パサーが言語に基づいてDNAブロックに抽象化し、その後抽象ブロックが単語に対して、言語に依存していない表現に変換します。

このプロジェクトの目的は、プレイヤーの使用できる語彙を制限せずに、複数の言語をサポートすることで、そのために言葉を言語に依存しない表現に抽象化することです。それを言葉のDNA(遺伝子)だと考えました。

例えば、「リンゴを取る」「休憩を取る」という2つの表現の中にある「取る」という言葉の意味合いは違います。そこで「取る」という言葉が持つすべての意味を、まずタグ付けします。

しかし、言語ごとに手動でタグ付けをするのは大変なので、どうすれば自動化できるかを考えました。そこでマルチに言語をサポートする同義語のデータベース「WordNet」を利用することを決めました。

例えば「大きいリンゴ」という言語を使いたい場合、ゲームの中に「大きい」という単語を組み込みます。

まずWordNetで「大きい」を検索、たくさんの概念の中から、自分が必要としている意味と比較して近いものを2つ選択して、DNAブロックが完成しました。

言葉の抽象化のステップが終わると、パサーに移行した部分は言語に依存しなくなりました。次の目的は抽象化された言葉を、ゲームに存在している概念につなぐことです。

続いて、抽象化された言葉を各概念ごとにスコア計算する作業に移行します。例えば「巨大」という単語のDNAを探して、ゲーム内のすべての形容詞の概念と比較しますが、「巨大」は存在しないので、他の形容詞の中からスコアが高いもの、DNAが似ているものが選ばれます。

意思決定については、Goal Managerがゴール(最終目的)を選択し、Plannerが選択されたゴールを実行するためのプランを立てます。

今回は「プレイヤーの声を聞く」というゴールが選ばれたため、「聞く」というアクションが実行され、発言を記憶に追加しました。その後、AIが命令に従うかを決めていく流れです。

次に「命令を実行する」ゴールが決められ、発言では「リンゴを取る」なので、Plannerは【リンゴを探す→リンゴの近くに移動→リンゴを取る】というプランを立てました。

「リンゴを探す」という発言の実行について、目的はエージェントの記憶の中で発言に対して一番適切なオブジェクトを見つけること、になります。

ターゲットのスコア計算方法は、発言によるオブジェクトにどれだけ似ているかを評価しています。タイプが同じなのか、サイズが合うかを判定して、すべてを組み合わせることでターゲットのスコアを合算します。

オブジェクトタイプの比較は、WordNetでは同義語が階層構造で並んでいるので、それを利用します。例えばリンゴは一番下にある「食べられる果物」のノードの下にあります。バナナも同じノードの下にありますが、テーブルとリンゴとの共通ノードは、全体を示しているので、なかなか一致するのは難しいです。

まず、表現にあるオブジェクトの「巨大なリンゴ」をヒエラルキーから探し、そのノードに位置を設定します。次にツリーのルートに0を設定、間にあるすべてのノードのスコアを保管します。

ではターゲットのスコアを探してみましょう。リンゴは発言にあるオブジェクトと同じなので、1になります。バナナとの共通ノードは「食べられる果物」なので、スコアはそのノードのスコア0.86になります。テーブルの全体ノードはスコアは0.14です。

ここまで来れば、バナナとリンゴのスコアはかなり近くなります。テーブルは果物ではなく、食べられるものではないのでスコアは低くなります。この計算方法を使えば、エージェントはより柔軟な判断ができるようになります。

次は、サイズの比較をします。発言による形容詞は「大きい」なので、エージェントの記憶にあるリンゴのサイズを比較します。

リンゴAのサイズは平均なので、スコアは0.5になります。別の軸で計算すると、リンゴAのスコアを計算することができ、0.81になります。

最終的にすべてのターゲットのスコアを計算すると、発言にあるオブジェクトと一番似ているものはリンゴBになることが分かります。そのおかげでリンゴを探すアクションでリンゴBを見つけることができました。するとエージェントはリンゴBの近くに移動して取るアクションをします。

デモ映像では、「オレンジのクリップを取れますか」「赤いものに接続できますか」などの音声の指示に従ってKOBUNが適切に動き、成功すると表情にも変化が現れました。

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 AIエンジニア「Gautier BOEDA(ボエダ ゴティエ)」氏

エモーショナルについて

次に、エモーショナルコンポーネントについて、各モジュールの説明をしていきます。最初は感情モデルで、短期的な感情を表します。喜び、苦痛など時間の経過とともに急速に変化する特長を持っています。

次はムードモジュールで、気分や長期的な感情を表します。時間とともにゆっくりスムーズな変化をするのが特長で、活力的、落ち込んでいる、不安な気分などを表します。感情モジュールとは相互関係にあります。

性格モジュールは、エージェントの構成を定義するモジュールで、時間で変化することはありません。例えば好奇心、恥ずかしい、怠惰などで、性格モジュールは感情、ムードと影響しています。

感情モジュール

まずは感情モジュールを説明します。利用モデルは「OCC Model」という感情モデルから着想を得て開発しています。

最初に、エージェントにとって、そのイベントの「良し悪し」を判断し、種類によってブランチが分かれます。イベントがオブジェクトの見た目に関することであるとき、例えばリンゴを見たときなど、好き嫌いという感情が発生します。

感電が起きるようなイベントのときには「苦痛」と「喜び」の感情が生まれます。もしイベントがエージェントのアクションであれば、さらに分岐していきます。自分のアクション時は「自尊心・羞恥心」、他人からのアクションのときは「称賛・非難」などが生成されます。

紹介されたデモ映像では、KOBUNがクリップを持って感電してしまいました。原因は指示側がボタンを押したせいで電気が流れてしまったからです。それを解析しましょう。

感電するということは、KOBUNにとって悪い(イヤな)イベントであり、苦痛という感情が生成されました。そして原因がプレイヤーがボタンを押したことだと分かり、KOBUNはプレイヤーに対して怒りという感情が生成されました。

ここで、感情の生成はできましたが、どのようにオブジェクトに好き嫌いという気持ちを持つのでしょうか? 実は、感情を生成するときにもうひとつの感情が流れています。先ほど感電したときに苦痛の感情が生成された後に、クリップが帯電しているという形容詞に対して、ネガティブなアフェクトを追加します。

アフェクトは挙動と記憶に残る時間の値を持っています。悪いアフェクトをクリップと帯電の形容詞に与えたので、クリップと帯電しているオブジェクトに出会うと、KOBUNが嫌がって逃げると考えられます。その結果、KOBUNは電気が通っているクリップを嫌いになりました。

その後、もう一度「そのクリップを取ってください」と頼むと、どう反応するのでしょうか?

一旦はクリップを探すアクションはしますが、ビリビリしているクリップを見つけたKOBUNは提示されたプランを拒否して、その驚異をプレイヤーに表現します。

ムードモジュール

続いてムードモジュール「PAD MODEL」です。キューブをイメージして開発されており、P(Pleasure=喜び)、A(Arousal=激情)、D(Dominance=怒り)を司り、これは自分の感情のコントロールがどれだけできるか、という値を表します。

このキューブの中には、すべての感情が内包されており、8つのエリアに分かれ、中央にはデフォルトムードのポイントが存在します。各エリアにはそれぞれ違った感情が存在しています。

感情が生成されると、ムードポイントが時間と共にスムーズに移動していきます。感情は強度と表現時間の値ともに生成され、強度の値が高ければ高いほど、ムードの変化速度が大きくなります。表現時間が経過したら、ムードポイントがゆっくりとデフォルトの位置に戻っていきます。

喜びや怒りの感情に関連して、KOBUNが喜んだり、起こったり、表情も変化していきます。気分によってブレンド機能を使い、スムーズなアニメーションが実現できます。

性格モジュール

最後に性格モジュールになります。これはすごくシンプルなモデルで、怠惰・好奇心などUtilityの値だけとなります。

怠惰10%に設定したKOBUNは、指示したクリップをきちんと取りにいきました。怠惰90%に設定すると、遠くにあるクリップまで行くのを面倒と判断し、近くにある指示とは違うクリップを取ってしまいました。ちょっと横着者な性格になっていますね。

そこで、どうやって怠惰の性格を実装したのか、説明しましょう。

怠惰の性格は、オブジェクトを探すアクションに影響します。適切にオブジェクトを見つけるゴールでは、ターゲットのスコアを計算しており、その軸の一つに「近さ」があります。

働き者のKOBUNの場合、近さの軸の値は0.1とすごく低くなっています。それはあまりスコアに影響しません。近さより大事なことだからです。怠け者のKOBUNの場合は、怠惰の値が高ければ高いほど、近さの軸の重みが変わります。つまりオブジェクトが近ければ近いほど、優先させようとします。

その結果、怠け者のKOBUNは色やサイズの軸を無視してしまいます。一般的に性格モジュールは簡単ですが、たくさんのバリエーションが実現でき、性格のパラメータはいろいろな部分に影響させることが可能です。

例えばゴールのスコアに影響する、プランナーのアクションのセット、コスト、好き嫌いや感情の表現やデフォルトのムードにも影響が出ますし、その性格モジュールのおかげでNPCはひとりひとり違っていることを感じることができます。

取材・文・撮影:細谷亮介

▼関連レポート記事はこちらから

■イントロダクション ゲームAI研究・開発の全容:三宅 陽一郎氏

■メタAIの基本モデルとゲームデザイナーの役割:水野 勇太氏

■二次元感情モデルに基づくメタAI:里井 大輝氏

※この記事は2019年5月時点の情報です。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【GDMイベントレポ】スクウェア・エニックス テクノロジー推進部メンバーが明かす、ゲームAI研究開発の最前線―三宅陽一郎氏からのイントロダクション

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年5月17日(金)に開催された「GDM Vol.32 エンジニア向け勉強会:ゲーム産業におけるゲームAI研究・開発の最前線~会話AI、メタAI、ユーザ感情推定~」では、スクウェア・エニックスのテクノロジー推進部のメンバーをお招きして、GDC2019で発表した内容を中心に、最新の研究成果を紹介していただきました。

本レポート記事では、イベント冒頭で語られた三宅陽一郎氏からのイントロダクションの内容と、イベント後に実施した、GDM運営を仕切るDeNA藤村幹雄へのインタビューをお届けします。

イントロダクション:ゲームAI研究・開発の全容

セッション冒頭で、テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー「三宅 陽一郎」氏より、スクウェア・エニックスの人工知能研究について、全体の概要が説明されました。

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー「三宅 陽一郎」氏

テクノロジー推進部は、スクウェア・エニックスの中でも特に技術研究をメインとしている部署であり、研究とタイトルへの実装の実現を目指す方針を掲げている。そして、知能に対する知見をより深く育成し、その成果を各ゲームタイトルに実装する役割を担っていると語りました。

ゲーム人工知能の分野は、キャラクター・メタ・ナビゲーションの3つのAIの連携で成り立つ「ゲームの内部のAI」と、ゲーム開発に関連する「ゲーム周辺AI」が存在します。

特にゲーム周辺AIの中で重要なのが、品質保証を担保する「QA-AI」であり、密接に関連するそれぞれのメンバーが、各分野において世界をリードするような第一人者になることを目標にしながら、研究開発を続けているとのことです。

そして、社外へのアウトプットの形として、ゲームタイトル・学術論文・ゲーム産業カンファレンスでの発表といった、3つの柱を掲げていることも明かされました。

また、社内ではGDCなどの海外カンファレンスでの講演の内容説明や、ニューラルネットワークについての特集を組んだセミナーを毎週実施し、社内の文化の中に「ゲームAIの在り方」を浸透させることで、当たり前にAIを活用できる意識作りをすることを推進しています。

また三宅氏は、参考文献として『FINAL FANTASY XV』を題材にした記事を、学術論文「GAME AI PRO 3」や人工知能学会誌に寄稿する他、新たな書籍の出版を手がけたり、GDCやSIGGRAPH ASIAなどの講演でも積極的に紹介しています。

セッション内容の紹介

スクウェア・エニックス テクノロジー推進部のAIユニットでは、ゲームAIの研究開発と ゲームタイトルへの実装に2011年から継続して取り組んでおり、その成果は国内外の学術会議でも多数発表されています。

今回のGDMでは、最新の研究成果について、GDC2019で発表した内容を中心に各セッションが披露されました。各記事レポートは以下のリンクからどうぞ。

登壇者紹介(左から):ボエダ ゴティエ氏、水野勇太氏、里井大輝氏

■キャラクターとのインタラクション:Gautier BOEDA(ボエダ ゴティエ)氏

■メタAIの基本モデルとゲームデザイナーの役割:水野 勇太氏

■二次元感情モデルに基づくメタAI:里井 大輝氏

DeNA藤村幹雄に聞く”GDMの今とこれから”

GDMの運営のディレクションや司会進行も担当するDeNAの藤村幹雄に、GDMの現在とこれからについて、ちょっとインタビューしてみました。

DeNA「藤村 幹雄」

――今回のGDMを終えて、登壇者からはどのような意見がありましたか?

ゲームAIに関連した施策や最新の研究結果の情報は、短い時間ではありますが今後も共有していきたいと伺っています。もちろん各人のスケジュールの都合もあるため、連続での登壇はできませんが、次回以降の開催も、前向きに考えていただきました。

――参加者アンケートでは、高評価な意見が多かったと聞きましたが?

今回登壇していただいた三宅氏は、ゲーム分野だけでなく、AIの研究開発に関するプロフェッショナルであり、知名度もとても高い方なので、彼が統括するテクノロジー推進部のメンバーから最前線の話を聞けたのは、参加者にとってメリットだと思います。

また、学術的な話だけでなく、実際のゲームタイトルや商品、ビジネスにも実際に応用されている話題も、評価が高くなった理由かも知れませんね。

――ほとんどの来場者が次回も参加したいと回答していたと聞きましたが?

ええ、そうです。GDMでは、登壇者のブッキングやセッション内容を「自分の職種に近い人」「隣の会社の同じような職種の人」など、身近な人がどんな仕事をしているのかを紹介するコンセプトを掲げていることが、次回に対する高い期待の表れかも知れませんね。

ゲームクリエイター向け勉強会「GDM」概要【次回告知&開催レポート集つき】
https://genom.dena.com/event/gdm2019/

――これからのGDMでの課題や反省点を教えてください。

毎回、開催後に関係者と振り返りを行うのですが、反省ももちろんありますが、それよりも皆さまからのご意見を参考に、次回はもっとこうしたい、これを取り入れてみようなど、次に向けての楽しみが増えています。

最近申し込みも増えてきており、会場のキャパシティの問題で抽選制にしているんですが、当日のドタキャンも多く見られるので、それを改善するのが課題ですね。

もちろん、料金制にしてドタキャン率を下げることも可能ですが、GDMは収益を目的にしているイベントではないため、参加者が業務調整を一生懸命にして「どうしても行きたい!」となるような、魅力的なコンテンツを用意することで解決したいと考えています。

――今後のGDMはどのように進化していくのでしょうか?

規模を大きくしていくよりも、現在のようにコンスタントに毎月開催して、自分の業務に活かせるような話題を持って帰ってもらったり、会社同士の交流や繋がりを作るコミュニティーの場を形成することを第一に考えて、常に安定した運営を心がけようと思っています。

同時に、複数のセッションが続くような中規模な特別イベントも企画して、年に一回ほど開催したいと画策しています。お楽しみに!

――ありがとうございました!

集計アンケートに寄せられたコメント

今回のGDMに参加した来場者から頂いたコメントを、一部抜粋して紹介します。いただいたご意見は運営チームがすべて目を通しており、今後の運用に役立ててくれるとのことです!

[su_quote]大変勉強になりました。また次回も参加したいです。(プランナー)[/su_quote]

[su_quote]凄く良かったです!特にメタAIの発表は参考になりました。今のプロジェクトでも活用できそうです。(エンジニア)[/su_quote]

[su_quote]特に二次元表面上の感情マップを用いた感情特定などは、分析業務に活かせそうだと思いました。(分析)[/su_quote]

[su_quote]とても未来に期待ができる良いセッション内容でした。 設計方法をもとに自分でも考えたいと思います。ありがとうございました!(エンジニア)[/su_quote]

[su_quote]内容は素晴らしかったですが、5分程度で良いので休憩をはさんで欲しいです(ディレクター)[/su_quote]

取材・インタビュー・文・撮影:細谷亮介

※本記事は2019年5月時点の情報です。

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【イベントレポ】クーガー石井氏が語るゲーム×AI×ブロックチェーンの可能性―未来のキーワードは「マシンインターネット」と「ミラーワールド」

毎回様々なゲストをお招きして、最新の技術や情報をシェアするDeNA主催のゲームクリエイター向け勉強会の【Game Developers Meeting】(以下、GDM)。

2019年4月26日に開催された「GDM勉強会~ゲーム×AI×ブロックチェーンの可能性と世界最新動向~」では、クーガー株式会社CEOの石井敦氏を招いて、ブロックチェーンとゲームのシナジーやAIとの関係性、最先端技術の世界最新動向が紹介されました。

今回登壇した石井氏は、IBMを経て、楽天やインフォシークの大規模検索エンジン開発を手がけ、日米韓を横断したオンラインゲーム開発プロジェクトの統括なども担当した経歴を持っています。

またゲーム分野では、スマートフォン向けゲームアプリ開発やGDCへの登壇、PlayStation Networkのコア部分の設計などに参画、2017年に開始したブロックチェーン技術コミュニティ「Blockchain EXE」の代表も務めています。

本記事では、発表された内容の一部を抜粋してレポートします。

ブロックチェーンについて

ブロックチェーンとは「価値のインターネット」と呼ばれ、価値を乗せて移転することのできるインターネットのことです。

時系列で発生したことを、ダイジェストにしてブロック化する基本原理を持ち、そのブロックが鎖のように連結していくため「ブロックチェーン」と呼ばれます。

前ブロックのアウトプットが次ブロックのインプットとなり、一つのブロックを書き換えようとすると、それ以降のブロックすべてを書き換えなくてはならないため、改ざんが非常に困難な仕組みとなっています。

ブロックチェーンの主な構成要素は「P2Pネットワーク」「コンセンサスアルゴリズム」「電子署名」「ハッシュ関数」「スマートコントラクト」で、代表的なブロックチェーンコミュニティは以下の3つとなります。

Bitcoin Core:通貨を受け渡すためのブロックチェーン
Ethereum(読み:イーサリアム):特定の目的を持たないブロックチェーン
Hyperledger fabric:IBMが主導する企業型のブロックチェーン

また、なぜBitcoinが最初のキラーアプリになり得たのか、石井氏は大きな理由を3点挙げました。

1つは通貨は誰もが重視するわかりやすい価値であること、2つ目はデータ形式が数値のみで技術的に扱いやすいこと、3つ目は通貨(お金)は人から人に移転され、移動のニーズが高く、頻繁に移動されるから、と解説しました。

ブロックチェーンの大きな特徴は「透明性」「公明性」「トレーサビリティ」であり、これらは限られたデータであるからこそ、公開しても成立するので、対象のデータが個人情報や企業の機密情報などになると公開されるリスクが大きくなります。

ブロックチェーンでデータを扱う方向性に関して「On Chain(ブロックチェーンの内部にデータを記録)」「Off Chain(ブロックチェーン自体にデータは記録せず紐付けキーのみ記録)」の2つに分けられ、それぞれのメリット・デメリットを含めて、どちらの手法に対応するか、この選択の考え方・決定方法はゲーム開発とも密接に関わります。

既存技術とブロックチェーンの進化

ブロックチェーンネットワークの種類の中でも、利用率が高いパブリック型(パーミッションレス型)と呼ばれるブロックチェーンを、既存の技術と比べた際の特徴として、以下の3つが挙げられます。

管理者がいない(非中央集権型)
→命令や司令がなく、処理に立候補した管理者に報酬を与えるなど、普遍的なインセンティブコントロールが可能に。

起きた事実の取り消しができない
→そもそもリセットができないため、信頼関係が生まれる

改ざんが極めて難しい
→これまで共有が難しいとされていた、複雑な関係性におけるデータ共有が実現可能

また、現時点の技術適用先の相性について、スピードよりデータの信頼性・公明性が重視されるものが向いており、リアルタイム性の高い更新頻度の高いものには向いていないと言われています。

現在、ブロックチェーンは、トランザクションの処理スピードを上げるだけでなく、データ規模やスピードを両立したスケールの拡大、データの保存や機密性を高めることが世界的ニーズとして求められています。

次世代ブロックチェーン

石井氏は、先述したブロックチェーン以外にも、最近では以下の種類も注目を集めていると紹介しました。

『IOTA』(読み:アイオータ)

「IOTA」は、リアルタイム性の高いIoT対応に特化したブロックチェーンです。M2Mマイクロペイメントでブロックもチェーンを持たない構造になっています。

「IOTA」が描く未来の姿は、ドローンが自動で飛びながらステーションで充電し、支払いもしてくれるような、一切の行動に人間を介さない世界です。セキュリティに関しては、糸のもつれのような仕組みを使った「Tangle」と呼ばれる手法で、改ざんをほぼ不可能にしています。

『BigchainDB』(読み:ビッグチェーンデービー)

「BigchainDB」は、処理速度を最大限に高めたブロックチェーンです。分散型DBとブロックチェーンそれぞれのメリットを融合しており、汎用的なデータでかつ、大規模データの保存を可能にしています。

ブロックチェーンとユーザー認証

続いての話題は認証問題について。現状では、それぞれのサイトやサービスにIDが存在し、ユーザー自身が各サービスやシステムにアクセスする仕組みになっています。IDへのアクセス方法を紛失した場合も、本人の問い合わせなどで再発行などが可能ですが、ユーザーの記憶やテキスト情報に依存してしまいます。

しかし、この仕組みにブロックチェーンを導入すると、中央集権を持たない分散台帳上にIDを記録して、それに対してサービスを対応させることが可能になります。つまり全員が相互管理しているような状態を作り、よりセキュリティを強化できますが、IDを紛失した場合にリカバリーが困難になるデメリットもあります。

すでに世界で運用が始まっている「顔認証」「指紋認証」「行動認証」「生体認証」など記憶などに依存しないID認証方法と、ブロックチェーンによる高い信頼性を組み合わせれば、不特定多数の人々の間で安心して共有ができる「シェアリングエコノミー」が実現できる可能性が高いと考えられます。

ただし、その実現のためには絶対的な「信頼」が必要になるため、ブロックチェーンの仕組み自体が信頼を生み出すことが確実にできなければなりませんし、世界全体がその問題に取り組んでいます。

現時点での課題は、リアルタイム性の高いシェアリングの対応が難しいこと。記録はブロックチェーンに残りますが、デジタルデータ以外の部分に関して、例えばシェアしている実物自体(自動車・部屋など)は物理的に記録できない(デジタル化できない)ことです。

IoT×AI×ブロックチェーンの可能性

さらに、さまざまな技術がすべて横断して繋がるきっかけとなっているのが、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」であり、今後、通信データの種類と量が爆発的に増加し、リアルタイム通信と判断のために、あらゆるデバイスでAIが搭載される可能性が高くなっています。

そこで必要なのが、データに信頼性をもたせる技術、その候補がブロックチェーンとなります。

IoTとブロックチェーンの可能性として、リアルタイム性とデータ信頼性の両立が必要となり、ネットワーク構造については「Fogコンピューティング(ドローンや自動運転のような、高度な処理をしつつリアルタイム性が必要な対応をする)」「エッジコンピューティング」それらを横断する、IoTデバイスと連動したスマートコントラクトが必要になります。

AIを一言で説明すると「デジタルデータを使って何かを自動化する技術」、ブロックチェーンを一言で説明すると「デジタルデータ自体を証明する技術」であり、お互いに補完する関係となっています。

将来的に、あらゆるデバイスでAIが稼働するのは確実であり、判断を自動化するAIにおいて、不具合時の影響は甚大なものになります。そのため、AIの判断内容・結果とAIの成長履歴の因果関係は極めて重要になります。改ざんされたAIにはもちろん信頼性がないので、改ざんや変更が不可能な仕組みが必須となります。

ゲームとブロックチェーン

ここまでの解説で、デジタルデータとブロックチェーンは強い関係性・信頼性が重要なことがわかってきました。

特にゲームは、シナリオ・キャラクター・アイテム・建造物など「デジタルアセットの塊」であり、ブロックチェーンにユーザーIDやアイテムなどのデータを保存すれば、ゲームタイトルを横断した非中央集権のアセット管理が可能になります。

ブロックチェーンによって活きるゲームのユースケースとして、アイテムの売買などの「ユーザー間でのアセット交換」「ゲームタイトルを横断したアセットの共有」「アセット活用の独自ゲームの構築」などが挙げられます。

特に運営会社に依存しないゲーム運営、アイテム取得確率など改ざんや不正ができないゲーム運営が可能になることは、運営の透明化を図り、ユーザーの信頼を得ることができるような重要なユースケースであり、ゲーム業界にとって重要なファクターとなっていくはずです。

ゲーム×ブロックチェーンにおいての向き不向き

向いている
データの信頼性や履歴が重視されるジャンル、アイテムやキャラクターなどのデータ売買や取得

向いていない
リアルタイム性が高く、更新頻度の多い対戦格闘やレーシングのような動的な処理、細かいキャラクターパラメータの更新処理など

運用中タイトル紹介

ここで石井氏は、ブロックチェーン技術を利用して運用されているタイトルを紹介。現在、どのようにゲームでこの技術が使われているのか、そして今後の展望予測などを述べました。

『OxUniverse』

ブロックチェーンベースの銀河探検家オンラインゲームで、惑星を購入して宇宙船を発明し、宇宙探索を楽しむゲームです。

このようなゲームについて、ブロックチェーンを使う必然性はないですが、ゲーム業界では新たなプラットフォームが生まれるたびに爆発的な伸びを示す傾向があり、ブロックチェーンベースのプラットフォームとしては、今後3~4年で成長する可能性が大きいと考えられています。

『Etheremon(イーサエモン)』

ブロックチェーンゲームの中でもかなり勢いのあるゲームで、イーサリアム版のモンスター収集&育成系のジャンルです。特にプラットフォームの健全性が中央の管理者ではなく、参加者によって保たれていることが特徴です。

ゲーム×AI×ブロックチェーン応用

続いて、クーガー株式会社がゲーム・AI・ブロックチェーンを横断して展開している「バーチャルヒューマンエージェント」について、デモ動画を使用して説明されました。

バーチャルヒューマンエージェントは、ゲームの世界に限定されていた3Dキャラクターを、現実世界の人間とコミュニケーションする取り組みです。これまで進化してきたデバイスの最新型は「人型」だと、石井氏は話しています。

デモ動画では、石井氏が現実の世界とモニターやタブレットを通して、女性のバーチャルヒューマンエージェントと自然に会話をしている様子が紹介されました。

この事業では、現実社会とバーチャル空間を繋げているのがポイントで、理解する部分はビッグデータを利用した機械学習AIを使用し、エージェントの振る舞いに関してはキャラクターAIを使用。その2つのAIが融合してリアルなインプットの理解をML(機械学習)させています。

また、ブロックチェーンによってデータおよびAIの信頼性を担保する仕組み「XAI(Explainable AI)」を作っており、このAIはゲーム開発において重要になってきます。

「XAI(Explainable AI)」の要素は、「数式やアルゴリズムの説明性」「ニューラルネットワークの設計」「学習データ」となっており、特に学習データの部分にブロックチェーンの技術の親和性が高いため、今後も研究を続けていくと石井氏は講演を締めくくりました。

質疑応答

Q:ブロックチェーンのゲームへの利用について、リアルタイム性の高いゲームへの対応、チート行為などへの対応などについて、どのようにお考えでしょうか?

石井氏:リアルタイム性の高いプレイが多いゲームタイトルには、ブロックチェーンの対応はすぐにはできないと思います。「プレイ終了後~次回ゲームを起動するまで」など、ブロックチェーンに記録されている前回のプレイデータが、一定の期間で保存されたデータ自体が透明性を担保できるような導入から、まずはスタートすると考えられます。

また、リアルタイムで複雑な動作をするチート行為には、現時点では対応できるかは不明です。オンラインゲームやソーシャルゲームなどの運営の透明化や、過去のデータを利用した確率データの公開などには対応可能と考えています。

Q:ブロックチェーンを利用したゲームの10年後はどの様になっていると思いますか?

石井氏:今後インターネットの中心は、機械が運用する「マシンインターネット」がメインになってくると思います、それによりロボットなど機械に合わせてスピードが出るような、データ通信の方式が変わっていくと考えています。

その状況では、人間が直接見ることが可能なデータがなくなってくるため、それを翻訳するアシスタントが登場し、人間とコミュニケーションをしていくと思われます。

さらに、さまざまなデバイスがお互いを検索し合い「どこに繋げばいいのか?」ということを、それぞれのAIが判断して、自律制御していきます。これがまさに「非中央集権型検索」と言えますね。

ゲーム側に関しては「ミラーワールド」といった最新の概念があります。ミラーワールドには世の中のすべての物質が、AR空間においてコピーとなって存在、つまり鏡の世界にもうひとつまったく同じ世界ができ、現実世界とARの世界でどちらも楽しめるほか、さらにミラーワールド自体も分裂して形成することができます。その仕組みを支えるのが、ブロックチェーンとなっていくと想像しています。

懇親会

クーガー石井氏からプレゼントも

講演終了後に実施された懇親会では、GDMおなじみのお寿司と、今回初登場のサンドイッチをつまみながら、積極的に交流がなされていました。また、今回クーガー株式会社と石井氏のご厚意で、参加者にオリジナルのTシャツやグッズが配られました。

参加したDeNA社員にちょっと聞いてみました

――まず、勉強会に参加した理由を教えてください。

社員Y:ブロックチェーンをどうやって利用すれば良いのか、現在では明確な答えがあまりないと思っており、技術的な話だけでなく、特にゲームとの関係性や実用例を知りたくて参加しました。

――石井氏の講演を聞いてどう感じましたか?

社員Y:Bitcoinなど仮想通貨取引だけでなく、さまざまな分野に活用できることを知ることができました。非中央集権で扱わなければいけないデータが世の中には思ったよりもたくさんあったことを知りましたが、なぜそうしなければいけないのか、というアイデアも自分なりの気付きに役立ちました。

もちろん、ブロックチェーンのコミュニティの存在は知っていましたが、コミュニティのこれからの動き方や、応用例、適用例なども知ることができましたね。

――もともと、ブロックチェーンの基礎的な仕組みは知っていましたか?

社員Y:社内でも研究している人はいますし、基本的なことはある程度調べていました。ゲーム開発にブロックチェーンを利用する際に、アクションゲームやレースゲームのようにリアルタイムかつデータを書き換える頻度高いジャンルには向いていない認識はしています。そういう流れから、自分達の現在の仕事には直接関連がなく、より深い勉強はしていませんでした。

――ゲームとブロックチェーンが組んだ、業界の将来はどのように進化していくと感じましたか?

社員Y:講演にあったゲームに関する「ミラーワールド」のような世界が実現してから、本格的に変わっていくのかもしれませんね。

運営の透明化についても、事業者そのものが行うというよりは、その世界の住人が「リアル道具屋」みたいな新たなサービスを経営するときなどに、透明性のあるロジックを公開することはあると思います。そこには競争原理などが生まれるかもしれませんね。

かつて話題になった『セカンドライフ』のような世界がさらに進化して、ゲームの内部でブロックチェーンを利用したサービスが生まれていくのだろうと予想していますが、そこでどのようなゲーム性を提供していくかは、まだまだ考えていく余地があると思います。

――ありがとうございました。

取材・文:細谷亮介
撮影:佐藤剛史/細谷亮介

[su_note note_color=”#ffffff” radius=”10″]

GeNOM(ゲノム)とは

DeNAのゲームクリエイターを様々な切り口で紹介するメディア(運営:株式会社ディー・エヌ・エー)です。ゲーム開発の現場で生まれる様々なエピソードや、クリエイター紹介、イベント紹介などを通して、DeNAで働くメンバーの”ありのまま”をお伝えしていきます。

GeNOMの最新情報は、公式Twitter アカウントにて確認いただけます。ぜひフォローをお願いします!

[/su_note]

【CEDEC2018まとめ】ゲーム系登壇者の一言感想&資料つき

注目のゲーム系セッション振り返り

2次元キャラが3次元にやって来る!~歌マクロスでのAR施策~

登壇する小野と北林

ゲーム・エンターテインメント事業部第三開発部の小野と北林が登壇。「ARとVRの違い」「なぜARを実装しようと思ったのか」「実装してみての苦労話」など、訪れた来場者の興味を惹きつける内容となりました。

 

Q:まずは小野さん、登壇してみていかがでしたか?

登壇する小野

キャパが120名の会場だったんですが、事前にはどのぐらいの聴講者が来るのか全く予想できず、「ガラガラだったらどうしようかな……」とか思っていました。実際には、開始前にはかなりの行列ができており、講演途中で「満員で入れません」になったとあとから聞きまして正直ホッとしました。

終わったあと喫煙所で、セッション聞いてくれた専門学校生3名に突撃質問されたのですが、熱量高い人達でなんだかうれしくなりました。やっぱゲーム作る人は熱量大事! とあらためて思った一日でしたね。

Q:続いて北林さん、登壇してみていかがでしたか?

登壇する北林

途中でスライドが入れ替わっているトラブルがあったりして少しオタオタしましたが、やってみてとても良い経験になりました。また、その後の登壇者懇親会やDevelopers’ Nightなどでも、講演内容をきっかけにして多くの方々と交流させて頂きました。

CEDECへの登壇を通じて、業界の方々にノウハウやナレッジの共有ができ、今後ARを活用した施策の参考になればと思います。

次世代QAとAI 〜ゲーム開発におけるAI活用に正しく向き合うために〜

パネルディスカッション

パネルディスカッション式のセッション。DeNAからはAIエンジニアの奥村(写真:右から1番目)が登壇。株式会社スクウェア・エニックスの三宅氏、株式会社セガゲームスの阪上氏、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社の大野氏とともに、QAとAI活用における各社の取り組みなどが紹介されました。

 

Q:奥村さん、登壇してみていかがでしたか?

今後より複雑化していくゲーム開発と人手不足に対する危機感から、AI活用について真面目に向き合いたいという気持ちで登壇しましたが、業界の第一人者の方々とのディスカッションはとても実のあるものになったと思います。打ち合わせでは何時間にも及ぶ白熱した議論がありましたが、その一端をお見せできていたら嬉しいです。

『逆転オセロニア』におけるAI活用〜ゲーム運用における取り組みとノウハウ〜

最終日となる24日(金)は、奥村が『逆転オセロニア』でのAI活用の取り組み・ノウハウを紹介。

 

Q:奥村さん、登壇してみていかがでしたか?

談笑する奥村

現在関わっているAIプロジェクトの技術を余すことなく公開することを目的に登壇しました。講演後、技術の中身やプロジェクト観点での質問が非常に多く寄せられて嬉しかったです。ここでの議論やノウハウが、他のゲーム開発者の方々の参考になれば、業界のAI活用もより一層進んでいくと思います。

『逆転オセロニア』が実践した“コミュニティと共創するゲーム運営”

登壇するけいじぇい

ラストは、先日2,100万DLを達成した「逆転オセロニア」のプロデューサーである香城(けいじぇい)が登場。ゲームではなく、「サービスとしてプレイヤーに届ける価値」という観点から、事例を交えて紹介しました。

 

Q:香城(けいじぇい)さん、登壇してみていかがでしたか?

CECECでの登壇は初めてでしたが、非常に刺激的な体験になりました。

はじめはオセロニアのコミュニティマネジメントの話に終始しようと思っていましたが、発表されたタイムスケジュールを見て、CEDEC20周年記念の基調講演として3日間の最初の講演がマリオの生みの親である宮本茂さん、3日間の最後の講演が私だったのを何かの縁だと思って、脈々と続くゲームの歴史の流れの中でバトンをつないでいけるような未来への提言をしたいと思いました。色々思案した結果、「For2020 ポストソーシャルゲーム時代」という形で想いも伝えました。

談笑するけいじぇい

講演終了後も、ありがたいことに、たくさんの方が列をなして、もっと話を聞かせてほしい、今度、別のイベントでも話してほしいなど反響がポジティブだったのは嬉しかったです。

 

DeNAもCEDEC2018をサポート

多くの来場者

今年で20週年を迎え、先日無事に閉幕したCEDEC2018。任天堂株式会社 代表取締役 フェロー 宮本氏の基調講演から始まり、のべ3日間で来場者は数千人を超え、多くの賑わいを見せました。

water

CEDEC2018会場では、来場された皆さんに、冷たいペットボトルウォーターを配布。暑い中来場くださったので、大変好評をいただきました。

関連リンク
【公式サイト】逆転オセロニア
【公式サイト】歌マクロス スマホDeカルチャー

©1982,1984,1992,1994,1995,1997,2002,2015,2017,2018 ビックウエスト
©2007 ビックウエスト/マクロスF製作委員会・MBS
©2009,2011 ビックウエスト/劇場版マクロスF製作委員会
©DeNA Co.,Ltd.

【CEDEC2018】注目のゲーム系セッションまとめ。気になる見どころを、登壇者に聞いてきた

CEDEC2018開幕

いよいよ開催が近づいてきたCEDEC。1999年にスタートし、20回目という節目を迎えた今年は、AIやARなどの最新事例の他、大ヒットゲームの運営術など、見どころが盛りだくさんの内容になっています。(最新情報や詳細は「CEDEC2018公式サイト」をご覧ください)

期間:2018年8月22日(水)~8月24日(金)
会場:パシフィコ横浜会議センター (横浜市西区みなとみらい)
主催:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会 (CESA)

注目のセッションと見どころ

GeNOM編集部では、注目する登壇者にセッションの見どころをインタビューしてきました。ぜひこちらを読んで、会場に足を運んでみてください! 当日は「そこまで話していいの!?」というくらいの実例をまじえたノウハウが聞けるかもしれませんよ。

 


2次元キャラが3次元にやって来る!~歌マクロスでのAR施策~

=登壇者紹介=

小野 良憲 | Yoshinori Ono

株式会社ディー・エヌ・エー
ゲーム・エンターテインメント事業本部
ゲームコンテンツ事業部 第三開発部
プロデューサー

北林 達也 | Tatsuya Kitabayashi

株式会社ディー・エヌ・エー
ゲーム・エンターテインメント事業本部
ゲームコンテンツ事業部 第三開発部
グループマネージャー

=セッション日時=

8月22日(水) 16:30〜17:30

お二人それぞれの自己紹介をお願いします!

小野:

株式会社ハドソンにて、プランナー・ディレクター・プロデューサーとして勤務。2011年DeNA入社、『Marvel: War of Heroes』や『歌マクロス スマホDeカルチャー』に携わっています。

北林:

『歌マクロス スマホDeカルチャー』ではディレクターを担当していました。ゲーム業界歴は長く、前職カプコンでもプログラマーやプロデューサーとして数多くのタイトルに関わらせて頂きました。

お二人でのセッションとのことですが、登壇内容を教えてください!

小野:

“大好きなキャラが2次元から飛び出して来てくれる” その気持ちよさ・楽しさをプロモに活かすことができた!
という実例を共有するセッションです。

北林:

可愛いキャラクターたちと現実世界で会いたい! 一緒に写真撮ってみたい! 自分の部屋で踊って欲しい!
そんな想いを形にするために選択したのがARでした。これをどのようにしてプロモーションに活かしたのかお話したいと思います!

どんな人に聞いてほしいですか?

小野/北林:

・ARに興味がある人
・プロモでネタを探している人
・ARを使ったプロモーションに興味がある方
・3Dキャラを使ったゲームでユーザの気を引きたい人

=受講難易度=
甘口(学生含めどなたでも)

注目ポイントは?

小野:

3Dキャラがかわいく&カッコよく踊る『歌マクロス スマホDeカルチャー』ですが、ARを使用したプロモーションでユーザーやファンの皆さんに大いに盛り上がっていただけました。どのような点が支持されたのか、実際の反響はどうだったのかなどを共有しつつ、AR施策において注意すべき点の知見なども併せてお伝えできればと思っています。

北林:

歌マクロスは、他のリズムゲームには無い本格的なダンスが特徴です。その歌姫のダンスをあらゆる方向から見ることが出来るARモードについて、やってみての知見や失敗談などについてお伝えいたします。

当日の意気込みを聞かせてください!

小野:

CEDEC登壇するの、実に13年ぶりでして。
前回とはモバイルゲーム業界のユーザ層、タイトル群など環境が全然変わっていますが、よいゲームをユーザに届けて楽しんでもらおう! という気持ちは変わっておらず。ぜひ、今回のオーディエンスにも“歌マクロスとその施策の楽しさ”が伝わるといいな! と思っています。

北林:

CEDECはいつも聞く側での参加でしたが、今回登壇側での参加ということで気合入ってます!
手法の話だけでなく、一歌マクロスの魅力も一緒にお伝えできたらと思っています!


次世代QAとAI 〜ゲーム開発におけるAI活用に正しく向き合うために〜

=登壇者紹介=

奥村 純(株式会社ディー・エヌ・エー/写真)
三宅 陽一郎(株式会社スクウェア・エニックス)
大野 功二(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社)
阪上 直樹(株式会社セガゲームス)

=セッション日時=

8月22日(水) 17:50〜18:50

奥村さんの自己紹介をお願いします!

国内外の研究機関で宇宙物理学の研究に従事し博士号取得。2014年4月にDeNAでデータアナリストとしてのキャリアをスタート。ユーザー体験や事業推進をデータからサポートすることを目指し、主にゲーム領域のデータ分析・パラメータ設計の経験を積む。2017年1月より機械学習エンジニアに転身し、強化学習技術を中心としたゲームAIの研究開発を推進。

登壇内容を教えてください!

近年、多くの領域でAI活用が期待されており、ゲーム業界もその例外ではありません。このパネルディスカッションでは、AI活用の中でもQA領域に目を向けて、現時点での課題感の整理やどのような導入が期待されているか、また各社の具体的な取り組みや今後の未来予想図について幅広い話題を提供したいと思っています。

AIを導入するといっても難易度は高く、各社が独自に取り組んでいてもなかなか進まない可能性があります。このセッションではこのような課題意識のもと、どのように業界全体が連携できるかというテーマにも触れる予定です。

どんな人に聞いてほしいですか?

これからどのようにAIが活用されていくのか知りたい、現在モバイル・コンシューマ領域でどのような取り組みがあるのかを知りたい、という方々に向けて幅広い話題を提供します。AI技術についても甘口レベルで解説を行うため、機械学習やAIといった領域に習熟している必要はありません。

=受講難易度=
甘口(学生含めどなたでも)

注目ポイントは?

モバイルやコンシューマで実際にAI導入を検討し活動しているメンバーの取組事例から、広く業界を俯瞰していただけることがポイントです。


『逆転オセロニア』におけるAI活用〜ゲーム運用における取り組みとノウハウ〜

=登壇者紹介=

奥村 純 | Jun Okumura

株式会社ディー・エヌ・エー
AIシステム部 AI研究開発第二グループ
AI研究開発エンジニア

=セッション日時=

8月24日 (金)16:30〜17:30

登壇内容を教えてください!

現在、DeNAのゲームタイトル『逆転オセロニア』にて、様々なAI活用が検討・推進されています。
具体的にはオセロニアのような複雑なゲームを人間レベルでプレイできるAIの構築を始め、長期運用をサポートするためにキャラクターのスキルをリリース前に評価するAIなど、野心的な挑戦を続けています。

この講演では、技術的な解説にも踏み込みながら、私たちがどのようにゲーム領域のAI開発に取り組んでいるか、AI導入という特殊なプロジェクトを進める上で気をつけるべきことなど、様々なノウハウにふれる予定です。

どんな人に聞いてほしいですか?

ゲーム領域でのAI活用を検討したい開発者をターゲットにしています。具体的な事例を多く取り入れ、現場目線でのノウハウを共有するので、実際にAIプロジェクトとして足を踏み出す際の参考にしていただけると思います。

=受講難易度=
辛口(ある程度の経験がある人へ)

注目ポイントは?

実際にどのようにAIプロジェクトを進めているか、どのように技術開発が行われているか、という事例を持ち帰ってもらえるのがポイントです。特に『逆転オセロニア』をプレイするAIエージェントを作る、という難易度の高い課題に対して、どのように考えてアプローチしたのか、思考プロセスも合わせて知っていただくことができます。

当日の意気込みを聞かせてください!

近年、ゲーム領域でもディープラーニングなどの最新技術を利用したAI活用が話題になってきました。ビジネスとして夢のある話は多いですが、一方で実際にプロジェクトとして取り組んでいくと、多くの苦労があるのも事実です。実際に、DeNAで進めている『逆転オセロニア』でも様々な試行錯誤や反省がありました。

どちらの講演でも、なるべく現実的な目線でAIについて語りたいと思います。このような場を作ることで、AIに対する正しい期待値のもと、今後地に足のついたユースケースが業界全体で増えていくことを期待しています。


『逆転オセロニア』が実践した“コミュニティと共創するゲーム運営”

=登壇者紹介=

香城 卓 | Taku Kojo

株式会社ディー・エヌ・エー
ゲームサービス事業部 第一ゲームサービス部
逆転オセロニア プロデューサー

=セッション日時=

8月24日 (金)17:50〜18:50

自己紹介をお願いします!

1982年石川県生まれ。中央大学卒。2011年株式会社ディー・エヌ・エー入社。Mobageプラットフォームでのソーシャルゲーム運用・開発を経て、『逆転オセロニア』を企画・開発。「けいじぇい」の愛称で、同タイトルのプロデューサーに従事。

登壇内容を教えてください!

GDC2018でもたくさんのセッションがあったように「コミュニティ」に関するサービス手法は全世界で大きなトレンドとなっています。しかしながら、現在の国内ゲーム市場で実践できているケースは決して多くありません。

・年間30本以上! “オフラインイベント全国行脚”の効果と目的
・ゼロ距離でプレイヤーに接する“顔を見せる運営スタイル”
・本邦初公開となる“コミュニティマネジメントの分析手法” …etc

『逆転オセロニア』のコミュニティマネジメントのノウハウを、具体的な実践例と共に、余すことなくご紹介します。

どんな人に聞いてほしいですか?

ソーシャルゲームのみならず、toC向けサービスの運営・開発経験がある方はよりお楽しみいただけます。

=受講難易度=
中辛(この分野の初心者へ)

注目ポイントは?

いわゆるコンテンツマーケティングのみに閉じず、コミュニティの力を借りて、コミュニティと一緒に成長させていくゲーム運用手法を、具体的な実践例と共にお話いたします。

当日の意気込みを聞かせてください!

国内最先端のコミュニティマネジメント手法をお届けします。お楽しみに!

▼あわせて読みたい
1600万ダウンロード突破!『逆転オセロニア』〜オセロニアの誕生から今後の展望まで〜

入場パスについて

いかがでしたか? これで予習もバッチリ! レギュラーパスやデイリーパス、エキスポ&スポンサーパスなどの事前登録は8月15日(水)までとなっています。一部のパスは当日販売も可能。来場を迷われている方も、ぜひ友人をお誘い合わせの上、各セッション会場でお会いしましょう!

受講のお申込みはこちら
※事前受講登録期間:7月1日(日)~8月15日(水)

 

関連リンク
【公式サイト】逆転オセロニア
【公式サイト】歌マクロス スマホDeカルチャー