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2018.3.16

【特集】DeNAゲーム事業部にはADならぬVOがいるって本当? 新たな職能”VO(ビジュアルオーナー)を徹底解説!〜VOの三大要素とは〜

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    2018.3.16

    【特集】DeNAゲーム事業部にはADならぬVOがいるって本当? 新たな職能”VO(ビジュアルオーナー)を徹底解説!〜VOの三大要素とは〜

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  • 突然ですが、DeNAゲーム事業部にVO(ヴィジュアル・オーナー)という職能がある事をご存知でしょうか?

    かつてはDeNAでも一般的な職能としてのAD(アートディレクター)が活躍していましたが、ある時を境にVOという職能に変化していたのです。ADに似ているようで実はまったく異なる職能、しかもタイトルによってVOの役割も異なっているそう…VOって何者!?

    そんな疑問を解消すべく、

    • VOって何してるの?
    • できたきっかけは?
    • DeNAのゲーム事業部にADはいないの?
    • 開発チーム内での役割ってなに?
    • どんなスキルを持っている人がVOになれるの?
    • VOに変わって良いことあった?逆にデメリットは?

    などなど、3人の現役VOにとことん質問してみました!


    写真左から

    政尾 翼 | Tsubasa Masao
    2015年入社。家庭用ゲーム会社にて幅広いタイトルでキャラクターデザインを担当し、DeNAでは内製アートチームのマネジメントと外部案件のVOを兼任。

    高木 正文 | Masafumi Takagi
    2014年入社。コンシューマーゲームのデザイナーやフリーランスを経て、現在もイラストレーターをやりつつ、ディレクションやマネジメントも行う。『メギド72』VO。

    河瀬 貴夫 | Takao Kawase
    2012年入社。エンジニアやデザイナーを経て、DeNA入社後は組織マネージメント、クリエイティブに特化したプロジェクトマネジメントを担当。『逆転オセロニア』VO。

     


     

    DeNA特有の役割である“VO(ヴィジュアル・オーナー)”

    ーー 他社で似た役職だと、『アートディレクター(以下、AD)』とか『デザインリーダー』と呼ばれる方が活躍されていると思いますが、DeNAではなぜ“VO”と呼ばれているのでしょうか。


    DeNAは多くのデザイナーが中途採用で入社してきているので、ADとして入る人のバックグラウンドがいろいろです。いろんな業界からきていると、ADの概念ってそれぞれ違ってくるので、まずはADの定義を立てようとした期間があったんですが、なかなかうまくいかなかったんですよね。

    そういう経緯の流れで、2017年の春頃に『メギド72』プロデューサーの宮前さんが部長になって、そのタイミングで「もうADという言葉は使わないことにしよう」と決まり、“VO”っていう言葉ができました。

    ーー 最初にその言葉を聞いた時、どのように感じましたか?


    最初に聞いたのはデザイン部内の情報共有の会でした。
    その時はそこまで深掘った定義がなかったので、「そういう役割ができたのか」っていう程度でした。

    ーー VOになる前は皆さんはどのようなポジションでお仕事をされていましたか?


    今までのキャリアは、DeNAへ入社する前からも含めて、ADとアート(絵を描くこと)が長いです。


    僕は、アートの中でも、背景以外のモンスターやキャラクターに特化していました。


    VOの前は、*“CPM”というクリエイティブに特化したプロジェクトマネージャーとして“FINAL FANTASY Record Keeper”の開発に携わっていました。
    それ以前は組織マネージメントをしており、さらに前職まで遡ると、エンジニアやデザイナーなどもやっていました。

    *CPM・・・クリエイティブプロジェクトマネージャーの略。各クリエイティブメンバーが「手を動かす」ことだけに集中して円滑に作業ができるように、モチベーションや工数管理、ゴールまでのレールを明示するなど、クリエイティブ分野の制作以外の全てを担い、環境を整えるチーム。

    ーー 3人とも全然違うキャリアからVOになったんですね!


    僕の場合、元々「クリエイターになりたい」という気持ちや、作品に関わりたいという思いがありました。でも明確に「この領域がやりたい」というのはなくて。
    ざっくりと「ゲームを作りたい」とか「いいものを作りたい」というところから色々やって来たっていう感じですね。


    エンジニアからデザイナーに移られた時って、使う頭というか、考え方を変えないといけないところがあると思うんですけど、そのあたりはすんなりできましたか?


    デザイナーと言っても、フロントエンドエンジニアやアニメーション、UIデザインなど、アーティストとは違う領域ではあるものの、制作をやっていたので割とすんなりと入れましたね。
    以前は、一般的に高い評価がされている作品でも、どこがいいんだろ?って思ってしまうこともあったんですが、人をまとめる立ち位置にいるのに作品のことがわからないというのは良くないので、様々な作品をみたり人の話を聞いたり、いろいろ努力しました。
    審美眼を育てるつもりで勉強してましたね。

     

    絵が描けなくてもVOになれる?

    ーー VOのお仕事の種類・内容について教えてください。


    すごく多岐にわたります。
    デザイナーじゃなければできない仕事かと言われると、そういう訳ではないところがあって。
    DeNAの中でのVOの定義は、『美術監督』が一番近いかなと思います。

    ただ、美術監督のイメージとしては美術に特化したものだと思うんですけど、作品を作る上で「背景はあの人に任せよう」とか、「クオリティチェックはこの人にお願いしよう」とか、どちらかというと組織マネージメントの部分が強いです。

    僕と政尾さんはアーティストなので、コンセプト出しを含めたデザイナーのVOですが、河瀬さんはそういったところよりも、どちらかというとCPMに近いVOです。
    人のアサインなど「誰にこれをお願いして、どのように作るか」を考えるのが大きいですね。

    ーー 中には、絵を描かないVOもいらっしゃるんですね。


    はい。現在でも数名います。

    ーー プロジェクトによって関わり方や仕事内容が変わるのでしょうか。


    「プロジェクトを回す」という大枠は同じですが、やり方は異なるところがあります。
    また、全員がデザイナーとか、逆に全員が非デザイナーとかだったら、似た統制になると思いますが、そうではないので、VO次第で作り方が違う感じはありますね。


    プロジェクトのフェーズによっても変わってくると思います。
    立ち上げフェーズであれば、勝率を上げるための働きが出来ることが重要になると思いますし、運用フェーズであれば効率的なフローやメンバーのモチベーション管理が得意なVOがいいと思います。そこはプロジェクトの状況次第という部分が大きいのではないかと。

     

    『VOを構成する3大要素』とは?

    ーー やり方はVO次第、というお話を聞いた上で「これだけは外せない!」ということや、 みなさんそれぞれが軸足を置いているところなど、VOを構成する3大要素を本日ご用意したパネルにご記入ください!


    え〜! 難しい!!


    *** シンキングタイム ***


     

    ーー それでは、一番早く仕上げていた河瀬さんから解説をお願いいたします!

     


    あくまで、自分がやっているVOの括りになりますが……。
    ①の【幅広い知識】は、タイトルやアートの代表として各所と話をすることが多くあるので、やりとりをしているときに相手の発言がわからないとうまくコミュニケーションは取れないし、導くことができません。
    深い知識はいらないと思いますが、どんなタスクが発生しうるのかとか、何を求めているのかを理解する必要があります。

    ②の【コミュニケーション】は、ひとことで言っても幅広いですが、僕はあまり角が立たないコミュニケーションを目指しているので、基本的には相手に合わせながら、その人がやりたいことを実現できるようなコミュニケーションを取るようにしています。

    ③の【決断と責任】は、迷うと進まなくなってしまうので、ヴィジュアルの責任者としての決断力と、何か起きたときに責任が取れる力は重要だと思います。

    ーー ありがとうございます。では次に、政尾さんお願いします。


    僕は、オリジナル要素が強い案件の立ち上げのVOを想定して書きました。

    まず①の【プロジェクトのマスト案件】
    プロジェクトが求めているものを明確にした上で、違う方向に行かないように守るということですね。

    ②の【組織づくり(メンバースキル、フロー)】については、メンバーの中には、メカが得意な人もいれば、モンスターに特化していたり、マスコットキャラクターを描くのが上手い人もいたりと、それぞれ得意なジャンルもスキルも違います。
    その上で、「どのような座組みだとメンバーの強みを活かせて、高いクオリティを狙えるか」だったり、「そのためにどのような作業フローにするか」「自分の担当はどこまでで、メンバーの担当はどこまでか」などの線引きが重要かと思っています。

    ③の【プラスアルファ】については、あくまで新規案件限定かもしれないですが、言われたことをそのままアウトプットするだけではVO失格だと思っています。
    自分の強みを提示し、プロジェクトの成功への後押しをする、ということが大事だと思います。特に、企画立ち上げのタイミングは重要だと思いますね。

    ーー たとえば、プランナーから「個人のテイストを出してください」と求められる場面はありますか?


    「以前描いた○○風で」という発注はありますが、新規案件ではあまりないかもしれないですね。前提として①の【プロジェクトのマスト案件】を守った上で、ではありますが、その過程で自分のテイストが出ることはあると思います。それは自然に出てきてしまうものなので、どうしようもないですが。

    ーー ありがとうございます。それでは、高木さんお願いします。


    僕は「力(りょく)」で合わせました。

    ーー おお〜〜(一同)


    まず、①の【没入力】
    これは・・・僕の性格的に一番苦労したところです。
    一個のプロジェクトに深く長く携わるよりも、何本か同時に担当した方が僕的には得意なんですね。苦労はしたんですが、やっとできるようになってきた感じがあります。

    VOはいろんな仕事を担いつつ、ヴィジュアル全般の責任も持ちます。
    プロジェクトのメンバーにアーティストが多くいる場合は割り振りができるんですけど、今僕がVOを担当している『メギド72』ではそんなにメンバーが多くありません。
    そうなると、必然的に自分で見る部分が広くなります。

    なので、例えばバナーに気になるところがあれば自分で直すし、ヴィジュアル以外の部分でも、歌うキャラクターの楽曲について「もっとハイテンポの方がいいんじゃないか?」みたいな意見を出すこともあります。
    どれくらいプロジェクトに没入してやれるかが、僕の中ではだいぶ大きかったですね。
    ただ難しいのは、没入しすぎて周りが見えてこなくなっちゃうのもダメなんです。

    そこで必要だと思うのが②の【先導力】です。
    エンジニアやプロデューサーにとってデザインの窓口にあたるのがVOです。
    そんな立場でリーダーシップがない人がVOをやっちゃうと、どうしても「デザイナーたちがプロジェクトにやる気を出してくれない」と思われて負の連鎖になってしまうので、VOが「僕たち、うまくやってるんで!」という感じを出さないと、メンバーにも影響が出てしまうと思います。ビジュアルに関する全ての点でプロジェクトチームに安心感を与えるのも、VOの大事な役割なんです。

    最後は【機動力】です。
    どんなに①と②が出来ていたとしても、基本的に仕事量が多いので、出来ることが少ないと仕事が回らなくなります。
    なので、スピードや幅を気にしないマインドで、なんでもやれる感じとか、それに対するフットワークの軽さをVOが推進していく必要がありますね。
    頭が重いと、あとに続く人は動けなくなるので、動きを速くすることが重要だと考えています。

    「クオリティ」よりも必要なポイント

    ーー 「人に任せること」って仕事の中でもすごく難しい部分だと思うんですけど、VOとして人に任せていかなければならない中で、変化したことや学んだことはありますか?


    コミュニケーションが難しいですね。
    「伝える」為に必要なことって人によって全然違いますね。すごく丁寧に言えば伝わるということでもなくて、人によっては簡潔にキーワードだけポンっと出したらすぐに理解される方もいますし。
    その見極めをするのが難しい部分です。
    この人に合う指示の出し方ってどうだろうって毎回迷いながらも、何回か話してみて、「この人はこういう伝え方がやりやすそうだ」って感じで見つけていっています。

    ーー インタビュー序盤で「審美眼」というワードが出てきましたが、メンバーと制作の良し悪しを話すときにVOとして心がけていることとか、意図して使っている言葉などはありますか?


    デザイン面で僕が意識してるのは、「それらしさ」ですね。
    クオリティは言葉としてわかりやすいですが、クオリティがよくてもどこかが「それらしくない」ところがあると、僕の中では気になります。
    例えば、ベルトのバックルの通し方とか。
    空想のものだからこそ、それらしさがないと命は吹き込まれないと思っているので、「それらしさ」を大事に考えています。


    オセロニアっていろんな版権元様とのコラボが多いんですけど、クオリティが高い絵であればいいとは限らなくて、コラボになるとちょっと視点が変わります。よりファンの人に刺さるイラストを作らないといけません。

    なので、自分がヴィジュアルの最終責任者として「これはいい」「これはよくない」を判断して示す決断力と、コラボするコンテンツについての知識は必要だなと常々思っています。

     

    VOができて良かったこと

    ーー VO制度ができてから、良かったことや苦労したことはありますか?


    良かったこととしては、前に比べて、気になっても言わないでおこうかと躊躇してたこととかが言いやすくなりました。
    逆に、困っているというほどでもないんですが、ADになりたくて選考を受けに来られる方からすると「DeNAのゲーム事業部にはADがいない!?」ってなっちゃうことですね。

    ーー VOはADの職務領域も含んでいますよね?


    含まれます。
    ただ、VOって任命制なんですよ。
    必然的に、ADの数に比べるとVOは少なくなりますが、VOとADの役割分担としては、ビジュアル全般の管理をVOが担って、今までアートディレクターを担当していたメンバー達には、外部パートナーさんのクオリティコントロールなどをお願いしたりしています。


    ADが何をやるのかはコンシューマー業界でもぼんやりしていることが多かったので、しっかり定義づけされたことで周囲の理解度が高まったし、「やることの線引き」として良かったかなと思います。
    あえてネガティブな例を言うと、新しくDeNAに入ってきた人に「VOってなに?」って聞かれるたびに説明しないといけないことですかね(笑)。

    それと、ADとVOは必ずしもイコールではないので、イコールだと思っている人にはもしかしたらネガティブに受け取られるかもしれないですね。


    僕の思う良かった点は、意思決定を求められたり、自分で考えたことがすんなりチームに受け入れられたりと、自由度が上がったことですね。タイトルへの貢献度がより高まったし、やりがいを感じます。
    苦労したのは、今と比べるとVOについてのメンバーの理解度がそんなに高くない時代もあったので、自分で体現して、「こういう動きをする人がVOなんだな」とメンバーに気づいてもらわなければならなかったことですね。

     

    VOに向いている人は第六感が鋭い?!

    ーー VOはどのような人が向いていると思いますか?


    やり方次第ですが、制作だけではなくてビジネスに近いことができるのがいいところなので、裁量をもってやりたい人に向いてるかなと思います。

    ーー 『メギド72』では毎日数字が上がっていると思いますが、追いかけるのヒリヒリしませんか?(笑)。


    いや〜〜毎日ヒリヒリですよ! 実は今まで作り終わったら離れる関わり方が多かったので、メギドが初の運用案件なんですが、こんなに面白いのかと思いました! ヒリヒリするのも楽しくて、「ゲームって生きてるんだな」って思います。
    生きものを作っている感じがあって楽しいです。

    プレイヤーさんがメギドの絵を描いてくれることもとても嬉しくて。
    メギドのビジュアルコンセプトって、デザインで勝負したんですよ。

    人気がある絵ってみんながそのキャラクターを描くので、そういう路線を目指しました。

    メギドの72人のキャラクターの中で、特にデザインで愛されている子がいて、プレイヤーさんがそのキャラクターの絵をたくさん描いてくれています。
    プレイヤーさんから「帽子についてるアクセサリーが可愛い!」ってご意見とか貰うと、デザインで人が好きになるポイントってこういうところなんだと。
    そういったことも見ることができて、僕はとても楽しいですね。

    ーー 「デザインで勝負をする。」これはVOだからできる判断ということなんですね。


    僕がVOに向いていると思うのは、第六感が鋭い人だと思います。
    何か起きていそうだなとか、いち早くキャッチして、それに対して先手を打ったり意思決定ができる人。
    全体感を持っている人ですね。

    ーー なるほど。河瀬さんは常に第六感がビンビンですか?


    はい、かなり(笑)。

    僕は経歴的にどうしてもアート視点でみてしまうところがあるのですが、ひとつの強みや一芸に秀でた人というよりは、バランス感覚のある方が求められているのかなとは感じますね。

    プロジェクトの勝率をあげるためには、貪欲な気持ちというのが常に求められているのではないかと。
    とくにアートの仕事は自分だけで完結してしまいがち。それで満足してしまうことも多いのですが、それだけで満足せずに、したたかに計算ができることも必要だと思っています。

    それと、VOに限らず各パートのリーダーにあてはまることだと思うんですが、DeNAはいろんな会社から来た人がいろんな価値観で作っている会社なので、自分の価値観だけでなく、他者の価値観を許容することも重要だと思います。
    それ以外にも企画内容やスケジュールによっても進め方が変わることも多いので、そこも柔軟に対応しつつ、自分の守るべきところは守れる人、ちょうどいい塩梅を保てる人が向いているかなと思います。


    VOはとにかく人手不足なので、社内外問わず募集中ということはお伝えしたいです!


    アート領域で「デライトやプレイヤーさんに向けて、こういったことがやってみたい!」というのがある方は向いているんじゃないでしょうか。

    やりたいことのチャレンジができる土壌があると思います。

     



    VO特集、いかがでしたでしょうか?

    DeNAで活躍するVO全員がそれぞれ異なった経歴を持ち、その人にしか出来ないビジュアルディレクションを実現させる為に、VOという変幻自在な職能が生まれた事がわかりました。自分の思うVO像を極め、プレイヤーに対して最大のデライトを発揮しようと奮闘する姿は、泥臭くも熱いものを感じます。

    3人共穏やかなキャラクターでしたが、目の奥がメラメラと燃えていたことをGeNOM編集部は見逃しませんでした。

    最後までお読み頂きありがとうございました! 今後も、GeNOM編集部ではいろいろな切り口からDeNAゲーム事業部の様子をお伝えしていきます。

    お楽しみに!

    おまけ:VOポーズ